LGBTQ+に関する社会的な認識や理解は日々進化しています。日本でも多くの企業や自治体がLGBTQ+の権利を尊重し、サポートする取り組みを行っています。
その中で、電通が実施した最新のLGBTQ+に関する調査が公開されました。この記事では、その調査結果を詳しく紹介し、現在のLGBTQ+に対する社会の意識や認識の変化について解説していきます。
参考記事:
初めに |
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IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBTQ+」について解説するため、表記が混在しております。 |
電通による最新のLGBTQ+調査の背景
電通は、日本のLGBTQ+の人口割合や、それに関する社会の意識を把握するために、定期的に調査を実施しています。
過去には2012年、2015年、2018年、2020年と、おおよそ3年ごとにこの調査を行ってきました。
それぞれの年における調査結果を振り返ると、2012年にはLGBTQ+の人口割合が5.2%、2015年には7.6%、2018年と2020年には8.9%と、年々その割合が増加していることが確認されています。
このような背景のもと、電通は2023年も再びこの調査を実施しました。
調査の目的は、LGBTQ+をめぐる現状の把握と、それに伴う課題の発見です。
特に、SOGI(性的指向や性自認)に関わらず、誰もが生きやすい社会を目指すための取り組みとして、この調査は非常に重要な役割を果たしています。
2023年のLGBTQ+人口割合の変動
電通が2023年に実施した「LGBTQ+調査2023」の結果、LGBTQ+の人口割合は全体の9.7%となりました。
これは、過去の調査結果と比較すると、さらなる増加を示しています。
具体的には、2012年の5.2%から、2015年の7.6%、2018年と2020年の8.9%という結果を経て、今回の9.7%という数字に至ったのです。
この9.7%の内訳を詳しく見てみると、性自認に関しては、トランスジェンダーが1.15%、ノンバイナリー(Xジェンダー)が1.38%、クエスチョニングが0.26%となっています。
一方、性的指向に関しては、レズビアンが1.01%、ゲイが1.59%、バイセクシュアルやパンセクシュアルが3.20%、アセクシュアルが1.56%(アロマンティックは1.43%)、そしてクエスチョニングが0.58%という結果となりました。
ただし、これらの数字を単純に合計すると9.7%を超えることになりますが、これはトランスジェンダーの男性でゲイの方や、性自認と性的指向の両方でカウントされる方がいるためです。
全体としての割合は9.7%となっています。
社会のLGBTQ+に対する意識の変化
近年、LGBTQ+に対する社会の意識は大きく変わりつつあります。
電通の調査によれば、LGBTQ+へのインクルージョン意識に関する質問に対して、「職場や学校などの仲間からカミングアウトを受けたら、ありのまま受け入れたいと思う」と回答した人が84.6%、「職場や学校などの性的マイノリティに自分らしくいてほしいと思う」と回答した人が84.5%と、非常に高い数字を示しています。
しかし、一方で「彼氏、彼女ではなくパートナーなど性別を特定しない言葉を使うようにしている」と回答した人は17.1%と低く、「目の前で誰かの差別的な言動があったら話題を変えたり注意する」と回答した人も36.7%と、まだまだ低い数字となっています。
これは、LGBTQ+に対するインクルージョン意識は浸透してきているものの、実際の行動に移す人はまだ限定的であることを示しています。
また、企業のLGBTQ+に関する取り組みに対する意識も変わりつつあります。
「LGBTQ+をサポートしている企業で働きたいと思いますか」という質問に対して、非当事者でも「待遇や職種に関わらず働きたい」と回答した人が17.6%、「待遇や職種が他社と同条件であれば、働きたい」と回答した人が41.9%と、約6割の人がLGBTQ+フレンドリーな企業での就業を希望していることが明らかとなりました。
自治体の同性パートナーシップ証明制度とその影響
日本の多くの自治体では、同性カップルの権利を保護するための「同性パートナーシップ証明制度」が導入されています。
この制度の有無が、LGBTQ+の方々の住みやすさにどのような影響を与えているのか、電通の調査から興味深い結果が明らかになりました。
制度が導入されている自治体に住むLGBTQ+の方々は、制度がない自治体に住む方々よりも「住みやすい」と感じる傾向にありました。
具体的には、制度がある自治体に住む方が8.5ポイントも高いという結果となりました。
このことから、同性パートナーシップ証明制度の導入が、LGBTQ+の方々の生活環境を向上させる効果があることが伺えます。
しかし、制度が導入されているにも関わらず、その存在を知らないと回答した当事者が58.4%もいるという事実も明らかになりました。
これは、制度の周知が十分に行われていないことを示唆しています。
特に、制度の導入からまだ時間が経っていない自治体では、住民や企業などの理解を促進するための周知活動が一層求められるでしょう。
情報への向き合い方の違い
LGBTQ+に関する情報は、近年増加の一途を辿っています。
しかし、その情報にどのように向き合っているのかは、人それぞれ異なります。
電通の調査からも、非当事者層の情報への向き合い方のクラスター分析が行われ、興味深い結果が明らかになりました。
非当事者層の中でも、「LGBTQ+に関する情報を積極的に取り入れ、理解を深めようとする層」、「LGBTQ+に関する情報には興味があるが、深く知識を持っていない層」、「LGBTQ+に関する情報には興味がなく、無関心な層」の3つのクラスターが確認されました。
これらのクラスターは、LGBTQ+に関する情報への関心や知識の深さ、行動の取り組み度合いなどで区別されています。
特に、情報を積極的に取り入れる層は、LGBTQ+に関する正確な知識を持ち、その上での意識や行動が求められると感じています。
一方で、情報には興味があるが知識が浅い層や、情報に無関心な層は、LGBTQ+に関する情報の取り入れ方や、その情報をどのように活用するかについての課題が存在していることが伺えます。
このような背景から、インフォメーションリテラシーの向上が求められると言えるでしょう。
正確な情報を得ること、それを適切に解釈し、日常生活や仕事に活かす能力は、今後の社会でますます重要となると考えられます。
デジタルブック『実はずっと聞いてみたかったこと』の紹介
LGBTQ+に関する情報や意識の変化を受け、電通は新たな取り組みとしてデジタルブック『実はずっと聞いてみたかったこと』を公開しました。
このデジタルブックは、LGBTQ+に関する基本的な知識や、日常生活での疑問、そして実際の体験談などをまとめたものとなっています。
このブックの最大の特徴は、LGBTQ+の声を直接取り入れた内容となっている点です。
実際の体験談や、カミングアウトのエピソード、日常生活での悩みや喜びなど、リアルな声が多数掲載されています。
これにより、読者はLGBTQ+の生の声を知ることができ、より深い理解を得ることができるでしょう。
また、このデジタルブックは、LGBTQ+に関する情報を知りたいと思っている非当事者の方々にとっても、非常に有益な情報源となっています。
特に、LGBTQ+に関する疑問や誤解を持っている方々には、このブックを通じて正確な情報を得ることができるでしょう。
電通は、このデジタルブックを通じて、LGBTQ+の安心した生活環境づくりに貢献したいとの思いを強く持っています。
そして、多くの人々がこのブックを手に取り、LGBTQ+に関する理解を深めるきっかけとして活用してもらえることを期待しています。
まとめ
電通の最新調査から、LGBTQ+に対する社会の意識や認識が進化していることが明らかとなりました。しかし、まだまだ課題も多く、LGBTQ+の方々が安心して生活できる環境を整えるための取り組みが求められています。
企業や自治体、そして私たち一人一人が、LGBTQ+の方々の声を尊重し、理解を深めることで、より包括的で温かい社会を築いていけるよう願っています。