LGBTQという言葉は広く耳にしますが、セクシュアリティについて深く理解している人は少ないかもしれません。セクシュアリティにはさまざまな種類があり、それを単純にLGBTQという言葉だけでは表現しきれない側面があります。

性的指向や性自認、恋愛的・性的に人に惹かれないことなどがあり、個人によって異なる性のあり方、つまりセクシュアリティは多岐に渡るということです。この記事では、LGBTQとは何かという基本的な情報を押さえつつ、さまざまなセクシュアリティの種類を一覧で紹介します。

初めに
IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBT、LGBTQ」について解説するため、表記が混在しております。

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LGBTQとは

LGBTQとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Queer(クィア)/Questioning(クエスチョニング)の頭文字をとった言葉です。

Qのクィアは、LGBTを含む多様なセクシュアリティを包括する言葉として使われています。かつては「風変わりな」「変態」といった意味を持ち、男性同性愛者を中心とした性的マイノリティに対する蔑称でした。

しかし、20世紀終盤以降、当事者たちが「私たちはクィアだけどそれがどうした!」と逆手にとって声を上げた結果、ポジティブなニュアンスで使用されるようになりました。

LGBTQIA

LGBTに加えて「Q」「I」「A」を含む言葉もあります。LGBTにIntersex(インターセックス)、Asexual(アセクシャル)を合わせた言葉を指します。

インターセックスとは、染色体、内性器、外性器、ホルモンの状態が、典型的な「男性/女性」と異なる状態のことをいいます。そしてアセクシャルは、他者に対して性的に惹かれないセクシュアリティのことです。

LGBTQQIAAPPO2S

LGBTQQIAAPPO2Sは、それぞれのセクシュアリティの頭文字から構成されています。後ほど、以下の用語をピックアップして解説します。

  • L:レズビアン (Lesbian)

  • G::ゲイ (Gay)

  • B:バイセクシュアル (Bisexual)

  • T:トランスジェンダー (Transgender)

  • Q:クエスチョニング (Questioning)

  • Q:クィア (Queer)

  • I:インターセックス (Intersex)

  • A:アセクシャル (Asexual)

  • A:アロマンティック (Aromantic)

  • P:パンセクシュアル (Pansexual)

  • P:ポリセクシュアル (Polysexual)

  • O:オムニセクシュアル (Omnisexual)

  • 2S:2スピリット (Two-Spirit)

関連記事「lgbtqqiaappo2sとは?各セクシュアリティなど分かりやすく解説します!」

セクシュアリティを決める要素

かつてはセクシュアリティを決める要素は4つだといわれていましたが、ここでは「恋愛的指向」を加えた5つを紹介します。

身体的性:身体の特徴や染色体で割り振られた性別
性自認:自身が生きたい性別
性的指向:どのような相手に性的に惹かれるかを表すセクシュアリティ
恋愛的指向:どのような相手に恋愛的に惹かれるかを表すセクシュアリティ
社会的な性:社会的に振る舞いたい性

これまでは性的指向に恋愛的指向が含まれて表現されていましたが、必ずしも性的指向と恋愛的指向がセットとなるわけではありません。中には、他者に対して恋愛的には惹かれないという当事者もいます。そのため、ここでは恋愛的指向は単体のセクシュアリティとして紹介しました。

関連記事「自分のセクシュアリティが分からない!そんな方に5つの考え方を教えます。」

性的指向を表す言葉

先ほど性的指向は「どのような相手に性的に惹かれるか」を表すセクシュアリティだと紹介しました。ですが、一般的には「どのような相手に惹かれるか」というニュアンスで使われることが大半であり、その中には恋愛的な感情も含まれる可能性があります。

レズビアン

レズビアン(女性同性愛者)とは、同性の女性に惹かれる女性のことです。詳しくは「レズビアン(女性同性愛者)とは?意味やバイとの違いを当事者が解説」を参考にしてください。

ゲイ

ゲイ(男性同性愛者)とは、同性の男性に惹かれる男性のことです。海外では、ゲイ=同性愛者として使われることもあり、レズビアンを含むこともあります。詳しくは「【当事者解説】ゲイとは?ホモやオカマ、オネエとの違いや誤解など徹底解説!」を参考にしてください。

バイセクシュアル

バイセクシュアル(両性愛者)とは、男性にも女性にも惹かれるセクシュアリティのことです。「両性に惹かれる」と定義されることが多いですが、「自認する性とそれ以外の性に惹かれる」「2つの性に惹かれる」など、人によって定義が異なることもあります。

