近年、日本でもパートナーシップを結ぶ事ができる地方公共団体が多く出てきており、日本社会の同性カップルへの向き合い方は変化してきていると言えます。

しかし、誰しもがこの流れを肯定的に捉えているわけではなく、同性婚に対して様々な角度から議論がなされており、まだまだ道半ばといった印象です。

この記事では、同性婚が認められると、LGBTs当事者の生活にどんなメリットがあり、パートナーシップ制度と何が違うのかを説明していきます。

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同性婚とは法律的に認められた同性間の婚姻

同性婚とは男女間で法律的に認められた婚姻関係を「同性間」でも同様に認めるということを意味します。

ただし、当事者であるLGBTsの中にも、同性婚を認めて欲しいと声をあげて、裁判を起こして奮闘している同性カップルもいれば、特に必要と感じていないと考える同性カップルもいます。
同性カップルが日本では法的に禁止されていないのだから、法律婚でなくても愛し合えるし、現状で問題がないという意見もあります。
2021年3月19日最高裁判例(最高裁第2小法廷 草野耕一裁判長)では同性カップルにも内縁関係を認めました。

なぜ法律婚である同性婚が実現しなければならないと考える人がいるのでしょうか?

理由は複数ありますが、大きな理由として結婚している異性カップルやその家族には与えられる「法的な権利」が得られないことが挙げられます。

同性婚とパートナーシップ制度の違い

具体的に法的な権利の話をする前に、同性婚と近年自治体が認めてきているパートナーシップ制度との違いについて説明します。

そもそも結婚とは何か

法律的には「結婚」は「婚姻」と言い、日本国憲法第24条第1項には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と記されています。

同性婚とは

同性婚とは法律的に同性カップルにも婚姻を認めること。つまり、同性婚によって同性カップルにも、男女の夫婦が結婚にて得られる法的な保証や権利が同じように与えられるように認める制度ということです。

パートナーシップ制度とは

あくまで自治体内の制度であり、民法が定める婚姻制度とは全く別物です。自治体同士での相互利用などがなされる地域もある一方で、基本的には自治体内のみで効果を発揮するものです。

ただし、2022年10月現在、日本でも200以上の自治体でパートナーシップ制度が施行されており、行政が同性カップルの存在を正面から認めるというきっかけにもなり、間接的な意義は大きいと言えます。

最近ではパートナーシップ制度に積極的に対応する企業も増えてきており、パートナーシップ制度の価値も高まっています。

 

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同性カップルが同性婚を認めて欲しい理由

同性カップルが同性婚を認めて欲しい理由
それでは、同性カップルが同性婚によって得たいと考えている「法的な権利」とは何なのでしょうか。
身分上の権利、子供に関する権利、税や相続上の権利、社会保障の給付などがありますが、NPO法人のEMA日本の調査によれば、約60の権利・社会保障給付が婚姻するだけで認められるそうです。

具体的な例をあげると……

  • 税の優遇措置や社会保障が受けられる
  • パートナーが外国人の場合、在留資格が与えられ日本で一緒に過ごすことができる
  • パートナーと実子または養子の共同親権を持つことができる
  • パートナーが命に係わるような時に家族として側にいることができる
  • パートナーと死別、また離婚した場合には財産の相続や財産分与請求ができる

などの権利があります。

現状では、これらの権利の多くは同性カップルに認められていません。
家族との法律上の関係や、在留資格などは生活の根幹にかかわる大きな問題です。
なので、同性カップルの中には上記のような権利を求めて、同性婚の成立を目指す人がいるわけです。

