こんにちは!ライターのミオカです。
昨今、セクシャル・マイノリティーを題材にしたり、LGBTsの当事者が登場人物として描かれたりしている映像作品や小説が増えてきました。
その一方で、「個性とか多様性とは言うものの、どうも実感としてピンとこない」という人も依然として多いのではないでしょうか。
LGBTsに限らず、他人のことを肌感覚として理解するのは難しいものです。
そこで今回は、「絵本」という手法によって人間の個性や多様性を描いた作品を紹介したいと思います。
分かりやすくLGBTsを題材にした作品もあれば、必ずしもそうではない作品もありますので、「おもしろそうだな」と思った作品があれば、ぜひ読んでみてください。
レッド あかくてあおいクレヨンのはなし
著:マイケル・ホール
訳:上田勢子
青いクレヨンなのに、赤いラベルをはられている「レッド」。
レッドは赤いものを上手く描けません。学校の先生や友だちは、もっと努力すれば赤いものが描けるようになると言いますが、どう頑張ってもうまくいきません。
ある時、海を描いてほしいと言われたことがきっかけで、レッドは本当の自分に気づき始めます。
「ラベルの向こう側にあるもの」を見ることについて教えてくれる作品です。
オレンジいろのペンギン
著:葉 祥明
オレンジ色の卵からオレンジ色の体で生まれてきた、皇帝ペンギンのジェイムズ。
ジェイムズは自分の体を気に入っているの、仲間と見た目がちがっても気にしません。
あるとき吹雪がやってきて、皆が寒さに耐えている中、ジェイムズの体が太陽のようにオレンジに輝いて周囲を温め始めます。
「自分の持ち味を活かすこと」をユニークな方法で描いた、色使いの美しい作品です。
まざっちゃおう! ―いろいろな いろの おはなし―
著:アリー・チャン
訳:小栗 左多里
赤・青・黄の3色にきちんと分けられていた街で、だんだんと色が混ざっていく様子を描いてます。
最初のうちは、「ちがう色と混ざろうとすること」が警戒されますが、やがて、ちがう色と混ざることで自分たちが楽しく、豊かになることが分かってきます。
異なる性質を持った者たちが共生することを、混色を使って分かりやすく表現した作品です。
あおいらくだ
著:茂田 まみこ、長村 さと子
イラスト:楓 真知子
空と海と夜をこよなく愛する「青色のラクダ」は、旅をしている途中で「茶色いラクダ」に出会います。
はじめはお互いのことを「変」だと感じますが、少しずつ打ち解けていくうちに、相手の世界の素晴らしさに気づいていきます。
「自分とちがう者」に対する寛容さについて考えさせられる作品です。
ジュリアンはマーメイド
著:ジェシカ・ラブ
訳:横山 和江
ある日、人魚の仮装をした女性たちを見かけたジュリアンは、「僕もマーメイドなんだ!」と、おばあちゃんに打ち明けます。
そして、植木を髪飾りにして、カーテンを腰に巻いて、人魚に大変身。
それを見てずっと黙り込んでいたおばあちゃんは、ジュリアンをある場所へ連れて行くことにします。
「取ってつけたような言葉がなくても、相手を受け入れることはできる」ということを視覚的に描いた作品です。
くまのトーマスはおんなのこ
著:ジェシカ ウォルトン、ドゥーガル マクファーソン
訳: かわむら あさこ
エロールという男の子が大切にしている、テディベアのトーマス。
トーマスはある日、自分は本当は「ティリー」という女の子なのだと打ち明けます。
親友を失うだろうと覚悟していたティリーに見せた、エロールの反応とは…。
「性別と友情には、関係があるのか?」というシンプルな問いを投げかけてくれる作品です。
せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子
著:キース・ネグレー
訳: 石井 睦美
女性はドレスを着ることしか許されていない時代。メアリーは、ズボンを履いて学校へ行くことにします。
メアリーの父親は理解を示してくれますが、周囲は大騒ぎになり…。
メアリー・ウォーカーという実在の女性をモデルにした作品です。
タンタンタンゴはパパふたり
著:ジャスティン・リチャードソン、ピーター・パーネル
イラスト: ヘンリー・コール
訳:尾辻 かな子、前田 和男
仲良しのオスのペンギン、ロイとシロは、他のつがいを真似して石を温めようとしますが、うまくいきません。
その様子を見ていた飼育員が、放置されていた本物のペンギンの卵を巣に乗せたところ、やがて雛がかえります。
雛には「タンゴ」とう名前がつけられ、動物園の人気者になります。
ニューヨークにあるセントラル・パーク動物園で起こった実話をもとにした作品です。
