初めに
IRISではLGBTにも、その他のマイノリティにも親切な企業でありたいという気持ちからLGBTsフレンドリーを掲げていますが、本記事はLGBTQに関する内容の為、LGBTsではなくLGBTQという言葉を使用していきます。

レズビアンなら一度は聞いたことがあるであろう「フェム」という言葉。フェムと聞くと、「フェミニン」から派生して「女性らしさ」「かわいい」といった印象を持つ人は多いのではないでしょうか。

昨今、ジェンダーや性の文脈から、女性らしさ、男性らしさについて語られるようになり、既存の性のあり方を考え直す機会が増えました。そうした中で、レズビアンのフェム・ボイという括りにより、「男女二元論的な考えが強固されるのでは」「社会が期待する女性像に当てはまなければならない」のような意見が出てくることも容易に想像できます。

ですが、用語をなくすことでジェンダー規範がなくなるのでしょうか。レズビアンでフェムを自認している筆者は、フェムという言葉があることは社会的意義があると考えています。本記事では、フェム・ボイの意味や特徴にあわせて、フェム・ボイの括りが存在することで社会に影響し得ることについても考察していきたいと思います。

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レズビアンとは

レズビアン(Lesbian)とは、LGBTQの「L」に当たる言葉で、女性同性愛者とも言い換えられます。つまり、女性を自認し、同性である女性に恋愛・性的な感情を持つ人のことです。

レズビアンを含むさまざまなセクシュアリティを定義する際に注意してほしいのが、性のあり方は第三者が判断できないということ。そのことを前提に、以下4つの観点からセクシュアリティを定義できます。

1. 生まれた時に割り当てられた性
性染色体、外性器、内性器、性ホルモンなどをもとに判断される性のこと

2. 性自認
「私は女性/男性だ」「私は女性でも男性でもない」のように、自身が自認する性のこと

3. 性的指向
「私は女性に恋愛・性的な感情を抱く」「すべての性別が恋愛対象だ」のように、恋愛・性的な感情を抱く対象となる性のこと

4. 性表現
振る舞い、服装、言葉遣いなど、自身が表現する性のこと

この4つの観点からレズビアンを定義すると以下の通りになります。

1. 生まれた時に割り当てられた性:人によって異なる
2. 性自認:女性
3. 性的指向:女性
4. 性表現:人によって異なる

したがって、レズビアンに共通していることは、性自認と性的指向が女性である点のみです。そのため、戸籍上の性別は男性で、性自認が女性の「トランスジェンダー女性」や、性自認が女性で性表現が男性的な人など、1の「生まれた時に割り当てられた性」と4の「性表現」は限定されません。

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フェムとは

本題のレズビアンコミュニティで多く使われる「フェム」という言葉について紹介します。フェムとは英語の「Femme」から派生した用語で、言葉遣いや服装など、自己を表現する要素に女性らしさがあるクィア(LGBTQやセクシュアルマイノリティ)のことを指します。先ほどの4つの観点から定義すると、以下の通りになります。

1. 生まれた時に割り当てられた性:人によって異なる
2. 性自認:女性
3. 性的指向:人によって異なる
4. 性表現:女性

フェムという言葉の始まりは、1940年〜1950年代。当時のレズビアンカップルの多くは、片方が男性らしい見た目をし、もう片方が女性らしい見た目をしていることから、それぞれを表現する「butch(ブッチ)」「femme(フェム)」という言葉が生まれました。

とはいえ、フェムという言葉が浸透するまでには長い年月がかかったといわれています。その理由は、男性的な見た目をしているブッチとは異なり、フェム女性は異性愛者としてみられる傾向にあるからです。世の中では、レズビアン=男性的と捉える人が多くいますが、レズビアンの中にも女性的な人や中性的な人など、さまざまな見た目や内面を持つ人がいます。

フェム女性は見た目からクィアであることを認識されづらいため、現代でもレズビアンを自認しているにもかかわらず、信じてもらえない、異性愛者だと勝手に判断されるなどの問題があります。クィア女性の可視化に務めるためにも、フェムは有効な言葉と考えられるでしょう。

参考:「What Is Femme Invisibility?」, Verywell Mind

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フェムとフェミニンの違い

フェムはフェミニンという言葉にも似ていることから、混在して使われることがあります。ですが、2つの言葉は正確には異なる意味を持ちます。大きく異なる点とは、クィアという文脈を持つかどうかです。

フェムとは、単に女性的であることを示すだけでなく、クィアであることを表します。つまり、異性愛者を自認している女性がフェミニンであっても、フェムとは言い換えられません。また、女性を愛するレズビアンは必ずしも男性的である必要はないというメッセージにもつながります。

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フェムの特徴

フェムの特徴として、ロングヘアにメイク、レディースの服に身を纏い、世間一般的にいわれる女性らしい身体のラインをしている人を思い浮かべるかもしれません。しかし、フェムは規範的な女性のあり方を強調するのではなく、それぞれの自己表現に過ぎません。

最近では、性別のらしさについて語られる機会が増えました。性別による、らしさや役割に生きづらさを感じるという人も多く存在します。そういった人たちが自由に表現できる社会が求められる一方で、規範的な性のあり方を好んで選択する人を批判するような考え方もみられます。

ですが、料理をしたり、パンツよりスカートを好んだり、メイクを進んでしたりなど、女性らしさを好む女性も存在します。そのため、極端に「社会の女性像に当てはまること=悪」とはいえないのです。女性らしさ、男性らしさにかかわらず、当事者にとって自由で快適な自己表現であることが大事なのではないでしょうか。

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ほかのレズビアン用語

ほかのレズビアン用語
これまではフェムについて解説しました。レズビアンにおける性表現は、その他にも「中性」「ボイ」のような言葉が存在します。個人差はありますが、一般的にフェムは女性らしい性表現をする一方で、ボイは男性らしい要素のある女性のことを指します。さらに、中性はフェムとボイの中間の立ち位置にあります。

フェム:性表現が女性らしい女性のこと。
中性:性表現が女性らしさ、男性らしさに偏らない女性。かわいらしさとかっこよさを取り入れたファッションや、女性的な要素が少ないメイクなど、性別を感じさせないスタイルが特徴。
ボイ:ボーイッシュを省略した言葉。言葉の通り、性表現が男性らしい女性のこと。

注意点は、必ずしも3つの言葉が一言では定義できないということです。中には、自身をカテゴライズすることを好まない、もしくは振り分けする必要はないと考える当事者もいるため、本人が自分のことをどのように自認するかが重視されます。あくまで目安としてみるといいでしょう。

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まとめ

本記事では、フェムという言葉の意味や特徴などについて紹介しました。当事者によって言葉の捉え方や定義も異なるため、必ずしもひとまとめにして表現できないことを念頭に置きましょう。LGBTQの中でもさまざまな性のあり方が存在すると言われていますが、レズビアンの中でも多種多様です。1人ひとりのしたい自己表現が実現される社会に近づくためには、まずはさまざまなセクシュアリティについて認知することが大事なのではないでしょうか。