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日本における同性婚のメリット

日本における同性婚のメリットには個人だけではなく、企業や日本社会としても期待ができます。

個人としての同性婚のメリット

法律婚で得られる約60の権利や社会保障が認められる

新しい制度を創出すのではなく、法律婚として同性婚が認められれば、現行の法律婚で得られる約60の権利や社会保障を受けることが期待できます。

法律婚と現状の同性カップルにはどのような差があるのか、以下に一覧で記載します。

《法律婚上の夫婦と同性カップルの権利・保障での比較》

  法律婚での夫婦 同性カップル
婚姻届
戸籍 同じ戸籍 別の戸籍
住民票の記載 妻/夫 特になし
夫婦としての社会的認知
同居・協力・扶助義務
法定相続権・遺留分
婚姻費用分担義務
関係解消時の財産分与請求 否定した裁判例あり
貞操義務(浮気された場合の損害賠償) 認められた裁判例あり(最高裁が上告棄却し確定)
配偶者控除(所得税)
配偶者ビザ
子どもの共同親権者(実子、養子ともに)
親権者死亡時に残されたパートナーが子どもの親権者になれるか ✕(遺言で未成年後見人と指定することは可能)
犯罪被害者遺族給付金 否定された裁判例あり(控訴しており確定していない)
健康保険の扶養家族
公的年金保険の第3号被保険者
遺族年金
病院での面会・病状説明・手術同意

※引用:公益社団法人MarriageForAllJapan(https://www.marriageforall.jp/marriage-equality/

民間企業での家族を前提にしたサービスを受けられる

同性婚が認められることで、行政でのサービスだけではなく、民間企業のサービスでも男女の夫婦が享受できるサービスや特典を受けることができます。

例えば

  • 携帯電話の家族割引が適用
  • クレジットカードでの家族カードが発行可能
  • パートナーが務める企業の福利厚生を受けることが可能

といった多数のメリットが挙げられます。さらに、仮にパートナーが亡くなったあとでも、同性婚カップルであれば、民間生命保険の死亡保険金受取人になれたり、葬式に参列する権利などを得ることができます。

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企業や国としてのメリット

同性婚は、個人だけではなく、大きな視野で見ると、企業や国にもメリットがあると言えます。

世界から優秀なLGBTs人材が日本へ来る理由になる

高度なスキルを持つ優秀なLGBTs人材は、LGBTsに対して寛容な環境を求めています。

日本が同性婚を認めることで、世界の優秀なLGBTs人材に日本が開かれたオープンな国であるということをアピールできます。少子高齢化が急激に進む日本において、世界から優秀な人材を確保することは企業にとってとても重要な課題だと言えます。

経済成長の貢献度が増す可能性

さらに、経済成長への貢献度も期待できます。日本のLGBTs人口は人口の約3%〜8%(10から13人に1人)と言われています。

社会や職場でのLGBTs差別の存在は、LGBTsの働く人たちのパフォーマンスを少なからず低下させています。

「Open For Business」*の調べでは、同性婚を含むLGBTsに関する法制度の整備によって、1人当たりのGDPが1,694ドル程度高くなると考えられていると言われています。

引用:https://bformarriageequality.net/wp/wp-content/uploads/2020/12/report.pdf

人口が減り、活力が衰退している日本において、1人当たりのGDPが上がる可能性を秘めている同性婚は日本経済へかなり良い影響を与えるはずです。

※Open For Businessとは:アクセンチュア、アメリカンエクスプレス、AT&T、バークレイズ、I KEA、ロレアルなど35以上のグローバル企業が賛同する団体(https://open-for-business.org/

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日本における同性婚のデメリット

では逆に同性婚へのデメリットはあるのでしょうか?

世界的に見ても同性婚への寛容な姿勢を取る国が増えて来ている昨今の風潮の中、「同性婚を認めないことへのデメリット」ならたくさん思いつくと思いますが、同性婚自体へのデメリットは当事者である筆者はあまり思いつきませんでした。

しかし、調べてみると様々な角度で同性婚へのデメリットや同性婚への反対派からよく言われている誤解もありました。

新たな差別を生む可能性がある

同性婚によって、新たな差別が生まれる可能性があると言われています。それはどういうことなのでしょうか?