マチルダとふたりのパパ
著:メル・エリオット
訳:三辺 律子
パールは、新しくやってきた転校生のマチルダに「パパが2人」いることを知ります。
何だか楽しそうな家庭だなと想像してワクワクするパールですが、いざマチルダの家へ遊びに行ってみると、「うちのパパとママとかわらない」ことに気がつきます。
「見た目のちがい」にとらわれないことの大切さに気づかせてくれる作品です。
ふたりのパパとヴィオレット
著:エミール・シャズラン、ガエル・スパール
訳:中山 亜弓
ヴィオレットには、「パパ」と「ダディー」の2人の父親がいます。
2人とも、ヴィオレットが学校で仲間はずれにならないよう色々と気を使いますが、ヴィオレットとしては「3人で一緒に出かけたい」というのが本心で…。
「男性カップルの娘」という視点から、家族のあり方について問いかける作品です。
ランスとロットのさがしもの
著:リンダ・ハーン、
訳: アンドレア・ゲルマー、 眞野 豊
騎士のランスとロットは、旅行をしたりパーティーをしたりして、楽しく暮らしていました。
そんな暮らしに飽き始めたある日、2人は「家族を作る」という壮大な計画を考えつきます。
ゲイカップルが養子を迎えるまでの様子を、騎士の世界に見立ててファンタジックに描いた作品です。
にじいろのしあわせ
著:マーロン・ブンド、ジル・トウィス
イラスト: EG・ケラー
訳:服部 理佳
アメリカ合衆国副大統領(当時)マイク・ペンス氏の一家に飼われていた「マーロン・ブンド」という名のウサギが主人公です。
マーロンは、素敵なオスのウサギと出会って意気投合しますが、動物世界のリーダーであるカメムシに同性同士の結婚を反対されてしまいます。
「個人の幸せを大切にする社会の実現」について、分かりやすく描いた作品です。
ふたりのママの家で
著:パトリシア・ポラッコ
訳:中川 亜紀子
レズビアンカップルの家に迎えられた養女「わたし」の視点から語られる、ある家族の物語。
「わたし」が家にやってきた日から、年老いた母親2人があの世に旅立つまで、長い年月のさまざまな出来事がテンポよく進んでいきます。
同性カップルが生涯を添い遂げる様子を描いた作品がまだ少ない中、本作は新たな「人間関係の描き方」の可能性を示してくれます。
村娘と王女
https://www.amazon.co.jp/dp/4775528785/
著:ダニエル・ハーク、イザベル・ギャルーポ
イラスト:ベッカ・ヒューマン
訳:河村 めぐみ
ある王国で、王子の花嫁を見つけるための舞踏会が開かれます。
賢くて勇敢な村娘は、一番の花嫁候補とされていますが、村娘は王子と結婚する自分の姿を想像できません。
村娘が浮かない気分で舞踏会へ向かうと、そこで思いがけず王子の姉妹である王女と恋に落ちます。
「自分の心が求めていたものは、思いもよらぬところにある」という喜びを描いた作品です。
じぶんだけのいろ―いろいろさがしたカメレオンのはなし
著:レオ・レオニ
訳:谷川 俊太郎
まわりに合わせて体の色を変えられるカメレオンには、悩みがありました。それは「自分の色」がないこと。
彼はある時、別のカメレオンに出会い、一緒に旅をしていくうちに「同じ色の変化」を分かちあえることの喜びを知ります。
カメレオンが主人公だけに、鮮やかな色使いが印象的な作品です。
詩人・谷川俊太郎さんが手掛けた日本語訳も、リズミカルで美しいです。
にげてさがして
著:ヨシタケシンスケ
「逃げずに向き合う」ことが良しとされる世の中ですが、我慢して耐えることだけが正解ではありません。
自分の居場所を変えた先に、素晴らしい出会いが待っている可能性だってあります。
「逃げる」ということの意味について、ユーモラスな文体で、少しちがった視点から考えさせてくれる作品です。
ふたりはきょうも
著:アーノルド・ローベル
訳:三木 卓
仲良しの2匹のカエル「がまくんとかえるくん」シリーズの一冊です。
2匹は今日も、一緒にたこ上げをしたり、怖い話をしたり、誕生日にプレゼントを贈ったり…。
何事においても競い合いがちな男性同士が、お互いに優しさを見せ合い、ケアし合うことの素晴らしさを描いた作品です。
視点を変えるには、絵本がおすすめ
何か気になる作品はありましたか?
絵本という表現方法は、使うことのできる語彙や文字の数が限られているため、その分「物事の本質を分かりやすく伝える」ことに長けているように思います。
ニュースで「時事問題」として取り上げられることの多いLGBTsですが、少し視点を変えて考えてみたいという人には、絵本をお勧めします。