初めに
IRISではLGBTにも、その他のマイノリティにも親切な企業でありたいという気持ちからLGBTsフレンドリーを掲げていますが、本記事はLGBTに関する内容の為、LGBTsではなくLGBTという言葉を使用していきます。

同性婚が認められていない日本。ゲイカップルは結婚できないのなら、結婚式をあげることもできないと思っている人もいるのではないでしょうか?

今回の記事ではゲイの結婚式について解説するだけでなく、同性婚、同性パートナーシップ制度について海外の事例も交えて解説します。

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【結論】ゲイでも結婚式は挙げられる!

ゲイでも結婚式をあげることはできます。同性婚はできなくても、ゲイカップルが結婚式をあげられる式場はあります。現在ではLGBTフレンドリーな式場を探すサービスも存在し、ゲイでも結婚式をあげられる式場を探すハードルはかなり下がっています。「ゲイ 結婚式」、「LGBT 結婚式」などのキーワードで検索するといくつか候補がでてきます。

 

ゲイカップルでも結婚式を挙げられる式場

ゲイカップルでも結婚式を挙げられる式場
本記事では、ゲイカップルが結婚式を挙げられる式場の中でも、特に異性カップルと区別してLGBT専用ウェブサイトを用意している式場をピックアップしました。

最近では様々な企業が様々な場面で「LGBTフレンドリー」という言葉を使うようになりましたが、その企業が本当にLGBTフレンドリーか自信を持てないケースもあるかと思います。いわゆる「なんちゃってフレンドリー」というやつですね。

参考 企業が目指すべき「LGBTフレンドリー」とは何か?誤解が生む”なんちゃってフレンドリー”の悪影響

 

大半のゲイカップルにとって、結婚式場の担当者にゲイカップルであることを告げるだけでもかなりの抵抗があるはず。

ゲイカップルであることを苦労して伝えたのに、対応する式場が実は「なんちゃってフレンドリー」な式場だったら困りますよね。

ゲイカップルの挙式には、男女の結婚とは違う配慮が求められる要素がいくつもあるはずです。その点、LGBT専用のウェブサイトまで準備しているほどの式場でしたら、かなり安心して問い合わせできるのではないでしょうか。

ゲイの当事者が運営していたり、同性専用プランを用意する会場もあるなど本格的な式場から選べます。

IWAI OMOTESANDO

株式会社CRAZYが運営する施設。CRAZYはTokyo Rainbow Prideにも出展するほど、セクシュアルマイノリティに対する取り組みにも力を入れていて、「CELEBARATION for all  -すべての人に等しくお祝いを- 」というセクシュアルマイノリティの式を支援する活動を積極的に行っています。実際、これまで20組以上のセクシュアルマイノリティのカップルが同社で式をあげています。

2021年にはGAYアプリの「Blued」を運営するBlued Japan株式会社と共同し、「Blued」ユーザーであるゲイカップルを対象にウェディングセレモニーをプロデュースする「CELEBRATION for all with Blued」というイベントも企画するなど、ゲイカップル向けのイベントも実施してきています。(イベントは既に終了しています)

 

参考

【LGBTQウエディング】「誰かの勇気になれたら」ふたりの新婦が挙式に込めた願い CRAZY WEDDING

 

ジャスマック青山

株式会社ジャスマック と 合同会社Juerias LGBT Weddingにより結成されたチームであるEqual Weddingが運営する会場。

LGBT当事者が運営に参加しているだけあって、配慮が行き届いたサービスが用意されています。希望者には、同性愛者であることを公表されている牧師さんを呼ぶことができたり、ゲイを公表している行政書士と協力して「婚姻契約公正証書」という公正証書を作成してもらうプランも用意されています。結婚式だけでなく、同性婚ができない2人のために、結婚後の人生を守る公正証書まで用意してもらえるのはありがたいですね。なぜ公正証書の作成が大事になるかは、この記事の後半で解説しています。

プランによっては、ジャスマック八雲という駒沢オリンピック公園近くに位置する会場を選択することもできます。

 

ウィングス海老名

神奈川県海老名市にあるウィングス海老名ではLGBT向けのプランが用意されています。

挙式とフォトがセットになったプラン、フォトウェディングプランが選べるようになっています。衣装もタキシードxタキシード、ウェディングドレスxタキシードなど様々な組み合わせから選べるようになっています。サイトはモバイル版しか今のところ見当たらなかったのですが、興味のある方は是非ご覧ください。

 

最明寺

最明寺は埼玉県川越市に鎌倉時代から750年以上も存在する仏教寺院。そんな歴史ある寺院で仏前結婚式をあげることができます。「同性結婚式をあげられる仏教寺院」としてウェブサイトまで用意されています。プロモーションムービーやフォトギャラリーが用意されているので、実際の式がより身近に感じられるかと思います。LGBT結婚式の場合、僧侶が身に着ける輪袈裟はレインボーカラーで、指輪の代わりに交換するのもレインボーカラーの念珠を準備していただけるという配慮がとても素敵です。

挙式費用は20万円からとなっています。(撮影代込み、衣装代別)

