2015年11月渋谷区と世田谷区で日本初のパートナーシップ制度が始まってからまもなく8年が経過します。

制度の導入件数は増え続け、2023年11月1日時点で360以上の自治体がパートナーシップを導入しています。

パートナーシップ制度という言葉を聞いたことはあるけど、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

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パートナーシップ制度とは?

パートナーシップ制度とは、婚姻関係を結べない戸籍上同性のカップルに対して、結婚と同等の関係であることを地方自治体が承認する制度です。

同性間での結婚ができない日本において、地方自治体が導入を進めてきました。

パートナーシップ制度と結婚の違い

パートナーシップ制度と結婚(婚姻)の大きな違いは法的な効力の有無です。

あくまで日本のパートナーシップ制度は地方自治体の制度のため、婚姻と同じ権利は得られません。

婚姻すると法的に「家族」として認められますが、パートナーシップ制度を利用しても法的に家族にはなれず、他人のままです。

同性パートナーシップ制度を利用するメリットとデメリット

同性パートナーシップ制度を利用するメリットとデメリットを簡単に解説していきます。

同性パートナーシップ制度のメリット

同性パートナーシップ制度を利用するメリットは下記の3つが大きく挙げられます。

  1. 公営住宅に2人で入居できるようになる
  2. 民間の保険、金融、通信などの家族向けサービスが利用できるようになる
  3. 病院で家族と同等の扱いをしてもらえることが期待される

順番に解説していきます。

公営住宅に2人で入居できるようになる

通常、同性カップルは法的には家族と認められないため入居できないところを、パートナーシップの証明書があれば公営住宅に入居できるようになる場合があります。

LGBTsが部屋を探すことの大変さは、下記の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

チェック → LGBTsと不動産の『今』が分かるLGBTsと不動産に関する記事のまとめ

チェック → 部屋探しに苦労したゲイカップルに聞く、不動産業界のリアル【LGBTが生きやすい社会への第一歩】

民間の保険、金融、通信などの家族向けサービスが利用できるようになる

一部の携帯電話会社では、同性パートナーシップの証明書があれば、同性パートナーを家族として扱ってもらえる家族割引が使用できます。

また一部の銀行では、住宅ローンでの配偶者に同性パートナーを指定することができるようになったり、生命保険の受け取り人に、同性パートナーを指定することができるようになります。(保険会社により同性パートナーシップ証明書が必須ではない場合もあり)

病院で家族と同等の扱いをしてもらえることが期待される

もし意識不明などで緊急入院などになった場合、患者の意思確認がとれないため一般的には親族以外の人間に医療に関する意思確認は行われません。

しかし、証明書があれば家族と同様に、患者本人に代わって手術に同意することなどが可能になったり、付き添えるようになることが期待されます。

同性パートナーシップ制度のデメリット

同性パートナーシップ制度は地方自治体の制度の1つにすぎないため、法的効力がありません。

そのため、

  • 居住地にパートナーシップ制度がなければ利用できない
  • パートナーは相続権がないため遺言状がなければ財産を相続できない
  • パートナーの扶養に入れず、配偶者控除が受けられない
  • パートナーが出産した子供を一緒に育てても親権を持てない
  • パートナーが外国籍の場合、在留資格が与えられない
  • パートナーに先立たれた際に遺族給付金が支給されない

といったように、婚姻関係にある異性間の夫婦に比べて保障や権利には大きな差があります。

実際に起きてしまった、悲惨な具体例をご紹介します。

  • 40年以上連れ添ったパートナーの葬儀に参列させてもらえず、亡くなったパートナーの親族に財産を奪われてしまった事例(参照:PRIDE JAPAN
  • 同性パートナーを殺害されてしまった人が、遺族給付金を支給してもらえない事例(参照:毎日新聞

しかし、結婚の平等が実現されない限り、こうした悲劇は今後も起き続けるおそれがあります。

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同性パートナーシップ制度を受けるには?

同性パートナーシップ制度は、2015年11月東京都の渋谷区と世田谷区の2区から始まりました。

自治体によって同性パートナーシップ制度の実施方法には違いがあり、大きく分けて2つのタイプにわかれます。

渋谷区型・渋谷モデル

条例としてパートナーシップ制度を実施しているのが渋谷モデルです。

正式名称は「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」。

利用条件

  • 2人が近親者ではない
  • 申請者以外の配偶者やパートナーがいない
  • 20歳以上
  • 2人とも渋谷区に住んで住民登録をしている(申請時の2人の住所は別でもOK)

条件のクリア+必要書類を集めることで宣誓ができるようになります。

公正証書の作成費用は2種類で合計60,000円以上かかりますが『助成金』が用意されています。

必要書類

  • 2種類の公正証書(合意契約・任意後見契約)
  • 戸籍謄本または戸籍全部事項証明書
  • 本人確認書類

世田谷区型・世田谷区モデル

利用条件はほぼ渋谷区と同じです。

申請費用は無料で、必要書類は身分証明書と戸籍抄本だけで、とてもハードルが低いです。

全国的には世田谷モデルを採用する自治体が主流となっています。

必要書類

  • 本人確認書類
  • 戸籍抄本または戸籍謄本

同性パートナーシップ制度の運用方法は自治体によって様々

パートナーシップ制度を利用できる条件も、自治体によって異なっています。

2人とも同一の自治体に住んでいなければ認められないところもあれば、2人のうちどちらかが該当する自治体に住んでいれば認められる場合もあります。

またパートナーシップ制度を実施する自治体の単位は区、市、町単位の場合もあれば、県が実施している場合もあります。

企業におけるパートナーシップ制度

職場においても、パートナーシップ制度の導入は重要な意味を持つようになっています。

大企業を中心に、さまざまな企業や組織では、パートナーシップ証明書を持つ従業員に対して、異性カップルの配偶者と同様の福利厚生を提供しています。

具体的には、健康保険の適用や家族手当、休暇制度などです。

こういった活動は、職場における多様性と包摂性を高め、性的マイノリティの従業員がより快適で公平な環境で働くことを支援します。

また、パートナーシップ制度の導入は、企業のブランドイメージや社会的責任を高める効果もあります。

従業員の満足度の向上や、優秀な人材の獲得にも繋がるでしょう。

【まとめ】パートナーシップ制度とは?結婚との違いを解説

記事をまとめますと、

  • パートナーシップ制度とは、地方自治体が申請した同性カップルに、結婚と同等な関係であることを証明してくれる制度
  • パートナーシップ制度を利用するメリットは公営住宅に住める等があるが、法的効力がない点で結婚と大きく違う
  • 制度の運用方法は大きく渋谷区型、世田谷区型の2モデルがあり、全体としては手軽な世田谷区型が主流