みなさんは「Xジェンダー」という言葉を聞いたことがありますか?
Xジェンダーとは、性自認が男性もしくは女性に属さないセクシュアリティのことをいい、「FTX」「FTM」「MTF」のような言葉が存在します。
私たちは生まれてすぐに男女いずれかの性別を言い渡され、その戸籍上の性別で社会的に認識されることが多いのではないでしょうか。たとえば、パスポートや保険証といった身分証明証の性別欄、学校の体育の授業でのクラス分け、制服やスーツなど、個人が自認する性を認識する前に判断される場合がほとんどです。
ですが、なかには男女に当てはめることに対する違和感をもつ人や、男女どちらかの性別にしっくりこない人もいます。本記事では、XジェンダーについてXジェンダー当事者が詳しく解説していきます。
Xジェンダーを知る前に
Xジェンダーについて知るまえに、まず「性自認」と「身体的性」について知っておきましょう。
性自認
性自認とは「こころの性」とも呼ばれ、自分が認識している性のことをいいます。つまり、「自分は女性だ」と思う人の性自認は女性となります。男性、女性だけでなく、Xジェンダーやジェンダーフルイドなど、さまざまな性が存在します。
身体的性
身体的性は冒頭でも書いたように、戸籍上の性と同じ意味で使われることの多い言葉です。これは、性ホルモン、外陰、内陰などのさまざまな要素によって判断され、男性もしくは女性に区分されます。
Xジェンダーとは
Xジェンダーとは、性自認が男性でも女性でもないセクシュアリティのことを言います。男女のどちらかで定めない性である、Xジェンダーは、主に5つのタイプに区分することができます。
中性
中性とは、男と女の中間に位置する性のことをいいます。
無性
無性とは、男女どちらでもない性のことをいいます。社会的にいえば、男か女で認識することが多いですが、無性の場合、性別がフィルターとなり性自認を判断することがありません。
両性
両性とは、男でもあり女でもあると自認している性のことをいいます。両性を自認する人のなかでは、自認する男と女の性の割合が違うことがあります。
不定性
不定性とは、さまざまな性の間を行き来する流動的な性のことをいいます。「さまざまな性」とあるように、男女の2性だけに限定せず、無性、両性などが流動します。日によって、性の比率が変わることが多いのが特徴です。
その他
上記であげた4つのタイプ以外に、さまざまなXジェンダーのあり方があります。たとえば、そもそも性別の概念がない人、男・女・中性のように3つの性で構成されている人など、あり方は無数に存在するのです。
FtXとMtXについて
Xジェンダーについて話すときに耳にするであろう「FtX」「MtX」についてもお話しします。
FtX
FtXとは「Female to X-gender」の頭文字からなる言葉で、身体的性が女性であり性自認がXジェンダーである人のことをいいます。
MtX
MtXとは「Male to X-gender」の頭文字からなる言葉で、身体的性が男性であり性自認がXジェンダーである人のことをいいます。
Xジェンダー当事者の声
最近では、Xジェンダーという言葉が昔より使われるようになったものの、社会全体で言うとまだまだ浸透していない印象です。そういった状況下で、Xジェンダーの人たちが立ちはだかる壁はたくさん存在します。実際に当事者の抱える悩みや経験をご紹介します。
別途、Xジェンダー当事者である私が、『Xジェンダーあるあるを書いた記事』がありますので、Xジェンダーがどのようなことを感じているのか色々なパターンを知りたい方は、参考にしてみてください。
就活での苦悩
就職活動では履歴書を提出したり、スーツを着て面接に向かうことが多いでしょう。そういったときXジェンダーは、シスジェンダー(身体的性と自認する性が一致すること)の人が悩まないところで、さまざまな障壁にぶつかります。
たとえば、履歴書やエントリーシートの性別欄、服装の選択、面接時でのカミングアウトなど、自分の性を隠して就活するかを悩む人が多いのです。会社は人生のなかでも多くの時間を過ごす居場所でもあります。隠すことで罪悪感を抱いてしまったり、逆に伝えても理解されないと考えることもあります。
なかなか受け入れられない
まだまだ性別二元論が当たり前の社会で、男女に当てはまらないXジェンダーについてわかってもらえることは100%ではありません。「性別がないのは嘘」「いつか自分についてわかるときがくる」といった心ない言葉をかけられた当事者もいます。
さまざまな自己のあり方があることを知ったうえで、相手の価値観を否定するのではなく、一つ存在するものとして認識できることが望ましいです。
Xジェンダーの人と出会いにくい
