SNSなどで「プライド月間」というワードを目にすることってありませんか?
LGBT関連の”何か”ということは分かってもその概要や、何故その時期がそう呼ばれているのか、ご存知の方は意外と少ないかもしれません。
今回は、そんな「プライド月間」について説明していこうと思います。

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【プライド月間】Pride Monthとは?

ではまず、「プライド月間」とはなんなのか、どうしてこの期間なのかについてお話ししていきます。

「プライド月間」というのは、性的少数者・LGBTsの権利を啓発する活動が世界中で行われる期間のことで、毎年6月に行われます。
企業から関連グッズが売り出されたり、キャンペーンやイベントが催され、SNS・メディアで特集されるなどして盛り上がるので、なんとなく見た事・聞いた事がある人も多い事でしょう。
イベントなどでは、「プライド月間」のシンボルになっているレインボーカラーが用いられます。
また、パレードなども行われ、東京を中心に盛り上がります。

レインボーカラー以前の象徴マークが存在した?

レインボーカラー以前の象徴マークが存在した?

 

レインボーカラーと言えばLGBTsを象徴するマークとしても用いられていますが、実はレインボー以前に別のマークが存在したといいます。
それは「ピンクトライアングル」と呼ばれるもの。
こちらは名前の通りピンクの逆三角形をしており、ナチス収容所で男性同性愛者の方に付けられていたマークに由来するのだそう。
また、女性同性愛者にはブラックトライアングルで表されました。
そんな同性愛収容者の多くは強制労働中や、収容所内で組織的に衰弱死や懲罰死させられ、虐殺までされたそうです。

人権が脅かされ、迫害やヘイトがあったということを忘れず、別の意味合いを持たせる事で当事者を開放していくべく、偏見・差別・暴力などに屈しないシンボルとして使われていたのが「ピンクトライアングル」だったのです。

プライド月間が6月の理由は……

では、なぜ6月が「プライド月間」と呼ばれるのでしょうか
そこには、ある事件が関わっています。
その事件というのは「ストーンウォールの反乱」と呼ばれている事件です。

1969年6月28日未明、その事件は起こります。
いつものようにニューヨクのゲイバー”ストーンウォール・イン”に「罪状は酒類販売管理法違反」の名目で警官が踏み、店員だけではなく客の性的少数者たちも店外へ連れ出されました。
警官へ、店員がお目こぼしの賄賂を支払う事で騒動は収まるように思われましたが、最後に連れ出された客の1人が叫びます。

Why don’t you guys do something?

「なんにもしないのか」
その声に、溜まっていた鬱憤が一気に暴発するかのように、性的少数者たちが一斉に警官に対し、反撃を加えたのです。
それから3日間、暴動は続いたと言います。

これが、6月が「プライド月間」と呼ばれるようになった由良の事件「ストーンウォールの反乱」です。
1960年代後半に生まれたという「ゲイ解放運動(Gay Liberation Movement)」という活動を盛り上げたきっかへの1つでもあります。
そして、そんな「ストーンウォールの反乱」を記念して6月を「Pride Month(プライド月間)」と銘打たれ、今日では毎年世界各地で性の多様性に関する多くのイベントや、キャンペーンが行われるようになったのです。
ちなみに、「なんにもしないのか」と叫んだのは日本で呼ぶところの”ボイ”に該当するブッチのレズビアン だったと言います。「ゲイ解放運動のきっかけ」と言いましたが、多くのトランスジェンダーたちも関わっている事件ですので、決して”男性同性愛者だけのもの”ではなく、『性的少数者全体の人々の力』によって起きた「きっかけ」だったのだと認識するのがいいかもしれません。

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プライド月間(Pride Month)って具体的にはどんなことをするの?

