近年、LGBTQの権利や受容性が国際的な議論の中心となっています。特に旅行業界においては、LGBTQフレンドリーな国や都市のランキングが注目を集めており、その中でも「ゲイ・トラベル・インデックス」は多くの人々の関心を引きつけています。

今回は、2023年版のランキング結果が発表され、各国の取り組みや認識の変化が明らかになりましたので、まとめていきます。

初めに
当社IRISでは、多様な性の形を受け入れ、様々な社会的マイノリティを記すためにLGBTsという表現を用いていますが、本記事では参考元がLGBT・LGBTQを使用している為、表記が混在しております。

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LGBTQ旅行ランキングの発表

今年のプライド月間である6月に、LGBTQコミュニティの方々が安心して旅行できる国と都市のランキングが発表されました。このランキングは、LGBTQの旅行者が目的地を選ぶ際の参考となるもので、多くの国や都市がその評価を待ち望んでいました。

特に注目されたのは、「ゲイ・トラベル・インデックス」という名前で知られるランキングです。このランキングは、ドイツの有名なゲイ旅行ガイド『スパルタカス』誌が2012年から発表しているもので、203の国や地域を対象に、LGBTQ+の旅行者がその地域でどれだけ安全に過ごせるかを評価しています。

また、世界で最もLGBTQフレンドリーな都市に関するランキングも発表され、ニューヨークがそのトップに輝きました。この都市ランキングは、英国のクルーズ船旅行会社「Planet Cruise」が実施しました。過去1年間で「LGBTQフレンドリーな旅行先」の検索が91%増加したことを背景に、ランキングが作成されました。

ランキングの結果によって、多くの国や都市がLGBTQフレンドリーな環境を整備するための取り組みを強化することが期待されます。

「ゲイ・トラベル・インデックス」とは

「ゲイ・トラベル・インデックス」とは、LGBTQ+の方々が旅行先として選ぶ際の安全性を示す指標として、ドイツの老舗ゲイ旅行ガイド『スパルタカス』誌が2012年から発表しているランキングです。203の国や地域を対象に、LGBTQ+の観光客がその地域でどれだけ安全に過ごせるかを調査し、公開しています。

評価は、全部で14の指標に基づいて行われ、これらの指標は3つのカテゴリーに分けられています。第1のカテゴリーは市民権に関するもので、LGBT差別禁止法の有無や同性婚の法的認知、同性カップルの養子縁組の権利などが含まれます。第2のカテゴリーは差別に関する項目で、HIV感染者の入国制限やプライドパレードの開催制限などが考慮されます。最後の第3のカテゴリーは、同性愛者に対する告発や投獄、死刑などの重大な脅威があるかどうかを示すものです。

各国の評価は、ヒューマン・ライツ・ウォッチや国連のキャンペーン、そしてLGBTQに関するニュースを参考にしています。ポジティブな動きはプラスポイントとして、ネガティブな動きはマイナスポイントとして評価されます。特に、同性間の性行為に対する死刑が存在する国は、マイナス5ポイントという大きな減点があり、ランキングでの位置が大きく下がることとなります。

この「ゲイ・トラベル・インデックス」は、LGBTQ+の方々が旅行を計画する際の大切な参考資料となっており、各国のLGBTQに対する取り組みや態度を示す貴重な情報源として注目されています。

2023年版「ゲイ・トラベル・インデックス」のハイライト

まず、トップに輝いたのは地中海に位置する島国、マルタです。マルタは2017年に婚姻平等を実現し、さらに2015年にはトランスジェンダーが法的に性別を変更する際の手続きを簡素化する法律を制定しました。これらの進歩的な取り組みにより、マルタはLGBTQフレンドリーな国としての評価を高めました。

次いで、2位にはカナダとスイスがランクインしました。特にスイスは、近年で初めてこの位置に名を連ねることとなり、その背景には同性婚の合法化が大きく影響しています。また、キューバも同性婚の合法化を受けてランキングが上昇しました。

