「アロマンティック」「アセクシュアル」という言葉を聞いたことがありますか?最近では、本が出版されたり、カミングアウトする芸能人も増えてきていますが、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーと比べると、アロマンティックとアセクシュアルの浸透度は低い現状です。

また「当事者かも?」と疑問に思う人のなかでは、診断テストを試してみたり、記事を探してみたりと情報収集するものの、なかなかしっくりこないこともあるはずです。そこで本記事では、アロマンティックとアセクシュアルそれぞれの意味や特徴、違いについて詳しく紹介します。

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アロマンティック、アセクシュアルとは

「アロマンティック」「アセクシュアル」は恋愛感情がないセクシュアリティと捉えられることが多いですが、一概にもそうであるとは限りません。

2つの違いを詳しくみていきましょう。

アロマンティック

アロマンティックフラッグ

アロマンティック(Aromantic)とは、英語の「romantic」に打ち消しの意味をもつ「A」を加えたもので、他者に恋愛感情を(ほとんど)抱かないセクシュアリティのことを指します。あくまで恋愛感情のみを指しているので、なかには恋愛感情がなくても性的欲求を抱く人、恋愛感情も性的欲求も抱かない人など、さまざまです。

アロマンティックを象徴するフラッグは、恋愛を表す赤色の反対色「緑」「黄緑」、プラトニックな「白」、セクシュアリティの多様性を表す「灰色」「黒」の5色から構成されています。

また、アロマンティック当事者にみられる傾向は以下の通りです。

・自分を満足させるために、恋愛的な関係に発展する必要性を感じない
・新しい出会いがあったとき、恋愛対象としてではなく友達として見る
・恋愛の話に関連づけることが難しい

アセクシュアル

アセクシャル(無性愛者)フラッグ

アセクシャル(無性愛者)フラッグ

アセクシュアル(Asexual)とは、英語の「sexual」に打ち消しの意味をもつ「A」を加えたもので、他者に性的な感情を(ほとんど)抱かないセクシュアリティのことをいいます。日本語では「無性愛者」と直訳されます。

アロマンティックは恋愛感情を指す一方、アセクシュアルは性的な感情のみを指し、性的感情がなくても恋する人、恋愛感情と性的感情ともに抱く人など、人によってさまざまです。

アセクシュアルを象徴するフラッグは、アセクシュアル全体を表す「黒」、デミセクシュアル※の「灰色」、セクシュアリティを意味する「白」、コミュニティを意味する「紫」の4色から構成されています。

また、アセクシュアル当事者にみられる傾向は以下の通りです。

・性的な行為をしても満たされることがない
・他者に対して、性的な魅力よりも中身に惹かれる
・性的な行為自体が苦手に感じる
・人に魅力を感じることは理解できるが、性的な感情を抱く必要性は感じない

※他者に対してほとんど性的な感情を抱かないセクシュアリティ。強い感情をもった相手にのみ性的な感情を抱く場合がある。

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アロマンティックとアセクシュアルの違い

上記では、アロマンティック、アセクシュアルそれぞれの意味を紹介しました。

よく2つのセクシュアリティが混在されることがありますが、大きな違いは「他者に性的欲求を抱くか抱かないか」にあります。

例えば、恋愛感情を(ほとんど)抱かないアロマンティックは、性的欲求をもち得る一方、性的欲求を(ほとんど)抱かないアセクシュアルは、恋愛感情をもつ場合もあります。アセクシュアルをアロマンティックの一部として認識する当事者もいるため、一概にもまったく恋愛感情や性的欲求がないとはいえません。

また、性的欲求も同様に言葉の定義は異なります。ハグやキスが挨拶と考える人、ハグをしたいと思うことが性的欲求と認識している人など、個人のバックグラウンドや価値観が定義に影響することもあります。もしかしたら「これは性的な行為をしているのにアセクシュアルなの?」と相手に疑問をもつこともあるかもしれませんが、大事なことは相手を尊重することです。性のあり方はさまざまであるように、その人にとってのセクシュアリティの捉え方も多様なのです。

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アロマンティック、アセクシュアルの中にも多様性がある

ここまではアロマンティック、アセクシュアルを紹介しました。それ以外にも、「ノンセクシュアル」「デミセクシャル」「デミロマンティック」「リスセクシュアル」「リスロマンティック」など、さまざまなセクシュアリティがあります。

当事者コミュニティでは、アロマンティック、アセクシュアルの一部であるセクシュアリティを総称して「アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム」または「Aro/Ace(アロ/エース)」という言葉が用いられることもあります。

以下、Aro/Aceを紹介します。

ノンセクシュアル

ノンセクシュアルは非性愛者とも呼ばれ、他者に対して性的欲求をもたないセクシュアリティのことです。Xジェンダーと同じように、日本独自の名前になります。

デミセクシュアル

デミセクシュアル(Demisexual)とは、日本語で「半性愛」と直訳されます。他者に対して基本的には性的欲求を抱くことがないが、特別な感情や信頼関係がある場合にのみ、稀に性的に惹かれることのあるセクシュアリティのことをいいます。

デミロマンティック

デミロマンティック(Demiromantic)とは、性的欲求を示すデミセクシュアルと同様、特別な感情や信頼関係がある場合にのみ、稀に恋愛感情を抱くセクシュアリティのことをいいます。

