日本において、法的な結婚が認められているのは男性と女性のカップルのみです。言い換えれば、同性カップルは日本では結婚ができないということになります。

 

希望するカップルはパートナーシップ制度などを利用することも可能ですが、これには法的拘束力がなく、いわゆる婚姻関係と同等とは言い切れません。

 

今回は、同性カップルの人たちが結婚を考えたとき、どんな方法があるのか、パートナーシップ制度とはどのような内容なのか、さらに、同性カップルが法律的な結婚ができず、困る事柄やその内容についてお伝えします。

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同性カップルは結婚できない? パートナーシップ制度とは

 

現在の日本の法律で定められている結婚とは、「両性において」認められているものです。

 

憲法に「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」という記述があります。ここでいう両性とは、男性と女性のことを指しているもので、男性同士、あるいは女性同士での結婚というのは認められていません。

 

同性婚を禁止するという記述はないものの、今の日本において「両性」の解釈が男性と女性のカップルだとされているので、同性カップルが法律上、婚姻関係になることはできないのが現状です。

 

一方、海外では2001年にオランダで同性婚を認める法律を施行して以来、数多くの国が法律的に同性婚を認める動きを示しました。2019年には、台湾でアジア初となる同性婚ができる国になりました。法律的に同性婚を認める国は年々増えており、この中に日本が増えるのかどうか、今後の国の動きが気になるところです。

 

パートナーシップ制度の利用は可能

 

法律によって定められた婚姻とまではいきませんが、日本にも特定の自治体においてパートナーシップ制度が利用できることがあります。

 

パートナーシップ制度とは、各自治体が同性同士のカップルを婚姻に相当する関係と認め、証明書を発行したり宣誓の場を設けたりすることです。

 

2015年11月に東京都渋谷区と世田谷区で施行され、その後全国にこの制度は広がっています。2021年には130以上の自治体で実施されるようになり、これは全国総人口の4割をカバーする数です。

 

ただ、このパートナーシップ制度は、日本における婚姻と同等とは言えません。パートナーシップ制度には法的拘束力がなく、パートナーの遺産相続や子どもの親権者になることができないだけでなく、会社でのパートナーへの手当などが受けられない可能性があるなど、問題もあります。これについては、このあと詳しく説明します。

 

とはいえ、できないことばかりではありません。

 

自治体が運営する住宅などに、ルームシェアではなくて家族としての同居が認められたり、病院での面会が許可されたりすることもあります。また、一緒に暮らそうと考えたとき、住宅ローンが適用されることもあり、金銭的にも精神的にもゆとりを持つことができるかもしれません。

 

家族手当などの福利厚生も、会社によっては適用されることがあります。支給対象になるかどうかは会社によって違いますが、同性パートナーも家族として、婚姻関係にある人と同等に対象になることもあります。

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同性カップルが結婚できなくて困ること

 

ここでは、現在の日本において、同性カップルが法的に婚姻関係になる、つまり結婚することが認められていないために、困ることについてお伝えします。

法的な保障を受けることができない

 

前述したとおり、パートナーシップ制度には法的効力がありません。そのため、法的な保障を受けることができないのです。具体的な例として、まず税金において所得税の配偶者控除は適用されません。結婚している人なら、所得によっては節税ができる場面で、同性カップルはそれができない分、金銭的負担が大きくなってしまいます。

 

また、健康保険の被扶養者になることも認められていません。結婚している人なら、一方のパートナーの扶養に入ってアルバイトやパートをしている人もいますが、同性カップルにはそれができません。カップルがふたりとも正社員や一定の基準を満たしたパート・アルバイトなどで働いている場合は、それぞれの会社で社会保険に入ることもできますが、ひとつの選択肢としてパートナーの扶養に入る方法があるというのは、大事なことです。

 

他にも、子どもの共同親権が認められていません。同性カップルのなかにも、子どもを持ちたいと考えている人もいるでしょう。養子縁組など子どもを迎え入れる方法はいくつかありますが、どちらか一方が親となり、もう一方の人は戸籍上他人という扱いになってしまいます。1人しか親として認められないということは、もう一人は一緒に生活して育てていても、法律上は他人としか認定されないということです。カップルの関係の変化や子どもの成長過程において大事な局面で、一方の人は、親としてなにか決断をしたり、決定したりすることができない状況になります。

会社の福利厚生(家族手当)を得られづらい

 

