どうも、空衣です。FtMでパンセクシュアルです。本記事では、FtM当事者である私が、そもそもFtMとは何かご紹介します。

FtMについて当事者の気持ちも含めて、深く知りたいといった方、参考にご覧ください。

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FtMとは

FtMとは

FtMとは、Female to Maleの略で、英語の意味通り「女性から男性に性別を移行する人・移行した人」を指します。また、生まれた時に身体的に女性としてみなされながらも、男性として生きることを望む人・男性として生きている人もFtMと言います。

FtMは、トランスジェンダーの一部であり、略して「トランス男性」と表記されることもあります。セクシュアルマイノリティの総称であるLGBTsの中では、T(Trance Gender)がFtMを包括する頭文字となります。

時代によって呼び方は変わるようです。昨今の風潮では「FtM」というより、本人の性別の認識が「男性」であることに着目して「トランス男性(英語ではtransman/ transmen/ transmasculine など)」という呼び方が増えてきています。

ただし、医療現場では身体的特徴に着目するためか、相変わらず「FtM」「FTM」表記が主流です。

関連記事FtM(トランスジェンダー男性)の「リアル」を伝える、記事まとめ

トランスジェンダーと性同一性障害(GID)の違いは?

性同一性障害は、医学的用語となります。現在では、アメリカ精神医学会のDSM-5では性別違和、WHOのICD-11では性別不合と呼称されるようになりました。トランスジェンダーと性同一性障害(GID)の違いは治療を望むかになります。

トランスジェンダーも様々で、生まれ持った身体的性別と、自身の認識する性別にギャップがあっても治療を望まない方がいらっしゃいます。逆に治療を望む方もいらっしゃいます。性同一性障害(GID)は医学的用語なので、トランスジェンダーが何かしらの治療を望むとき、診断名が性同一性障害となる可能性があります。

トランスジェンダーの割合は人口の2%でFtMの割合は、内28%

2018年に金沢大学が『トランスジェンダーの割合と職場での状況という調査結果』を出しています。その調査結果によると、トランスジェンダーの割合は人口の2%で、トランスジェンダーのうち、28%がFtMとなりました。MtFは、18%となっています。この調査では、Xジェンダーも含まれており、FtXが33%、MtXが19%となりました。

Xジェンダーというのは、生まれ持った体の性別に対して、自身の性の認識が無性や中性といった性別を持つセクシュアリティのことです。Xジェンダーもトランスジェンダーの一部として包括されることがあります。

FtMを決める要素とは

FtMを決める要素とは

身体的性別 性自認
生物学的には女性(性染色体が女性) 自分自身の性別は男性であるという認識

性自認と性的指向は必ずしもセットというわけではない

FtMの自分自身への性の認識は男性ですが、好きになる対象は必ずしも女性というわけではありません。そもそも男性だから必ずしも女性を好きになるというわけではない為、FtMのゲイがいてもおかしい話ではありません。

その他にもバイセクシュアルのFtMや、パンセクシュアルのFtMなど様々なFtMがいます。

女性的だったり中性的というのはFtMを決める要素とは関係ない

FtMは、男性的に自分自身を表現する方が多いですが、自分自身の性をどのように表現するかはFtMを決める要素とは関係ありません。

一見、女性的な方や、中性的な方がFtMである可能性も十分にあります。

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様々なFtMがいる

様々なFtMがいます

一言でFtMといっても、初めから自分のことを男性だと自認していた人もいれば、成人してから性別違和に気づく人もいます。

また、医学的な治療をして身体を男性的に適合させていくか否かも、FtM本人によって異なります。

性自認が男性で、治療を必要とするFtM

まず挙げられるのが、従来の「性同一性障害(GID)」として想定されていたタイプのFtM像です。

性自認(本人が性別をどう捉えているかの認識のこと)がはっきり男性であり、終生変わらないことが性同一性障害の診断の条件です。

また、医学的な治療もセットに考えられてきました。FtMの治療としては、男性ホルモン投与、胸オペ、性別適合手術(子宮・卵巣摘出、陰茎形成術)などがあります。

以下では、性自認通りに扱われない苦悩や、はるばる海外へ治療に行った話が参考になるFtM当事者の本を紹介します。

チェック → 虎井まさ衛『ある性転換者の記録』

チェック → 前田健裕『あなたが「僕」を知ったとき 性同一性障害、知られざる治療の真実』

性自認が男性で、社会的に男性扱いされたいFtM

性自認は男性であり、社会的に男性として生きていきたいと考えるタイプです。社会的に男性として扱われることが叶うならば、身体はこのままでも構わない、治療は必須ではない、という人もFtMのなかにはいます。

