日本を代表する文化とも言うべき漫画・アニメ。この記事では漫画の中でもゲイ漫画を特集します。おすすめのゲイ漫画7選の紹介と、代表的なゲイ漫画家を紹介します。

ゲイ雑誌に掲載していたベテラン漫画家から、SNSに漫画を公開する新世代の漫画家まで、さまざまな人をご紹介します!

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おすすめのゲイ漫画

 

僕らの色彩

田亀源五郎作。

男子高校生の井戸田宙、幼馴染の仲村奈桜、喫茶店マスターである中年男性が主な登場人物。主人公の宙は同じクラスメイトの男子が好きなゲイであることに悩んでいて、身近にゲイもいない。そんな彼が思いを寄せる男子が、クラスメイトとの会話でゲイを嫌悪するような会話で盛り上がっていてショックを受けてしまいます。ゲイであることを偽るための「仮面」には共感してしまう当事者も多いはず。ゲイ、カミングアウト、告白、友情などさまざまな要素を含んだ青春物語です。漫画の舞台として江ノ電や海岸が頻繁に登場し、よりさわやかな情景を浮き立たせてくれます。

 

きのう何食べた?

よしながふみ作。

料理上手だがやや不器用、ぶっきらぼうだけれども面倒見の良いシロさんと楽観的で社交的なケンジのゲイカップルが主人公。不器用なシロさんだけども、料理を通した愛情表現がたまりません!西島秀俊、内野聖陽のW主演で実写ドラマ化され、のちに映画化までされていますが、原作は漫画になります。ゲイの恋愛事情、生活、仕事、悩み、家族問題などがとてもリアルに描かれていて、女性が原作者と知って非常に驚きました。

弟の夫

田亀源五郎作。

第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第47回日本漫画家協会賞受賞。NHKのプレミアムドラマで実写ドラマ化もされていまして、佐藤隆太と把瑠都の素晴らしい演技が視聴者を感動させてくれます。

シングルファザー家庭の父親弥一と小学校に通う娘の夏菜で暮らしているところに、突然弥一の双子の弟である亮二の夫を名乗る巨漢のカナダ人マイクが現れます。亮二はカナダでマイクと暮らしていたが他界してしまい、マイクはある目的を遂げるために弥一一家を訪れるところから始まるストーリー。ゲイに対する差別や偏見といった少し辛くなってしまう描写もあれば、とても心が温まるシーンや感動的な描写もあったりと本当に素晴らしい作品だと感じました。離婚した元妻、ゲイ当事者などさまざまな登場人物がより物語を盛り上げてくれます。

うちの息子はたぶんゲイ

おくら作。

息子2人と単身赴任中の夫をもつ母親視点のほっこりするような暖かいテイストの漫画になっています。長男である高校生の息子は考えていることがわかりやすく、どうも男性が好きな様子だが、申告はしていないし、隠そうとしているようなので、母親はそのままそっとしています。弟は口数が多くないものの、鋭い感を持っている様子。キャラデザインもほんわか癒し系で、みんな愛情深く、おもいやりにあふれている人が多くていやされます。時にはセクシュアルマイノリティに理解や知識のない登場人物もでてきたりするため、当事者でなくてもセクシュアルマイノリティや「普通」という思い込みについて考えさせてくれる物語になっています。

青のフラッグ

KAITO作。

高校を舞台にした三角関係(四角関係!?)

身長189CMでイケメンマッチョ、野球部エースでクラスの中心にいる人気者でスクールカースト上位に見える三田桃真(トーマ)、低身長で垢抜けないルックスを持ってスクールカースト下位に見える一ノ瀬太一、同じく低身長で幼児体型だがかわいらしさを持った空瀬二葉、スタイル抜群な美人で欠点がなさそうなのにどこか影を持つように見える真澄が主要な登場人物。冒頭は一般的な青春恋愛物語と思わせるような展開が進むのですが、物語が進むにつれて、それぞれの好きな人が誰なのか、次第に明らかになっていきます。ネタバレになってしまうので深く語れないのが残念ですが、最終回の結末はインターネット上でもとても大きな反響を呼び、今でもその痕跡を見ることができます。結末の賛否はさておき、集英社の少年ジャンプ+でこういったLGBTを主題とした作品が掲載され、多くの人に読まれ反響を呼んだのは喜ばしい側面もあるのではないかと感じます。

怪獣になったゲイ 

ミナモトカズキ作。

タイトルに怪獣と付いていますが、幼児向けだったりギャグテイストな作品ではありません。学校でいじめられている男子高校生が主人公。いじめの原因はゲイとは無関係でしたが、いじめやゲイである葛藤、憧れの人との関係性などをきっかけに自己否定し続けてしまった結果、突然怪獣になってしまいます。ゲイだけでなく、トランスジェンダーに関係する話もでてきます。セクシュアルマイノリティであることに苦悩して自己否定してしまった経験がある人は、登場人物たちの心情に痛いほど共感できるかと思います。

