「ポリアモリー」というセクシュアリティをご存知でしょうか。

ポリアモリー(Polyamory)とは、「poly(ギリシャ語で「複数」の意味)」と「amory(ラテン語で「愛」の意味)」を合わせた言葉です。日本語では「複数愛」と直訳されます。つまり、同時に複数の人と交際したり、恋愛関係を築いたりする人。また、そうしたライフスタイルのことをいいます。

複数の人と交際するというと、なんとなく浮気や不倫を想像してしまうかもしれません。しかし、ポリアモリーは1つのセクシュアリティとして認知されています。

浮気や不倫との決定的な違いは、ポリアモリーはその関係性にかかわるすべての人の合意が取れて、はじめて成立する人間関係であるということです。

今回は、ポリアモリーと浮気の違いをはじめ、対義語にあたるモノアモリーなどについてもご紹介します。LGBTお部屋探し

ポリアモリーとは

まずは、ポリアモリーについて知識を深めてみましょう。初めて聞いたという人も、聞いたことだけあるという人も、ポリアモリーの生き方や生活スタイルについて知ってみてください。

ポリアモリーの意味

ポリアモリーとは、冒頭でお伝えしたとおり、複数の人と同時に恋愛関係を築いたり、交際したりする人や、そうした生活スタイルのことをいいます。

重要なのは、関わるすべての人と合意が取れていることで、合意がない複数の人との恋愛や交際は浮気となってしまいます。独り身を装って、誰かに近づいたりすることもポリアモリーの考え方や行動に反します。相手や、関係を持つ人みんなを裏切るような行動はしないのがポリアモリーの原則です。

ギリシャ語で複数を意味する「Poly」とラテン語で愛を意味する「Amor」をあわせてできた、英語の造語です。日本語に直訳すると、多重恋愛などと言い換えることもできます。

ポリアモリーの恋愛観を持っていたり、そうした生活を送っている人のことを、ポリアモリストと呼ぶこともあります。

ポリガミーとの違い

ポリアモリーと似た言葉に、ポリガミーがあります。これは、多重婚を表す言葉で、ポリガミーはとくに複数の人と婚姻関係にある場合に用いる言葉です。日本では現状多くは見られない家族のかたちですが、一夫多妻制や一妻多夫制などがポリガミーにあたります。

一見、ポリアモリーにも似ているように感じられますが、違いもあります。ポリガミーに当てはまる一夫多妻制では、ひとりの夫が中心となって交際し、妻同士が交際することはない関係性であるのに対し、ポリアモリーは、一人一人の性的指向に沿って一人一人が主体的に恋愛をすることができる関係性です。

モノアモリーとの違い

ポリアモリーが、複数の人と恋愛することを意味するのに対し、モノアモリーはその逆ともいえる言葉です。一人の恋人と関係を深めるという意味です。一人の人と交際したら、他に恋人といえる存在をつくることはない、ということです。

日本においては、このモノアモリーの考え方を持つ人が多いのではないでしょうか。ポリアモリーについて言葉が浸透しなかったり、イメージを持ちづらかったりするのは、こうした背景も関係しているのかもしれません。

また、一夫一妻制を意味するモノガミーという言葉もあります。現在、日本では同性婚が認められていないことも含めて、モノガミーが一般的となっていますが、モノアモリーやモノガミーといった恋愛関係が当たり前というわけではありません。たくさんある関係性のなかの1つということです。LGBTお部屋探し

ポリアモラスな関係を築くための6つのルール

ポリアモラスな関係を築くためには、互いの信頼関係が必要です。それぞれの関係性は異なるため、別のパートナーとはうまくいかないケースもあるかもしれません。しかし、今から紹介する6つのルールを意識するだけでも、より良い関係性が築ける可能性が高まります。

1. 正直であること

正直であることは、ポリアモラスな関係を成功させるために欠かせません。将来起こりうる問題を避けるという意味でも、パートナー全員に対して秘密を持ってはいけないということです。そこにいる全ての当事者が互いに心地よいと感じるように、コミュニケーション、オープンな対話、正直であることが必要です。

複数の恋愛関係を同時に進めることは、時に精神的にも肉体的にも難しいものです。事前に境界線を決めておくことで、問題が起こった時にも負担を感じたり、利用されたりすることがなくなります。

2. それぞれのパートナーとの関係性を尊重する 

当事者の中には、詳細にルールを決めている人もいる一方、ある程度のルールにとどめている人もいます。 多くの場合、ポリアモラスな関係を実践し始めたばかりの人や、新たなポリアモリーの関係を始めようとしている人は、しっかりとルールを設けるケースが珍しくありません。

そのため、ポリアモリーの関係性は、時間の経過とともに変化する可能性があることを認識することが重要です。その都度ベストな関係性を築けるように、互いに継続的なコミュニケーションをとることが求められます。話し合いには、例えば、誰かと一緒にいる時間が長すぎることへの懸念や、デートに誘われないことへの不安など、自身の感じることを伝えることが大切です。

