同性カップルのふたりが「一緒に住みたい」「生活したい」という場合、賃貸住宅や住宅ローンの契約を考えることになります。

しかし、大家さんや不動産会社からの理解が得られず、同性カップルの賃貸住宅の入居が難しかったり、住宅ローンを組むのが難しいという現実もあります。

今回は、そんな状況のなかでも増えつつある同性カップルも利用できる住宅ローンについてと、選び方や、家の相続の問題などについて詳しくお伝えします。

増えてきたLGBT向けの住宅ローン

これまでにも紹介したことがあるように、同性カップルは、異性カップルよりも同居するハードルが高く、家を借りられないという事態にぶつかることが少なくありません。

その理由は一概には言えませんが、いまだに根付く偏った考え方や間違った見方によって、不動産会社や大家さんの理解が得られないことがあるためです。ほかにも、二人の関係性がはっきりしない場合や、カップルのどちらかが何らかの理由で退去した場合の家賃の支払い能力の問題、また保証人の問題などさまざまにあります。

もちろん、二人の関係性やセクシュアリティを正直に伝えることで理解してくれる不動産会社や大家さんもいるのですが、必ずしもそうとは限らず、差別的な対応をされてしまうこともあります。同性カップルが賃貸住宅を借りたり、住宅ローンを組んだりしようとしたときには、借りる側もこうしたつらい経験をする可能性があるということです。

一方で、LGBTフレンドリーな不動産会社や、理解のある大家さんも増えてきています。入居する人のセクシュアリティは問わず、同性カップルであってもスムーズに話が進む場合もあります。

具体的には、自治体や企業がLGBTやあらゆるマイノリティの人に対して支援策を講じることが増えてきたことも要因のひとつと言えそうです。高齢者や障害者などを含め、住宅を借りにくい状況にある人に対して自治体に登録された不動産会社を紹介してくれる制度があります。その中に同性カップルを含める自治体も少なくありません。役所などのホームページで確認することができ、理解ある不動産会社で無理なく住宅ローンを組むことができる可能性も高いです。

そもそも、同性カップルが同居する場合は、賃貸?購入?

同性カップルが一緒に家に住むことを考えたとき、その選択肢はまず2つあります。家を借りるのか、買うのかです。

たとえばその後、カップルとして住む場所を変えたりする予定がないのであれば、購入しても賃貸でもかかる費用に大きな差はないといえます。もちろん、カップル解消の可能性や、住む場所を変えて生活していく可能性なども考えなければならないので、ふたりがどのような生活を望んでいて、どのように過ごしていきたいのかを話し合ったうえで決める必要があります。

定住する意思がある場合には、家を購入することもできるでしょうし、むしろ引っ越しを繰り返したり、住む場所をその時に合わせて変えていきたいということであれば賃貸として借りて住むこともできるでしょう。

一方、これは同性カップルだけでなく、家を持ちたいと考えるすべての人に言えることですが、自然災害などから家を持つことにも一定以上のリスクがあるといわれています。さらに、一度家を購入すると死別したり、カップルを解消した際のことも事前に決めておかなければなりません。

同性カップルがローンを組む方法

では、同性カップルが一緒に住むときに家の購入を検討し、住宅ローンを組みたいとなったら、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。まずは、住宅ローンに関する知識を深めることから始めましょう。

住宅ローンとは?

そもそも住宅ローンとは、マイホームを購入するときに組むローンのことです。もちろん、一括で支払いができる場合にはローンを組む必要がないので、資金が潤沢にある場合には住宅ローンの契約に該当しないこともありますが、マイホームを購入するときに多くの人が利用するローンになります。

基本的には、契約者本人、もしくはその家族が居住するための住宅を購入する際に使用できるのが住宅ローンで、セカンドハウスや、購入後、人に貸す目的の家には住宅ローンは適用されません。

