セクシュアルマイノリティの人だけでなく、あらゆるセクシュアリティを持つ人にとって、日本は法的にLGBTsに配慮した国になっているのでしょうか。

法的に同性婚が認められておらず、EUやアメリカの一部の州で制定されている【LGBT差別禁止法】も日本にはありません。

一方で、法的効力はないものの、日本においてもパートナーシップ制度が利用できる自治体が広がりつつあったりと、少しずつ進歩も見られます。

今回は、各国のLGBTsに関する法整備の事情を探りながら、日本の課題について考えて行きたいと思います。

LGBTsに関する法律はどんなものがある?

まずは、LGBTsに関する法律にはどんな種類があり、それぞれの法律でどのような内容が決められているのかについて見ていきましょう。

同性婚法

法律の名前通りですが、同性同士のカップルの結婚を認める法律のことです。

類似するものとして、パートナーシップ制度があり、日本もいくつかの自治体でこの制度を取り入れています。この制度が法的な婚姻と同等の効力を持つ国もあれば、日本のように法的効力を持たない国もあります。

2001年、オランダで初めて同性婚が認められて以来、2022年には31の国や地域で同性婚が法律上認められる見通しです。

日本でも同性婚を認めるべきとした動きも出ていますが、現状はパートナーシップ制度のみで、同性同士は法律上の婚姻関係を結ぶことができないのが現状です。

同性婚を認める国の割合は、20パーセントに満たず、まだまだ広く認められているとはいえない状況です。

差別禁止法

「性別や障害、人種などを理由に不当な差別を受けるべきではない」とするのがこの差別禁止法です。あらゆる観点からの差別を禁じている法律で、その中で性自認や性的指向による差別を禁じています。LGBTsに限定して、細かく差別を禁止した【LGBT差別禁止法】を制定している国もあります。

EUにおいてはEU基本権憲章にて「性的指向を理由とした差別を受けない」ことが明記されていたり、EUのなかでもスペイン、オランダなど独自に差別禁止法に類する法律を定めている国もあります。

トランスジェンダー関連法

身体的性と性自認が一致しないトランスジェンダーが、自らの性自認を法律上認めてほしいと望む場合に性別認定を受けられる法律のことをいいます。

アイルランドでは、18歳以上の人が自己申告することによって、法律上の性別を変更することができるようになりました。また、スウェーデン、スペインでは性別変更の要件の中から「不妊手術、性別適合手術を強制することを中止する」など、関連法の中でその内容が変化してきた例もあります。

日本においても、性別変更をすることは可能です。ただし、さまざまな要件を伴います。「二名以上の医師が、該当の人を性同一性障害であると診断していること」「20歳以上であること」「婚姻関係になく、未成年の子どもがいないこと」「生殖腺が永続的に欠いており、かつ性別に近似する生殖器の外観を備えていること」など細かい取り決めがあります。これらのすべてを満たしていなければ、性別を変更することができません。

また家庭裁判所に申し立て、これが認められなければ戸籍上の性別を変えることができないという、長い道のりになります。

このように、LGBTsに関連した法律といってもさまざまあり、その内容や取り決めは国によってさまざまです。

日本での【LGBT差別禁止法】は?

日本ではまだ制定されていない、【LGBT差別禁止法】について、いまどのような状況なのでしょうか。

昨年の国会では、1年延期となった東京オリンピックの開催も見据え、LGBTsに関する法案が提出されるのではないかといった見方もありましたが、見送りとなり実現には至りませんでした。

また、自民党では【LGBT理解増進法】、野党では【LGBT差別解消法】とし、その名称通り内容や認識が少しずつ違ったものになっていたのも事実です。前者は国民の理解を増進するためのもので、差別解消、差別禁止といった内容には踏み込んでいない内容でした。

なぜLGBTsへの差別を禁止する法律が必要であるかというと、法律が制定されることによって、差別禁止の義務付けができるようになったり、不当な差別に対して罪に問うことができるようになるからです。

当事者らが相談できる窓口を増やし、支援体制を充実させることができるほか、行政の干渉、さらにそれでも改善されない場合には、司法の場に持ち込むことができるなど、「問題に対する対処や救済の幅が広がる」からこそ、差別禁止法が必要だと考えられています。

セクシュアルマイノリティであることが、学校生活においていじめに巻き込まれる原因になったり、家庭内でも理解が進まず孤立するなどの問題に発展することがあります。望んだ性別での就労ができなかったり、就活支援の場面でもセクシュアルマイノリティの人がそれを理由で不利になることもあります。

もちろん、良き理解者に恵まれることもありますが、法律を制定して法に守ってもらうべき部分が多くあるのも事実と言えるでしょう。

法律を制定させる、そのための行動をすることは簡単ではないかもしれません。しかし、差別禁止法に限らず、LGBTsに関連した法整備がなされているのとそうでない場合とで「私たちの生活がどのように変化し、何を得ることができるのか」について、しっかりと考えていく必要がありそうです。

【調査の主体・調査年・引用元】
-内閣府よりPDF

-参考URL
世界のLGBTQ関連の法整備について知ろう! | プライドハウス東京
東京新聞記事
公明党HP