最近では「LGBT」という言葉を知っている方は増えてきたかもしれませんが、それ以外にもセクシュアリティがあることをご存じですか?

「LGBTQ」、「LGBTQ+」、「LGBTQIA」」と表されることも増えてきました。本記事では、「A」で表されている「アセクシュアル」について解説していきます!

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アセクシュアルとは

アクセシュアルとは、【恋愛感情の有無に関わらず、他者への性的欲求を(ほとんど)抱かない人】や【他人への性的な魅力を(ほとんど)経験していない人】のことです。

他にもアロマンティックという言葉もあり、これは【性的欲求の有無に関わらず、他者に対して恋愛感情を(ほとんど)抱かない人】のことです。

※(ほとんど)と記載したのは、海外ではグレーアセクシュアルという言葉もあり、非常に関係性が密になった相手にだけ性的欲求を感じることが稀にある方もいるため、(ほとんど)と敢えて記載しています。

なので、もしあなたが「他者に対して、恋愛感情も性的欲求も抱かない」のであれば、アロマンティック・アセクシュアルということになります。

ただ上記は厳密に定義した物であり、日本では恋愛感情を抱かない人も含め、ざっくりと包括してアセクシュアルと呼ぶ場合もあります。

アセクシュアルとノンセクシュアルの違い

アセクシュアルに近しい言葉として、ノンセクシュアルというセクシュアリティもあります。

アセクシュアルは他者へ恋愛感情を抱かない・性的欲求を抱かない人を包括的に表す言葉なのに対し、ノンセクシュアルは【他者へ恋愛感情は抱くものの、性的欲求は抱かない人】のことです。

アセクシュアルの割合

アセクシュアルの割合

ここまでアクセクシュアルについて理解いただけたかと思いますが、みなさんは身の回りでアセクシュアルの知り合いはいますか?

現時点でわかっている人数としてはどれくらいいるのでしょうか。

世界的なアセクシュアルのコミュニティーである「the Asexual Visibility and Education Network(AVEN)」で公表されているのは、人口の1%です。大体のサイトではこの数字が引用されています。

また、日本の電通ダイバーシティ・ラボの「LGBTQ+調査2020」によると、アセクシュアル・アロマンティックの方は0.81%という調査結果でした。

ただ、アセクシュアルという言葉はここ最近になって知られてきたこともあるため、認知度が広がることで1%以上の数になるのではないかと筆者は考えます。

アセクシュアルの生きづらさ

では、アセクシュアルの人は何に困っているのでしょうか?

当事者の困りごとについて知ることができれば、あなたの身の回りにいるあの人も、実は生きやすくなるかもしれません。ぜひ自分の身の回りの出来事や会話とも照らし合わせて考えてみてください。

※以下は日本で使用されている広義の意味でのアセクシュアル(恋愛感情や性的欲求を抱かない)として説明していきます。

①本当に好きな人と出会ってないと思われる

アセクシュアルだとカミングアウトしても「まだ好きな人と出逢ってないだけだよ」「大人になれば自然と好きな人ができるよ」と言われてしまうことも多々あります。

しかしアセクシュアルの人はそもそも恋愛感情や性的欲求を(ほとんど)抱かないため、出逢う相手やタイミングによる問題ではないのですが、世の中には恋愛至上主義の人も多くいるため、恋愛感情などを抱かないということを理解してもらえないことがあります。

②「好きになれるかもしれない」と思って付き合ってみても、恋愛感情がやはり生まれない

①のような、「これから先に好きな人ができるかとしれない」という考えは、実は当事者もそう思うことがあります。

そのため、試しに付き合ってみるのですが、最初から(恋愛感情として)好きではない人と付き合っても中々好きという感情が芽生えるのは難しく、自分も相手も悩ませてしまい、時には相手から責められてしまう方もいます。

相手の気持に応えたいとアセクシュアルの方も思うのですが、好きという感情表現が人それぞれ違うこともあり、それを求められるとしんどさを感じてしまうのです。

③他のアセクシュアルに出会う機会が少ない

人口の1%だと先述したとおり、元々少ないことに相まって、まだ日本での認知度も高いわけではないセクシュアリティでもあり、コミュニティも少ない状況です。

数は少ないですが、アセクシュアルのための「Ace Week in Japan」という団体などもあるので興味のある方は問い合わせをしてみるのもありかもしれません。

④同性愛者と勘違いされることがある

アセクシュアルの人が異性と恋愛をしない様子から「隠れて同性と付き合っているのではないか?」「同性が好きなのでは?」と他人から妄想をされてしまい、勘違いされることもあります。

しかしアセクシュアルの人は異性、同性に関わらず、恋愛感情や性的欲求を抱かないため同性愛者であるというのは間違いなのです。

⑤性行為を求めないことで愛情がないと誤解される

他者への性的欲求を抱かないが、恋愛感情のあるアセクシュアルの場合、相手から愛情がないと思われてしまう場合があります。マジョリティの前提として、性行為=愛情という方も多くいるため、性行為を求めないことは好きではないという方程式を当てはめられてしまいます。

これは、アセクシュアル以外の人にも少し当てはまることがあるのではないでしょうか?