無口の馬部さん

ほしえださん(@hoshinoedao)がTwitter上で無料公開している漫画。無料で読むのが申し訳なく思えてしまうほどに素晴らしい画力とストーリーで、19話くらいあってとても楽しませてもらえます。無口でまわりからは無表情に見られてしまう馬部さんと、自分に自信が持てない「しかおくん」が主人公。2人とも過去のトラウマからすれ違いを繰り返してしまいます。ゲイあるあるなトラウマや劣等感、葛藤がとても丁寧に描かれていて、一度読み始めたらきっと最後まで読みたくなってしまう人も多いと思います。

 

無口の馬部さん第1話

https://twitter.com/hoshinoedao/status/1346327550625157122

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代表的なゲイ漫画家

 

田亀源五郎(@tagagen)

日本を代表するゲイ漫画家。作品は海外でも販売されている上に、「弟の夫」はアメリカのアイズナー賞において、2018年のアジア最優秀賞を受賞しています。絵描きとしても素晴らしいですが、ストーリーを作る才能も素晴らしく、作品はLGBT当事者以外からも評価されています。上記でご紹介した「弟の夫」、「僕らの色彩」は一般向け作品なので、どなたでも読むことができますが、その他の作品の大半は18歳未満が閲覧禁止となる成人向けとなるのでご注意ください。

 

児雷也(@jiraiyajpn)

児雷也さんも日本を代表するゲイ漫画家で、作品はフランスやアメリカでも発売されています。雑誌「G-men」でイラストや漫画を発表していました。絵を描くことは専業ではなく、本職を他に持っている「兼業画伯」。短髪もしくは坊主の筋肉質で大柄な男性、いわゆるガチムチ系の男性を描いた作品が多いです。新宿2丁目にあるバー「EAGLE Tokyo」の巨大な壁画を描いたことでも話題になりました。

ミナモトカズキ(@minamotokazuki)

ミナモトカズキさんは上記でご紹介した「怪獣になったゲイ」以外にもさまざまなゲイ作品を制作されていて、最近では「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」という作品が実写ドラマ化されるほどの大ヒット作となりました。(ドラマは全話放送終了しています)

大人気ゲイYouTuberの2すとりーとさんの動画にもご本人が顔出しで出演されています。

https://www.youtube.com/watch?v=aNWQ8yUjpr4

 

もちぎ(望月もちぎ)

もちぎさん(@omoti194)は漫画、エッセイなど各種媒体で出版物を発売するほどの人気作家。壮絶な過去を持っていて、過去の家庭に関する話やゲイ向け風俗、ゲイバーでの体験などをおもしろおかしく時にはシリアスに漫画にしています。漫画のタイトルは「ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。」「ゲイバーのもちぎさん」「このゲイとは付き合いたくない!!!」といった感じで、もちぎさん自身の体験した年齢に応じて変わっています。

 

おくら(@okura_yp)

おくらさんは上記でご紹介した「うちの息子はたぶんゲイ」以外にも、「そらいろフラッター」というゲイが登場する漫画を制作されています。これからもどんな作品が制作されるのか楽しみです。

野原くろ(@nohara96)

「Badi」「サムソン」といったゲイ雑誌で掲載されていたゲイ漫画を数多く描いています。中でも「下宿のお兄さん」という作品は長期にわたり連載されていたので、僕も読む機会が多くありました。最近では、韓国の出版社とコラボした作品「キミのセナカ」という作品が韓国、台湾、フランスに続き2021年に日本でも発売されました。

 

飯塚モスオ(@moscowmule_)

ゲイあるあるネタを4コマ漫画にして、SNS上にアップされています。ゲイ文化の観察眼、かっこよさとかわいさをかねそなえたキャラの画風がとても魅力的です。Twitterを使用している方は、飯塚モスオさんの作品になじみがある人も多いかもしれませんね。過去作品が下記のサイトから閲覧できます。

 

飯塚モスオの漫画まとめ

 

まとめ

ゲイ漫画といえば、今では絶版となってしまった紙媒体で発行されていたゲイ雑誌に掲載されていた時代が中心の時代もあれば、現在のようにSNS上で公開される作品もあったりと時代によって作られ方、読まれ方が変化してきています。

 

ゲイ漫画のジャンルは元々アダルト向けな内容が多かった印象がありますが、今日ではゲイの生きづらさやリアルを描いたもの、ほのぼの系まで多様です。セクシュアリティを問わずあらゆる読者を楽しませてもらえるのはありがたいなと感じます。ゲイ漫画の中には、マジョリティの人が読めばゲイについて知ることができたり、学べたりする作品もあるので、LGBTの理解促進にも大きな役割を果たしているかと思います。