「将来子どもが欲しい」
そう考えている同性カップルの方々は、少なくはないのではないでしょうか。もちろんジェンダーやセクシュアリティに関わらず、子どもを持つ、授かる、持たないという選択肢はだれしも平等に与えられるべきもの、尊重されるべきものです。
しかし「親が同性愛者なんて子どもがいじめられてしまうのでは?」「子どもがかわいそう」、そんな声も少なくはありません。そして、そんな周りの視線や理解、そもそもの技術的な面などから、そう思っていたとしても実際に行動に移すことはこの日本では簡単なことではないのもまた、事実であることに変わりありません。
では、だからと言って子どもを持つことを諦めるべきなのか?
いいえ、諦める必要はありませんし、諦めることを強要すべきではありません。今回は、同性カップルが日本で子どもを迎える方法についていくつか紹介できればと思います。
同性カップルが日本で子どもを迎える方法
同性カップルが子どもを迎える方法は以外にも様々なものがあるのをご存じでしょうか。その中でも日本で代表的な3つの方法、「養育里親制度」「友情結婚」「ステップファミリー」を詳しく見ていきましょう。
養育里親制度
「養育里親制度」とは、何らかの理由で生みの親がその子どもを育てることができない場合、一時的に子どもを預かって養育する制度のことを言います。よく耳にするであろう「養子縁組」とは違い、里親と子どもの間に親子関係が発生しないのが特徴で、親権者はあくまでも実の親ということになります。
親子関係を伴わない「養育里親制度」は、東京都や大阪府などの一部の都道府県にはなりますが、同性カップルも対象に含まれています。
里親の役目を終えたあとに「特別養子縁組」をして本当に親子になる前提の場合もありますが、その条件に「法律上の夫婦が共同で縁組をすること」があります。海外では同性カップルの「養子縁組」は珍しくありませんが、現状日本では同性婚そのものが認められていませんので、同性カップルとしての「養子縁組」は不可能であるともいえます。
参考:日本こども支援協会
友情結婚
「友情結婚」とは恋愛関係にない男女が、合意の上で婚姻関係を結ぶことを言います。性行為がないこと以外は普通の婚姻関係となんら変わることはなく、いわゆる、金銭目的などで行われる偽装結婚とは違い、多種多様なジェンダー、セクシュアリティに寄り添ったシステムです。
そんな「友情結婚」ですが、子どもが欲しいという願いから異性と結婚し産婦人科の医療技術によって自分の子どもを授かる方もいます。
参考:友情結婚相談所カラーズ
ステップファミリー
「ステップファミリー」とは、子どもを連れた再婚や事実婚により、血縁関係のない親子関係を含む家族の形のことです。
日本ではひとり親の家庭数は120万世帯を超えているという現状があり、「ステップファミリー」という家族形態が注目されているところ。
人気ドラマ「義母と娘のブルース」、人気漫画「SPY×FAMILY」などは「ステップファミリー」が題材となっているお話でしたね。
ただし、初婚の家族形態とは成り立ち等が全く違うため、「連れ子を愛せない」「生活習慣の違いに戸惑う」「周りに理解されない」など問題点も多く抱えている方法にもなります。当事者以外の社会の理解、支援が非常に欠かせない方法とも言えますね。
同性カップルが日本で実子を授かる方法
血のつながらない子どもを愛せるか不安、やはり血のつながった実子を授かりたい。そう願う方も中にはいるのではなないでしょうか。
主な方法としては精子提供や代理母出産などがありますが、実は日本国内ではそれらは法的には認められていないという事実があります。法的な婚姻関係のある夫婦でなければ、人工授精という方法は取れないのです。
違法行為ではありませんが、ガイドラインにより定められているため、病院側はそれに従っているというわけですね。
ですが国内には例外を受け入れている医療機関も存在しています。ガイドライン違反のリスクを負ってでも、同性カップルに寄り添った提案をしてくれる機関があるのです。これは非常にありがたく、うれしいことでもありますね。
参考:はらメディカルクリニック
