どうも、空衣です。FtMでパンセクシュアルです。
今回は、トランスジェンダーの治療で大事なホルモン注射の話と、自己注射のやり方についてお話します。

ちなみに私の場合は、出生時には身体的に女性とされる状態で、20歳を過ぎてからジェンダークリニックに通いだし、男性ホルモン投与を始めました。ホルモン注射開始から半年くらいで男性としてパスする(周りの人に男性として認識される)ようになりました。

トランスジェンダーがホルモン投与するには

身体的性別を移行する手段として、トランスジェンダーの人がホルモン注射をすることがあります。

FtMが投与する男性ホルモン・・・エナルモンデポー、テスチノンデポー、ネビドデポーなど
MtFが投与する女性ホルモン・・・エストロゲン、プロゲストンなど

市販でホルモン剤が購入できる場合もありますが、身体的に負荷のかける治療ですので、専門医の指示で量とペースを守ってホルモン投与することをオススメします。一般的に、錠剤や塗り薬よりは注射の方が効果が出やすいようです。

男性ホルモンを自己注射することに

ホルモン注射を始めることになり、私は取り扱いのあるクリニックに2週に1回通って打つようになりました。その時は看護師さんに、お尻に打ってもらっていました。
GID治療院一覧(ホルモン治療)

しかし地方のクリニックに移ってからは、最初の2回だけ病院で打ちましたが、それ以降は自宅にて自己注射をすることになりました。医者に「今度から自分で打ってみようか」と言われ、いきなりの展開ですし「自分で注射なんて怖すぎる」と驚きました。

ただ毎回通わなければならないのは時間と労力的に大変だったので、自分で済ませられるのならそれがいいと思い、注射のやり方を教えてもらいました。それまではうつ伏せになり、お尻に打ってもらっていたので、注射する場面は直接見たことすらありませんでした。

自己注射のメリットとしては、わざわざ病院へ行く必要がないこと、自分のペースで打てるという事実に安心できることです。まとめてホルモンと注射針を購入しているので、今は半年に一回行くだけです。

コロナ禍で実質外出禁止・営業禁止の期間は、トランスジェンダーの人々にとって「ホルモン注射のために外出して良いのか」「病院はきちんと開院しているのか」と不安の日々でした。自己注射でホルモンが手元にあれば、そうした危惧はなくなります。

男性ホルモンの自己注射のやり方

実際に自宅でホルモン注射をするときは、以下のものを用意します。
手は清潔にしてください。

・男性ホルモン1本: テスチノンデポー筋注用125mgを使用しています。
・シリンジ: 注射器の筒の部分のこと。
・注射針(大): 写真のピンク色の針です。
・注射針(小): 写真の緑色の針です。筋肉に打つのはこちら。
・エタノール含浸綿2枚
・テープ

注射前

①まず打つ予定の箇所(右か左のお尻の、上の方)をエタノール含浸綿で拭きます。

②注射針(大)を、シリンジにセットします。
この注射針は筋肉に打つ用ではなく、シリンジにホルモンを入れるためのスポイト代わりに使用するだけです。

③ホルモンの入った瓶を開けます。
もう一枚のエタノール含浸綿で親指を覆いながらポキッと折ると、開けることができます。怪我しないように気をつけましょう。

④注射針(大)をホルモンの液体のなかに浸けて、シリンジを引っ張りながら吸い込みます。これでシリンジのなかにホルモン剤が入ります。

⑤注射針(大)はもう使わないのでシリンジから取り外し、代わりに注射針(小)を差し込みます。

⑥自分の身体に注射針(小)を指します。シリンジを押すと、なかのホルモン剤が押し出されて体内に入っていきます。全部出し切ったら終了です。

⑦注射針(小)を身体から抜き、注射箇所にテープを貼ります。若干血が出ていることもあります。

手順は以上です。
(MtFのホルモン自己注射の場合も、手順は同じだそうです)

注射後

シリンジ・ホルモンの入っていた瓶・注射針2本はまとめておいて、私の場合は後で病院に渡しています。他のビニール袋やテープの台紙はふつうにゴミ箱に捨てています。

初めての男性ホルモン自己注射は怖かった

自分の肉体に針を刺す感覚が怖い

まず、ふだん生活していて自分の体に針を刺す経験はなかなか珍しいかと思います。しかもホルモン注射の場合は慣れない人からしたらけっこう針が長い(5cmくらい)です。

初めて男性ホルモンの自己注射をしたときは、すかさず戦争映画を思い出しました。作中の兵士になりきって自己管理のために自分自身へ針を打つ、という場面を想像してホルモン注射をやり切りました。怖い怖い、と思っていると余計やりづらくなるので針に集中しつつも気分を紛らわすことは大事でした。

お尻に注射したいのに腕が回らない

トランスジェンダーの人がホルモン注射をする場合は、腕かお尻に針を刺すことがほとんどです。私は東京のジェンダークリニックでも、地方の婦人科でも、自宅での自己注射でも全てお尻に打っています。明確に覚えているわけではありませんが、左右のお尻に交互に打つようにしています。

けれども自分で腰をひねって自分のお尻に打つのは、毎回大変だなと思います。一瞬ひねるだけではなく、針を押し当てて数センチ分押し込んで液体(男性ホルモン)がすべてなくなるまでその体勢をキープしなければなりません。柔軟な体でないと骨の折れる作業です。

筋肉注射なので痛い

ホルモン注射は筋肉内に注射する、「筋肉注射」でおこなわれています。たくさんの血管が通っている筋肉に注射するため、「皮下注射」(皮膚と皮下組織をつまみ上げて皮膚に対して約45°の角度で注射する方法)より吸収が速いです。
筋肉注射の方が皮下注射より痛いという証拠はないそうですが、筋肉が直接刺激されている感覚で、痛い人は痛いと感じるでしょう。なお新型コロナウイルスのワクチンも筋肉注射ということで、ホルモン注射と同じです。

これはFtMの場合だけなのかもしれませんが、男性ホルモンの影響でどんどんお尻が筋肉質になっていくにもかかわらずお尻の筋肉に打つため、ホルモンを打つごとに痛くなっていっている気がします。

以上、FtMの私が男性ホルモンを自己注射している話でした。

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◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。居住地にこだわりがなく女子寮にいたこともありますが、現在は男性の境遇で生活しています。カレー好きで、世界一辛いカレーを完食したことも。

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