一人一人の状態を尊重し、それが他者に対する行動にどのような影響を与えるかを認識することは、愛する人とのつながりをうまく築くための基本です。このようなステップを踏むことで、困難を一緒に乗り越え、さらに関係性を強くすることができます。

3. 意思は同意のうえで

ポリアモラスな関係を築くには、同意を優先することが不可欠です。パートナーとの関係性において、自分だけの意思を押し付けることはしてはいけません。お互いが合意のうえで他の人と付き合ったり、新たな関係性を築いたりしましょう。

4. 自分の行動に責任を持つ

ポリアモラスな関係では、自分の行動に責任を持つことが重要です。これは継続的に行うべきであり、パートナー全員が意見を伝えやすい環境を作るよう、常に対話や思いやりのある行動が必要です。自分の行動が相手にどのような影響を与えるかを考えながら、健全な人間関係を維持しましょう。

5. 約束を守る

どのような関係においても、妥協が必要になることがあります。ポリアモラスな関係でこのようなことが起こった場合、複雑に感じるかもしれません。しかし、率直にコミュニケーションをとることで、物事をスムーズに進めることができます。

パートナーと意見が合わなかったとしても、互いに尊重し合うことが必要です。ポリアモラスなカップルの絆を深めるためにも、たまには2人の時間を確保することも効果的です。そして、妥協点を見つけながらすり合わせをし、決めたことは守るようにしましょう。

6. 変化を受け入れる

ポリアモラスな関係を成功させるには、柔軟性と精神の回復力を保つことが重要です。例えば、嫉妬の感情や不倫の疑いが生じたら、正直に伝えることも大切です。誰もが時間の経過とともに、気持ちに変化が現れることがあります。

そのような変化は決しておかしなことではないため、自分自身を受け入れ、相談すると良いでしょう。心の中に留めておくと、相手も不信感を抱いてしまうかもしれません。健全な関係のためには常に変化を受け入れ、自身の感情に素直になることがポイントです。

ポリアモリーへの誤った認識

日本においては、モノアモリーが多数派であるとお伝えしましたが、日本に限らずポリアモリーが理解を得づらい立場に置かれることもあります。

たとえば、最初に紹介したように、浮気性と勘違いされるなどのことです。ここではポリアモリーを実践して生活する人が抱える問題や、他者からの誤解についてお話してみたいと思います。

浮気性や性に奔放であることは別

ポリアモリーと浮気性との違いもお話してきましたが、それでもやはり、浮気なのではないかと疑念を持つ人も絶たないようです。

また、性に奔放で、フリーセックスだというイメージを持つ人もいるようですが、ポリアモリーとして関係を持つ人みなが性的関係にあるわけではありません。どのような恋愛関係を築いていくかは相手と話し合い、探っていくものです。

ポリアモリーは病気ではない

ポリアモリーの当事者も含め、複数の人を同時に好きになったり、恋愛関係を築きたいと思うことを、一部病気のように感じている人もいるようですが、これは間違いです。

婚姻関係にある夫婦が不倫をしたら、法律違反にあたる場合もあるかもしれませんが、ポリアモリーは関わるすべての人との合意が重要で、関係性はオープンにされているものです。

また、同時に複数の人に恋愛感情を抱くことも、ごく自然なこととして知られています。恋愛感情や恋愛関係には一人一人の形があり、ポリアモリーも病気などではなく、1つの形であるということです。

複数の恋人がいても、その一人一人と愛を育んでいる

複数の恋人を愛するより、一人の恋人を愛するほうが、愛情は深く、親密な関係になれるという考え方も、ポリアモリーを悩ませる1つです。

愛も、愛情もそれぞれですが、ポリアモリーが複数の人に対して同時に愛情を注いでいるのも、自然なことです。多数派とされる考え方や生き方、結婚の制度にとらわれることなく、自分の意思で愛情や性愛の形を選んでいます。

自分や相手が望むパートナーシップを探りながら関係を築くことは、一人一人との愛につながるのではないでしょうか。

1つの人間関係のカタチであるポリアモリー

ここまで、ポリアモリーとは複数の人と同時に恋愛関係を築いたり、そうした生活を送ったりすることであると紹介してきました。

ポリアモリーの反対ともいえるモノアモリーやモノガミーについてもお伝えしましたが、これらは、あくまで1つの人間関係や恋愛関係の形です。現状、日本ではモノアモリーの考え方が多数派となっていますが、モノアモリーでなければいけないわけではありません。

一人一人が、自分自身の意思にそって恋愛関係や人間関係を選択し、主体性を持って行動できるということです。その1つとしてポリアモリーという考え方や、それを実践しているポリアモリストらがいることを知っていただけたら幸いです。