2015年6月に同性婚を合法化したアメリカでは、同性カップルの権利が認めてもらえた一方で、伝統的な宗教道徳から同性婚制度に反対していた人々が「偏見の持ち主」として糾弾されるなど、深刻な人権侵害が逆に発生してしまいました。

今まで、同性婚に反対していた人達が、同性婚が法律で認められた途端に、差別される側になってしまうという事実に、とても驚きました。

お父さんやお母さんが差別用語になる可能性も

もう1つのデメリットの例は、今まで当たり前に使ってきた家族制度の考え方を見直す必要が出てくるという点です。

同性婚が認められ、同性カップルの間に子供が出来た場合、「2人のお母さん」や「2人のお父さん」という状態が発生します。

同性カップルの子供たちにとっては「お父さん」や「お母さん」という社会が当たり前に使っている言葉ですら、その子供にとっては差別用語になりかねないということです。

上記は一例ですが、同性婚を認めるということは、男女のカップルを前提とした日本社会のルールを根底から見直す必要性も出てきます。

これまでのルールを見直して調整していくためには、膨大な時間やコストがかかってしまう反面もあるということです。

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日本でよく言われている同性婚に対する誤解

日本でよく言われている同性婚に対する誤解
同性婚の反対派から下記のような点を理由に反対主張がよくされています。

ただし、それはよく考えると同性婚が直接の原因ではなく、別の要因の方が大きく関係していることも多々あります。

誤解①:同性婚を認めると少子化が加速してしまう

日本は超少子高齢化の時代に入っていますが、同性婚を認めるとさらに少子化を加速してしまうという意見があります。

当然、異性間のカップルに比べて、同性間カップルでは子供を持つハードルが高いので、こういった思考になるのはわかります。

しかし、少子化問題の問題は、

  • 異性間カップルでも経済的な理由から子供をあえて作らない
  • 不妊などの身体的な原因で子供が作れない
  • 晩婚化で子供を作る適齢期を逃してしまった

などたくさんの要因があります。同性婚によって少子化が加速するという主張は少し強引な気がします。

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誤解②:伝統的な婚姻制度が破壊される

デメリットでも少し触れていますが、「伝統的な婚姻制度が破壊される」という主張もあります。

確かに、憲法24条第1項でも「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と記載されています。

条文には「両性」「夫婦」とあることから、婚姻が男女間で行われることを前提としており、同性婚は想定されていないというのが、専門家の一般的な解釈であると言われています。

なので、同性婚を認めることによって、これまでの結婚という概念は変化せざるを得ないとも言えます。

ただし、同性婚を認めて欲しい側の主張はあくまで、「異性カップルに与えられた権利や保証を同性カップルにも与えて欲しい」という主張なだけであり、「伝統的な婚姻制度が破壊」することを望んでいるわけではありません。

破壊しないような選択肢を取っていけば、これまでの婚姻制度は守られると考えらます。

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誤解③:世界的に見ても同性婚を認めていない国が多い

「世界的に見ても同性婚を認めていない国が多いから、まだ日本も同性婚を認めなくてもよい」という主張もあります。

世界的に見れば確かに、同性婚を認めていない国はたくさんあります。世界人口に占める同性婚を認める国の割合は18%程度です。

しかし、世界GDPに占める同性婚を認める国の割合は約55%になります。つまり経済的に力を持つ国々(経済的先進国)の中では、同性婚を認めている国が多数派であるということです。

引用:NPO法人 EMA日本(http://emajapan.org/promssm/world

この状況から、経済的先進国の考え方と比べると日本は少数例外派という見方もできます。

メリットの裏返しにもなりますが、同性婚を認めないことで、日本が世界の優秀なLGBTs人材から働きやすく・住みやすい国と見てもらえるチャンスを逃しているかもしれません。