では、精子提供や代理母出産がそれぞれどのようなものなのか、見ていきましょう。
精子提供
レズビアンカップル限定とはなりますが、ドナーの男性から精子を提供してもらい、カップルのどちらかが人工授精を行って子どもを授かる方法です。
確実に自分の遺伝子を残すことのできる方法ではありますが、問題点もあります。
Twitterなどで「精子提供」や「精子ドナー」と検索してみると、そう言った目的をもったアカウントが多く出てくるかと思います。
中には「高学歴」や「身長180㎝」、「二重」など条件を提示している人も。しかし、それがすべて事実であるとは限りません。情報不足による感染症被害や、経歴詐称の被害が後を絶たないという現状があるのです。
もちろん男性側だけではなく、それは女性側にも。男性側が精子提供をしたはいいものの、その後全く連絡が取れないといった事案もあります。
「精子提供は」「自分の子どもを授かることができる」といううれしい部分もある反面、「本当に相手が信用にたる相手であるのか」という見極めを迫られる手段でもあるのです。
代理母出産
「代理母出産」とはドナーの女性のお腹で受精をさせ、子どもを授かるという方法です。
この方法はゲイカップルだけではなく、子どもを授かることのできない夫婦にも用いられる方法です。
精子提供と同じように、確実に自分の遺伝子を残すことのできる方法ではありますが、やはりこちらも問題点を抱えています。
ひとつ、代理母出産に関する事件を紹介します。
これは1985年、アメリカ合衆国での事件ではありますが「ベビーM事件」というものがあります。代理母出産をした女性が子どもの引き渡しを拒否し、養育権を求めた、という裁判です。こちらの裁判では一度代理母契約の有効性が認められ、ドナーの女性には親権も教育権も認められないという判決がなされました。しかし、最高裁により代理母契約は無効。ドナーの女性を母親とするという判決がなされたのです。
この事件は国際的に代理母を規制する動きのきっかけとなりました。
このようにドナーの女性が子どもの引き渡しを拒否するという事案は少なくないのです。とはいえ、人の子どもであっても、自分のお腹を痛めて生んだ子ども。愛情を持つのは自然なことなのかもしれません。
ゲイカップルが日本で子どもを迎えるには?
ゲイカップルが二人で子育てをしたいと望む。その考えはやはり尊重すべきことで、不思議なことでは一切ありません。
もちろん、さきほどまでに紹介した里親制度やステップファミリーなどのシステムによって、世の中には男性二人で子育てをしている家庭もありますが、そこには、経済力や、法律、周りの環境や理解などによる多くの困難があるといいます。
では、ほかにはゲイカップルが子育てをするという選択肢はないのでしょうか。
実はパートナーとともに子どもを育てたいと望むゲイカップルの中には、シングルマザーと繋がって子どもを育てるという選択肢を選ぶ方々もいます。
イレギュラーな事案ではありますが、一体、どのようなシステムなのでしょうか。
シングルマザーとともに子どもを育てるゲイカップル
シングルマザーだからこその悩み、子育てをしたいというゲイカップル。それぞれが知り合うメリットは非常に大きいものです。
生活費の捻出、学費の援助など、一緒に暮らして生活を共にするというカップルは少ないですが、既存の家族形態にとらわれない心の交流を目的とし、「愛」の新しいあり方を学ぶことができるとの声も多くあります。
では、具体的にどのように過ごすのでしょうか。
答えは非常に簡単で、ともに誕生日や、クリスマスなどのイベントを祝ったり、ともにご飯を作ったり、勉強をしたり、そんな当たり前の日常を過ごすのです。
血のつながりはなくても、楽しい日常を分かち合える瞬間はとても素敵ですよね。
シングルマザーと知り合う場は比較的多く、TwitterなどSNSを介して交流するカップルの方々もいるみたいです。
実際に子育てをするということとはまた違ったものではありますが、子育てに関われるという喜びを分かち合うゲイカップルの方々も少なくはないようです。
レズビアンカップルが日本で子どもを迎えるには?