リスセクシュアル

リスセクシュアル(Lithsexual)とは、性的欲求をもつが、相手からその感情をもたれることを望まない。もしくは、性的な関係へ発展することにこだわらないセクシュアリティのことをいいます。

リスロマンティック

リスロマンティック(Lithromantic)とは、恋愛感情をもつが、相手からその感情をもたれることを望まない。もしくは、恋愛関係へ発展することにこだわらないセクシュアリティのことをいいます。

アロマアセク

アロマアセクとは、アロマンティック・アセクシュアルの略です。恋愛感情を(ほとんど)抱かない「アロマンティック」と性的欲求を(ほとんど)抱かない「アセクシュアル」、2つのセクシュアリティをもち合わせるセクシュアリティのことをいいます。

ロマアセク

ロマアセクとは、ロマンティック・アセクシュアルの略です。他者に恋愛感情を抱き、性的に惹かれないセクシュアリティのことをいいます。

グレイセクシュアル

グレイセクシュアル(Graysexua)とは、アセクシュアルとセクシュアルの中間に位置するセクシュアリティのことをいいます。性的欲求をまったく抱かないわけではないが、稀にしか抱いたことがない、性的欲求があるのかわからないなど。

グレイロマンティック

グレイロマンティック(Grayromantic)とは、アロマンティックとロマンティックの中間に位置するセクシュアリティのことをいいます。恋愛感情をまったく抱かないわけではないが、稀にしか抱いたことがない、恋愛感情があるのか明らかではないなど、さまざまな人がいます。

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アセクシュアル、アロマンティックをカミングアウトした芸能人

ここでは、アセクシュアル、アロマンティックをカミングアウトしている芸能人を紹介します。影響力のある人が公言することで、より多くの人が知るきっかけとなります。今はまだカミングアウトしている当事者の芸能人は少ないですが、最近では言葉を聞くようになってきているので、今後増えていくことが考えられるでしょう。

なかけん

ゲイ、Xジェンダー、レズビアンなど、多種多様なセクシュアリティをもつ5人で構成された性性堂堂のメンバーの1人です。なかけんさんは、アロマンティック・アセクシュアル当事者として、まじめに楽しくセクシュアリティを語ることをモットーに、さまざまなメディアで発信しています。

東友美

町田市議会議員の東友美さんは、自身がアセクシュアルであることをカミングアウトしました。「恋愛感情というものも全くわからないですし、私自身に降りかかってくる恋愛に全く興味がありません」と述べ、恋愛感情がないことを欠落だと思っていた過去や、その考えを変える人との出会いについても言及していました。カミングアウトの全文を読みたい人は、こちらのページをご覧ください。

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アセクシュアル、アロマンティックに関する動画

アセクシュアル、アロマンティックについて知っても、なかなかすぐに理解することは難しいのではないでしょうか。記事や専門書など、さまざまな情報を入手できますが、より簡単にイメージしたい人には動画がおすすめです。そこで、アセクシュアル、アロマンティックにまつわるおすすめの動画を紹介します。

【LGBTQ+ ユース・トーク】アセクシュアルやアロマンティックについて

日本のLGBTQをサポートする団体「プライドハウス東京」では、さまざまなLGBTQにまつわる情報を発信しています。こちらの動画は、アセクシュアル、アロマンティック当事者の2人をゲストでお招きし、言葉の意味や経験をカジュアルにお話しています。

恋愛感情のないアロマンティックとはなんぞや?【オトマリカイ】

BuzzFeedの「オトマリカイ」は、LGBTQのゲストを招き、ゴロゴロと気軽に話し合う番組です。こちらの動画では、アロマンティックを自認するゲストとMCが、恋と愛の違いについて話し合う回となっています。アロマンティック当事者ならではの視点が聞けて、興味深いです。

【25万人調査】「アセクシュアルの人の話」集めてみたよ

さまざまな猥談を集めて発信している佐伯ポインティのチャンネルです。アセクシュアルがテーマのこちらの回では、さまざまな当事者の話がまとめられています。「恋愛を相談されても理解できない」「アセクシュアなのか好きな人ができないだけなのかわからない」「一回やってみたら?と言われるけど、食わず嫌いなわけではない」など、アセクシュアルならではの悩みや経験が紹介されています。

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日本でも浸透しつつある、アロマンティック・アセクシュアル

電通の調査「LGBTQ+調査2020」によると、全国20~59歳の計60,000人のうち、アセクシュアル、アロマンティックを自認している人は0.81%という結果が出ました。また、2022年にはNHKでアロマンティック、アセクシュアルの2人が同居生活をするテレビドラマ「恋せぬふたり」が放送されました。徐々に、日本でも浸透されつつあるといえるのではないでしょうか。

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アロマンティックとアセクシュアルの違いまとめ

本記事では、混合されやすいアロマンティックとアセクシュアルの違いについて紹介しました。性的欲求があるかないかが大きな違いであるものの、人によって捉え方は異なります。そのため、さまざまなあり方が存在することを覚えておくことが重要です。

アロマンティック、アセクシュアルに限らず、性的少数者といわれているLGBTQやクィアには、数え切れないほどのセクシュアリティが存在します。なかには、言葉が存在していない、概念として定着していないセクシュアリティもあります。自分とは違うアイデンティがあることを前提に過ごせることが、より多くの人が生きやすい社会につながるのではないでしょうか。

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