どうも、空衣です。FtMでパンセクシュアルです。
今回はトランスジェンダーの人が直面する就職活動での問題について、どうすべきか考えていきます。
トランスジェンダーが就活で困らないためには?
性別が思うとおりに扱われない場合は、就職活動自体が苦しくなるかと思います。というより非常にストレスが多いです。自分自身を曲げて周囲に合わせるか、事細かに説明をして他人に納得してもらうよう努めるか、の基本的に2択だからです。
どう性別移行するのか。その後のライフプランは?
大きな問題として、「将来どうするのか?キャリアは?」と基本的なことを聞かれても、そこまで考えられていないトランスジェンダーの人が多いのではないでしょうか。
自分の治療をいつまでにどの段階まで済ませるのか、そのためにいくら必要か、いつ休むのか。または仕事以外に関しても、老後まで生きる気力がなかったり、結婚や出産は無理だと諦めていたり、前向きな答えを期待されてもそれが難しい状況であることがあります。
自分の境遇さえままならないのに、他人や将来のことを聞かれても困ってしまいます。
なので治療を希望する場合は、最初の数年間に希望するところまで叶うように、費用と期間を割り出して計画してみましょう。有給を使うのか、別で長期休暇の申請が必要になるのか、生活に支障のないくらい貯金できるのはいつ頃なのか、等の計算です。
身体的な治療をしない場合は、そのうえでトランスジェンダーだと周知されて生きていくのか、それとも服装や振る舞いによって特にカミングアウトせずとも望む性別に見えるよう努力し続けるのか、方向性を決めることになるでしょう。
本来は仕事の様子を見て、自身のライフプランを考えるという順番なのかもしれません。ですが仕事がまったく考えられないくらい自分の性別のことで頭を悩ませていては何も始まりませんので、まず自分との向き合い方を検討するのが良いかと思います。
体調管理をしっかりする
慣れない格好や面接などが続いて、ただでさえ心身が不安定になるというのに、性別の規範が強く立ちはだかるので体調を崩しやすいです。自己否定ばかりにならないよう、ぜひどこか他のところでバランスを取ってください。
かくいう著者は、ちょうど就活を開始するタイミングでホルモン注射を開始したため、まず就活どころではなくなってしまいました。「一旦就活を辞める」と決めて、とにかく死なないように精神の調子に向き合うことにしました。体調管理ができないのに、就活に挑むのは不可能でした。
トランスジェンダーは就活とどう向き合うべき?
ここからは、トランスジェンダーの人がどういった立場で就活に望むのか考えられる3つの選択肢をご紹介します。
選択肢① 早めに戸籍変更して埋没する
まず一番実行が難しくはありますが堅実な選択肢は、早めに戸籍の性別変更を済ませることです。そのためには就活を開始するまでにSRS(性別適合手術)と、必要ならば改名も終わらせておく必要があります。もちろん戸籍を変えるだけでなく、外見や生活実態がその性別に即していることも求められるでしょう。
※埋没とは、トランスジェンダーだと知られることなく、望みの性別で生活している状態のことです。
就活以前に手術をするとなると、自分の稼ぎでは間に合わないため、親に資金援助してもらわなければならないことも考えられます。金銭的に、短期間のうちに一人で実行するのは至難の業だといえます。
とはいえどうにか戸籍変更をすれば、自分でトランスジェンダーだとカミングアウトしたり昔話をしたりしない限りは、トランスジェンダーだと認識されなくなり、性別をあれこれ言われることはなくなります。事情を言うにしろ言わないにしろ、決定権はあなたにあります。
ただしトランスジェンダーだと知られずに埋没して働く場合は、生まれた時からずっとその性別であったかのように振る舞い続ける必要があります。過去が捏造されていく感覚とでもいいましょうか。
たとえばトランスジェンダー男性(FtM)の場合は、小学生時代は女子と同一視されて過ごしてきた人が大半ですが、それでも「本をよく読んでいたのですか?文学“青年”だったんですね」と言われて同意したり、「学生時代は学ランでしたか?」なんて馴染みのない質問をされたりもします。そのたびに、事実はそうではなくても、そうだったという風に話を合わせます。
