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本記事では、現代における同性愛と社会について詳しく解説していきます。
初めに |
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IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBT」について解説するため、表記が混在しております。 |
同性愛と差別や偏見の例
男性同性愛者は、全員がオネエである
テレビなどのメディアに同性愛者の男性が出演したとき、多くの場合が異性装をしたりオネエ言葉を使ったりします。その影響か、同性愛者の男性は皆、オネエであると思っている方が多くいらっしゃいます。実際、筆者が母親にカミングアウトをしたときも「オネエなの?」という言葉が第一に返ってきて衝撃を受けました。
同性愛者というのは、男性として男性に惹かれる、女性として女性に惹かれるものであり、女性として男性が好き、男性として女性が好きなわけではありません。あくまで男性、女性として、同性に惹かれているのであって、男性から女性に、女性から男性に性転換したいという願望はありません。
異性装(女装や男装)をする同性愛者がごく一部であり、オネエ言葉などを使う同性愛者も同性愛者の中のごく一部です。多くの同性愛者は、同性に惹かれること以外は、異性愛者と同じように社会生活を過ごしています。
同性愛者と異性の関係性に関する偏見
レズビアンに対して、男性恐怖症であるという誤解が一部であるとされています。しかし、これは一般的な誤解であり、すべてのレズビアンが男性を恐れているわけではありません。
また、『ゲイ 新しき隣人たち』という本によると、男性同性愛者の約半数は過去に女性と性的な関わりを持っていたことがあり、全てのゲイの男性が女性に対して一切の性的興味を持たないわけではないとされています。実際に全体の4分の1のゲイ男性のみが女性に対して性的感情を一度も持ったことがないと記されています。ただし、この本が1982年に出版されたことを踏まえると、バイセクシュアルとゲイの区別が今ほど明確ではなかった可能性があります。
同性愛者のカップルには男役(タチ)と女役(ウケ)がいる
イェール大学のQ Magazineによると、ゲイの男性が「タチ(Top)」と「ネコ(Bottom)」に分かれるという見方や、同性カップルの一方が女性的、もう一方が男性的な役割を持つという考えは、実際のゲイの生活や関係性を正確に示していないとしています。
実際、ゲイのカップルには、男役(タチ)と女役(ウケ)に分かれることもありますが、そうでないカップルも非常に多くいます。また、同性愛者は男性として、女性として、同性に惹かれているので、当事者の中では、男役や女役といった概念は基本的にありません。中には、タチやウケといったポジションを持たない同性愛者もそれなりにいます。
同性愛者と健康福祉
同性愛は病気ではない
かつて、「DSM-I」(アメリカ精神医学会が発行する精神障害の診断と統計マニュアル)では、同性愛が「病的性欲を伴う精神病質人格」として規定されていました。しかし、社会的な見解と理解が進む中、1973年12月にアメリカ精神医学会の理事会は重要な決議を行いました。この決議により、同性愛自体が精神障害として扱われることはなくなりました。
この変化は、1974年発行の『DSM-II 第7刷』から明確に反映され、「同性愛」という診断名が削除されました。その代わりに、「性的指向障害」という新たな診断名が導入されました。この診断名の変更は、同性愛が病理的な状態ではないという科学的および社会的な合意に基づいたもので、同性愛者へのスティグマと差別を減少させる一歩となりました。
1980年に発行された「DSM-III」には、「自我異和的同性愛」という新しい診断名が導入されました。この診断は、自分の同性愛的な性的指向に対して深く悩んでおり、その指向を変えたいと願っている人々に対して用いられました。この場合、同性愛者が自らの性的指向を肯定していれば、それは病気とはみなされませんでした。