セクシュアルマイノリティに向けたバーは「ビアンバー」「ゲイバー」のように表現されることが多く、LやGと比べるとバイセクシュアルの存在が不可視化されやすいという問題もあります。「『バイセクシュアル』とは?意味と経験談を語ります」では、そういった悩みについて紹介しているので、チェックしてみてください。

パンセクシュアル

パンセクシュアル(全性愛者)とは、相手の性別やセクシュアリティ問わず、人として惹かれるセクシュアリティのことです。「パンセクシュアルとバイセクシュアルは同じ説とは本当なのか?当事者が違いについて解説」で紹介しているように、パンセクシュアルはバイセクシュアルと混合されやすいですが、全く別の意味を持ちます。

スコリオセクシュアル

スコリオセクシュアルとは、シスジェンダーの男性、女性以外にしか惹かれないセクシュアリティのことです。

アブロセクシュアル

アブロセクシュアルとは、性的指向が流動的に変化するセクシュアリティです。惹かれる対象となる性別が変化することがあります。LGBTお部屋探し

性自認を表す言葉 

性自認は、自身の性をどのように認識しているかという要素です。必ずしも戸籍上の性(出生時に割り当てられた性別をもとに戸籍等に記載された性別)と性自認は一致しません。

トランスジェンダー

トランスジェンダーは、身体的性と性自認が異なる人と説明されることがあります。しかし、『トランスジェンダー入門』『トランスジェンダーと性別変更』の著者である高井ゆと里さんが自身のブログで「心の性」と「身体の性」の組み合わせがトランスを語るための役に立たないことを言及していました。

シーンによっては望まない性で扱われてしまう人、シスジェンダーの方と区別がつかない人、男女だけに当てはまらない人など、トランスジェンダーの中にも多様性があるのです。

FtM

FtM(Female to Male)とは、トランスジェンダー男性のことで、生まれた時に法的に登録された性別とは異なるものの、現在は男性という性別を生きている人のことをいいます。

MtF

MtF(Male to Female)とは、トランスジェンダー女性のことで、生まれた時に法的に登録された性別とは異なるものの、現在は女性という性別を生きている人のことをいいます。

Xジェンダー

Xジェンダーとは、男性や女性にははっきり当てはまらない性自認を持つ人々を指します。Xジェンダーには、中性(男性と女性の中間地点に存在する)、両性(男性でも女性でもある)、無性(男性でも女性でもない)、不定性(自己の性自認が流動的)の4つの種類が一般的に分類されています。

関連記事「トランスジェンダーとは? 性別違和や性同一性障害など、当事者が解説」

性的・恋愛的に惹かれない性のあり方を表す言葉

性的・恋愛的に他人に惹かれる度合いを表す時に、Aro/Aceという言葉が用いられることがあります。Aro/Aceとは「アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム」のことで、他人に対して性的あるいは(かつ)恋愛的に惹かれない性のあり方を指します。

アロマンティック

アロマンティックとは、恋愛的な関心や欲求を他者に向けない特徴があります。アロマンティックは性的感情を抱くこともあり、必ずしも性的な感情と恋愛的感情はセットに捉えるべきではなく、さまざまなあり方があります。

アセクシュアル

アセクシュアルとは、他者に対して性的欲求を抱くことが少ない、またはまったく抱くことがないセクシュアリティのことです。アセクシュアルは恋愛感情を抱くことがあっても、他者に対して性的に惹かれることは(ほとんど)ありません。

他者に対する恋愛感情はあるが性的欲求は抱かない「ロマンティック・アセクシュアル」や、恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」など、さまざまな言葉で表現することができますが、日本ではアセクシュアルという言葉は「アロマンティック・アセクシュアル」の意味合いで使われることが多いです。

ノンセクシュアル

ノンセクシュアルは、他者に対して性的欲求を全く抱かないセクシュアリティを指します。ノンセクシュアルはアセクシュアルと混在されがちですが、両者は異なる意味合いを持つ言葉です。「元アセクシュアルが教えるアセクシュアルとノンセクシュアルの違い」を参考にしてみてください。

まとめ

世の中には本記事で紹介したセクシュアリティ以外のあり方も存在します。性のあり方を表す概念や言葉が少ないこともあり、言葉に当てはまらないことで不安に感じてしまう人もいるかもしれません。

 

しかし、セクシュアリティはグラデーションであり、どのような状態でもそれは立派な1つのアイデンティティであることを覚えていただけたら嬉しいです。