カップルでも性行為を希望する頻度の違いから、愛されてないと喧嘩になる場合もあるかと思いますが、似ている構造だと思います。

性行為のみで愛情を確かめるのではなく、相手とコミュニケーションをとった上で、お互いにとってどういう形が幸せなのか考えていく必要があると思います。

⑥自分のセクシュアリティに気づきにくい

アセクシュアルの当事者の多くが、テレビや本などで繰り広げられる恋愛に、「いつか自分もそういう日がくるのではないか」と考えていることがあります。

しかし大人になってもそういった感情が芽生えることがなく、自覚するのに20歳を過ぎて大人になってからという方も多くいます。

またアセクシュアルという言葉に学生生活の中で触れる機会もほとんどなく、そもそもアセクシュアルというセクシュアリティがあることを知らずに大人になる方もいるのです。

⑦遊び人だと勘違いされる

同性愛者だと勘違いされるのと同じ構造ですが、特定の相手と恋愛をしていないことから不特定多数と遊んでいるのではないか?と勘違いされることもあります。

また、「男性」「女性」どちらに対しても恋愛感情などを抱いてないため、他人が(特に異性と)親しくしている様子をみて「恋愛感情がないなら相手に思わせぶりで失礼だ」と言われてしまうこともあります。

しかし前提として、【親しくしている=その先に恋愛がないといけない】というのは誰が決めたのでしょうか?

関係性というのはお互いが決めることなので、他人がとやかく言うことではないですし、すべてを恋愛に繋げる必要はないと思います。

⑧結婚したくない人なのだと思われる

恋愛感情を抱かないということから、結婚はしない人なのだと思われますが、一概にそうではありません。恋愛結婚はないかもしれませんが、信頼できる人と一緒に暮らして生活を共にしていきたい、パートナーが欲しいと思っている方は多くいます。

シェアハウスのようなイメージが一般的には近いかと思いますが、結婚という契約の元、パートナーと一緒に生活をしていきたい方もいるのです。

アセクシュアルを公言している「なかけん」さん曰く、肌感として3〜4割は結婚願望のあるアセクシュアルもいるようです。

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アセクシュアルの人が身近にいるかもしれないことを考えてみる

アセクシュアルの人が身近にいるかもしれないことを考えてみる

アセクシュアルの人の生きづらさを紹介してきましたが、もしあなたが知らないだけで、身近にアセクシュアルの人がいた場合を想定して、どういったことに気を付けていくべきなのでしょうか?

恋愛をする人だということを前提に恋バナをしない

恋バナ自体がダメというわけではありません。しかし、「好きな人はいない」という相手に対して「いい人紹介するよ!」「モテそうなのにもったいない!絶対恋人作った方がいいよ」など恋愛をすることが正しいという前提で相手に押し付ける行為はストレスを与えているかもしれません。

言われなきゃわからないよ!という思う方もいるかもしれませんが、まずは相手の話にじっくり耳を傾け、自分の価値観や経験だけで正しさを押し付けたり、相手を否定しないようにすればお互いに気持ちよく会話ができるのではないでしょうか?

性的感情を抱かないことを否定しない

性的欲求を感じないと話すと、「体が異常なのではないか?病院に行った方がいい」「パートナーがかわいそう」「人生損している」などという方もいますがこれも価値観の押し付けになっています。

長年パートナーとして生活していればセックスレスになるカップルもいますが、幸せに生活している方も大勢いますし、性的な関係がない=愛情がない・異常というのは、むしろ表面的な関係しかみていないのではないかと思います。

異性カップルにおいても性行為の頻度が合わず、口論になることも多々ありますし、それぞれに性的欲求の強さが違うように、お互いを尊重して居心地の良い関係を作ることが大切なのではないでしょうか?

これから本当のパートナーに出会うよとセクシュアリティを否定しない

もちろんアセクシュアルの中には、まだ自身のセクシュアリティがわからず悩んでいるケースやアセクシュアルと気づいていないケースもありますが、本人がアセクシュアルの可能性やカミングアウトを話しているにも関わらず、最初から排除するのは否定に感じる人もいるかもしれません。

最初から全てを理解することは難しいかもしれませんし、混乱するかもしれませんが、やはりここでもまずは相手の話に耳を傾け、否定はせずに聞いてあげるだけでも当事者は安心するかと思います。

アセクシュアルを公言している有名人

あまり聞いたことがない人もいるかもしれませんが、アセクシュアルを公言している人もいます。日本と海外の有名人をご紹介いたします。

性性堂堂のなかけんさん

チャンネル → なかけん

モデル・俳優業として活躍する、中山咲月さん

 

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<海外>

  • タレントとして活躍する、ティム・ガンさん
  • モデルや作家、活動家として活躍する、ヤスミン・ブノワさん
  • コメディ俳優として活躍する、ジャニーン・ガラファローさん
  • 歌手として活躍する、デヴィッド・アーチュレッタさん
  • Youtuberとして活躍する、マイキー・ニューマンさん

まとめ

アセクシュアルというセクシュアリティについてや、当事者の困りごとや生きづらさについて理解いただけたでしょうか?

一概に全員がこの記事に書いたとおりということではなく、その人によってセクシュアリティはグラデーションのように違っています。

アセクシュアルとして配慮しないといけないと思うのでなく、「個人」としてその人をみて話に耳を傾けてみて下さい。

昨今では事実婚を選択する方や、子供を作らない選択をしている人たちも増えてきています。さまざまな家族の形があり、それぞれの人生の選択があると思います。

自分とは違う価値観や選択の人たちを排除してしまわないよう、私たち一人ひとりが他者を尊重する気持ちを持ち続けていくことができれば、誰かが生きづらい社会ではなくなるのではないかと思っています。