LGBTsには、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけでなく、さまざまなセクシュアリティがあります。その中の1つにアロマンティックという他人に恋愛感情を抱かないセクシュアリティがあります。
しかし、アロマンティックは他人に対して愛情がない人のことだ、家族や友人に対しても感情がないのではないか、など正しい知識がないことで誤解が生まれやすいセクシュアリティでもあります。また、性的欲求を持たないアセクシュアルと混同されることもあり、理解を深める必要がありそうです。
今回は、アロマンティックというセクシュアリティについてその特徴や、実際アロマンティックだと自認している人のYoutube動画などを紹介しながら、アロマンティックについて詳しく紐解いてみたいと思います。
初めに |
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IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBT」「LGBTQ+」について解説するため、表記が混在しております。 |
アロマンティックとは他人に恋愛感情を抱かないセクシュアリティ
まず、アロマンティックとはどんな意味を持っているのかお伝えします。アロマンティックは、英語で「Aromantic」と表記し、他人に対して恋愛感情を抱かないセクシュアリティのことをいいます。
恋愛感情を示す人、という意味がある「Romantic」に、打ち消しのAをつけた英単語になります。恋愛感情を持たないからといって必ずしもアロマンティックの人にはパートナーがいない、というわけではありません。恋愛感情はなくとも、居心地の良い相手を見つけたり、尊敬できる人、愛情を持てる人とパートナーの関係を築く人もいます。
また、他人に対して恋愛感情を持つことはほとんど、またはまったくないのがアロマンティックですが、アロマンティックの人のなかにも、性的欲求を持つ人はいます。これについては後ほど詳しくお伝えします。
アロマンティックの特徴
では、アロマンティックのセクシュアリティを持つ人の特徴はどのようなものがあるでしょうか。
以下で紹介するのはあくまで一例です。個人差があったり、時期や生活によってセクシュアリティがグラデーションである場合も多いです。以下の内容に当てはまるからといって必ずしもその人がアロマンティックであるというわけではありません。
恋愛トークに共感できない、興味がない
自分自身が他人に対して恋愛感情を抱かないため、他の人が恋愛トークをして盛り上がったり、感情的に波があったりすることが理解できない場合が多いです。
アロマンティックの人のなかには、恋をする、相手を恋愛的な意味で好きになるということに興味がなく、根本的に理解できないという人もいます。
そのため、恋愛ドラマや恋愛映画、恋愛小説などフィクションに対しても共感を得られなかったり、興味が沸かないという人もいます。もちろん、アロマンティックの人のなかにも、エンタメとしてこれらを楽しむ人はいますが、登場人物の感情に対しては共感できないことが多いです。
友達を作ることや家族との時間が楽しみ
アロマンティックの人は、恋愛感情は理解できなくても、愛情そのものが欠落しているというわけではありません。家族や友人に対して愛情を持って親切にしたり、親しみを覚えたりすることはあります。
恋愛感情がないというと、それ以外の喜怒哀楽や感情に対しても共感が足りていない人なのではないかという勘違いをされることも多いセクシュアリティですが、決してそういうわけではありません。共感のなかに恋愛感情が一部含まれることはあっても、共感のすべてではありません。他人と人間関係を築くことができないわけではないのです。
恋愛感情が持てずに悩んでいる人や、こうした誤解をされて苦しんでいる人にも届いてほしい内容です。
周りに合わせて好きな人やパートナーを作り上げることも
恋愛感情がなくても、人間関係を築いたり、他人に対して愛情を持ったりすることはあります。ただ、誰かを恋愛的に好きになって、恋愛をすることが普通だと言われて育ってきたアロマンティックの人も少なくないはずです。
恋愛して当たり前、恋愛感情のもとにパートナーがいて当然といった環境のなかに置かれている人もいるでしょう。
アロマンティックの人のなかには、こうした環境下で、自分の好きな人を作り上げたり、自分の感情が伴わないままパートナーを作ろうとしてしまう人もいます。また、恋愛をテーマにした作品や友達の恋愛の話についていくことができなくても、理解しているふりをしたり、盛り上がっている様子を作り上げたりしていることもあります。
アロマンティックとアセクシュアルとの違いは性的欲求の有無
アロマンティック(他人に対して恋愛感情を持たない、持つことがほとんどない)以外にも、アセクシュアルというセクシュアリティもあります。
この2つが混同されることがよくありますが、これは、性的欲求があるかどうか、が大きな違いとなります。アセクシュアルは他人に対して性的に惹かれないセクシュアリティのことです。ただし、この性的欲求の有無とは主観的である場合が多いです。たとえば、他人にキスをするのは挨拶だと考える人もいれば、これは性的欲求だと捉える人がいる、というように一人ひとりが性的欲求をどう捉えるかで変わります。
つまり、恋愛感情の有無と性的欲求の有無は別のこととして考えられています。アロマンティックの人は恋愛感情は持たないものの、性的欲求を抱く場合があり、アセクシュアルの人は他人に対して恋愛感情はあっても、性的欲求は持たないという場合のことをいいます。
また、恋愛感情も性的欲求も持っていないセクシュアリティの人もいます。この場合は2つのセクシュアリティをそのまま並べてアロマンティック・アセクシュアルといいます。