しかしながら、「自我異和的同性愛」という診断名は、同性愛自体が何らかの障害であるという誤解を招き、また個人が自己の性的指向に対して抱える苦悩が、個人の問題であるとみなされるべきではなく、社会的な偏見に起因するものであるという考え方が広まりました。これにより、1987年に発行されたDSM-IIIの改訂版「DSM-III-R」では、「自我異和的同性愛」診断は性障害から除外されました。
そして、1990年に発行された「DSM-IV」では、同性愛関連の診断は精神疾患リストから完全に削除され、同性愛が精神障害とみなされる時代は終わりを告げました。
1994年には日本の厚生省が世界保健機関(WHO)の見解を踏襲し、同性愛は疾患ではないと公式に認めました。続いて1995年には、日本精神神経学会もWHOの見解を尊重し、「同性愛は、いかなる意味でも治療の対象とはならない」と明言しました。この動きは、文部省によってさらに強化され、1994年には学校の指導書から「性非行」の項目に記載されていた同性愛が削除されました。
これにより、同性愛そのものが疾患でないとの認識が日本社会にも広がりました。しかしながら、同性愛者が社会的な差別や規範との不一致によって精神的なストレスを受けることがあり、その結果として鬱病などの精神障害を発症するケースも存在します。
男性同性愛者とHIVの関係
西側諸国や日本、インド、台湾を含む先進国では、男性同性愛者(MSM: Men who have Sex with Men)がHIVに感染する傾向が一般人口に比べて高いことが知られています。特にアメリカ合衆国では、一般人口と比較して60倍の感染率が報告されており、アメリカ国内で現在HIV/AIDSに感染している青年および成人男性の約62%が男性との性的接触によって感染したとされています。
ワシントンD.C.では、HIV感染経路の調査結果によると、同性愛者間の性的接触が異性愛者間の接触と比較しても主要な感染経路であることが示されており、感染経路の比率はおおよそ4:3であることが確認されています。これは、同性間でのHIV感染が依然として主要な問題である一方で、日本のように極めて大きな差があるわけではないことを示唆しています。
一方、タイでは現在のHIV感染経路の約8割が異性間の性交によるものとされており、これはMSMの比率が低いことを示しています。
2008年の日本におけるHIVの新規感染者の内訳を見ると、男性が全体の94%を占めており、その中で同性間の性的接触による感染が70%を占めています。しかし、エイズ患者全体に目を向けると、異性愛者の患者数と同性愛者の患者数に大きな差は見られません。
男性同性愛者と献血制限
献血における同性愛者、特に男性同性愛者の扱いは、多くの国で議論の対象となっています。日本を含むいくつかの国では、同性間の性的接触を行った人々の献血を制限しています。これは、HIV感染のリスクが高いとされる行為に基づいた措置ですが、このような政策が同性愛者に対する差別であるとの批判も存在します。
批判の主な点は、献血の適格性が感染リスクのある性行為の有無ではなく、単に同性間の性交渉の有無にのみ基づいていることにあります。異性間の性的接触でもHIVリスクは存在し、実際には性行為の具体的な方法や状況が感染リスクに大きく影響を与えるため、同性間での性行為だけが特別に制限の対象にされるのは不公平であるとされています。
このような献血政策は、科学的根拠に基づく公平な基準によって見直されるべきであるとの意見も多く、性的行為のリスクを正確に評価し、感染症の伝播を防ぐための適切なガイドラインを設定することが求められています。
同性愛と権利
同性結婚
同性結婚の合法化は、同性愛者の人権における最も顕著な進歩の1つです。合法化された国々では、同性のカップルは異性のカップルと同様の法的認知と保護を享受します。これには税制の面での利点、社会保障や退職給付の権利、そして緊急時における医療決定の権利が含まれます。しかし、世界の多くの地域では、同性結婚は依然として禁止されており、これが同性カップルに多くの法的不利益をもたらしています。
家族形成の権利