先述したように、Xジェンダーについて受け入れられにくい世の中で、声をあげにくいことが現状です。実際、周りにXジェンダーを自認する人はいるかもしれませんが「カミングアウトすることでさらに生きづらさを感じるのなら…」と隠している当事者は多くいます。
今はマッチングアプリやSNSが普及し、オンライン上での出会いは増えてはいますが、リアルで同じ境遇の人と話を共感し合えることが少ないのは、今の課題であるのではないでしょうか。
呼称に対する違和感
一人称の「私」「僕」「俺」といった言葉がしっくりこないという人もいます。それぞれの言葉が性別を連想させる印象をもつ人もいるため、当事者のなかではあえて一人称は使わずに会話を進めることもあるようです。
名前に違和感をもったり、「ちゃん」「くん」呼びがしっくりこないこともあります。日本語特有かもしれませんが、人称に性別の印象をもちやすいことは多いため、自分自身にぴったりの表現が見つからないのかもしれません。
Xジェンダーの深刻な悩み
次に深刻な悩みについて解説していきます。
社会的な性別を全うできない
基本的に日本社会では、男性または女性としてどちらかに属して生きることになると思います。Xジェンダーの私は、小さい頃から性自認が無かったので、男性としての立ち振る舞いも、女性としての立ち振る舞いもどちらも身につかないまま大人になってしまいました。
その為、社会生活において男性的な気質や立ち振る舞いを求められる場面でも、上手くたち振る舞うことができませんし、何となくいつも頼りない印象を与えてしまうことが多いです。また、男性とも女性とも違った掴みどころのない雰囲気を感じるそうで、対応に困らせてしまうことがあります。
会社勤めになると、男性なら男性同士の信頼関係や繋がりなどが大切になってくると思うのですが、根本的に男性として生きてきたわけではないので、男性同士の会話みたいなものも上手くできないですし、上手く関係構築ができません。
トイレ
日常的に使うものなので非常に深刻です。私の場合は、性自認が無いので、男性も女性もどちらも自分とは違う性別に感じるんですよね。外見的にも身体的にも男性なので、男子トイレを使用することになるのですが、感覚的には女性が男装して、女性と気づかれないように男子トイレに入るような気持ちを毎回感じています。
もう何年も何回もトイレは使用してきているはずなのに、未だに慣れることができません。男子トイレに入っても使うのは個室ですし、なるべくであれば、コンビニのトイレなど男女共有の場所を探して使っています。
Xジェンダーの恋愛感情や性的指向
Xジェンダーは、性自認に関するセクシュアリティなので恋愛感情や性的指向はそれぞれ別に存在しています。身体的男性のXジェンダーの場合、Xジェンダーのゲイと認識している場合もありますし、性自認がXなので身体的男性で男性を好きになっていても、ゲイとは認識していないこともあります。Xジェンダーのレズビアンの場合も同様です。
またXジェンダーで他人に対して恋愛感情も性的欲求も感じない場合には、Xジェンダーのアセクシュアルなど、Xジェンダーにも色々なパターンが存在しています。
Xジェンダーと組み合わさることのある、その他のセクシュアリティに関しては『LGBTとは?考え方や基礎知識を簡単に分かりやすく解説♪』で解説していますので、興味があればご覧になってください。
Xジェンダーは身体的性別に違和感を感じないのか?
Xジェンダーの場合、身体的性別に違和感を感じるかは人それぞれで、違和感のある範囲も非常に広いと思われます。生まれ持った身体的性別と性自認にギャップのあるトランスジェンダーの場合、身体的男性で、心の性別が女性の場合はかなりの差が生じますが、Xジェンダーの場合は、身体的性別が男性で、性自認が無の場合、身体的性別と、性自認が比較できません。その為、違和感が無い場合もあります。
対して、性自認が中性の場合には、男性的な体つき、女性的な体つきに違和感を感じる場合もあります。私は、18歳後半くらいまでは違和感がありました。そして、女性ホルモンを服用することで、男性としての体を壊して、心身共に無性になろうとしました。
参考:【経験談】男の体に女性ホルモン投与!胸は膨らむ?変化と後悔とその後
【まとめ】Xジェンダーとは?当事者の声や、深刻な悩みなど詳しく解説していきます。
いかがでしたでしょうか。Xジェンダーには主に5つのタイプで分けることができますが、無数のあり方が存在します。男もしくは女と決めつけるのではなく、相手が心地いいと思うあり方を尊重することがあるべき姿です。これから徐々に、Xジェンダーをはじめとする、あらゆるセクシュアリティについて浸透することを願っています。
チェック → Xジェンダー当事者によるXジェンダーがもっと分かる記事のまとめ
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