近年、多くの国々で同性婚が合法化される動きが進んでいます。しかし、各国や地域での同性婚の普及度や受容度は異なります。

この記事では、同性婚が合法とされている国々の現状や、男性同士、女性同士の結婚の傾向、そしてアメリカのLGBTQ+の人口について詳しく見ていきます。

本記事は、Pew Research Centerの記事を翻訳し、内容を要約して作成しています。詳細なデータを見たい方は『Pew Research Centerの本元』をご覧ください。

初めに
IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBTQ+」について解説するため、表記が混在しております。

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同性婚が合法化されている国々の現状

現在、世界中で30カ国以上が同性婚を合法化しています。Pew Research Centerの最新の分析によれば、詳細な統計が入手可能な24の国や地域で、近年の同性婚の割合は全ての結婚の中で1%未満から3.4%の間で変動しています。

これらの数字は、同性婚が合法とされている各地域の公式の結婚統計に基づいています。アメリカでは、国全体での結婚データの収集は行われていないため、Census BureauのAmerican Community SurveyやCurrent Population Surveyのデータを使用して、全ての既婚世帯の中での同性婚の世帯の割合を推定しています。

他の国や地域の数字は、その年に記録された結婚の数を示しています。

統計データの取得方法と範囲

同性婚の統計データの取得は、国や地域によって異なる方法が採用されています。この分析では、各国や地域で利用可能な最新の結婚統計データを基にしています。具体的には、2020年、2021年、または2022年のデータが使用されており、国によっては最新のデータが利用できない場合もあります。

例えば、イギリスでは、スコットランドや北アイルランドの統計機関は2021年のデータを持っていますが、イングランドとウェールズの統計機関は持っていないため、2020年のデータが使用されています。

また、統計データの取得には、COVID-19の制限による影響も考慮されており、集まりの制限によってこれらの地域での結婚の数が影響を受けている可能性が指摘されています。

COVID-19の影響と統計の取得難易度

COVID-19のパンデミックは、世界中のさまざまな活動に影響を及ぼしていますが、結婚の統計にもその影響が見られます。特に、集まりの制限や移動の制約により、多くの地域で結婚式が延期されたり、小規模になったりすることが多くなりました。これにより、結婚の総数が減少する可能性があり、統計データにもその影響が反映されていることが考えられます。

さらに、同性婚の統計データの取得には、国や地域によってさまざまな課題が存在します。例えば、アルゼンチンでは、結婚に関する統計データを一元的に管理する全国的なリポジトリが存在しないため、データの取得が難しいとされています。また、カナダの一部の州や地域では、結婚の登録時に性別を記録しないため、同性と異性の結婚の統計を別々に公表することができない状況となっています。

このような取得難易度は、同性婚の実際の普及度を正確に把握する上での障壁となっています。

スペインとエクアドル:同性婚率の最高と最低

同性婚が合法化されている国々の中で、同性婚の割合が最も高い国はスペインです。スペインでは、2005年から同性婚が合法とされており、2021年に登録された148,588件の結婚のうち、3.4%が同性のカップルによるものでした。この数字は、利用可能なデータを持つ国や地域の中で最も高い割合を示しています。

一方、同性婚の割合が最も低い国はエクアドルです。エクアドルでは、2019年の憲法裁判所の判決により、同性婚が合法化されました。しかし、2021年にエクアドルで登録された56,921件の結婚のうち、わずか250件、つまり0.4%しか同性のカップルによる結婚はありませんでした。

これらの数字は、同性婚が合法化された後の社会の受容度や文化的背景、歴史的経緯など、多くの要因に影響されていることを示しています。LGBTお部屋探し

イギリスの同性婚:地域ごとの違い

イギリスにおける同性婚の統計は、地域ごとに異なる特徴を持っています。イギリス全体での同性婚の割合は、利用可能なデータを持つ国々の中で2番目に高い3.3%です。しかし、この数字は、イングランドとウェールズ、スコットランド、北アイルランドという3つの地域の統計を合わせたものとなっています。

2020年のデータに基づくと、イングランドとウェールズでは同性婚の割合が3.3%、スコットランドでは3.5%、北アイルランドでは4.2%となっています。これにより、イギリス全体での同性婚の割合は3.3%となります。さらに、スコットランドと北アイルランドでは、2021年の同性婚のデータも公開されており、それぞれ3.4%と5.0%の割合を示しています。

一方、イングランドとウェールズの2021年のデータはまだ公開されていません。

男性同士、女性同士の結婚の傾向

同性婚の統計を詳しく見ると、男性同士の結婚と女性同士の結婚の間には顕著な違いが見られます。データが利用可能な20の地域において、16の地域で女性同士の結婚の方が多いという結果が示されています。

特に、台湾では2022年に記録された2,493件の同性婚のうち、1,794件、すなわち72.0%が女性同士の結婚でした。これは、同性婚の中で女性同士の結婚の割合が最も高い地域となっています。一方、コスタリカでは、2022年に記録された677件の同性婚のうち、370件、つまり54.7%が男性同士の結婚でした。これは、男性同士の結婚の割合が最も高い地域となっています。

このような男性同士、女性同士の結婚の傾向は、文化や社会的背景、地域のLGBTQ+コミュニティの状況など、多くの要因に影響されていると考えられます。

アメリカの同性婚の現状とLGBTQ+の人口

アメリカにおける同性婚の状況は、他の多くの国々とは異なる特徴を持っています。アメリカでは、結婚の登録は州や地方レベルで行われており、全国的な統計データの収集は行われていません。そのため、同性と異性の結婚の統計を別々にカウントするすべての地域のデータは利用できません。

しかし、Census Bureauの推定によれば、2021年時点でアメリカの既婚世帯のうち、711,129世帯、すなわち1.2%が同性の既婚世帯でした。さらに、同性の既婚世帯の中でも、2人の女性が結婚している世帯が2人の男性が結婚している世帯よりも多く、全体の52.6%を占めていました。

また、アメリカのLGBTQ+の人口に関する最新の推定によれば、2022年時点でアメリカの成人のうち7.2%が「レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、またはストレートやヘテロセクシャル以外」として自己認識していることが示されています。

まとめ

同性婚の合法化は、多くの国々で社会的な進歩として受け入れられています。しかし、各国や地域の文化、歴史、法的背景などの要因により、同性婚の普及度や受容度は大きく異なります。

今後も、同性婚やLGBTQ+の権利に関する議論や動きは続いていくことでしょう。私たち一人一人が、多様性を尊重し、理解を深めることが、より公平で包括的な社会を築く鍵となるでしょう。