LGBTsについて、エンタメ作品で楽しみながら学んでみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。最近では、映画館だけでなく、Netflixなどサブスクリプションサービスで映画やドラマを楽しんでいる人も増えているでしょう。
今回は、Netflixで見られるLGBTsに関連した作品をご紹介します。
レズビアン
アンヌ+:THE MOVIE(2021)
オランダのアムステルダムに暮らす作家志望のアンヌと、サラはレズビアンの恋人。カナダのモントリオールへ2人で移住することが決まっています。先にサラがモントリオールに住み、アムステルダムで本の執筆をするサラを待ちます。一時的に遠距離となった2人はお互いに自由恋愛を認め合ったはずでしたが、すれ違ってしまうことに。
レズビアンだけでなくノンバイナリー、ゲイなど多様なマイノリティが登場し、アンヌを優しく支えます。特に大きなオチやイベントがあるわけではありません。しかし恋人、友人、親などいろいろな人間関係を通して成長し、葛藤しながら変わっていくアンヌを観ると、希望や元気をもらえると思います。
ロニートとエスティ 彼女たちの選択(2017)
映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』は、イギリスの厳格な超正統派ユダヤ・コミュニティで生まれ育ったロニートとエスティの物語です。ロニートは父の死をきっかけに故郷に戻り、幼なじみのエスティと再会します。2人は真逆の生き方を選び、それぞれの悲しみや生きづらさを抱えながら再び惹かれ合います。宗教、信仰、自由、そして2人の関係性に焦点を当てながら展開されていきます。
ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから(2020)
成績優秀なエリーがアメフト男子のためにラブレターを代筆することから始まるストーリーです。エリーとアスターの恋愛感情、そしてエリーとポールの友情が絡み合う三角関係が描かれています。主人公のエリーは母を亡くし、英語が得意でない父と暮らす中国系の少女であり、彼女の成長と葛藤も物語に組み込まれています。この作品は高校生のロマンティックコメディであり、感動的なストーリーテリングが特徴です。
エリサ&マルセラ
実際の出来事に基づいたイザベル・コイシェ監督による歴史映画です。物語は、20世紀初頭のスペインを舞台に、女性同士の禁断の愛を描いています。具体的なあらすじについては、スペインの社会的および歴史的な背景を踏まえながら、2人の女性の恋愛と彼らが直面した困難に焦点を当てています。本作は、2019年に第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された作品であり、ナタリア・デ・モリーナとグレタ・フェルナンデスが主演を務めています。
ゲイ
「窮鼠はチーズの夢を見る」(2020)
水城せとなさんの同名漫画が原作で、「世界の中心で、愛を叫ぶ」や「リバーズ・エッジ」、「ナラタージュ」などの行定勲さんの監督作品です。
関ジャニ∞の大倉忠義さんと成田凌さんが恋人同士を演じるということで、公開当時非常に話題にもなりました。
おすすめする理由として、ごくごく普通の恋愛模様が描かれているという点が挙げられます。2020年の作品ですので、LGBTsに関しての認識や理解が広まりつつあるこの時代だからこそできた映画化といった側面もあるはずですが、LGBTs作品であることや、男性同士の恋愛であるということを一旦片隅においておいたとしても、楽しめる恋愛映画です。
また、大倉さんが演じる会社員の大伴には妻がおり、後にお別れすることになりますが、異性を恋愛対象として生きてきた男性でした。そんな大伴が大学の後輩である今ヶ瀬(成田さん)と再会することから、大伴の恋愛観やセクシュアリティにゆらぎが生じ始めます。
セクシュアリティは生まれてからずっと一定だと決まっているものではなく、時には変化したり、時期によって流動的であったりします。そうしたゆらぎや、出会う人から影響を受けたことによる変化などが自然に描かれていたのも見どころの1つです。
「ある少年の告白」(2019)
同棲愛を「治す」というアメリカでの転向療法(コンバージョン・セラピー)を描いた実話に基づく物語です。
今回紹介した映画のなかで、筆者にとって最も衝撃を受けた作品であり、これから鑑賞する人においても同じように感じる可能性の高い作品です。しかしながら、現在もこうした転向療法を行う施設が実在するという事実がある以上、知っておきたい内容でもあります。
同性愛であるということを、精神異常であるとみなし、それを”転向”させようとする矯正施設が舞台です。口外厳禁とされた施設でのプログラムの内容には驚きばかりで、施設で生活している同性愛者の人たちの諦めや怒り、戸惑いなどは観ている私たちも同じ気持ちにさせられます。
また、同性愛に対する考え方の根底に、宗教と深い関わりがあるという点も興味深いです。日本にいるとイメージしづらい問題ですが、両親が敬虔なクリスチャンであるからこそ認められないことがあったり、受け入れられないことがあるというのも1つの学びになりました。
大切にしてきた宗教と、大切な息子との間で揺れ動く主人公の両親の感情もしっかりと見届けてください。
君の名前で僕を呼んで(2017)
2007年に発表された小説「Call Me by Your Name」が原作の青春映画。1980年代のイタリアにある避暑地で、考古学教授の父をもつ17歳の少年エリオが、父の教え子である24歳の男子大学院生オリヴァーと出会うところから物語が始まります。
出会ってしばらくは特別なこともなく時間が経過していきますが、次第にエリオはオリヴァーの口癖や、ふとした行動が気になってしまい、特別な存在になっていきます。やがて想いを告げ、紆余曲折を経てお互いの気持ちを確かめ合い、激しく交わっていくことに。
