24カ国で行われた新しいPew Researh Centerの調査によると、同性婚に対する態度は世界中で大きく異なっています。調査対象国の中で、同性婚への支持はスウェーデンで最も高く、成人の92%が支持し、ナイジェリアでは、わずか2%しか支持されていないことが分かりました。

本記事では、世界が同性婚についてどのように見ているのか解説していきます。本記事は海外メディアPew Researh Centerの『How people in 24 countries view same-sex marriage』という記事を翻訳し参考にして書いています。

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同性婚に関する調査データの取得方法

このPew Research Centerの分析は、北米、ヨーロッパ、中東、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア太平洋地域の24カ国での同性婚の合法性に関する公衆の意見に焦点を当てています。2019年以来、アフリカやラテンアメリカの国々が新型コロナウイルスの影響で調査から除外されていましたが、今年の調査では、それらの国々も含まれています。

非米国データの分析は、2023年2月20日から5月22日までの期間に行われた27,285人の成人を対象とした全国代表調査に基づいています。カナダ、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、日本、オランダ、韓国、スペイン、スウェーデン、イギリスのを対象として電話で調査が行われました。ハンガリー、ポーランド、インド、インドネシア、イスラエル、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコでは対面での調査が行われました。オーストラリアでは、オンラインを通して複数の方法で調査をしました。

アメリカでは、2023年3月20日から26日までの期間に3,576人の米国成人を対象に調査が行われました。この調査に参加したすべての人は、住所の全国ランダムサンプリングを通じて募集されたCenter's American Trends Panel (ATP)のメンバーです。調査は、性別、人種、民族、党派の所属、教育などのカテゴリーに基づいて、米国の成人人口を代表するように調整されています。

2015年に最高裁判所が全国的に同性婚を合法化した米国では成人の63%が同性婚を支持

アメリカでは、2015年に最高裁判所が全国的に同性婚を合法化してから、63%の成人がそれを支持しており、34%が反対しています。しかし、意見は政治的・人口統計的な背景によって大きく異なっています。

例えば、民主党の方や民主党寄りの独立派の方は、共和党の方や共和党寄りの方よりも、同性婚の権利を支持する確率がほぼ2倍高くなっています(82%対44%)。また、40歳未満のアメリカ人の約3/4(73%)は、ゲイやレズビアンが合法的に結婚することを許可すべきだと考えています。これは、40歳以上のアメリカ人のうち、同意する方の割合(57%)よりも16ポイント高い数字です。

以下は、新しい調査に基づいて、同性婚に対する態度が世界中でどのように異なるかを詳しく見ています。この分析では、地理、人口統計学的要因、政治的イデオロギー、宗教によって態度がどのように異なるか、そして時間の経過とともに見解がどのように変化したかを調べます。

新しい調査では西ヨーロッパが同性婚を高い支持

ヨーロッパでの支持率

西ヨーロッパの人々は、同性婚の忠実な支持者として際立っています。少なくとも10人に8人の成人が同性婚を支持しています。

スウェーデン 92%
オランダ 89%
スペイン 87%
フランス 82%
ドイツ 80%

これらの国では同性婚が認められています。イタリアでは、成人の74%が同性婚の権利を支持していますが、未だ認められてはいません。イギリスでは73%の成人が同性婚を支持しており、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドで同性婚が認められています。

対して、ポーランドやハンガリーでは、31%と低めの支持率となっており、同性婚は認められていません。

アメリカ大陸

北米では、カナダ人の約10人に8人(79%)が同性婚を支持し、米国とメキシコの両方で63%が支持しています。同性婚は3か国すべてで認められています。

南アメリカでも、アルゼンチン人の67%とブラジル人の52%が、ゲイとレズビアンの結婚の権利を支持しており、両国共、同性婚が認められました。

アジア太平洋

オーストラリアと日本の成人の約3/4(それぞれ75%と74%)が同性婚を支持しています。オーストラリア人の中で、強く支持していると言う人が52%いるのに対し、日本では「やや支持する」と答えた人が57%で、支持はやや控えめです。オーストラリアは同性婚を認めていますが、日本ではまだ認められていません。

