どうも、空衣です。FtMでパンセクシュアルです。
前回のブログでは「ホルモン注射開始前」に焦点を当ててご紹介しました。

関連記事【FtM悩み】ホルモン注射開始前に心理的に不安だったことは?

今回はFtM(トランスジェンダー男性)が男性ホルモン投与を始めた直後に感じる不安について、どんなものがあったのかお話ししていきます。

FtMがホルモン注射を始めて不安だったこと

勇気を出してホルモン治療に踏み切ったはいいけれど、それですべてがよくなるわけではありません。少なくとも、変化に慣れるまでは「変化後のよろこび」はお預けで、「変化することへの不安」があるかと思います。
どんな変化と不安があったのか?について、具体的にお話しします。

ホルモン注射に対する不安はすぐには消えなかった

本当に男性ホルモンを打ったのか不安

いきなり何を言い出すのかと思われるかもしれませんが、私はホルモン注射を開始したばかりの頃、あまりにも体調が悪くなり、「本当に今打った注射は男性ホルモン注射で、人体に打っていいものだったのだろうか!?」と本気で心配になりました。

元々体内に主流であった性ホルモンとは異なるホルモンを人工的に投与しているわけですから、ある程度体調に変化があることは予想できます。
それにしても、想像を遥かに上回って体調が悪くなってしまいました。体はぐったり疲れて、帰りの電車に乗るのも苦痛という有り様でした。体内で何か暴れ回っているような変な感覚になりました。最初の2ヶ月近くは布団で寝ている(寝るしかない)時間が増えました。

ここまで過敏なのは、私が珍しいケースなのかもしれません。他のFtMの人たちが何ともないかのように「今日ホル注でした」とSNSで報告しているのを見ると、なぜ自分だけこんなに体調が悪化したのか、疑わしくなりました。
体質の違いといってしまえばそれまでですが、全然問題なく働いたり鍛えたりできるという人も確かにいます。

ホルモン注射を続けられるのか金銭的に不安

体調が悪くなり、働くのも難しい状態です。それなのにホルモン注射はおそらく一生続いていきます。継続的にお金がかかるのです。おまけにホルモン注射代とは別に、手術費も貯めなければなりませんでした。

関連記事なぜトランスジェンダーのホルモン治療は保険適用外なの?

男性ホルモンの影響で、食べ盛りの男子のように、ずっと空腹状態になりお腹を満たせるものを渇望していました。こうして常に金銭的な不安がつきまといました。

誰にも理解されない孤独が募っていく

稼がなければならないのに体調が悪くて稼げない、というプレッシャーが募ってメンタル面も病んでいきました。

全体的にピリピリしている時期ですから、精神科や心療内科に行っても適切な状況説明はできず、「おそらくはシスジェンダーである医者に、自分の苦しみがわかるはずがない」と余計にイライラしました。トランスジェンダーであり、それゆえに治療で苦しんでいるという現状が誰にも共有できなかったからです。

生活が苦しいのは事実でしたが、その理由としてカミングアウトを強制されたくはありませんでした。そして理解者を得られないことで、余計に孤独感が増していきました。ただただ愚痴を言う、ということすらできない日々でした。

いくら体調不良であってもホルモン注射を開始したこと自体を悔やんでいるわけではないので、「それならホルモン投与をしなければよかったのに」というコメントは求めていませんでした。

身体が男性化して驚いた

多くのFtMがまず男性ホルモンに期待するのは、身体が変わっていくことだと思います。ただし、急激な変化についていくのは大変です。

性欲の解消方法がわからない

男性ホルモン注射を始めて一番最初に感じる身体変化といえば、陰核がムズムズして性欲が強くなった、と感じることではないでしょうか。
これがとても厄介です。性欲の解消方法がわからないからです。男性の性欲にまつわる情報はあっても、それはシスジェンダーの身体向けです。
トランスジェンダーの男性が具体的にどう性欲と向き合えばいいのかという情報は極めて少ないと思います。そのため自分の新しい身体に慣れるまではずっとしんどかったです。FtMの下半身事情について、外見上わかりにくい変化ではありますが、感覚的には完全に別物になりました。

目覚めると声変わりしていた

ある朝起きると昨夜とは別人の声になっている、ということも珍しくありません。かなりハイペースで男性化が進み、そのなかでも声は如実に変わります。
人前で発声しづらい時期もありますが、声変わりの様子を録音するのは楽しかったです。

社会的な男性化への戸惑いが生まれる

身体が男性的になっていくということは、社会的な生活にも影響を及ぼします。

他のFtMと比べられなくて不安

シスジェンダーの男性とトランスジェンダーの男性では、「男性コミュニティのなかで成長期を迎えられるか否か」という大きな差があります。シス男性の場合は、小中学校の義務教育の中で同年代の男子たちと一緒に思春期を迎えます。身長の伸びや声変わりや筋肉のつき方など、自然と周囲の男子が比較対象となっていたはずです。

ですが、FtMの場合はそのような機会がありません。基本的にはたった1人で思春期を迎えなおさなければならないわけです。

そのような境遇ですから、トランスジェンダーのYouTuberが人気になるのも納得です。
他SNSはもちろん、とりわけYouTubeは1人で変化に戸惑うトランスジェンダーたちが「自分以外にもトランスジェンダーの人はいる、こうした身体変化は間違っていなかったんだ」と信じるための安心材料となっているかと思います。
トランスジェンダーにとって、他の当事者の外見や私生活が共有されている場所は本当に貴重です。

ビジュアルで発信することは大変勇気のいることですが、他のトランスジェンダー当事者の励みになるはずです。
関連記事【2020年10月最新】意外といるんです。トランスジェンダー(FtM/MtF)YouTuberまとめ

女性から異性扱いされる

FtMがまだ「ボーイッシュな女性」や、「女性として扱われることに不満を感じる女性」として見なされる頃は、他の女性たちから支持される傾向があります。「よく言ってくれました!」「私もそう思っていました!」という共感を女性から抱かれるといった状況です。

ですが、一歩進んで男性と判断されるようになると、そのような女性からの親密な距離感は失われる場合があります。むしろ警戒されるようになるかもしれません。社会的な性別の差によってここまで大きな差があったのか、と私は目の当たりにしました。

男性から同性扱いされる

女性との距離感が遠くなる一方で、男性から(性的なニュアンスがなく)親しく接してこられることも増えます。一緒に更衣室や銭湯を利用することはしばらく困難だとは思いますが、気兼ねなく話せる機会は増えるでしょう。
いずれにしろ、男女のジェンダー差が大きいということを実感させられます。

以上、ホルモン注射を始めた直後に不安だったことについてお話ししました。
お読みいただきありがとうございます。

チェック → FtM(トランスジェンダー男性)の「リアル」を伝える、16記事まとめ

◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。性別も住処も旅してきました。お酒は好きですが、弱いです。

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