レインボーフラッグという言葉を耳にしたことはあるでしょうか。LGBTsの象徴として使用され、現在最もメジャーになっているのが赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫の6色のレインボーフラッグです。

これはLGBTs全体を象徴するものとして使用されていますが、一つひとつのセクシュアリティそれぞれに対応したフラッグもあります。

今回は、その中でもトランスジェンダーのフラッグについて調べてみました。

初めに
IRISでは、すべてのセクシュアリティやジェンダー、人種、国籍、民族、職業、家族構成の人々が自分らしく生きられる社会を実現したいという思いを込めて「LGBTs」と表現しています。

そもそもフラッグってなに?なんの目的で使用するの?

フラッグは英語表記で「Flag」であり、直訳すると旗になります。レインボーフラッグはあらゆるセクシュアリティの人を対象とし、その象徴として使用されることが多いです。

たとえば、企業や団体がLGBTsフレンドリーであることを表明するためにレインボーフラッグを使用したり、またファッションブランドなどにおいては、レインボーフラッグの6色を使用した商品を販売している場合があります。それを身に着けている人がLGBTsフレンドリーであることを表現する1つのツールとして使用することができます。

つまり、LGBTsの尊厳を守り、LGBTsに関係した社会運動のシンボルとして使用されているのです。

初めて使用されたのは1978年、フランシスコで行われたゲイ・パレードでのことでした。その当時は8色展開のフラッグでしたが、広く使用しやすくするために現在の形である6色に変化しています。

トランスジェンダーのフラッグ

トランスジェンダーのフラッグ
ここからは、トランスジェンダーフラッグについて詳細をお伝えしたいと思います。トランスジェンダーフラッグは、LGBTsのなかでもトランスジェンダーを象徴するフラッグとして使用されているものです。

作成したのは、海軍の退役軍人でトランスジェンダー女性であるモニカ・ヘルムズ。1999年にトランスジェンダー・プライド・フラッグとして制作されました。旗のアイディアはある日目覚めたときに突然思い浮かんだそうで、それがきっかけでフラッグの誕生となりました。

初めて公に使用されたのは、2000年、アメリカのアリゾナ州フェニックスで行われたプライドパレードでのことでした。ここで初めて掲げられたオリジナルのフラッグは現在ではワシントンDCにある国立アメリカ歴史博物館に収蔵されています。

トランスジェンダーフラッグの広まり

その後もモニカさんは積極的にさまざまな場面でこのフラッグを使用しました。それによって多くのトランスジェンダーの目に留まり、共感を得て広まりを見せることになりました。

パレードやイベントのたびに歴史的な役所や建造物の上に掲示することでさらに広がることになり、現在ではトランスジェンダーフラッグとして最も知られているフラッグはこれ、というほどの認知度になっています。

トランスジェンダーフラッグに使われているカラーに込められた意味

レインボーフラッグの6色にも赤は生命、オレンジは癒やし、黄色は太陽、緑は自然、青は調和、紫は精神の意味があるように、トランスジェンダーフラッグにもそれぞれの色に込められた意味があります。

トランスジェンダーフラッグ

青色は男の子

ストライプ柄のなかでも1番上と1番下になる水色は、男の子の伝統的な色とされています。

ピンクは女の子

ライトブルーの次にあるピンクの色は、女の子の象徴です。
ライトブルーとピンクは、トランスジェンダーフラッグ以外のLGBTsに関連したフラッグでも同じような意味として使用されることがあります。

白は性別移行中の人たちや未定義の性別を持つと考える人達

真ん中にある白は、ジェンダーの移行中にあたる人や、自分自身をニュートラルに捉えたり、ジェンダーを定義しないと考えている人を象徴しています。また、白のなかには性分化疾患(DSD)というインターセックスの人も含まれているようです。

その他のトランスジェンダーフラッグ

その他のトランスジェンダーフラッグ
ここまで、トランスジェンダーフラッグの中で最もメジャーでよく使用されているものを紹介しました。しかし、トランスジェンダーフラッグは1つではありません。国や地域、制作した人によってそれぞれ異なっており、それぞれの思いが込められています。

ここでは、トランスジェンダーフラッグの種類をご紹介します。

イスラエル版

イスラエルのトランスジェンダーと、ジェンダークィアの人々がつくったとされるトランスジェンダーフラッグがあります。ネオグリーンの背景に、惑星記号である金星、火星が表現されています。

ネオグリーンは公共の場でも目立つようにと色付けされ、通常の緑よりも蛍光色に近いです。また、惑星記号が多様なトランスジェンダーの人々を表現しています。

Michelle Lindsay版

トランス・フラッグ(Trans Flag)と言われているのが、オンタリオ州オタワのグラフィックデザイナーMichelle Lindsayが制作したものです。

上部には、サンセットマゼンタと言われる色、さらに下にはオーシャンブルーの2色のストライプで、こちらも惑星記号があしらわれています。サンセットマゼンタは女性を表し、オーシャンブルーは男性を示しています。

初めて使用されたのは比較的最近のことで、2010年、トランスジェンダー追悼の日にオタワ周辺のトランスジェンダーのコミュニティによって使用されました。オタワ警察によって旗の発表、掲揚する式典が行われています。

これをきっかけに年々追悼の日前後にはトランス・フラッグを掲揚することが増えています。

Johnathan Andrew版

3つ目に紹介するのは、「Captain John」というハンドルネームでトランスジェンダーのためのウェブサイトを運営していたJohnathan Andrewが制作したフラッグです。

トランスジェンダーのコミュニティのなかで、自分のアイデンティティがトランスジェンダーであるとする人のために、1999年、この旗を制作して公開しました。トランスジェンダー・プライド・フラッグと呼ばれることが多く、ピンクと青の7本のストライプがあしらわれています。

また右上にはラベンダーカラーの金星と火星を組み合わせた惑星記号が表現されています。モニカ・ヘルムズが作成したトランスジェンダーフラッグに似た配色ですが、色の使い方やストライプの模様が違っています。

フラッグを制作・公開した当時、有名なレインボーフラッグなどは少しずつ知られるようになっていましたが、トランスジェンダーのためのフラッグはインターネットなどをくまなく探しても見つからなかったといいます。そのため、トランスジェンダーのコミュニティ全体を表現することを目的に制作したそうです。

【まとめ】トランスジェンダーの象徴であり、存在を代弁するフラッグ

【まとめ】トランスジェンダーの象徴であり、存在を代弁するフラッグ
今回は、トランスジェンダーフラッグを紹介してきました。LGBTs全体を表現するレインボーフラッグは目にする機会も増え、多くの人の知る存在となりましたが、トランスジェンダーフラッグも同様に、多くの人の目に触れ、象徴となるようにと願って制作されています。

モニカ・ヘルムズが制作したトランスジェンダーフラッグがよく使用されているようですが、それ以外にも国独自に制作されて使用されているフラッグや、デザイナーがそれぞれの思いを持って制作し、広めようとしているフラッグなどもあるということがわかりました。

いずれも、男の子を表すライトブルー、女の子を表すピンク、さらに移行期に当たる人やジェンダーを定義しないとする人を表現する白、さらには金星と火星の惑星マークなどが使用されている場合が多く、それぞれ同じように思いを持って制作されていることがわかります。

レインボーフラッグだけは知っていた!という人も、これを期にトランスジェンダーフラッグについて知っていただけたら嬉しいです。