インドでは、53%の成人が同性婚を認めるべきだと考えており、43%が反対しています。インドの最高裁判所は現在、同性婚を認めるかどうか審議中です。韓国では、同性婚は認められておらず、この問題が大きな話題となっています。韓国では、40%が同性婚を支持し、59%が反対しています。

インドネシアは、同性婚に対して非常に拒否的なスタンスです。インドネシア人の約9割がゲイやレズビアンの結婚を許可することに反対しており、その中でも88%が強く反対していると答えています。同性婚を支持するインドネシア人はわずか5%しかいません。

アフリカと中東

南アフリカは、同性婚が認められているアフリカで唯一の国です。しかし、南アフリカ人の58%が同性婚に反対しているという、不思議な状態となっています。

ナイジェリア人とケニア人は、調査対象のアフリカ諸国の中で最も同性婚に否定的です。同性愛が違法であるナイジェリアでは、同性愛者とレズビアンが結婚する権利を支持すると言う成人はわずか2%。そしてケニアでは、わずか9%しか同性婚に対して肯定的ではありません。

中東では、イスラエル人も56%が同性婚に対して否定的ですが、同性婚が認められる状態となっています。

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同性婚に対する態度は人口統計学的要因によってどのように異なるか

年齢的要素

調査対象の12カ国では、40歳未満の成人は、年配の成人よりも、ゲイやレズビアンが合法的に結婚することを許可することに賛成する傾向が高い事が分かりました。

年齢差はポーランドが最も大きく、40歳未満の約10人に6人が同性婚を支持しているのに対し、40歳以上の場合は、10人に3人しか同性婚を支持していません。

性別的要素

調査対象国のうち14カ国では、女性は男性よりもゲイやレズビアンの結婚に肯定的であることが分かりました。例えば、オーストラリアでは、男性の67%と比較して、女性の83%がそれを支持しています。

ポーランド、南アフリカ、韓国、アルゼンチン、ギリシャ、ドイツでも同様の性差があります。

教育と収入による違い

調査対象の17カ国では、正式な教育を受けた人は、教育の少ない人よりも、ゲイやレズビアンの結婚を許可することを支持する可能性が高いことが分かりました。

同様に、13カ国で所得が全国平均を上回る人々は、所得が国の中央値を下回る人々よりも同性婚を支持する可能性がはるかに高いことが分かりました。

宗教的な違い

同性婚への支持は、宗教的価値観の高い国では低くなる傾向にあり、宗教を重要と考える人が少ない国では支持率が高くなる傾向にあります。

ナイジェリアでは、成人の99%が生活の中で宗教がやや重要だと言っており、同性婚を支持しているのは僅か2%です。対して、スウェーデンでは、成人の20%が宗教が重要だと考えており、92%が同性愛に肯定的です。

このように、宗教に所属していない人が多い国は、宗教が大切という考えの人が多い国よりも同性婚を支持している人の割合がはるかに高い傾向にあります。

まとめ

世界各国での同性婚に対する意見は大きく異なることが、Pew Research Centerの調査で明らかになりました。

スウェーデンでは92%の成人が同性婚を支持しているのに対し、ナイジェリアではわずか2%しか支持されていません。オーストラリアや日本では、成人の約3/4が同性婚を支持していますが、オーストラリアでは52%が強く支持しているのに対し、日本では57%がやや支持しています。オーストラリアは同性婚を認めていますが、日本ではまだ認められていません。

インドでは、53%の成人が同性婚を認めるべきだと考えており、インドの最高裁判所は現在、同性婚を認めるかどうか審議中です。韓国やインドネシアでは、同性婚に対する支持率は低く、特にインドネシアでは9割近くが反対しています。

過去10年間で、同性婚に対する公的支持は増加している傾向が見られます。

参考:『How people in 24 countries view same-sex marriage』