果たして、「まだ同性婚を認めなくても大丈夫」という状況なのでしょうか。

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同性婚が認められている国

世界で同性婚ができる国と地域は以下の36箇所です。
同性婚ができるようになった順番に並んでいます。

一番下に記載しているエストニアは、2024年1月1日より同性婚ができるようになったばかりです。

国名 地域
オランダ ヨーロッパ
ベルギー ヨーロッパ
スペイン ヨーロッパ
カナダ アメリカ
南アフリカ アフリカ
ノルウェー ヨーロッパ
スウェーデン ヨーロッパ
ポルトガル ヨーロッパ
アイスランド ヨーロッパ
アルゼンチン アメリカ
デンマーク ヨーロッパ
ブラジル アメリカ
フランス ヨーロッパ
ウルグアイ アメリカ
ニュージーランド オセアニア
イギリス ヨーロッパ
ルクセンブルグ ヨーロッパ
メキシコ アメリカ
アメリカ合衆国 アメリカ
アイルランド ヨーロッパ
コロンビア アメリカ
フィンランド ヨーロッパ
マルタ ヨーロッパ
ドイツ ヨーロッパ
オーストラリア オセアニア
オーストリア ヨーロッパ
台湾 アジア
エクアドル アメリカ
コスタリカ アメリカ
チリ アメリカ
スイス ヨーロッパ
スロヴェニア ヨーロッパ
キューバ アメリカ
アンドラ ヨーロッパ
ネパール アジア
エストニア ヨーロッパ

参考:MARRIAGE FOR ALL JAPAN

登録パートナーシップなどが認められている国

同性婚(婚姻)まで認めなくても、婚姻と同等の権利を法的に認める「登録パートナーシップ」が認められている国は以下の通りです。

アンドラ・イスラエル・イタリア・エクアドル・オーストリア・キプロス・ギリシャ・イギリス・クロアチア・コロンビア・スイス・スロベニア・チェコ・チリ・ハンガリー・フランス・ベネズエラ・メキシコ(一部の州)・リヒテンシュタイン・ルクセンブルク・ニュージーランド・オランダ・ベルギー

 

同性婚の前に登録パートナーシップ制度などを実施していた国では、同性婚実施後もパートナーシップ制度に留まるのを認めている国もあります。

また、登録パートナーシップ制度などと同性婚を両方認めている国もあります。

参考:NPO法人EMA日本|世界の同性婚

 

G7で同性婚も登録パートナーシップ制度もないのは日本だけ

G7に加盟しているフランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・イタリア・カナダ・日本では、日本だけが同性婚も登録パートナーシップも認められていません。

地方行政が同性カップルに一部の権利を認めるパートナーシップ制度しかない日本の現状は、先進国から大きく遅れているというのが現状です。

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日本でも同性間で結婚できるよう裁判が進行中

2019年より、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡で性別を問わず結婚できるよう「結婚の自由をすべての人に」訴訟が進行しています。

既に地方裁判所での判決がでており、大阪以外は同性が結婚できない現状を違憲と判断されています。

今後の裁判の行方が大変注目されます。

参考:公益社団法人MarriageForAllJapan

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【まとめ】日本における同性婚を認めるメリットとデメリット

ここまで、日本における同性婚を認めるメリットとデメリットを書いてきました。

筆者自身も当事者でありながら、普段の生活ではまだ同性婚が必要に迫られていないので、そもそも同性婚について、深く考える機会が少なかったように思います。

当然、当事者ではない異性愛者の方はもっと同性婚について考える機会は少ないと思います。

しかし、実際に調べてみると同性婚を認めることで多くのメリットがあり、それは個人だけではなく、日本としてもメリットが大きいように感じました。

また同性婚を認めることによって生じる、新しいデメリットや誤解から発想されてしまうデメリットなども存在しました。

今、同性婚の権利について声をあげてくれる同性カップルやその支援者のおかげで、「同性婚とは」という議論が活発になって、社会的にも認知され始めています。

この広がりを通じて、同性カップルでも異性カップルでも、ともに住みよい日本になり、日本が世界から見ても国際競争力のある国になっていくことを筆者は願っております。

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