どうも、空衣です。FtMパンセクシュアルです。
都内にいた頃は、中野区・新宿区に住んだことがありました。新宿二丁目にも近い環境だったので、新宿二丁目という存在に出会える環境だったのは恵まれていたなぁと今振り返ると思います。ただ、住まいとしてはどちらもかなり人の多い地域だったので、良くも悪くも刺激がありました。
しかし今現在は、東京とは全然違った環境の中で生活しています。そこで、都会と地方の住み心地はどう違うのか?トランスジェンダーの視点でそれぞれのメリットとデメリットを挙げて、解説していきたいと思います。
参考↓
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一つひとつお話ししていきますね。
トランスジェンダーの人が都会で暮らすメリット
治療できる病院が近くにある
これはなんといっても欠かせません。性同一性障害や性別違和の診断書を得られるジェンダークリニック、男性ホルモン/女性ホルモン治療のできる泌尿器科や婦人科、胸オペや性別適合手術のできる病院、それぞれバラバラの場所へ通う場面があるかと思います。そのためそれらの施設が近くに揃っている土地に住んでいると、非常に助かります。
トランスジェンダー当事者の中でも、治療にアクセスできる人とできない人がいるのは不平等ですから、各都道府県に医療機関が一つずつくらいはあってほしいものです。
当事者のコミュニティがある
都会ですと、ゲイバー・レズビアンバー・ミックスバーを始めとした交流の場や、定期的に開催されるLGBTsの当事者の会に参加しやすいと思います。またSNSで当事者同士が連絡を取り合ってオフ会ができると、精神的安定や、情報交換の場としてとてもありがたいです。
似合うファッションを探しやすい
自分の身に合うものを模索中のトランスジェンダーの人にとって、多様なファッションが用意されている環境は貴重です。実際に店舗に行くのはプレッシャーがあったり、人によっては性別を間違われて窮屈な思いをしてしまう危険もありますが……。例えば、FtMである自分のために買い物したかったのに「これは彼氏さん用ですか?(つまり自分はメンズ用品を買いにきた「彼女さん」だと思われている)」などと余計な親切をされて、スムーズにいかないことも実際ありました。
とはいえ地方の場合だとファッションを探す場が都会に比べて少ないです。都会の豊富な服屋にいれば、何があるのか、またはどんな体格の人がどんな服を着ていると似合うのか、という研究のために参考になります。つまりパス度(他者から見られたい性別で見えているかどうか)向上の役に立ちます。
特にホルモン治療をしている場合は、自分でも予期せぬ体格の変化が起きている場合がありますので、ネット通販よりは実物をチェックして似合うものを手に入れたいものです。
トランスジェンダーの人が都会で暮らすデメリット
家賃が高い
地方に比べ、家賃が高い場合が多いです。ただでさえ治療費や必要な環境へのアクセス(当事者会への参加費、交通費、本、有料の情報など)のためにトランスジェンダーはお金がかかることは多いかと思いますので、息苦しい点ではあります。
トランスジェンダーとして詮索されがち
“男でも女でもない不審な人”としてジロジロ見られる機会も多いように感じました。
とりわけLGBTsの知識がある人からすると、あの人がトランスジェンダー?という、詮索するような眼差しを浴びる可能性があるので、シスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と自分で認識している性が一致している人)だと思われて気にされなくなるまでの日々は外出すること自体が面倒でした。いちいち「性別はどっち?」「トイレはどっち?」と聞かれたり見られたりするのは非常に疲れました。
トランスジェンダーの人が地方で暮らすメリット
トイレが混まない
これは嬉しいです。混んでいると、列に並んでいるだけで性別を実感して嫌だという当事者もいます。
地方の方が土地が広いからか、多目的トイレやオールジェンダートイレは案外普及している気がします。
ちなみに自分の場合は、他の方が男性用トイレで立って用をたしている姿をしているのを見慣れるまでは、一刻もはやく個室に入りたいと思っていました。
埋没しやすい
男性か女性とみなす風潮が強いと、そのおかげで“なんとなくのパス度”であったとしてもFtMがすんなり男性としてみなされたり、MtFがすんなり女性としてみなされたりします。もちろんそうならずに逆の扱いをされてしまう場合はつらいのですが、トランスジェンダーとしてやみくもに可視化される機会は都市部より減るのではないでしょうか。
※埋没とは、トランスジェンダーの人が、「他者から割り当てられた性別」ではなく「自身の体感している性別」に基づいて自然と生活できている状態です。たとえば男性として生きたいFtMの場合は、性別を間違われたり怪しまれたりせずに、単に男性として生活できている状態、を指します。
案外理解が進んでいるのかもしれない
地方はジェンダーに対して保守的だろう、と決めつけていませんか?場所によってはかなり、対策や認識は進んでいるといえます。もしかしたら人口が少なく統制しやすい分、自治体特有の学習指導要領に盛り込んで実践しやすかったり、都市設計の時点で融通が効きやすい、という利点があるのかもしれません。
LGBTsに限らないのですが、たとえば父親も含めた子どものプール教室だったり、男性トイレ内にベビーチェアが設置されていたりと、ジェンダー平等への取り組みが良くできていて暮らしやすいと思いました。
先日は選挙の候補者の中に、LGBTsへの包括的な政策だけでなく、トランスジェンダー特有の課題に向き合おうとしてくれている立候補者がいて感動しました。「オールジェンダートイレの増設」や「不要な性別欄の撤廃」を始めとして、「ホルモンの保険適用」や「戸籍変更の子なし要件撤廃」など具体的な治療や、戸籍性別の変更に関して言及する人はそう多くはないので、かなり驚きました!
トランスジェンダーの人が地方で暮らすデメリット
遠方へ通院しなければならない
治療をする人の場合は、病院探しと通院が大変になるでしょう。自分の場合ですが、ホルモン注射は2週間に1度通うのをやめ、まとめて半年分購入して、自宅で注射を打っています。「毎回通うのは大変だろうから」という病院側の配慮です。最初は自己注射が怖かったのですが(自分で自分のお尻に何センチかの注射針を打ち込むのです)、慣れてからは毎回通院しなくてよいのでとても楽になりました。
一方で、手術に関してはそうはいきません。手術そのものが終わった後のアフターケアも、丸2日かけて遠方へ通って診てもらっています。もはや体調よりも、仕事との兼ね合いや交通費のことで頭が痛いです。
事情を知る話し相手は少ない
気軽にトランスジェンダーの話をできる知り合い、とりわけ似た条件の当事者と出会える機会は減るので、気晴らししにくくなる可能性はあります。
トランスジェンダーは都会暮らしが良いか地方暮らしが良いか?
さて、以上が個人的に感じたメリットとデメリットでした。都会暮らしがいいのか、地方での暮らしがいいのか、もちろん一概にはいえません。
ですが自分は、埋没思考の強い人は一度地方で暮らしてみるのもありかな、と考えます。ずっと都会に暮らし続けているとトランスジェンダーとして注目されがちですし、一度そう認識されるとその人の中ではずっとそうあり続けることになります。土地を変えて時間が経てば、そういうことが減って生活しやすくなる場合があるからです。または、戸籍の名前や性別を変えるタイミング、手術で長期休暇を必要とするタイミングで、そのために引っ越すトランスジェンダーの人もいるでしょうから、目的に合わせて住居を考えることも必要になるかもしれないです。
いずれにせよストレスなく暮らせる環境を選べると良いのではないでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。
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◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。性別も住処も旅してきました。
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