では、レズビアンカップルではどうでしょうか。
もちろん精子提供による子育てを行っているカップルも少なくはありません。
こちらもゲイカップルのように経済力や、法律、周りの環境や理解などによる多くの困難を抱えています。
経歴詐称などの不安から踏み切れないカップルも少なくはありません。
しかし、その中でもゲイカップルと協力して子どもを授かり、ともに育てるという方法をとる方々がいます。
誰かもわからない男性よりも、気心の知れた友人、仲間の方が気持ち的にも余裕が持てるというのは当然のことです。
特に欧州ではこの考えが同性カップルの間ではスタンダードにもなってきています。
しかし、このシステムはステップファミリーと似たところがあります。ですから、「互いの生活習慣が合わない」ことなどでトラブルになることも少なくはありません。また、同居すべきか別居すべきか、親権はどうなるのか、など煩雑になってしまう事案も多いため、それぞれのカップル同士でもめてしまうこともあるのです。
海外では子どもの教育方針や親権などを巡って訴訟に発展したパターンもあるとのこと。
利害が一致するようには見えますが、問題点も少なからず抱えているため、実際に行動に移している同性カップルは多くはないというのが現状です。
同性カップルに育てられる子供の視点
これまで同性カップルが子供を持つ方法をお伝えしてきました。
次に、同性カップルの下で育てられる子供がどういったことが求められるのか考えてみます。
家族構成の理解
自分の家族構成が、他の大半の家族とは異なることを理解し、受け入れる過程が必要になります。
家族内の親密なコミュニケーション、家族外からのサポートなどによってこうした理解が促進されるでしょう。
社会的な反応への対処
学校や社会で、家族構成に関して質問されたり、好奇の目にさらされる可能性があります。
世界中でセクシャルマイノリティを親に持つ子供が増えている一方で、議論を引き起こしやすい現状があります。
否定的な反応やいじめになってしまう可能性を完全に否定することはできません。
社会や教育機関において、多様な家族構成に対する理解とサポートが重要になります。
教師や生徒、コミュニティに所属する人々に対する啓発活動が求められます。
実際に子どもを迎えた同性カップルの声
ここまでどうやって子どもを迎えるのかということについてご紹介してきました。
では、実際に子どもを自分たちのもとに迎え、子育てをしている同性カップルの方々は、どのような思いで子どもを迎えたのでしょう。
一部の方々の声をご紹介していきます。
たとえば、3年間の不妊治療の末、精子提供者の男性と出会って出産したレズビアンのAさん。
自らがレズビアンであることに気付いてからも、子どもを持たない人生は考えられないと思い妊活を始めたそうです。一時は養子を考えたこともありましたが、3年間の妊活の末、子どもを授かりました。
お子さんには自分たちのことを伝えており、理解もしている様子。将来、彼なりの家族観を持って、自分の家族を作っていってくれたらいいな、と話されております。
そして、養育里親制度で子どもを迎えたBさんたちゲイカップル。
彼らは2人揃って子どもが大好きで里親になることを考えましたが、今までに事例のなかったことで問題が起きるかもしれないと聞きます。しかし、困難はともに乗り越えようと決心したことで、里親として子どもを迎えました。
迎えた子どもに『自分も大人になったら幸せな家庭を築きたい』『差別することなく色んな人と助け合っていきたい』と思ってもらえるような家庭にしたいと考えている、と話されています。
セクシャルマイノリティ家庭で育った子供に対する研究
同性の両親で育てられた子供が、異性間の両親を持つ子供に対してどのような違いがあるのかは世界中でさまざまな研究が行われています。
「(同性のカップルが親になって子供を育てることは)親として不適格で、異性の父母と比べて子供の心理的・社会的発達が妨げられるという証拠はない。子供たちが何らかの面で不利益を受けていることを示す研究は1件もなかった」といった研究もあれば、それを否定する研究結果もあるため、一概に比較することは困難です。
日本でも同性カップルの下で育つ子供は増えていくかもしれません。
今後もこうした研究結果や、セクシャルマイノリティ家庭で育った当事者の人々の声に注目したいところです。
参考:一般社団法人平和政策研究所|同性婚が子供mの発達に与える影響ーアメリカの研究に見る子供の発達と結婚、家庭ー
まとめ
いかがでしたでしょうか。
やはり、同性カップルが子どもを迎えるということはこの日本ではそう簡単なことではありません。しかし、諦めるべきことでも決してないのです。
代理母出産、精子提供や縁組だけが子どもを迎える手段ではありません。
実の子どもではないけれど、「里親」を待っている子どもは多くいます。子育ての悩みを抱えるシングルマザーだって少なくはありません。
もちろん、今回紹介した以外にも子どもを迎える、子育てをする方法はあるはずです。
必ず同性カップルのあなたたちの力を必要としている人がいます。それを忘れないでください。
また、LGBTsが子どもを持つことを支える団体も存在しています。「一般社団法人こどまっぷ」さんなどが代表的ではありますが、もし困った場合は一度相談してみるというのもひとつの手です。
家族の形は本当にそれぞれです。中には両親がどちらも女性、どちらも男性という家庭が存在していても何らおかしくはないのです。
そして、そんな家庭が後ろ指をさされることもあってはいけないのです。
日本がもっともっとそんな家庭を受け入れてくれる、同性カップルが子育てしやすくなる、そんな風土になることを切に願っています。そして、この記事をきっかけに少しでもそういった家庭を理解し、受け入れてくれる人が増えれば幸いです。