近年、LGBTQのコミュニティが直面するさまざまな問題が社会的な焦点となっています。特に、行政・福祉・医療への利用に関する課題は、その生活の質や健康に大きな影響を及ぼしていると言われています。しかし、これらの問題の実態や深刻度は、具体的なデータや調査に基づいて明らかにされているのでしょうか?
認定NPO法人ReBitが実施した最新の調査により、LGBTQのコミュニティが日常的に経験する困難や課題、そしてそれに対する社会的な取り組みの必要性が詳細に明らかとなりました。
この記事では、その調査結果を基に、LGBTQのコミュニティが直面する問題と、それに対する提案や解決策について深く探ることとします。
参考:【調査報告】LGBTQの8割が、障害や生活困窮に関する行政・福祉サービスで困難を経験。トランスジェンダー男性・女性の8割が医療で困難を経験し、その影響で4割が病院に行けなくなり、25%が自殺を考えた。
初めに |
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当社IRISでは、多様な性の形を受け入れ、様々な社会的マイノリティを記すためにLGBTsという表現を用いていますが、本記事では参考元がLGBTQを使用している為、LGBTQで統一しています。 |
最近の社会的な動向として、LGBTQのコミュニティが直面するさまざまな問題が注目されています。特に、行政・福祉・医療へのアクセスに関する問題は、LGBTQの生活の質や健康に直接的な影響を及ぼしています。このような背景の中、具体的な実態や課題を明らかにするための調査が求められていました。
認定NPO法人ReBitは、この問題に取り組むため、2023年1月15日から2月12日までの期間で、インターネットを通じた調査を実施しました。この調査は、LGBTQのコミュニティの中で、行政・福祉・医療サービスへのアクセスに関する実際の経験や、感じる困難についての深い洞察を得ることを目的としています。
調査は、1,138名からの回答を得ることができ、その中から961名の有効回答を基に分析が行われました。この大規模なサンプルサイズにより、LGBTQコミュニティ内での多様な声や経験を反映できると期待されています。
2. 主要な調査結果
精神的健康の問題
過去10年間で、LGBTQの41.2%がうつ病などの精神障害を経験しており、18.2%が精神障害保健福祉手帳を所持していることが判明しました。
これは、身体障害者や知的障害者の割合と比較して、非常に高い数字であり、LGBTQのコミュニティが精神的健康の面で大きなリスクを抱えていることを示しています。
自殺のリスク
LGBTQの64.1%が過去に自殺を考えたことがあり、26.7%が実際に自殺未遂を経験しています。
特に、障害や難病を持つLGBTQの中では、自殺を考えた人の割合が79.3%に上り、自殺未遂の経験者は41.3%にも及びました。
生活の困難
過去10年間で、LGBTQの約半数(46.8%)が生活困窮を経験しています。特に、障害や難病を持つLGBTQの62.2%が生活困窮を経験しており、この困難は、障害や難病を持たないLGBTQよりも顕著です。
行政・福祉サービスへのアクセス
LGBTQの78.6%が、行政や福祉サービスを利用する際に、SOGI(性自認、性的指向、性別表現)に関連する困難を経験しています。
これにより、多くのLGBTQが必要なサポートやサービスを受けられず、その結果としてさらなる困難や健康上の問題を抱えることとなっています。
3. 行政・福祉サービスへのアクセス
SOGIに関する不安
LGBTQの49.6%が、SOGIに関する不安や困難があるため、行政や福祉サービス等にアクセスできないと回答しています。
さらに、95.4%のLGBTQが行政や福祉関係者にSOGIについて安心して話せないと感じており、このことがサービス利用の大きな障壁となっています。
サービスの利用とカミングアウト
行政や福祉サービスを利用する際に、SOGIを伝えなかった理由として、47.9%がハラスメントやアウティングへの恐れを挙げています。
しかし、SOGIを伝えなかったことで、53.5%が必要なサポートを受けられなかったと感じています。
サービス利用後の影響
行政や福祉サービスの利用に関連する困難を経験した結果、LGBTQの52.8%がさらに困難を深刻化させています。
具体的には、31.0%が病状の悪化や心身の不調を経験し、21.8%が自殺を考えたり、実際に自殺未遂をしたと回答しています。
4. 国際的な視点
G7首脳コミュニケの言及
昨年のG7首脳コミュニケでは、LGBTQの課題に対する取り組みが明確に言及されました。具体的には、「性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保する」という文言が記載されています。
これは、先進国がLGBTQの権利や福祉を重要視し、国際的な取り組みを強化していく方針を示していることを意味します。
日本の取り組みと国際的な動向
ReBitの調査結果を受けて、日本でもLGBTQの行政・福祉・医療へのアクセス問題の改善が求められています。国際的な視点から見ると、日本は他の先進国と比較しても、LGBTQの権利や福祉に関する取り組みが遅れているとの指摘もあります。
G7首脳コミュニケの言及を受けて、日本も国際的な標準や取り組みに合わせて、LGBTQの問題に対する対策を強化していく必要があると考えられます。
5. 解決策と提案
ReBitの調査結果を受けて、LGBTQのコミュニティが直面する行政・福祉・医療へのアクセス問題解決のための具体的な提案と解決策が考えられます。
教育と啓発活動
行政職員や福祉従事者の教育と啓発活動を強化することで、LGBTQのニーズや問題に対する理解を深めることが求められます。
具体的には、SOGIに関する基本的な知識や、LGBTQに対する適切な対応方法などを研修の内容として取り入れることです。
包摂的なサービスの提供
LGBTQのコミュニティが安心してサービスを利用できる環境を整えるため、包摂的なサービスの提供が必要です。
例えば、カウンセリングや相談窓口の設置、LGBTQ専門のサポートチームの組成など、具体的なサポート体制の構築を進めることでサービスの利用環境を整えていきます。
情報提供と透明性の確保
LGBTQのコミュニティがサービスを利用する際の不安を軽減するため、情報提供や透明性の確保が重要です。
サービス提供機関がLGBTQに対してどのようなサポートを行っているのか、その内容や手続きなどの情報を明確にし、容易にアクセスできる形で提供することが求められます。
協力体制の構築
行政や福祉機関だけでなく、LGBTQの支援団体や専門家との連携を強化することで、より効果的なサポートや取り組みを進めることができます。
具体的には、情報交換や共同プロジェクトの実施など、協力体制を構築することが考えられます。
6. まとめ
ReBitの調査を通じて、LGBTQのコミュニティが直面する行政・福祉・医療へのアクセス問題の深刻な実態が明らかとなりました。精神的健康の問題、自殺のリスク、生活困窮といった課題が浮き彫りになったことは、社会全体としてこれらの問題に真摯に取り組む必要性を改めて示しています。
特に、行政や福祉サービスへのアクセスに関する困難は、LGBTQの生活の質や健康に直接的な影響を及ぼしており、これに対する対策やサポートの充実が急募されています。国際的な視点からも、LGBTQの権利や福祉に関する取り組みの強化が求められており、日本もこれに応じて具体的なアクションを起こすべき時期に来ていると言えるでしょう。
今後は、この調査結果を基に、LGBTQコミュニティのニーズに応じたサービスの提供や、行政・福祉・医療関係者の教育・啓発活動の推進が期待されます。全ての人が平等に、安心してサービスを受けられる社会を目指して、持続的な取り組みが必要となります。
参考:【調査報告】LGBTQの8割が、障害や生活困窮に関する行政・福祉サービスで困難を経験。トランスジェンダー男性・女性の8割が医療で困難を経験し、その影響で4割が病院に行けなくなり、25%が自殺を考えた。