自分がアロマンティックか調べるには「anone,」が有効
ここまで、アロマンティックやアセクシュアルというセクシュアリティについてお伝えしてきました。自分がアロマンティックか、あるいはその他のセクシュアリティか知りたいけど確信が持てない、という人もいるでしょう。
『anone,』は、自分のセクシュアリティを調べることができる無料のツールです。自身のセクシュアリティを確定させるものではありませんが、2000通りのパターンから自分のセクシュアリティを調べることができるので、自分にもっとも近いセクシュアリティは何か、具体的に知ってみたいという人は一度試してみると良いでしょう。
参考記事:
アロマンティックの中にもある多様性
アロマンティックやアセクシュアルの人々は一概に同じ感じ方をしているわけではありません。例えば、2020年のスペクトラム調査によると、アロマンティックな人の約60%はキスに、アセクシュアルな人の約80%は性的な誘いに対して嫌悪感を持っています。しかし、回答者の中には「何も嫌悪感を感じない」という人も1〜3割程度いました。
さらに、調査では約半数の人が「一人のパートナーが欲しい」と答えています。つまり、恋愛や性的な関係がなくてもパートナーを求める人がいるということです。
日本のメディアでもこのトピックが少しずつ取り上げられていますが、認知度はまだ低いです。LGBTQ+については8割の人が知っていますが、アロマンティックやアセクシュアルについては、8割の人が「聞いたことがない」と答えています。
また、この調査で約6割の人が「生きることに不安を感じる」と答えています。だからこそ、恋愛話が盛り上がる場で「いつかいい人に出会うよ」と軽く言うだけでも、傷つく人がいるかもしれません。アロマンティックやアセクシュアルの人々の存在を知ることで、もっと包摂的な社会を作る一歩になるでしょう。
アロマンティックに関する動画
ここからは、アロマンティックに関する知識をより深めたり、楽しみながら学んだりできるようなYoutube動画をご紹介します。
自分で調べたことはなかったけど、動画なら気軽に見ることができる! という方にもおすすめです。
恋愛感情のないアロマンティックとはなんぞや?【オトマリカイ】#7
バズフィードジャパンが配信している「恋愛感情のないアロマンティックとはなんぞや?」
では、オトマリカイと題してLGBTの友達を呼んで、お泊りしている様子を演出しながら、セクシュアリティについてリアルなトークを展開しています。
アロマンティックを自認しながら、パートナーとも良い関係を築いているという女性が登場しています。ほかにも、真剣な恋愛と遊びに近いような恋愛の違いや、どのように恋愛を進めていくのが良いのかなど幅広い話題を展開しています。
今回紹介した動画以外にも、オトマリカイでは、LGBTの人や、関連した話題をたくさん提供しています。気になる方は他にも見応えのある動画がたくさんありますので、ぜひチェックしてみてください。
True Colors CHANNEL #8【アロマンティック・アセクシュアル 中村健(なかけん)】恋愛ナシ、性愛ナシで何が悪いの?
True Colors CHANNELは、MCを、タレントや女優として活動する髙橋ひかるさんと、ナビゲーターにSKE48の元メンバーである須田亜香里さんが担当しており、アロマンティック・アセクシュアルを自認している中村健さんをゲストに迎えてトークを展開しています。
中村健さん自身のお話のほかに、2022年に放送された、岸井ゆきのさんと高橋一生さん主演のNHKドラマ「恋せぬふたり」に当事者としてドラマ考証に参加した話などを聞くことができます。
【アセクシュアル】「信じてもらえない…」他人に性欲ナシ!恋愛感情ナシ!アセクシュアルとは?
ABEMAが配信しているこちらの動画は、報道ニュースのような雰囲気でアロマンティックやアセクシュアルについて知ることができるようになっています。
この動画は、アロマンティックというよりはアセクシュアルに焦点が当たっていますが、アセクシュアルの人はどんな特徴を持っているのか、恋愛に対してどんな感情を抱いているのかなどがわかる動画です。アセクシュアルを自認している当事者も登場し、自身のセクシュアリティの悩みやその悩みによって引き起こされた体調不良などにも話が及んでいます。
他にも、アロマンティックだと自認している女性が登場し、人として好きだと話す結婚相手との結婚生活についても話しています。アロマンティックとして、恋愛感情がうまれなくとも、居心地の良い関係を築くことができた相手との話や、過去の恋愛経験についても話しています。
自分はアロマンティックというよりアセクシュアルかもしれない、アロマンティックとアセクシュアルを併せ持つセクシュアリティかもしれないと思う人はぜひこちらの動画も観てはどうでしょうか。
【まとめ】アロマンティックって知ってる? アロマンティックの特徴とは
今回は、アロマンティックというセクシュアリティについてお伝えしてきました。恋愛感情を持たない、あるいはほとんど持つことがないというセクシュアリティです。
ただ、人によって個人差があったり、そのセクシュアリティが変化することもあります。
また、アセクシュアルという性的欲求を持たないセクシュアリティについてもお伝えしました。アロマンティックとアセクシュアル両方を持つ人もいれば、それぞれのセクシュアリティの人もいます。セクシュアリティはもちろん他にも様々にあり、自分がどんなセクシュアリティに近いのかを知るanone, というツールもあります。気になる方はぜひ一度利用してみてください。
アロマンティックとはどんなセクシュアリティなのか、これで少しでも詳しく知ることができていたら幸いです。