生活には欠かせない住宅のためのローンということもあり、他のローンと比べると比較的金利は低めに設定されていることが多いですが、その一方で巨額になることもあるため、安定して長期的な支払いができることが求められます。そのため、住宅ローンの審査で重要なのは、安定的かつ継続的な収入を得ているかどうか、という点が重要視されます。

借入先もいくつかあり、民間の金融機関が提供している住宅ローンもあれば、民間の企業と住宅金融支援機構が連携して提供している「フラット35」、さらに自治体融資などがあります。それぞれ、金利の違いや借り入れ時の条件の違いがありますので、その詳細をよく調べたうえで検討する必要があります。

同性カップルが住宅ローンを組むには

同性カップルが住宅ローンを組もうとしたとき、法律婚として現在の日本で認められている男女の夫婦とまったく同じ条件で、というのは難しいのが現実です。まず、夫婦住宅ローンが使用できないことが多く、同性カップルのどちらかがローンを組む場合には、カップル解消時や死別したときに共有財産として認められなくなる場合もあります。

すると、二人で住むことを前提にしたときに必要な分のお金を借りることが難しいという場面に直面する可能性が高いということです。

しかし、一部の金融機関などでは、同性カップルも配偶者の定義の一つとして認められつつあり、少しずつ住宅ローンを組みやすい環境になってきているのも事実です。

ペアローン

同性カップルが住宅ローンを契約する場合、ひとつの主流となっているのがペアローンです。これは、二人が別々にローンを組んで、それぞれのローンでお互いが連帯保証人になる方法です。こうすることで、一人で住宅ローンを契約するよりも大きな金額を借り入れすることができるようになります。

ペアローンは、さらに、2本並立型と、連帯型の2つに分けることができます。

2本並立型

これは、借入額の半分ずつをそれぞれが住宅ローンとして契約するものです。1000万円の借り入れをしたい場合には、500万円ずつでそれぞれが契約します。ふたりの額が半分ずつなので2本並立型といいます。

メリットとして、半額ずつの出資になりますので、不動産の所有権も等しくなる点があります。さらに、それぞれが契約していることで住宅ローン控除の減税もふたりとも受けることができます。

一方、手続きが2重に必要になってしまうというデメリットもあります。手数料もその分必要になります。さらに、カップル解消や万が一死別した際には複雑な手続きを要することになります。

連帯型

連帯型というのは、一人が主体として債務者になり、もうひとりが連帯保証人になるという方法です。債務者が返済できなくなったときには、連帯保証人に返済の義務が発生します。

この場合、不動産の所有権が債務者のみになり、連帯保証人は該当しません。所有名義者のみのリスク対策で良い分、カップル間でなにか問題が生じたときには連帯保証人が不利な立場に追いやられる可能性が高いです。

同性二人で住宅ローンを組むための必要書類

住宅ローンを契約するときに必要になる書類がいくつかあります。莫大なお金を借りて、少しずつ返済していくことになりますので、やはりそれだけの返済力があるかどうかなどをみる必要があります。

一般的に求められる書類というのは、「合意契約」に係る公正証書および「任意後見契約」の正本または謄本がひとつと、もう一つは「任意後見契約」に係る登記事項証明書です。どの金融機関で住宅ローンを契約しようと考えていても、基本的に必要になる2つです。ただ、その内容の詳細については、金融機関で違っていることもありますので、それぞれ確認する必要があります。

まずここでわかりにくいのが「合意契約」という言葉です。二人が人生のパートナーであることを誓約し、今後の生活をともにすること、また生活費の分担など夫婦、パートナーに関する必要事項を取り決めているものです。

さらに「任意後見契約」は、パートナーのうち一方が何らかの理由で自身の財産管理ができなくなった場合に、もうひとりが後見人となって相手のローン返済などの手続きを事前に委任しておく契約のことです。この契約は国の法律に基づいて作成されるもので、公正証書として契約が国に登記されることになります。