会社の福利厚生の内容はさまざまですが、場合によっては同性カップルは家族に対して支給される手当などを受けられないことがあります。会社規定の社宅に同居することが認められないなどの問題も生じてきます。

 

家族手当が支給されるのは、多くの会社で「配偶者」とされており、この配偶者とは、法律上婚姻関係にある人と認識されることが多いです。この場合、同性カップルは当てはまらず、支給対象になりません。これは、事実婚にあたる人や、男女に限らずお付き合いをしている状態の人(未婚状態の人)なども合わせて支給対象にならず、同性カップルだけが特別な不平等を取り扱っているわけではないという見方ができるためです。ただし、明らかに異性カップルとの取り扱いが異なる場面が生じるような会社では、疑問が残るところでしょう。

 

一方会社によっては、パートナーシップ証明書や公正証書などの提出によって、同性カップルにも家族手当を適用することもあります。これは会社の規定によりますので、それぞれ勤めている会社で確認してみてください。

 

相続が難しい

 

財産の相続の問題もあります。法律上結婚していれば、夫や妻にあたるパートナーが亡くなったときに、全くなにも相続できないということはありません。しかし、パートナーシップ制度を利用していたとしても、遺言がなければ、まったく相続できないことになります。

 

もちろん、遺言さえ用意しておけば良いのでは?と考えることもできますが、突然亡くなってしまうようなこともないとは言えませんし、遺言がなければどれだけ長く一緒に生活していたとしても、家を追い出される可能性もあります。

現状でのこの対処法は、やはりお互いに必ず遺言書を用意しておくことです。いずれ、と言わず今日にでも明日にでも準備する必要があるということです。もちろん、万が一のときのことは考えたくないものですし、法律婚との違いに辛い思いもあるかもしれませんが、大切に思う相手のことを考えて、遺言を残しておくことは重要でしょう。

 

同じ国で暮らす資格を得られない

 

男性女性の結婚であれば、たとえどちらか一方が外国人であっても、日本人の結婚相手として日本にいることができます。しかし、同性同士の場合は、日本において結婚ができないので、日本人の結婚相手として認めてもらうことができません。つまり、日本にいる資格がもらえないということです。

 

もし外国人との同性パートナーで、日本に滞在したいと考えたとき、方法としては就労ビザなど仕事を理由に滞在の許可をもらうという方法になります。ただ、これはあくまで仕事ありきということになりますので、退職したり、なにかの都合で仕事がなくなってしまうと、日本にいられなくなります。現在の日本においては、日本人と、日本以外の国の同性カップルだった場合、一緒に暮らす資格を得ることが難しいということです。

 

病院で家族の扱いを受けることができない

 

健康に生活して、大きな怪我や病気が起きないのが理想ですが、長く一緒にいると大変な局面も一緒に乗り越えていかなければならないことも多いはずです。

 

病院では、結婚していると家族として相手の病室を訪れたり、医者から説明を受けて、万が一のときに家族として同意書にサインなどをすることができます。しかし、現在の日本で同性カップルが結婚できない以上は、これを断られる可能性があるということです。

 

そもそも、同性パートナーの場合、こうした対応をしてはいけないという法律はありません。そのため病院によっては家族として同じように病室に行ったり、医者から説明を受けたりできる可能性もあります。ただ、絶対にそうだとは限らないということです。偶然パートナーが運ばれた病院から拒否された場合、命に関わるような局面でもそばにいられなかったり、医者から説明を受けられなかったりします。

 

【まとめ】同性カップルが結婚できなくて困ること

 

ここでお話したとおり、日本では同性カップルの結婚は認められていません。パートナーシップ制度を利用することもできますが、これには法的な効力がないために、法律婚と同等とは言えないのが現状です。

 

もちろん、パートナーシップ制度を利用することで可能になることや、受けられる手当が増えるのも事実ですが、これらは会社や自治体などによって異なり、婚姻関係にある人と同じようなサポートが国や自治体、会社から受けられるとは限りません。

 

同性パートナーと、家族としてこれから長く生活しようと考えたとき、お金の問題や健康、あるいは病気の問題などは避けられないことです。一緒に話し合ったり、分け合ったりして少しでも良い方法に進んでいくべきときに、法的な効力がないために他人として認識されてしまうのは辛いことです。

 

とはいえ現状を知っておくことも、とても大切でしょう。今できる範囲でパートナーとしっかりと話し合って、どのように生活を進めていくのか、知識を得てしっかりと考えられると良いですね。