また、環境を変えたり治療を進めたりしていく中で、案外男性として生きていけるとわかれば、治療ルートにこだわらなくても大丈夫だと判断が変わることも十分考えられます。

医療と社会的な待遇はどちらも大事なことですが、社会的な側面が改善されることで生きやすくなることは往々にしてあります。

以下では、トランスジェンダーの権利が他の人と同じように守られるよう、働きかけているFtM当事者のエッセイをご紹介します。

チェック → 遠藤まめた『オレは絶対にワタシじゃない トランスジェンダー逆襲の記』

チェック → 杉山文野『元女子高生、パパになる』

性自認は男性だと断言できなくても、治療して男性として生きていくFtM

自分が男性かどうか問われてもよくわからないけれど、治療を望み、男性扱いを受け入れて生活しているFtMもいます。

元々女性として出生したものの、「男性として生きていく」ことを受け入れている時点で、FtMの一員といえるでしょう。

これまではジェンダークリニックでも「あなたの性自認は本当に男性か?」という確認をされることがありましたが、ゆくゆくは男女どちらかハッキリ決めたくないトランスジェンダーの人でも、治療が必要ならば受けやすく変わっていくのではないでしょうか。

関連記事【性別違和は続く?】「ノンバイナリー」だけどFtMの私が、社会的に男性として生きること

FtMの治療の種類

FtMの治療の種類

ホルモン治療

ホルモン治療というのは、ホルモンを補充する治療方法です。男性が中学生くらいからより男性的な体へと変化していくのは、中学生頃から男性ホルモンの分泌量が増える為です。

男性ホルモンは女性の体にも実は分泌されています。しかし、その量は身体的男性に比べるとかなり少い為、男性的な体にはなりません。

体外から男性ホルモンを補充すると、体内の男性ホルモン値が上昇する為、身体的男性のような男性的な体の変化が期待できます。

投与するホルモン剤には、飲み薬や、塗り薬もありますが、多くの場合には注射を使用します。

チェック → 【FtMルーティン】ひと月に2回男性ホルモンの自己注射をしています。

乳房切除術

乳房切除術というのは、乳腺と乳房を切除し男性的な胸を形成する手術です。主に形成外科や美容外科で行われます。乳房切除術というのは、性別適合手術ではありませんが、多くのFtMが希望をします。

場合によっては、乳頭を小さくする手術を行うこともあります。

チェック → 【FtM手術】胸オペから1年経過して変化は?

子宮・卵巣摘出手術

性別適合手術の1つで、産婦人科で行われます。手術の方法は様々で、腹部の切開から行う方法、腹腔鏡で行う方法、膣から行う方法があります。

陰茎形成手術

性別適合手術の1つで、男性的な生殖器を形成する手術です。主に泌尿器科や形成外科で行われます。とても大がかりな治療なので、入院しながら行われるのが一般的です。

合併症のリスクもある為、手術を受けるかは十分検討する必要があります。

チェック → 【FtM手術】2種類の陰茎形成術について比較してみました。

FtMが戸籍を変更するには

FtMが戸籍を変更するには

FtMが戸籍を変更するには6つの条件を満たす必要があります。

  1. 2人以上の医師により、診断されていること
  2. 20歳以上であること(2022年4月から18歳以上となる予定)
  3. 婚姻していないこと
  4. 未成年の子がいない
  5. 生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態であること
  6. 他の性別の性器に似ている外観を備えていること

