性の多様性に関する理解が深まる中、医療界における重要な動きが注目されています。この度、「GID学会」という医療関係者の集まりが、その名称を「日本GI(性別不合)学会」へと改名することを発表しました。
この改名は、トランスジェンダーの人々に対する社会的な認識と医療へのアプローチにおける大きな転換点を示しています。この記事では、この歴史的な名称変更の背景、意義、そしてこれからの期待について深く掘り下げていきます。
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初めに |
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時代の変化とともに進化する用語 - GID学会の改名
この度、性同一性障害(Gender Identity Disorder)を専門とする医療関係者の集まりである「GID学会」が、その名称を「日本GI(性別不合)学会」へと変更することが決定されました。この改名の背景には、国際的な医療診断基準の変化があります。
世界保健機関(WHO)やアメリカ精神医学会などの権威ある機関は、従来の「性同一性障害」という用語を見直し、より適切な表現として「性別違和」や「性別不合」を採用し始めています。これには、トランスジェンダーの人々が直面する精神的な苦痛や社会的な課題に対する理解が深まり、より敏感で包括的なアプローチが求められていることを表しています。
GID学会の改名は、この国際的な動きに呼応する形で行われたものであり、日本における医療界の進歩と社会の変化を象徴しています。この新しい名称は、トランスジェンダーの人々に対する、より適切な理解と支援の必要性を強調し、医療従事者や社会全体に対して、性の多様性に対する新たな視点を提供することでしょう。
またこの改名は、トランスジェンダーの人々が直面するスティグマや差別に対する意識の高まりを反映しています。従来の「性同一性障害」という用語は、しばしば誤解や偏見を生む原因となっていました。新しい「日本GI学会」という名称は、これらの問題に対するより敏感なアプローチを促し、トランスジェンダーの人々が直面する困難に対する理解と支援を深めるきっかけとなることでしょう。
「性同一性障害」の誕生と進化
「性同一性障害」という用語は、1980年代に医療界で広く使われ始めました。性同一性障害という用語は、トランスジェンダーの人々がホルモン治療や性別適合手術を受ける際の診断名として採用され、性の多様性に対する医学的な理解を深める一助となりました。しかし同時に、トランスジェンダーの人々を「精神障害」のカテゴリーに分類することで、社会的なスティグマや差別を生む原因ともなっていました。
性同一性障害という用語の使用は、トランスジェンダーの人々の生きづらさを増大させる一因となり、トランスジェンダーが直面する精神的な苦痛や社会的な課題に対する誤解を招くことにもなりました。そのため、医療界や当事者の間で、性同一性障害という用語の見直しが求められるようになりました。
2013年には、アメリカ精神医学会が発行した「精神障害の診断および統計マニュアル」第5版(DSM-5)で、「性同一性障害」は精神疾患としての位置づけから削除され、「Gender Dysphoria(性別違和)」という新たな用語が導入されました。これは、トランスジェンダーの人々が経験する苦痛や困難に焦点を当て、より適切な支援と理解を促すための変更でした。
さらに、2021年には世界保健機関(WHO)が「国際疾病分類」11版(ICD-11)を発効させ、「性同一性障害」を削除し、「Gender Incongruence(性別不合)」を性の健康に関する分野に加えました。この変更は、トランスジェンダーの人々の経験を「疾病」や「障害」としてではなく、性の多様性の一環として捉えることを目指しています。
中塚幹也教授の貢献と見解
GID学会の改名において、中心的な役割を果たしたのが、岡山大学大学院の中塚幹也教授です。中塚教授は、長年にわたりトランスジェンダーの問題に深く関わり、当事者と寄り添う姿勢で知られています。中塚教授の貢献は、医療界だけでなく、LGBTQコミュニティ全体においても高く評価されています。
中塚教授は、トランスジェンダーの人々が直面する困難に対して、常に前向きで実践的なアプローチを取り続けてきました。中塚教授は、トランスジェンダーの人々の生きづらさや社会的な課題に対して、公的な場で積極的に発言し、その解決に向けて努力してきました。例えば、トランスジェンダー国会(院内集会)への登壇や、岡山レインボーフェスタへの参加など、中塚教授の活動は多岐にわたります。
中塚教授は、今回のGID学会の改名について、「世界と同じように性別不合も理解が広まってほしい」との見解を示しています。この発言は、中塚教授がトランスジェンダーの人々に対する社会的な理解と支援の拡大を強く望んでいることを示しています。中塚教授は、用語の変更が単なる形式的なものではなく、社会全体の意識の変化を促す重要なステップであると考えています。
新しい時代への一歩 - 「日本GI学会」への期待
「日本GI学会」の新しい名称は、トランスジェンダーの人々が直面するスティグマや差別を減少させ、トランスジェンダーの生活の質を向上させるための具体的な取り組みの一環として期待されます。この改名は、医療従事者や社会全体に対して、性の多様性に対する新たな視点と敏感なアプローチを促すものです。
今後、「日本GI学会」は、トランスジェンダーの人々の健康と福祉を支援するための研究や教育において、より大きな役割を果たすことが期待されます。また、社会全体における性の多様性に関する教育や啓発活動を通じて、トランスジェンダーの人々に対する理解と支援を一層深めることができるでしょう。
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