その他、オーストラリア、デンマーク、ニュージーランド、ポルトガル、ウルグアイが同率で4位に、そしてドイツ、アイスランド、スペイン、イギリスが同率で9位に位置しています。

一方、日本は62位という結果となりました。日本はトランスジェンダーの権利やLGBTQマーケティングにおいてはプラスの評価を受けましたが、同性カップルの権利やノンバイナリーの権利、コンバージョンセラピーの禁止などの点で減点となりました。

アジア圏では、台湾が13位と高評価を受けました。一方、インドネシアは同性間の性行為を禁止する法律の影響で、ランキングが大きく下落しました。

このように、2023年版の「ゲイ・トラベル・インデックス」は、各国や地域のLGBTQに対する取り組みや法的状況の変化を反映しており、今後の動向にも注目が集まっています。

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アジアのLGBTQフレンドリーな国の動向

アジアにおけるLGBTQの受容性は、国や地域によって大きく異なりますが、2023年版「ゲイ・トラベル・インデックス」によれば、いくつかの国や地域が特に注目されています。

台湾はアジアで最もLGBTQフレンドリーな国として、堂々の13位にランクインしました。台湾はLGBTQの権利を積極的に推進しており、LGBTQ差別禁止法の存在や、最高裁が同性婚法制化の検討を始めていることが高評価の要因となっています。

インドは43位に上昇しました。最高裁が同性婚法制化の検討を始めていることや、LGBTQの権利に対する認識の変化が、この上昇の背景にあると考えられます。

しかし、すべてのアジアの国がLGBTQフレンドリーであるわけではありません。例えば、インドネシアは同性間の性行為を禁止する法律の影響で、117位から159位へと大きくランキングを下げました。この結果、インドネシアは「ゲイ・トラベル・インデックス」において「危険な国」として赤色で示されるカテゴリーになってしまいました。

アジアにおけるLGBTQの受容性は、文化や宗教、歴史的背景など多様な要因に影響されています。しかし、この「ゲイ・トラベル・インデックス」のようなランキングを通じて、各国のLGBTQに対する取り組みや態度の変化が明らかになることで、アジア全体のLGBTQフレンドリーな動向に期待が寄せられています。

ランキングの影響と日本の立場について

日本に目を向けると、2023年版のランキングでは62位という結果となりました。前述のとおり、日本はトランスジェンダーの権利やLGBTQマーケティングに関しては一定の評価を受けていますが、同性カップルの権利やノンバイナリーの権利、コンバージョンセラピーの禁止などの点で減点となりました。

特に、LGBT理解増進法がトランスジェンダーへのヘイトを容認する根拠として運用される可能性が指摘されており、これが日本のランキングをさらに下げる要因となるかもしれません。

しかし、最近の大阪でのIGLTA総会開催の決定は、海外のLGBTQコミュニティに対して日本が安全な旅行先としての好印象を与える可能性があります。また、ゲイバーの数やその他のLGBTQに関連する文化やイベントも、ランキングの評価に影響を与える要因となるでしょう。

ランキングの結果を受けて、日本が今後LGBTQフレンドリーな環境を整備するための取り組みを強化することで、日本が国際的なLGBTQコミュニティにおける評価を向上させることが期待されています。

まとめ

「ゲイ・トラベル・インデックス」はLGBTQフレンドリーな国や地域をランク付けする指標で、2023年版ではマルタがトップに輝きました。アジアでは台湾が13位と高評価を受けた一方、インドネシアは同性間の性行為を禁止する法律の影響で大きく順位を下げました。

日本は62位と評価され、トランスジェンダーの権利やLGBTQマーケティングは評価されたものの、同性カップルの権利などの点で改善の余地が指摘されています。しかし、大阪でのIGLTA総会の開催など、日本のLGBTQに対する取り組みは進行中であり、今後の動向が注目されています。

参考記事:LGBTQ+トラベラーが安全に旅できる国はどこ? ドイツの専門旅行ガイド「ゲイ・トラベル・インデックス2023」発表