どうも、空衣です。FtM(トランス男性)でパンセクシュアルです。

私は昔から広いお風呂が好きで、よく銭湯に行っています。「トランスジェンダーが公衆浴場ってハードル高いのでは?」と思う方は多分多くいらっしゃるのではないかと思います。
もちろん身体的に女湯にも男湯にも行けず、ひたすら公衆浴場の利用を我慢しなければならない時期もありました。しかし状況によっては、とくに問題なく利用できることもあります。

FtMが女湯を利用していた当時

FtM(トランス男性)の場合は、生まれたときに割り当てられた性別が女性ですから、一度は女湯を利用したことがある人も多いかと思います。私も修学旅行や学生寮で、女性用の公衆浴場を利用したことがあります。
あとはシャワーしか備え付けられていないシェアハウスに住んでいた頃は、広いお風呂に入りたくて週1ペースで近所の銭湯に通っていました。「とにかく女湯が嫌だ」という理由で、公衆浴場の利用を控えるFtMももちろんいますが、私の場合は広いお風呂に入れないと体の疲れが取れずにストレスがたまるので、銭湯は必須でした。

なぜか羨ましがられることも…

なかには「本当は男性なのに女湯を利用できるのはズルいのでは?」という異性愛規範に基づく意見もあるようです。しかし私からしたら“身体に性別違和を感じず”“なんの引け目もなく”ただ利用できる人の方が羨ましかったです。とくに同年代の同性の友人と入浴できるのはなんとなく楽しそうだな、と思っていました。

最後の女湯

私が最後に女湯を利用したのは、胸オペの診察をするために遠方のホテルに宿泊したときでした。そこは個室のお風呂がなく、男女別の浴場しかありませんでした。
胸オペ前とはいえ胸は小さいし、肩と腰回りにタオルを巻けば男湯にいけるかな?と呑気に構えていたのですが、あいにく男性客の多い日でしたので諦めました。
(一度別の場所で、胸オペ前に男湯を利用したことがありました。オペをしていなくても最初から胸のない・目立たないFtMの場合は、男性ホルモンだけで十分男性に見られますし、上裸になって海パンで出歩けるという人もいるようです。手術不要な方は羨ましい限りです。)

スタッフさんには外見で男湯を案内されていましたが、再度「身体は女なので…」という屈辱的な申告をして、閉場後の女湯を貸切で利用させていただきました。胸さえ平らだったらスムーズに男湯に行けていたはずなのに、と胸オペ直前だっただけあって余計にフラストレーションが溜まったのを覚えています。

FtMが男湯利用するときの注意点

さて、晴れて条件がそろったらFtMでもごく自然に男湯が利用できるようになります。どんなことに気をつけるべきか、解説していきます。

着衣時のパス度を上げる

まずは受付や他のお客さんから、男として認識される外見でなければ入り口に入れません。
※パス度とは、FtMの場合「男性として第三者から認識されること」を指します。

髪型や服装で男性ジェンダーをまとうことに加えて、なにか応答する場面では、男性ホルモンで声変わりしているとより良いです。

着脱時のパス度を上げる

つぎに、脱いだときに男性の身体として把握される必要があります。

よくFtMの説明として「心は男性、身体は女性」という内容があります。しかし、端的にいって「身体は女性」とみなされるままでは男湯の利用は難しいでしょう。なので何らかの治療をして(FtMの場合はほぼ100%、男性ホルモン投与を意味します)、「身体は男性」の状態に近づける必要があるのです。

では、具体的に気をつける項目を挙げてみます。

  • 乳房が膨らんでいない
  • 髪は長すぎない
  • 体毛は多い方が有利
  • 上半身を鍛えておく
  • 話しかけられたら低音ボイスで応答できる

股間はタオルで隠すか、FtM用のエピテーゼをつける人もいます。
私の場合は2日に1回という高頻度で、ジムでの運動後や自転車をこいだ後に銭湯に入っているため、その都度エピテーゼの装着を気にするのは大変だと思い、今までエピテーゼは使用したことがないです。
エピテーゼがあると隠さずにゆっくり身体を洗ったり脚を伸ばしたりできるというメリットがあるそうで、それは素晴らしいなと思います。

男性の身体として過ごすうえで、体毛はある程度あった方が便利です。髭やすね毛は、男性としてパスするために都合がいい要素だからです。陰毛についても、ツルツルで下半身の状態がすぐに分かってしまうよりは、多少でもあった方が不安要素が減る気がします。

タオルを持参する

銭湯へ出向く際は、タオルを大小2枚持っていきます。大きめのボディタオルは体を拭く用で、もう一枚のフェイスタオルは銭湯のなかへ持っていって股間をガードする用です。
フェイスタオルは丁寧に腰に巻いているとかえって怪しいので、何食わぬ顔で前方だけ隠すのが良いです。

ただしお湯にタオルを浸けるのはマナー違反というところが多いので、お湯に浸かる瞬間にさっとタオルを避けるようにしています。あとは脚を組んだり、壁際の段差に腰かけてうまく股間を死守します。色のついたお湯や泡風呂であれば体勢をそれほど気にせずに浸かっていられるのでオススメです。

自然に利用すれば大丈夫

なんといっても、挙動不審にならないことが肝心です。生まれたときからこっち(男性側)を利用しています、という自然なていでいれば誰も気にしないかと思います。戸籍性別を男性に変更していなければ、男湯を利用できないという事実もありません。

以前男友達と男湯に行った際、男友達の方がシャワーを後方へ向けてしまい、後ろのおじさんに注意されていました。そういう迷惑行為で注目を集めなければ、とくに問題はないでしょう。

「FtMが男湯に入るのは、怖くないの?」と推測されることがあります。私も身体治療始めたての頃はそのように予想していました。ですが実際に外見的に問題がなくなってきてからは、「男湯にいる他の男性が怖い」と感じることはなく、「はじめての土地で地図もなくて怖い」とか「未知のものを初めて食べてみるから怖い」のような緊張感の方が近かったです。慣れたら気にならなくなりました。

それに男性のなかにも、低身長の人・手術痕のある人・乳首の大きな人・股間を隠している人などいろいろな人がいるとわかり、私も単にその中の一人に過ぎないのだと思えました。

男湯利用しているFtMの実情

YouTubeでは銭湯好きFtMによる利用状況についてチェックすることができます。
これから男湯に行きたいけれどまだ心配、というFtMの参考になると思います。

夢と自由を愛するオッサンFTM【はるさん】

モリタジュンタロウのビログ

私にとって銭湯にある洗い場の鏡は、上半身の筋肉チェックをするのにうってつけの場所です。洗い場でなるべく隣に人が来ないように選んで座っていますが、洗い場自体は嫌いではないので、人がいない時間帯はゆっくりできて居心地がいいです。
脱衣所では、とりあえず下着さえ履けばあとは自分のペースで過ごせるのでやっぱり銭湯はいいものだなぁと実感しています。

以上、FtMルーティンをご紹介しました。
公衆浴場に不安を抱えるFtMの参考になれば幸いです。

チェック → FtM(トランスジェンダー男性)の「リアル」を伝える、16記事まとめ

◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。居住地にこだわりがなく女子寮にいたこともありますが、現在は男性の境遇で生活しています。カレー好きで、世界一辛いカレーを完食したことも。

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