ここまで、「プライド月間」についてお話をしてきましたが、具体的にはどんなことがされているのか、パレードなどに以外に何があるのか気になりますよね。
企業での取り組みなどを、次から説明していきます。

日本企業のプライド月間(Pride Month)

「プライド月間」中、日本でも様々な企業がキャンペーンなどを行っています。
SNSなどで見た事がある方もいるかもしれませんが、簡単にご紹介していきます。

楽天グループ株式会社

ポイントの貯めやすさなどで度々話題になる楽天グループ。
そんな楽天ではLGBTsについての理解促進や啓発を目的とした「Walk Together with Pride」という活動を実施。
「オンラインプライドパレード」というものを開催していました。
自由に個性を表現した「ぬりえ」をフラッグに見立ててSNSでシェアすることで、パレード感を演出すると同時に、多様性へのサポートを表現しているのだそうです。
ぬりえの注目作品は特設ページからご覧いただけます。
素敵な作品がたくさんありましたので、是非一度見てみてください。
自分でも参加したくなるかもしれません。

また、他にも同キャンペーンの一環として、「ラクマ」で商品の梱包に使える「楽天レインボーテープ」を一部の楽天モバイルショップで無料配布もしていました。

渋谷109

「渋谷109」では「シブヤ・プライド・マンス」として、関連アイテムの販売に加えて館内外で性別にとらわれないスタイリングでのキャンペーンビジュアルの掲出、オンラインイベントの配信も行っていました。
若者の街からも、こうした支援があるということを知れるのは嬉しいですよね。
また、関連したコラボ商品なども出ていたので、おしゃれ好きさんには嬉しいイベントとなったことでしょう。

NOMURA

不動産で有名な野村ホールディングス株式会社では、「資産形成」をテーマにライフプランを考えるオンラインイベントが行われていました。
また、SNSアカウントのロゴを「プライド月間」である6月いっぱい、レインボーに変更するなど、アライ企業としての支援表明も行っていました。
同性同士、特に女性に関しては男性よりも収入が少ないことが多い現状で、将来を不安視する方も多い事でしょう。
そんな中で、イベントで資産形成について一緒にライフプランを考えられるというのは、参加もしやすくてありがたいですよね。

ブッキング・ドットコム

「すべての人に、世界をより身近に体験できる自由を」を企業理念にする、世界最大級の宿泊予約サイトBooking.comを運営する、日本法人ブッキング・ドットコム・ジャパン株式会社では、「プライド月間」を記念してLGBTs旅行者を対象に調査を実施したといいます。
LGBTsの旅行者へ行ったこの調査では、旅に対しての考え方や懸念、好み、過去の体験、実情、旅の未来への期待に焦点が当てられました。
結果、LGBTsの旅行者にとって旅の「あるべき姿」と「実際の姿」は全く違うものであると分かったそうです。
明るい兆しも見られ、大きな企業がこうして調査をし「決してネガティブな状況ばかりではない」と示してくれると、少し気持ちが明るくなります。

ANA

航空会社、ANAグループでは「プライド月間」に合わせてSNSの企業ロゴをレインボー柄に変更し、LGBTsを尊重した取り組みを発信していたようです。
これまでも、ダイバーシティを尊重し誰にとっても働きやすい職場を目指して様々な取り組みを行なってきたANA。
同性パートナーを配偶者として認める社内制度も導入しており、他にも多様性に配慮した施設整備の考え方を定めました。
「プライド月間」に限らず、常にこうして理解し協力してくれている企業があることは心強いですよね。

海外企業のプライド月間(Pride Month)

AMI PARIS

気取らないフレンドリーなムードで、パリジャンらしいエフォートレスなスタイルを提案しているブランド、AMI PARISでは、「プライド月間」を記念して、男子高飛び込みの選手トーマス・デーリー選手とのコラボニットを発表したそうです。
デーリー選手本人も2013年に同性愛者であることをカミングアウトしており、17年に男性と結婚をしています。
元々モノ作りが好きだったというデーリー選手。このコラボは自然な流れで実現したと言います。
レインボーカラーをあしらった、素敵なデザインのニットで、オシャレ好きさんやスポーツ好きさんにはたまらないコラボとなったことでしょう。