見ていただけるとわかる通り、FtMが男性に戸籍を変える場合には、性別適合手術が必須条件となっています。その為、戸籍変更はとても高いハードルとなっています。

海外では、戸籍変更に外科的手術の条件が削除されている国もあり、日本でも早くそうなって欲しいと思わんばかりです。

チェック → 【FtM記録】どれくらいかかる?性同一性障害の診断書を得るまで

FtMを取り巻く社会問題

FtMに関係する社会問題について触れていきます。

結婚

現在の日本では、同性婚は認められていません。その為、戸籍変更を行なっていないFtMが女性との結婚を考えた場合、戸籍上は女性と女性になってしまうので婚約ができないのです。先ほども書いた通り、戸籍変更には手術が必須となっていて身体的にも高いハードルとなってしまっています。

最近では、パートナーシップ制度がかなり普及してきましたが、パートナーシップ制度は各自治体の制度なので法的な力は一切持っていません。その為、パートナーの法的相続人にはなれないなど、様々な制限があります。

LGBT全体のことを考えても同性婚は早く実現してほしい制度だなと思います。

引っ越し

最近は、LGBTsフレンドリーな不動産会社を中心に書類の性別欄を無くすなどの動きが見られますが、依然として今も書類には性別欄などが存在します。その為、引っ越しなどお部屋探しをしようとすると、自然と担当に自身がトランスジェンダーであるとカミングアウトすることになってしまいます。

理解のある方であれば良いのですが、もし理解のない方にあたってしまったらと思うと中々引っ越しなど検討することができません。また引っ越し先で周囲の方々がトランスジェンダーに理解があるのかというのも不安になります。

医療面

基本的に、医療機関では、戸籍上の名前が使われます。その為、診察室への呼び出しも戸籍上の名前が使われてしまって、行きづらさを感じてしまう場合があります。

また、性別適合手術を受けていないトランスジェンダーは、婚約ができないのでパートナーの緊急事態に説明を受けられない、立ち会えないなどの問題があります。

仕事

最近ではLGBTに理解のある企業も増えてきましたが、まだまだ生きずらさを感じます。大手企業などはLGBTに関する講義を受けたり、積極的に理解促進をしているイメージですが、バイトなどで仕事を探そうとすると、まだまだLGBTに関する理解が乏しく、かなり気を遣う面があります。

また一部企業では、結婚に重きを置いていることがあり、やはり結婚ができないトランスジェンダーの場合は肩身の狭い思いをします。

FtMのYoutuber

ジーピットチャンネル

ジーピットチャンネルはFtMをメインにLGBTsに関することなどを発信しているYoutubeチャンネルです。FtMに関する情報を分かりやすく発信しているので、見てみると理解を深められるかもしれません

チェック → ジーピッドチャンネル

FtMの困りごと、何がある?

FtMの困りごと、何がある?

FtMのライフストーリーで、どのようなことが気になるのか、いくつか例を挙げます。(もちろん、全てのFtMが同じように困っているとはいえませんので、その人がどう生きていて、何を必要としているのかが肝心です。)

  • なぜペニスがないのか不思議に思う
  • 赤いランドセルが嫌だ
  • 学ランが着たかった
  • 声変わりしている男子が羨ましい
  • 修学旅行のお風呂が怖い
  • 女子トイレは入りにくい
  • 恋愛の話に参加しにくい
  • 成人式で振袖を着せられたくない
  • 履歴書の性別欄に困る
  • 近くにジェンダークリニックがない
  • 周囲の男性と比べて落ち込む
  • 結婚や子育ては無理だとあきらめる

FtMにとって、上記のような生きづらさはあるかもしれません。しかし性別移行を経て、幸せに生きていけているFtMも確かにいます。

そういった幸せなFtMの物語や、一人の「男性」としてどう生きるのか未来像を描きやすくなるような物語がもっと増えていくと良いと当事者の視点から思っています。

チェック → 【FtMルーティン】性別移行してトランス男性がようやく男湯に通えるようになった話

【まとめ】当事者が教えるFtM(トランス男性)とは?

【まとめ】当事者が教えるFtM(トランス男性)とは?

FtMとは、Female to Maleの略で、英語の意味通り「女性から男性に性別を移行する人・移行した人」を指します。また、生まれた時に身体的に女性としてみなされながらも、男性として生きることを望む人・男性として生きている人もFtMになります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

チェック → FtMの本音。トランスジェンダーで辛かったことをお話しします