つじつまを合わせて会話する方が、トランスジェンダーとして可視化されるよりずっと快適、という人には早めの戸籍変更が好まれるようです。
選択肢② 社長や担当者にだけトランスジェンダーだとカミングアウトする
限定的にカミングアウトして、あとは何も言わないでおく、というパターンもあります。戸籍変更していないトランスジェンダーの人の場合は、どうしても公的書類を扱う立場の人にはトランスジェンダーであると事情説明しなければならないかと思います。
しかし、注意すべきことがあります。社長や人事担当者にだけ告げたつもりでも、その人たちが「本人の許可なく勝手にバラしてしまう、アウティングしてしまう」という事態もあるからです。必ず、あなたがトランスジェンダーであることは誰まで共有可能なのか、その見極めを最初に相手に頼んでおかなければなりません。知らぬ間に全社員に事情が筒抜けになってしまったら、その後のやり直しはかなり難易度の高いものとなるかと思うので要注意です。カミングアウトしたい場合はいつでもできますが、一度知られてしまったらもう知らなかった状態には戻せません。
トランスジェンダーだと説明した際は、「トイレや更衣室はどうするのか」という質問はされる可能性があります。移行状態や気持ちの問題もありますが、特に問題なく外で希望の性別スペースを使用できているのであれば、最初からトランスジェンダー男性は男性用、トランスジェンダー女性は女性用を使用することが望ましいです。(ただし他の利用者もいるので、自分で決定できないこともあり得ます。)
ごく限られた一部にだけトランスジェンダーだと知られている状況では、特に問題なく埋没同様の生活が送れるかと思います。一方でトランスジェンダーであるがゆえに長期休みが必要な場合や、具合が悪くなったとしても、それは他の理由をつけてごまかすしかありません。また、書類や保険証などを放置していて覗き見されてしまった、なんて万が一の事態にならないよう自己管理は徹底しましょう。
選択肢③ LGBTフレンドリーな企業へ行く
トランスジェンダーだと完全にオープンにして就活に望むというのも一つの手です。LGBTの人たちを積極的に雇用しようという姿勢を示している企業も、大企業のなかには出てきています。
あるいは中小企業の方が自由度が高く、すぐに適用体制が整うという場合もあります。
ただし前提として、企業にとってセクシュアリティがどうであるかは直接仕事に関わってくることではありません。むしろ相手の知識が十分でない場合は、トランスジェンダーという未知のワードを聞いただけで「面倒くさい」と判断されて拒絶されてしまうこともあります。その企業全体というより、その話し相手次第で今後が決まってくるかもしれないのです。
なので、通常求められるレベルで仕事ができることに加えて、トランスジェンダーであることで何か課題が生じるのであれば交渉する、というスタンスで挑むのがオススメです。就活の際にただ単に「トランスジェンダーであること」を軸に話を展開するのは、そもそも仕事と結びつきにくい個人的な話に持ちこむわけで、非常に難しいと予想されます。
入社後にどれくらいの範囲までトランスジェンダーだと知られることになるのかわかりませんが、大勢に知られていてもポジティブにやっていけるという人なら問題ないかと思います。この場合メリットとして、自分の昔話や手術の休暇希望やホルモンバランスで体調不調であることなど、正直に共有して、協力が得られるかもしれません。
以上、トランスジェンダーの人がうまく就活を乗り越えるにはどうしたらいいか、ご提案しました。状況次第なので期待した通りの反応が返ってこないことももちろん考えられますが、うまく就活が進むよう、応援しています。
前回の記事でも掲載しましたが、こういったLGBT向け就活サイトもあります。是非ご活用下さい。
LGBT求人サイト「ジョブレインボー」就活も転職も、自分らしく
お読みいただきありがとうございました。
チェック → トランスジェンダーの悩み解消に役立つ記事まとめ~FtM&MtF向け~
◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。性別も住処も旅してきました。
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