公正証書とは

公正証書は、公証役場において公証人によって作成される契約書のことです。公正証書自体は住宅ローンの際に作成されるだけでなく、遺言公正証書や、離婚する際に公正証書を作成することもあります。

公証事務を行う公務員が公証人となって、法務省が管理する役場(公証役場)で証書を作成します。各都道府県に1つ以上設置されており、全国に約300箇所ありますので、どこにお住まいであっても、その都道府県内で対応できる公証役場はあるということです。

また、原本が公証役場に保管されることで、信頼できる書面として作成され、住宅ローンの契約時などにも活用されます。また、この合意契約については、雛形が用意されているものの、同性パートナー間のオリジナルな内容で作成することもできます。今後のことを考えて作成するのが良いでしょう。

内容については公証人が相談に応じてくれることもありますが、特に同性カップルなどでなにか内容について不安や不明な点がある場合には、LGBTに詳しい法律家に相談するのもひとつの方法です。

専門家に依頼する場合には、公正証書の手数料などもふくめ、20万円前後必要になることもあります。

住宅ローンはどうやって選ぶ?

同性カップルが住宅ローンの契約を考えたとき、その選択肢は10箇所以上あります。では、どのような項目から住宅ローンを選んでいけば良いのでしょうか。

メガバンクかどうか

メガバンクであるほど、お金を借りる際に安心して借りられるような気がするかもしれませんが、借りたい側からすると審査が厳しく、借りられる金額も少額になりがちである点には注意が必要です。

窓口があり、相談しやすい環境かどうか

メガバンクなど窓口がある金融機関のほうが、住宅ローンの契約には安心です。しかし、少しでも金利など費用を抑えつつ、できるだけ希望に合う金額の借り入れをしたいと考えるときには、ネット銀行のほうが希望が通りやすいこともあります。パートナーと話し合った上で決定しましょう。

仮審査と呼ばれる事前審査があるか

物件の購入を申し込んだ時点で、住宅ローンの事前審査が発生する場合があります。住宅の売買契約締結になる前に、現実的に住宅ローンの契約が可能か、どのくらいの金額を借りることができてどのような返済計画になるか、しっかりと予定を立てておきましょう。

固定金利か、変動金利か

固定金利のほうが返済の予定は立てやすいですが、変動金利は合計したときのコストが、固定金利よりも下がる場合が多いというメリットがあります。条件や具体的な金利を考慮して、どの住宅ローンにするか決定しましょう。

家の相続はどうするの?

最後に、家の相続についての問題もお話しておきます。家を購入したあとは、パートナーのどちらか一方、もしくは二人になにか起きたらどうするか、ということを考えなければなりません。

もちろん、できれば長く一緒に暮らして、充実した生活を送ることが理想ではありますが、大きな金額を借りて住宅を購入するということは、不測の事態にも対応できるように事前に準備しておかなければいけないということです。

同性パートナーは、日本において法的な相続人ではないため、遺言書を作成するなどの準備が必要になります。万が一のとき、どのように対応するか、しっかりと話し合っておくことで安心した暮らしにつながるでしょう。

なにか起きてからでは、相続トラブルにもつながりかねません。二人の関係性を家族や周囲の人に話すのかどうかも、二人で話し合って決めると良いでしょう。

まとめ

ここまで、同性カップルが住宅ローンを契約しようとしたときに、どのような方法があるか、どのようなことに気をつければよいかについてお伝えしてきました。

もちろん、住宅の購入を考えず、賃貸契約で一緒に住むという方法もあります。ただ、パートナーとの今後の長い生活を考えたときに、住宅を購入したいと考える場合も少なくないはずです。

住宅ローンを契約する際には公正証書などの書類が必要であったり、手順の多い審査などを経て契約することになります。その選択肢も数多くあり、自分たちの希望に合うところを探すのが良いでしょう。

大きなお金のやりとりが発生することになりますので、今後の返済計画なども綿密に立てながら、十分に注意し、パートナーともよく話し合って決定できると良いですね。