タイトル通り「お互いを自分の名前で呼び合う」という特別なルールでさらに関係性を深めていく2人ですが、やがて離れ離れになってしまいます。冬にオリヴァーから衝撃的な電話がかかってきて、そのまま物語は終わりを迎えるのですが、その終わり方が鳥肌が立つほどに秀逸です。2人の特別な関係を察していた父がエリオにかける、愛情あふれる言葉も素晴らしいので、ぜひとも観ていただきたい作品です。
ゴッズ・オウン・カントリー(2017)
イギリスのヨークシャー地方という牧草地帯を舞台とした、男性同士の恋愛を描いた映画。主人公は祖母と身体障害者の父と暮らしながら牧場を営んでいるゲイの青年ジョニー。人手を補うために移民のゲオルゲを雇ったことで出会い、一緒に牧場で仕事をしていく中で恋愛関係に発展していきます。
2人が惹かれ合う過程、そして想いと体を重ねてから幸せな一時を経ての衝突と別れ、そしてその後の再会までの流れが美しく描かれています。少なめのセリフと、作品全体に広がる牧歌的な雰囲気、2人の心模様が視聴者の記憶に鮮明に残ります。
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トランスジェンダー
「Girl」(2019)
2019年のベルギー映画です。ベルギー映画なんて見たことない!と感じている人にも、ぜひ見てほしいこちらの作品。
MtFのトランスジェンダーの主人公が、バレリーナを目指す過程で男女の性差や、自分が思ったような成長を伴わないことに対して葛藤しながら、成長していく物語です。
主人公ララを演じた俳優さん(ビクトール・ポルスター)は、実際にダンス経験があり、本人が踊っている場面もたくさん堪能することができます。演技経験はなかったもののオーディションで選ばれました。
LGBTsをテーマにしている作品のなかでも、本作で特筆すべきは、成長過程にある思春期のトランスジェンダーの物語であるということです。男性の体に生まれたララが、女子生徒らと一緒にバレリーナとして踊りながらも、自身の体は男性らしく成長していくことに対する焦りや怒り、思い描いたとおりにならない自分の踊りに苦悩する場面が見ていて心苦しくもありますが、映画の世界にぐっと引き込んでくれます。
また、ララの父親の存在もこの映画では非常に重要な意味を持っています。身近な家族の存在がセクシュアルマイノリティの人にとってどのような影響を与え、本人とともに向き合いながらどのように関わっていくのか、考えさせられる視点が描かれています。
「リリーのすべて」(2016)
エディ・レッドメイン主演の作品です。エディはこの作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞しており、映画界においても非常に評価の高い作品のひとつです。まだ観ていない方は一見の価値ありですのでぜひ鑑賞の候補に入れてみてください。
世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話を元にした作品ですので、この事実やどんな流れでリリーが手術を受けることになったのかというのを知りたい人にもおすすめします。
リリーには妻がおり、長い間男性として生活していました。妻との温かい日々も描かれており、映画序盤のリリーはいわゆる幸せそうな夫婦で、夫であり、男性でした。そんなリリーが自分のなかにある女性性に目覚めるきっかけになったのは本当に些細なことでした。画家である妻が、夫に女性モデルの代役を頼んだのです。これをきっかけにリリーは、女性の服を自ら試すようになり、お化粧をして出かけるなど女性としての時間が増えていくのでした。
自身のセクシュアリティに迷うリリーと、妻が夫の変化を理解しようと苦しみながら寄り添う様子が丁寧に描かれています。
ときは1926年。セクシュアルマイノリティに対しての社会的な認識や理解がなかった時代に、ひたすら寄り添い、リリーに味方する妻の姿にも胸を打たれます。
ミッドナイトスワン(2020)
草彅剛がトランスジェンダーの役を演じたことで話題になった作品。生まれた時に割り当てられた性別は男性だが性自認が女性で、女性の姿で暮らす主人公の心の傷や葛藤の描き方が印象に残ります。
親にトランスジェンダーであることを打ち明けられないまま生活し、電話では男らしく話す姿に共感する当事者の方もいると思います。「身体的性別」「性自認」「親」といった自分では選べないものに対する苦しさが胸を締めつけます。
リトル・ガール(2021)
フランスで男性として生まれ、女性になりたい7歳のサシャと、サシャの幸せを願う家族の暮らしに迫ったドキュメンタリー。サシャが性別違和を主張し始めたのは、わずか2歳。しかし学校やバレエ教室といった社会生活では、男の子として生きることを強いられてしまいます。
男子と女子どちらからも、のけものにされてしまうサシャと、過去の自分を重ねてしまうLGBTs当事者の人も多いのではないかと思います。このドキュメンタリーに出演してくれたサシャと家族の幸せとを願わずにはいられません。「性自認」という選べないものを差別したり、否定したりしない世界になることを心から祈ってご紹介します。
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Netflixにある映画をLGBTsを知るきっかけに
以前に増して、各国で多様な恋愛模様が描かれる作品が作られるようになってきましたが、その中でも特にNetflixで配信されている作品のなかにはLGBTsに関するテーマが豊富です。自分の興味のある作品、心に響く作品が見つかるはずです。
今回紹介したのは、配信されているなかでもほんの一部にはなりますが、テーマがLGBTsに関することである以外にも、純粋に映画として楽しんでいただける作品ばかりです。作品を楽しんだうえで、これらをきっかけにLGBTsのことを知ったり、他の作品に派生してみたりとさまざまな広がりを持てると思います。
ぜひ気になる作品を鑑賞してみてください。