セクシュアリティを表すひとつとして「クエスチョニング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「クエスチョニング(Questioning)」とは「性自認や性的指向が定まっていない、または意図的に定めていないセクシュアリティ」のことを言います。”クエスチョン”という言葉の意味からも想像ができるかもしれません。
セクシュアルマイノリティの総称を表す言葉として「LGBT」がありますが、他にもLGBTs、LGBTQ+、LGBTQIAPKなどと示されることがあります。このときの「Q」がこの「クエスチョニング」(クィア=Queerを示すこともあります)に当たります。
ただ、一言で「クエスチョニング」といっても、その捉え方や感じ方はさ様々。「Q」に込められたクィアとも少し意味合いが違っています。
本記事では「クエスチョニング」というセクシュアリティについて詳しく解説していきます。
「クエスチョニング」を語る前に知っておきたい「性自認」や「性表現」
まず知っておきたいのが、セクシュアリティを語る上で欠かせない要素についてです。大きく分けて「身体的性」、「性自認」、「性的指向」、「性表現(表現したい性)」の4つがあります。
クエスチョニングについてより理解を深められるよう、まずはセクシュアリティを形成する4つの要素から解説していきます。
身体的性
その人自身のからだが持つ性のことであり、身体的な要素から判断できる性のことを言います。
染色体や性ホルモンなどで判断することもあります。生物学的性といった言い方をすることもあります。
性自認
自分自身が認識する、自分の性のことを言います。自分のことを女性と認識している、男性と認識している、あるいはそのどちらかに明確に分けることができないという認識などもこの性自認にあたります。
「クエスチョニング」は性自認と大きく関わるセクシュアリティで、自分自身の性の認識が定まっていなかったり、あえて定めていない人のことを指したりします。
性的指向
どのような性を恋愛や性愛の対象とするかを示すのが性的指向です。自分の好きという感情が、どの性に向いているのかを示します。
LGBTsという言葉で示される、同性を好きになるレズビアン(L)やゲイ(G)、両方を好きになるバイセクシュアル(B)などはこの性的指向のセクシュアリティに当てはまるということです。
他にも、異性を好きになる言葉にヘテロセクシュアル、恋愛感情や性的欲求を抱かないアセクシュアルなどのセクシュアリティもあります。
性表現(表現したい性)
自分が表現したい、なりたい性や実際に表現している性のことを性表現といいます。
ファッションなどをはじめとした容姿に関することや、言葉遣い、しぐさなどに関わっています。
「クエスチョニング」とは、決めないセクシュアリティ
「クエスチョニング」とは、性自認と性的指向に関係するセクシュアリティで「自分の性自認や性的指向が定まっていない、またはあえて定めていないセクシュアリティ」のことです。
性自認、性的指向の両方を指す「SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)」という言葉があります。
SOGIを使うと、「SOGIが定まっていない状態」と言い換えることもできます。
性自認のみ、性的指向のみそれぞれ「クエスチョニング」としている人や、その両方を含めて、自身を「クエスチョニング」と認識している人などがいます。
こうしたセクシュアリティを持つ経緯は人それぞれですが、自分の性自認や性的指向を定めないほうが生きやすいと感じている人や、まだ決めかねている最中にいる人、数あるセクシュアリティに自分が当てはまらないと感じている人など様々なクエスチョニングがいます。
「クエスチョニング」に似ているセクシュアリティと違い
クィア(Queer)
LGBTQと示すときの「Q」には、クエスチョニングの意味のほかに、クィアを表すこともあります。
クィアとは、1990年代以降、性的少数者全体を包括し肯定的に使用されている言葉です。つまり、すべてのセクシュアルマイノリティを含んでいるということになります。明確に説明するのが難しいクィアですが、「クエスチョニング」の「性自認や性的指向を定めない、定めていない」とはまた別の意味を持ちます。
クィアという言葉自体はもともと、”風変わりな”という意味を持ち、かつては同性愛者への侮辱として使われていた経緯もありました。しかし、今では自己肯定的な意味を持つ言葉として使用されることがほとんどです。
チェック → クィアとは?言葉が浸透するなかでクィアベイディングと呼ばれる問題も・・・
ノンバイナリー
ノンバイナリーとは、身体的性に関係なく、自分自身の性自認や性表現を女性、男性といった枠に当てはめようとしないセクシュアリティのことを言います。
「クエスチョニング」との違いとして、「クエスチョニング」は性自認と性的指向を指すセクシュアリティであるのに対し、ノンバイナリーは性自認や性表現について指すセクシュアリティであることが挙げられます。
男性でも女性でもないと感じる人や、男女の区切りではなく、グラデーションの上に自分の性があると感じている人などが当てはまります。
チェック → 「ノンバイナリー」とは?【枠に当てはめない】ことも1つのセクシュアリティ
Xジェンダー
Xジェンダーは、身体的性に関係なく、男性にも女性にも当てはまらないセクシュアリティを指します。また、Xジェンダーは日本で独自に使いはじめた言葉です。
男性と女性の間だと認識する中性や、男性でも女性でもあるという両性、性自認が流動する不定性、男性女性のどちらでもないとする無性の4つのタイプがあります。
Xジェンダーは性自認について表す言葉であり、性表現においても男性女性の枠組みに当てはめないとするノンバイナリーとは少し違いがあります。
チェック → LGBTsの中のXジェンダーってどんな性別?
