女性同士や男性同士のカップルなど、同性カップルが一緒に住みたいと家を選んだりするとき、どんなハードルがあるのでしょうか。
同性カップルは、現在の日本の法律上、婚姻関係になることができないため、手続きなどの過程でさまざまなトラブルに直面することがあります。その一方、パートナーシップ制度などを利用することもでき、よりよい環境を模索することは可能です。
今回は、同性婚に関する基本的な知識や、同性カップルが同棲するときの問題についてお話します。
同性カップルとは同性同士のカップルのこと
同性カップルとは、男性同士、女性同士のカップルのことです。恋愛や性愛の対象が同性の人が、カップル関係を築いている場合を同性カップルといいます。
もう少し具体的に説明すると、自分と性自認が同じ相手を恋愛対象として好きになることを同性愛者といいます。性自認が女性の人が女性を好きになる場合をレズビアン、同じように男性が男性を好きになる場合をゲイといい、これはひとつのセクシュアリティにあたります。
一方で、男性と女性のカップルのことを一般的に異性カップルといいますが、性自認や性的指向が男性、女性のふたつだけに分類されない場合や、ふたつの性別にとらわれない考え方を持つ人もいるので、カップルのことを言い表す言葉として、必ずしも同性カップル、異性カップルのふたつに分類されるわけではありません。
日本では同性同士で結婚することはできるの?
日本でいう「結婚」とは、男性と女性の異性パートナーによるものです。いまの日本において、同性カップルが法律上の婚姻関係になることはできません。
婚姻関係を結ぶと、法律上家族として認められ、さまざまな制度やサービスを利用できるようになったり、会社に勤務するうえでも手厚い手当や補償が得られたりすることもあります。
しかし、同性パートナーが結婚したいと考えても、法律上の婚姻関係になれないというのが日本の現状です。日本国憲法において「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と記されており、この両性というのが男性と女性を指しているからです。このことから、現在の憲法では、同性同士の婚姻は認められないことになっています。
ただ、結婚式を挙げたいと考える同性カップルについては、実現可能です。LGBTsなどセクシュアルマイノリティのカップルに向けたブライダルを提案、企画している結婚式場も数多くあります。
思い思いの衣装を身にまとって写真撮影をするフォトウエディングから、式場での挙式までそれぞれのカップルに合った形を提案してくれます。
同性婚とパートナーシップ制度の違いとは?
婚姻関係を結ぶことができない一方で、日本においても同性パートナーの人も利用できるパートナーシップ制度というものがあります。
これは、同性カップルなど希望する人に対して、パートナーであるという認定をし、婚姻した夫婦と類似の権限を持つことができるものです。ただ、上記で説明したいわゆる結婚と違って、このパートナーシップ制度には法的な拘束力はありません。繰り返しになりますが、今の日本では同性カップルが法定に婚姻関係を認められるわけではなく、戸籍上は他人となります。
そのため、財産分与や税制優遇などの場面で、婚姻関係にあるパートナーと同様の待遇とはならないのです。
しかし、家族として認められる場面が増えることも事実です。配偶者に対しての会社の手当支給を受けられるようになったり、万が一の場面で、病院での面会や病状に対しての同意などができるようになったりすることがあります。
このパートナーシップ制度は全国の自治体がそれぞれに実施しているもので、必要な手続きや手順、内容については自治体ごとに少しずつ異なりますが、パートナーシップ制度を利用したいと思ったときには、実施している自治体に居住することを考えてみるのも良いでしょう。
同性カップルはお部屋探しが難しいのは本当
では、同性カップルがお部屋探しをしようとしたとき、どのような順番で、どんなコツで探すのが良いのでしょうか。
実際に、同性カップルにとってお部屋探しが難しいのは事実です。同棲しようとしても、同性カップルの場合は基本的にルームシェアとしての扱いになります。もちろん、物件によっては二人入居可能物件というのもありますが、これは、結婚を前提としているカップルなどが対象になっていることが多いです。
前述のとおり、パートナーシップ制度を結ぶことはできても、今の憲法のなかで同性カップルの結婚は認められていないので、二人入居可能物件についても、基本的には同性カップルは対象外となってしまいます。
また、お部屋探しや相談、契約は不動産会社や大家さんを通じて行うことがほとんどですが、不動産会社にLGBTsなどセクシュアルマイノリティに対しての理解があるかどうかが最初のハードルになります。
また、不動産会社に理解があって話が進みそうでも、大家さんや管理会社に話が伝わるとそこで断られたりすることも少なくありません。家の契約までに関わる全ての人の理解を得て初めて契約につなげることができるという高いハードルがあるのです。
なかには、こうしたリスクを避けたり、同棲の目標を達成するために、同性カップルであることを公にせず仲の良い友だちとのルームシェアとして入居を探す人がいるのも事実です。もちろん自分たちが叶えたい生活スタイルのためとはいえ、自分たちに嘘をつくような形で家探しをするのは、同性カップルであると伝えて断られるのと同じように辛いこともあるでしょう。
また、同性カップルとの田舎での暮らしを思い描いている人は、さらに高いハードルがあると考えられます。LGBTsフレンドリーな不動産会社やそうした物件は大阪や東京など都市部に集中している傾向があります。LGBTsフレンドリーな不動産会社があるということは、その分理解もあり、話が進めやすいということです。逆にいえば、こうした会社がほとんどない田舎では、そもそも同棲の相談をすることすら難しい場合があるということです。
とはいえ、必ずしも同性カップルの同棲が完全に不可能というわけではありません。LGBTsフレンドリーな会社だけでなく、理解のある大家さんや管理会社もあります。理想の暮らしを求めていろいろな方法や選択肢を模索してみるのも良いですね。
同性カップルは日本で子供を持つことができるの?