UGG

シューズが有名なブランド、UGGではプライドコレクションを発売しました。
そのコレクションは”オールジェンダープライドコレクション”。
サンダルをはじめ、アパレルとバッグも用意していたというので、UGGが好きな人は嬉しいですよね。
また、UGGはアメリカのトレバー・プロジェクト、日本の東京レインボープライドを支援しており、今年はトレバー・プロジェクトに12万5000ドルを寄付したと言います。
東京レインボープライドには”オールジェンダープライドコレクション”の一部売り上げを寄付したそうです。

VERSACE

イタリア・ミラノで設立されたラグジュアリーブランドVRSACEでは、LGBTsコミュニティーをサポートするヴェルサーチ財団が誕生
「プライド月間」に合わせて、LGBTsコミュニティーの認知向上と支援を目的として創設し、活動費として1000万ドルの寄付を約束。
具体的な活動内容は随時発表されるとのことです。
「プライド月間の間だけ」という参加の仕方も多く見られますから、こうして継続する形で活動をする企業は稀かもしれません。

H&M

日本でも人気のブランド、H&Mでは「私が選んだ家族」をテーマにしたキャンペーンページを公開。
血縁、生物学的結びつきにとらわれない、”愛すること”を自ら選んだ人たちで構成された『家族』という概念に焦点を当てたキャンペーンです。
写真や動画、インタビューで紹介。LGBTsコミュニティーの平等な権利と構成な扱いを支持する、国連のフリー・アンド・イコール・キャンペーンに10万ドルの寄付を行いました。

LUSH

ボディケア用品でSNSでも話題に上がっているLUSHでは、同性婚法制化の「サイレントデモ」とキャンペーンを開催。
東京と大阪で同性婚の法制化に向けた街宣活動を開催したのだそうです。
LUSHスタッフのほか、公益社団法人マリッジ・フォー・オール・ジャパン、LGBT支援団体らが参加し、婚姻の平等を訴えました。
また、クリエイターが「婚姻の平等」をテーマに制作したアートをポストカードやデータとして配布。
カジュアルに賛同の輪を広める企画も行いました。

一緒に考えたい『ピンクウォッシング』

 

「プライド月間」に企業が行う取り組みに対し、「性的マイノリティを自社のアピールに利用しているだけ」といった批判をされることがあります。
その際によく用いられる言葉が『ピンクウォッシング』。
企業が性の多様性について啓発するのは喜ばしいことなのでは?と思う人も多いと思います。
有名企業であればあるほど、人の目に触れやすく、認知してもらいやすいです。
ですが、「プライド月間」に合わせた企業の取り組みが広がっていくにつれ、その内容に疑問を抱く声も年々増えてきています。

元々はイスラエル政府による「LGBTsフレンドリー」というアピールが、パレスチナの占領というネガティブなイメージを覆い隠す効果を持っていることを批判的に表したものなのだそうです。
英語で「ごまかす」「取り繕う」という意味の『ホワイトウォッシング』という言葉と、同性愛者のシンボルカラーとされているピンクを合わせた言葉で、「自らに不都合な事柄を隠すために、あえて良い印象を与える同性愛者のシンボルカラーをまとっている」ことを、暗示させているのだと、論文「中東で最もゲイ・フレンドリーな街」の作成者・保井さんは言います。

テレビでも、一時「SDGsだ」「平等だ」と特集が組まれたりしていた記憶がありますが、そう言ったものは期間中だけということも少なからずあるかと思います。
「ブランドのためじゃないか」「視聴率のためじゃないか」と感じてしまうのも頷けます。

しかし、企業でも「どうすれば」というのが分からない状況があるのかもしれません。
支援しているけどなかなか形にできず、「プライド月間」という時期に声を上げてくれているのかもしれないとも考えられます。

【まとめ】プライド月間(Pride Month)とは?

「プライド月間」と名付けられたそこには1つの事件があり、理解のまだなかったその時代に声を上げた人々の勇気により、今に伝わっているのですね。
アジア圏ではまだまだ理解のある国は少なく、日本国内ではようやく少し広まってきたかな?というのが現状。
それでも、やはり声を上げる人が増えているというのは過去に比べれば大きな進歩です。
胸を張って、自分の人生を、自分自身を発信していける国になってほしいです。