シンガポール発、プレミアムコワーキングスペース& シェアオフィスを展開するJustCoと、選択的夫婦別姓の法制化を中心にジェンダー平等を推進する活動を展開している選択的夫婦別姓・全国陳情アクションが、トークイベント「Let’s Talk About Us. #2 私はLGBTQ+アライ(Ally)、アナタは?」を共同開催しました。

 今回のテーマは「アライ(Ally)」。アライとは、LGBTQ+理解者、支援者を意味する言葉です。最近では「アライ企業」を表明し、「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」を掲げる企業が増えてきました。

なぜアライの存在が必要なのか、アライ企業はどのような取り組みをしているのか。「私はアライです」と言える人の輪を広めるべく、ゲストがLGBTQ+とアライについて話しました。 

LGBTお部屋探し

イベントは、モデレーターである市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」で事務局長を務める井田奈穂さんと、JustCo DK Japanのカントリーマネージャー、鈴木省吾さんにより開幕。

はじめに、本イベントで性的少数者のことを「LGBT」ではなく「LGBTQ+」として記載することについて説明がありました。井田さんは、LGBTQだけではくくれないセクシュアリティ「+」に着目し、自身の性を男女いずれかに限定しない「Xジェンダー」や、他者に恋愛的な興味関心を抱かない「Aロマンティック」、他者に性的な興味関心を抱かない「Aセクシュアル」などにも触れました。

近年は、LGBTに代わり「SOGI」という表現も使われています。臨床心理士として多様な性を発信するみたらし加奈さんは、自身の講演の際に「LGBTというと、“普通の人”と当事者で分けられてしまうことが多くあります。誰もが自分ごとであることを伝えるために、性的指向、性自認を全て包括したSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)という言葉を使って説明することがあります」と話しました。

本イベントの事前アンケートでは、自分または周囲にLGBTQ+当事者がいるかという質問に対して、74%の人が「いる」と回答。一方で、19%は「わからない」、7%は「いない」と回答。電通が実施した「LGBTQ+調査2020」では、LGBTQ+層の割合は8.9%だとわかりました。8%と聞くと少ない印象を持つかもしれませんが、左利きと同じくらいの割合となります。

決して少なくないLGBTQ+ですが、当事者は日常生活の中でさまざまな障壁に直面しています。以下の通り、イベント参加者からの声が紹介されました。

  • 校則や制服の規定が男女別になっていることで、学校が安心して過ごせる場になっていない。

  • 結婚ができないので、パートナーの子供の親として認知されない。

  • 中学校で先生から「それは病気。一生隠しなさい。直しなさい」と言われた。

  • ノンバイナリー当事者です。まだまだ男女二元論が当然の社会でつらいです。

LGBTsフレンドリーな不動産会社IRISを経営する須藤啓光さんは、10年前と比べたら選択肢は増えた一方で、部屋を借りる、買うことに対してまだまだ課題があることを指摘。「本来、お部屋探しにジェンダーやセクシュアリティは関係のないものです。しかし、自分たちの関係性を表明しないと選択肢が少ないのが現状です」

その具体例を一部挙げました。

  • 自分たちの関係性を限定的に公開しているにもかかわらず、アウティングされてしまった。

  • 性別適合や改名を対応してもらえなかった。

  • 同性パートナー向けローンについての知識がなかった。

  • 自治体による条例を知らず、自身の差別的発言や言動を正当化されてしまった。

引用:認定NPO法人Rebit「LGBTQ子ども・若者調査2022」

また、Rebitの調査によると、10代のLGBTQ+の48.1%が過去一年で自殺念慮、14%が自殺未遂をしているとの統計が出ています。みたらし加奈さんは臨床心理士として、このように語ります。

「臨床心理士は、メンタルヘルスケアは生物、心理、社会であることを教わります。生物は体の健康や医学的な側面、心理は心、社会は社会情勢のことです。つまり、差別構造や構造の歪みが心に大きくメンタルヘルスに大きな影響を及ぼすとされています。

なので、日頃きてくださる相談者の話を聞いている中で、例えば差別されてつらいことに対して、社会モデルがかかわってくることにより、社会の精度が変わらないと解決できないことがあります。なので、ずっとでき続けてしまう傷口に、とりあえず絆創膏だけを貼っている状況が今なのです」

このようなLGBTQ+の置かれている状況を受け、アライとしてできることを話し合いました。鈴木省吾さんは「差別は知識のないことから始まります。私たちはまず、LGBTQ+当事者が置かれている状況について、知識をつけることがスタート地点ではないかと考えています」と述べました。

自分がステレオタイプな言動をしていないかを改めて考えることも大切です。相手のSOGIを決めつけないよう、言葉をちょっと変えてみることの一例が紹介されました。

  • 彼氏/彼女、ご主人 / 奥さん→パートナー、お連れ合い

  • 息子さん / 娘さん→お子さん

  • 「結婚しなきゃ」→結婚できない、しない人もいることを意識

アライとしてLGBTQ+について知る第一歩として、書籍を読むことも良いのではないでしょうか。イベント会場では、LGBTQ+にまつわる多数の本が置かれていました。

左から「差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える」神谷悠一(著)、「アセクシュアルから見たセックスと社会のこと」アンジェラ・チェン(著)、羽生有希(翻訳)、「LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い」ジェローム・ポーレン(著)、北丸雄二(翻訳)、「10代から知っておきたい あなたを閉じこめる『ずるい言葉』」森山至貴(著)、「HAVE PRIDE: 生きる! 愛する! LGBTQ+ の2300年の歴史」ステラ・A・コールドウェル(著)、櫛田理絵(翻訳)、「トランスジェンダー問題――議論は正義のために」ショーン・フェイ(著)、高井ゆと里(翻訳)。

「我々は多様性が中心に添えられた世の中は、真に豊かで、誰もが生きやすい社会であると本当に信じています。世の中には差別や人権侵害、偏見に溢れていますが、一人ひとりが関心を持ち、理解を深めていく。これがそういった世の中を変える力になるんじゃないかと思っています」

最後は、イベントを主催した鈴木省吾さんの力強い言葉で締めくくられました。