最後に、同性カップルがパートナー同士としてその間に子どもを持つことはできるのでしょうか。
パートナーシップ制度を利用して、パートナーの証明を受けていても、ふたりの間に子どもを持つことは現在の日本の制度においては認められていません。戸籍上、カップル間の子どもにすることはできないということです。
ただ、子どもを迎え入れ、家族として一緒に生活することは可能です。いくつか方法がありますのでここで紹介します。
男性同士のカップルの場合、いずれか一方の人が、養子縁組で子どもを養子として迎え入れることは可能です。法律上、片親という扱いになりますが、法的にも親子として生活することが可能になります。
男性カップルふたりの間の子としては法律上は認められませんが、カップルのふたりが協力して子どもを養育し、家族としてともに過ごすことは可能です。
女性同士のカップルの場合、さらにいくつかの方法があります。ただし、女性カップルの間の子として認められる方法はありません。女性同士のカップルでも、男性カップルと同様、養子縁組で子どもを持つことは可能です。また、精子提供のうえ、妊娠することも可能ですが、この場合、病院での人工授精の施術を受けることができないという注意点もあります。これは、日本の法律で人工授精は原則として男性女性のカップルの間だけで認められているものであるからです。
女性同士のカップルが、いずれかの男性から精子提供を受けて、女性カップルの間に子どもがほしいと考えても、その場合の人工授精は自分で行う必要があるということです。医療機関で精子の安全性を調べられないなどの問題もあり、子どもだけでなく母体にも大きな影響が出る可能性があることもしっかりと理解しておかなくてはなりません。影響があった場合、どの程度大きいものなのかわからず、結果として安全に出産できるかどうかの保証もされていないという厳しい現実があります。
もし、人工授精によって出産できたとしても同性カップルとの親子関係を結ぶことはできません。出産した女性本人が未婚の母として届け出て、自分の子どもにすることは可能ですが、これについても出産した本人である一方の女性との親子関係にとどまります。
今の日本では、同性カップルが法律上の婚姻関係になることができない以外にも、カップルの間に子どもを持つことが難しいという事実もあります。
上記で説明したとおり、カップルのどちらか一方が法律上の親子関係になることができても、もう一方の人には法律上の親としての認定がされず、必要な義務や権利が与えられるのはカップルのどちらか一方だけということになります。子どもを持つことを決めた場合、どんな方法で子どもを持つのか、どちらが法律上の親になるのか、また法律上の親になれないもう一方の人がどんな形で育児や養育に関わっていくのかしっかりと話し合って将来を見据える必要があります。
まとめ
同性カップルが婚姻関係になることができない現状や、家探しの難しさについて少しでも知っていただけたでしょうか。
日本においては、同性婚が認められておらず、パートナーシップ制度ではカバーしきれない制度や待遇などがあるのも事実です。さらに、周囲の人の理解や、制度の体制によっては同棲することも難しい場合があります。
周りの人の理解が進んで、それぞれの同性カップルに合った、より住みやすい環境が手に入れられることが理想ですが、現在の日本においては、それ以前に憲法や同性カップルに則した制度が追いついていない事実もあります。
少しでも、こうした現実に目を向けて、知っていただく機会になれば嬉しいです。また、現実を見て悲観しすぎるのではなくて、今ある方法のなかでできる最大限を模索して、それぞれのカップルにとって心穏やかに生活できる暮らしが手に入ると良いですね。