ジェンダー・フルイド(ジェンダー・フリュイド)
ジェンダー・フルイド(gender fluid)は、「自分は男性である」というように性自認が固定されておらず、流動的である人のことを指す用語です。
自分が認識する自分の性別が、時や場面、心理状況に応じて男性と女性、もしくはその他の性別をいったりきたりするという状態を指します。
自分のことをジェンダー・フルイドだと認識している人の中には、ジェンダー・フルイドであると同時にトランスジェンダーでもある、ノンバイナリーでもあると認識する人がかなりいるそうです。
クエスチョニングとの違いは、「性自認が揺れ動くために定まっていない」ことです。
クエスチョニングに関係する動画
「僕は、自分の性別がわかりません」クエスチョニングとは?
こちらの動画は自分の性別が分からない瑠輝さんへのインタビュー動画となっています。
クエスチョニングに対してとても理解を深められるような内容となっていますので、ぜひご覧ください。
動画リンク → 「僕は、自分の性別がわかりません」クエスチョニングとは?
クエスチョニングの悩みは?どんな時に辛い?
クエスチョニングの人はどんな悩みを抱えるのでしょうか。
上記の瑠輝さんへのインタビューでは、「自分の性別が分からない」と表現されていました。
他にも、
「LGBTどれもしっくり当てはまらなくて、もやもやしていた」
「自分が好きな人が男なのか女なのか分からない」
「異性になりたい気持ちもあるけれども、生まれ持った今の性別が嫌というわけでもない」
「異性装をするのは好きだけれども、性自認まで異性かと言われるとわからない」
「これまでは異性としかつきあった経験がないけれども、年齢を重ねるにつれて同性パートナーも欲しいと感じるようになってきた」
こうした悩みや辛さをかかえている人がいらっしゃいます。
また、LGBTという言葉を耳にしたことがある人が増えてた一方、クエスチョニングという言葉はそこまで浸透していませんし自分から発信しないと周囲の人から気づかれない場合もあるようです。
「クエスチョニングであることを周囲の人に理解してもらえない」「誰も自分の悩みを理解してくれない」と悩む人もいらっしゃいます。
セクシュアリティ診断
「自分はクエスチョニングかもしれない」「クエスチョニングか診断したい」と悩んでいる人もいらっしゃるかと思います。
そういった人は、「セクシュアリティ診断」を活用してみてはいかがでしょうか。
ご自分のセクシュアリティを理解する上で参考になると思います。
セクシュアリティ診断に関する記事は以下の記事をご覧ください。
・【一目瞭然!】自分のセクシュアリティが分かる性自認チェックシートの解説まとめ
【まとめ】クエスチョニングとは「決めないことは自然なこと」というセクシュアリティ
ここまで、「クエスチョニング」というセクシュアリティをメインに、セクシュアリティの4つの要素や、「クエスチョニング」に似た意味を持つセクシュアリティを紹介してきました。
改めて「クエスチョニング」とは、自分の性自認や性的指向について、現状として定まっていない人や流動的な経過の途中にある人、それらを意図的に定めていないセクシュアリティのことです。
「クエスチョニング」に似た、近い意味を持つセクシュアリティもあり、知れば知るほどに迷いが生じてしまうこともあるかもしれませんが、「クエスチョニング」は「わからない」、「決めない」といった自分の認識も自然だと捉えるセクシュアリティです。
LGBTと示す言葉のなかには、さまざまなセクシュアリティがあります。その中のほんのいくつかのご紹介でしたが、少しでも知っていただけたら幸いです。