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部屋探しに苦労したゲイカップルに聞く、不動産業界のリアル【LGBTが生きやすい社会への第一歩】

同棲を考える同性カップルのなかには、お部屋探しに不安を感じていたり、苦労する人は少なくありません。不動産会社から、法律婚をした夫婦や異性カップルとは違う扱いをされた同性カップルの話もよく聞きます。

今回IRISと対談をする溝口さんは、ご自身がパートナーの方と住む賃貸のお部屋探しで苦労をされたご経験があり、困難や体験したことをnoteで発信したところ、その内容がtwitterで大きく拡散されて注目を浴びました。今回はゲイカップルの部屋探しのリアルな話をお伺いします。

溝口さんのnote → 男同士が理想の賃貸マンションを見つけるまでの苦労話

ルームシェア扱いされてしまう同性カップル

須藤(IRIS代表)部屋探しで経験したことをnoteで発信しようと思ったきっかけはありますか?

溝口:部屋探しに苦労したのは3年ほど前でした。同性のパートナーと不動産会社に行っても、同棲ではなくルームシェア扱いされてしまうことが当たり前。何年も一緒に住んでいることを住民票で証明したり、同棲のために同性パートナー制度の申し込みや、家賃の前払いを提案したこともありましたが、なかなか思うように二人で住むことはできませんでした。結果引っ越すことはできましたが、それまでの道のりは想像以上に困難でした。私と同じように苦労している人がいると思い、その人たちの参考になるようなnoteを発信しています。

また、同性カップルで賃貸を探すことが困難な点に対し、借主に十分な与信がある確認が取れているにもかかわらず「その人がお金を持っていないだけ」といった声もよく聞きます。なのでそういった誤解も整理したうえで、同性カップルの部屋探しの現状について広めています。

須藤: そうですね。選択肢は広がったものの、パートナーシップ制度を逆手に取り、制度に申し込んでいないカップルは入居不可というケースもあります。時代に合わせて課題感も変化しているように感じますね。

不動産業界におけるLGBTフレンドリーの定義とは

須藤:最近「LGBTフレンドリー」といった言葉を見聞きするようになりましたが、LGBTフレンドリーな不動産会社についてどのような印象をお持ちですか?

溝口:LGBTフレンドリーという検索項目がある物件サイトはありますが、消費者の立場からすると登録物件数が少なく、まだ実利用には難しいという印象があります。また、LGBTフレンドリーという項目が本当に良いのかという疑問も少しあります。とはいえ社会課題を解決する考えのもとにできた仕組みだと思うので、好感をもって受け止めています。今はまだ問題にアプローチする段階だと思っているので、近い将来改善されることを期待しています。

須藤:本来はLGBT問わず、どの属性の人に対しても不動産会社としての役割を達成させることが前提にあるべきですよね。不動産業界の視点でいうと、日本の不動産は「誰が支払えるか」ではなく「誰が住むのか」を重視していることが多いので、オーナーや管理会社の意向が優先されやすいのが現状です。

私が初めて同性パートナーと同棲した10年前、「ルームシェア扱いになるから礼金を上乗せする」と言われたことがありました。オーナーや管理会社の立場が強い構造上、起こりうることとして考えられます。なのでIRISでは、こういった業界構造も少しずつ変化させていきたいと思っています。

あと溝口さんの意見と同じく、LGBTフレンドリーな取り組みを開始したことには意味があると思います。不動産会社大手のポータルサイトがLGBTフレンドリーを掲げることにより、不動産業界が注目するようになりました。と同時に、LGBTフレンドリーの定義が曖昧なことも事実です。今は問題を可視化させる段階なので徐々に改善されていくことを願っています。

溝口:そうですね。住む側の視点だと、LGBTフレンドリーを標榜している会社をみても具体的にどの点がフレンドリーであるかがわかりづらく感じました。なのでLGBTフレンドリーの定義や過去の成功事例が今後世に出ることで、そういった会社やサービスに興味を持つ人が増えると思います。

LGBTを含めたすべての人が住みやすい社会を願って

 

須藤:では、今後不動産会社がどのようになってほしいと思いますか?