家族を形成する権利もまた、同性愛者にとって重要な問題です。多くの場合、同性カップルの子供を持つ権利は、養子縁組や代理母を通じて実現されますが、これらの方法が法的に制限されている地域も少なくありません。これにより、同性カップルは子供を持つことのできる機会が限られることになります。また、一部の地域では、同性カップルの一方がもう一方の生物学的子供の法的な親権を得ることが困難です。
暴力と迫害
同性愛者に対する暴力と迫害は、多くの地域で深刻な問題となっています。一部の国では同性愛行為が犯罪とされ、厳しい罰則が設けられている場合があります。この処罰には、死刑や長期の懲役が含まれることもあります。また、これらの法律は、同性愛者に対する社会的な烙印を強化し、迫害や暴力をさらに助長することがあります。
特にイスラーム圏を中心とした保守的な国々や地域では、法的な保護が不十分であり、同性愛者は身体的、精神的な暴力にさらされやすい状況にあります。
同性愛と教育
日本
日本の教育におけるLGBTの取り組みは少しずつ進展しています。2017年度からは高校の家庭基礎および家庭総合の教科書に同性愛など、LGBTに関する内容が取り入れられ、2020年度からは小学校の保健体育の教科書にも同性愛などLGBTの教育が含まれるようになりました。これにより、より幅広い年齢層の学生に対して性の多様性に関する教育が行われています。
しかし、教員側の同性愛などのLGBTに関する知識不足が課題となっており、研修やワークショップが実施されています。
スウェーデン
スウェーデンでは、就学前の幼児教育から性の多様性についての教育が行われており、1歳から1歳半頃に通う「フォースコーラ」という就学前学校で、子供たちは性別に関係なく衣装を選んでごっこ遊びを楽しむなど、自由な表現が奨励されています。これにより、幼い頃から性の多様性への理解と受容が育まれるように教育されています。
また、読書コーナーには性的少数者や人間の性器に関する絵本が置かれ、性のあり方の多様性を示す物語が提供されています。その中には、子供を欲しがる雄キリンのカップルを主人公にした本もあり、日常的な環境で子どもたちが自然に多様な性の概念に触れる機会が豊富にあります。
フィンランド
フィンランドもジェンダー平等の先進国として知られ、2002年のトランスジェンダー法の制定や2017年の同性婚の合法化などが行われています。フィンランドでは13歳から15歳の間に生物学や健康教育の授業で性教育が行われ、広告やメディアを通じての性表現にも注目が集まっています。
アメリカ
アメリカでは週ごとに方針が違っています。カリフォルニア州では中学校までの教科書に同性愛など、LGBTに関する内容を含めることが教育委員会によって認められました。しかし、ルイジアナ州、ミシシッピ州、オクラホマ州、テキサス州では性教育を異性間の関係に限定する法律が制定されています。
さらに、2022年にはフロリダ州で小学校での性自認や性的指向に関する話題を禁止する法律が成立しました。
フランス
フランスでは、戦時下に同性愛者が厳しい差別に直面していましたが、現在では同性パートナーシップの制度が確立されています。この社会的変化を支えたのが同性愛などのLGBT教育であり、特に科学の授業内の「生物領域」科目でLGBTについての教育が行われています。
生命倫理、歴史、社会制度など様々な角度からのアプローチにより、LGBTフレンドリーな風潮が形成されています。
オランダ
オランダは2001年に世界で初めて同性婚を合法化し、2012年からは学校教育で性の多様性を扱うことが義務化されています。初等教育では「社会・環境学習」の科目において「セクシュアリティと性的多様性」をテーマに、セクシュアリティや文化の違いを尊重することの重要性が教えられています。
さらに、テレビ番組を通じても同性愛や両性愛などについて学ぶことができ、番組内でLGBTの問題についてクイズ形式での学習が行われています。
まとめ
本記事では、同性愛と現代社会について解説しました。歴史的に見れば、同性愛は精神障害から解放され、人々の認識も変わりつつあります。日本の教育面でも同性愛に関する教育が取り入れられ、これから若い世代を中心に少しずつ、同性愛者にも優しい社会が広がっていくと思われます。
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