みなさんは「Xジェンダー」という言葉を聞いたことがありますか?私たちは、幼少期から男女で制服や名簿が分かれていたりと、無意識に「男/女」と2つの選択肢のなかで過ごしてきました。ですが、「私は男でも女でもない」「男も女も両方しっくりこない」というような人もなかにはいます。そのときの気分で性別が変わったり、そもそも性別がない人など、さまざまな性のあり方が存在します。そこで、男女の枠に属さないXジェンダーについてお話しします。

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気分で性別が変わるとは

幼少期から今まで、私たちは当たり前のように男女で割り当てられてきました。ですが、男女以外の性別についてはどうでしょうか。ジェンダーについて語られるようになるまで、考えたこともないという人がほとんどかもしれません。まだ日本では十分に浸透していないように感じますが、海外ではすでに性別への考え方が変化しつつあります。その一つの例として、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国では、パスポートに男女以外の性別「X」の選択肢が追加されました。では、男/女ではない性別とは何か。一緒に考えていきましょう。

Xジェンダーについて

Xジェンダーとは、性自認が男女のどちらかに当てはまらないセクシュアリティのことをいいます。生まれたときに割り当てられた性に関わらず、本人がどう自認するかが基準となります。

Xジェンダーと一概にいっても、人によってあり方がまったく異なることもあります。千差万別ではありますが、ここでは主に5つのXジェンダーをあげてみることにします。

①中性

中性とは、自認する性が男女の間に位置します。

②両性

両性は、自認する性が男女の両方に当てはまります。必ずしも男/女それぞれの割合が等しいわけではなく、たとえば「男3割、女7割」のように人によって割合が異なります。

③無性

無性とは、自認する性が男女どちらにも当てはまらないことです。性のあり方が、男女から出発しないことが特徴です。

④不定性

不定性は、自認する性が流動的であることです。その瞬間や気分によって性が揺れ動き、男/女であるときもあれば、男/女ではないときもあります。そして、男女の2つの性別だけでなく、中性や両性、無性の間を行き来することもあり、常に性別が定まっていない性のあり方です。

⑤その他

①〜④であげた以外にも、Xジェンダーの性のあり方は無数にあります。男女に加えて、中性の3つの性で構成されている人、そもそも定義しない人など、個人によって認識は異なります。

FtX、MtX

さて、Xジェンダーを少し理解できたところで、「X」が含まれる言葉の「FtX」「MtX」についても学んでいきましょう。

FtX

FtXは、“Female to X-gender”の略称で、生まれたときに割り当てられた性別が女性で、自認する性がXジェンダーの人のことをいいます。

MtX

MtXは、“Male to X-gender”の略称で、生まれたときに割り当てられた性別が男性で、自認する性がXジェンダーの人のことをいいます。

ホルモン注射や治療を受けた人のみがトランスジェンダーであるという誤解をよく耳にしますが、生まれたときの性と性自認が異なる人も含まれます。

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英語でXジェンダーはなんという?

実は、Xジェンダーは日本で生まれた言葉なのです。あくまで和製英語なので、英語でXジェンダーと完璧に一致する単語は見つからないようですが、当てはめるとすれば「Gender queer」や「Third gender」があげられるそうです。

「Third gender」は「第三の性」と直訳され、新たな性別が誕生するという認識ではなく、男女2つの性以外の性を自認する総称的な言葉として使われています。海外で性自認を伝える機会がある場合、Xジェンダーといっても伝わらない可能性があるので、他の代わりとなる言葉を選ぶか、もしくはもう少し踏み込んだ説明が必要となるかもしれません。いずれも、どのように自分を表現するかは個人の自由です。

気分で性別が変わるのはダメなこと?

「気分で性別が変わるなんておかしい」「真っ当な性別ではない」と、Xジェンダーについて偏見をもつ人はいます。当事者ではない人がXジェンダーについて100%理解することは難しいですが、知ろうとすることはできます。自分とは違うことが前提で、その違いを互いにリスペクトし合うことが大事なのです。本人のいないところで、その人の性のあり方を決めつけたり、想像で判断するのではなく、まずは知ることから始めましょう。そこで、Xジェンダーに関する誤解について紹介します。

流行りではない

女/男以外の概念やクィアという言葉が最近広まってきました。そのことから、Xジェンダーを自認することが流行りだと主張する人もいます。しかし、今までにXジェンダーという言葉がなかったことが、Xジェンダーが存在しなかったわけではありません。昔から男女に性別を当てはめることに違和感を抱えていたけど、ただ言葉を知らなかったり、言語化できないことから、その人の心の内にとどまっていた場合がたくさんあります。今まで言葉で表せられなかった性のあり方が、単語としてやっと誕生し、Xジェンダーと表現する人が増えました。

ユニークではない

Xジェンダーであることで、変わっている、個性的だと認識されることを望む当事者は少ないでしょう。上で述べたように、Xジェンダーは流行りではなく、個人のごく自然なあり方なのです。自分自身を女性もしくは男性と認識するのと同様、何も特別なことはありません。自分自身のあり方を表現する1つの言葉でもあり、Xジェンダーと名乗ることで自分を取り繕おうと考える人はいないでしょう。

インターセックスと同じではない

Xジェンダーと混在されやすいのがインターセックス。ですが、この2つはまったく異なることを知っておきましょう。Xジェンダーは男女のどちらかに当てはまらないセクシュアリティを指し、インターセックス(性分化疾患)は、性別の判断材料となる染色体や性器が、男女のどちらかに判断できない人のことをいいます。Xジェンダーとインターセックスが同じだという誤解は、生まれたときの性と自認する性が一致しなければならないという社会的認識から派生したものだと考えられます。

男女の性別を否定したいわけではない

男女に当てはまらないXジェンダーですが、当事者は決して男女の性別を存在しないものとして認識しているわけではありません。たしかに、性別二元論的な考えに否定的な当事者はなかにはいます。しかしそれは社会システムの話であり、性別という概念をなくすことを望んでるわけではないのです。女性、男性を自認する人、Xジェンダーを自認する人など、さまざまな人が存在するなかで、性別の選択肢があること、あるいは性別がないことの選択肢があること。いわゆる、個人の表現の幅が広がることを望んでいます。

【まとめ】気分で性別が変わる?Xジェンダーについて

今回は、Xジェンダーについてお話ししました。ジェンダーだけに関わらず、セクシュアリティや性表現などは、男女のどちらかだけで説明しきれないことはあります。世界に何十億人といるなかで、全ての人が同じ性のあり方をもつことはありません。それぞれがそれぞれの違いをもち、それらを受け入れられる社会へとなることを願っています。この記事を読んで、少しでもXジェンダーについて知るきっかけとなればうれしいです。