溝口:付き合いの長いパートナーと同棲したくても、同性だからという理由でルームシェア扱いされてしまうことが、大きな問題の1つだと思います。例えば過去二人で一定以上の同居の実績があったり、パートナーシップ制度に申し込んだカップルは法律婚同様の扱いが受けられるなど、何かしらのガイドラインや基準があると嬉しいです。ただパートナーシップ制度がない地方自治体もあるので、ルール作りは大変だと思います。なので1つガイドラインがあれば、今まで以上に判断はしやすくなるのかなと。

須藤:LGBT含めみんなが住みたい家に住める業界になってほしいですよね。今年引っ越しをしたとき、「同性カップル相談可」と示された物件に申し込みをしました。申込書が到着し、確認が取れてからわずか5時間で審査落ちの結果を知らされ、業界の人間として違和感を覚えました。どういった基準で審査を行っているか担当者に聞きましたが、理由すらも教えてくれず・・・。たまたまその不動産会社で働いている知り合いがいたので、その人に聞くとお伝えし電話を切ると、すぐに再審査するとの連絡がきました。

私は不動産業界の人間なので、違和感に気づくことができましたが、多くのお客さんは同じことが起きたとしても、守られる環境がありません。企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉を掲げていても、意識が現場に伝わっていないことが多いのだと実感しました。G7に加盟する国々では同性婚に近しい制度がある一方、先進国でありオリンピックが開催される日本では、「ダイバーシティ」の認識が正しく浸透されていないことも課題であると思います。

溝口:もう1つ課題として、部屋探しの際に不動産会社に対して不信感をもつことがありました。過去自分で裏取りをしたこともあるのですが、本当は既に申込が入っている物件なのに、問い合わせるとまだ申込は入っていないと不動産会社から嘘をつかれて内見に呼ばれたことがありました。今回は自分で調べて貸主に近い会社をいち早く見つけ出すことができたので引っ越すことはできましたが、仲介で申し込んでいたら厳しかったのかもしれませんし、業界を知らない人は仕方ないで済ますことしかできません。なので不動産業界の情報がこちらにも行き渡ると、そういった不安な側面が減るのかなと思いました。

須藤:不動産業界には教会や建物を管理する日管協などがあり、IRISではそういった団体組織に働きかける取り組みも行っています。直接ガイドラインを設けることで、業界の共通認識ができますし、さまざまな問題にアプローチできるようになります。現在は、LGBT問わずより多くの人が安心してお部屋探しができる道をつくっている段階にいます。

半径5mの社会を変えていきたい

須藤:今後のゴールとして、IRISのビジョンでもある「誰もが自分らしく生きられる社会の実現」を目指し、不動産業界という立場で衣食住の「住」を提供できる企業になりたいですね。IRISを創業してから8年が経ちましたが、当時と比べて社会や不動産会社も前進していると思います。パートナーシップ制度ができたことも、選択肢が広がるという意味ではポジティブに捉えていますし、今後は子供や家、相続の問題についてもクリアしていきたいですね。

あとは当事者のなかで、当事者意識を持つ人が増えることも大事だと思います。LGBT理解増進法や同性婚等含め、我々当事者よりもアライの方のほうが詳しい場合があります。なのでIRISのような取り組みをしている立場から発信することも大事ですが、溝口さんのように自分の体験をユーザー目線で発信することも増えてくると、より多くの人に気づきを与えるきっかけになるのかなと思いました。

溝口:そうですね。自分一人で大したことはできないかもしれないですが、発信することで周囲の人たちに何かちょっとでも知ってもらったり、参考になることがあればうれしいと思っています。私はこれまで「半径5mのカミングアウト」というテーマを持って、家族や職場などで自分のセクシャリティをオープンにしてきました。LGBTは身近にいると思う人が少しでも増えれば、これから社会が少しずつ変わるきっかけになるかもしれません。noteの記事はそういった期待も含めて書いていました。またこれからも機会があれば発信していければと思います。

◎この記事を書いた人・・・Honoka Yan

モデル/ダンサー/ライター/記者/LGBTs当事者。ジェンダーやセクシュアリティ、フェミニズムについて執筆。タブーについて発信する日本のクィアマガジン「purple millennium」編集長。Instagram : @honokayan

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