 

参考

仏教寺院がLGBT結婚式をはじめるまで~最明寺副住職千田明寛さん~

ザ・ヒルサイド神戸

兵庫県神戸市の六甲駅近くに位置するザ・ヒルサイド神戸ではLGBTウェディング相談会を開催して、LGBT当事者でも相談しやすいような体制を整えています。

 

LGBTフレンドリーなウェディングフォト会社

LGBTフレンドリーなウェディングフォト会社

株式会社ONESTYLE

ONESTYLEはLGBT向けのプランも提供しており、サロンは表参道、横浜、仙台の3ヶ所にあります。

ホームページ上では、2人とも袴姿の素敵なサンプル写真なども閲覧できるようになっています。

撮影場所はスタジオだけでなく屋外、チャペル、洋館などさまざまな場所が選べるようですので、こちらのロケーションページをみて、どこで写真を撮影するのか想像するのも楽しそうです。

 

ゲイカップルも結婚式は挙げられるけど、結婚はできない

ゲイカップルでも結婚式を挙げることはできます。結婚式自体を挙げるのに何か特別な資格などは不要です。

とくに、これまでご紹介したようにLGBTに特化したプランまで用意されている式場の場合は、特に抵抗も少なくあげやすいでしょう。

 

しかし、式を挙げることはできても現在の日本では同性婚は認められていない為、法律上の夫婦にあたる関係にはなれません。

ゲイカップルが式をあげても戸籍上は他人のままですし、法的に2人の関係性を証明してもらえるわけでもありません。

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同性婚とパートナーシップ制度の違いとは

同性婚ができない日本では、おもに同性カップル向けに「パートナーシップ制度」、「ファミリーシップ制度」などと呼ばれる制度が2015年から開始されています。

地方自治体が主体となり、申請をした同性カップルに対して、結婚しているのと同等の関係性であることを認めるという制度です。

最初は一部の区単位で始まりましたが、現在では都や県単位で制度が導入されている場合もあるほどに急速に広がっています。

「パートナーシップ制度があるのだから同性婚ができなくても良い」という意見を言う人もいますが、同性婚とパートナーシップ制度には大きな違いがあります。

結婚していないと認められないこと

結婚が持つ効力は非常に大きなものがあります。

結婚によって得られるものをいくつかあげますと、

  • 戸籍の変更
  • 法定相続権
  • 配偶者控除
  • 相続税の軽減
  • 配偶者ビザ
  • 子供の共同親権

などがあります。

ではパートナーシップ制度を利用すると上記のうち、どの権利が得られるでしょうか?

答えは「何も無い」です。

パートナーシップ制度を利用したとしても、これらのうち何一つ手に入れられません。

結婚は国が主体の法律ですが、パートナーシップ制度はあくまで地方自治体の制度にすぎないため、結婚と比較した場合の効果は非常に限定的です。

ほかにも、病院での面会や手術同意は、結婚していれば問題なくできますが、パートナーシップ制度の場合、認められるかは医療機関の判断次第になってしまいます。

ゲイカップルの一方が突然死してしまったものの、遺言状を遺していなかったために遺産を全く相続できないだけでなく、葬式にすら参列させてもらえなかったという悲惨な話もあります。

海外のゲイの結婚事情

海外のゲイの結婚事情
次に海外におけるゲイの結婚事情をみてみましょう。

ドイツ

ドイツではまず2001年に「登録された生活パートナーシップ制度」が成立し、結婚より劣るものの同性カップルも法的な保護の対象とされるようになりました。2005年の法改正によって異性間の結婚に近い効力を持つ様になりました。

そして2017年には「同性婚姻法」が成立し、同性間でも結婚ができるようになりました。

 

ノルウェー

ノルウェーでは男性間の性行為は刑法で犯罪とされていましたが、1972年に撤廃されます。1981年に同性愛に対する差別、セクシュアルマイノリティに対するヘイトスピーチが法律で禁止されました。1993年に同性カップルに対して法律婚と同等の権利を認める登録パートナーシップ法が成立し、2008年に性別の区別のない新たな婚姻法が成立し、同性婚が認められました。

 

参考

性とジェンダーの多様 駐日ノルウェー大使館

 

オーストラリア

オーストラリアでは、大英帝国の植民地時代から反同性愛法が存在し、同性愛行為は犯罪とされてきた時代が続いていました。1997年に同性愛が非犯罪化されました。2008年には税金、社会保障、雇用などの差別的待遇を改善するための法改正が行われ、2013年には性的指向や性同一性への差別を禁止、2017年12月に同性婚が法制化されました。オーストラリアでも同性婚に対して賛成派と反対派の対立があったものの、強制力のない国民に対する郵便による調査によって、国民の61.6%が同性婚に賛成したという結果が同性婚を認めることに大きな役割を果たしたようです。

 

参考

オーストラリア、同性婚を正式に合法 BBCNEWS JAPAN

CLAIR REPORT NO.491 オーストラリアにおける性的マイノリティへの政策 自治体国際化教会シドニー事務所

 

まとめ

まとめ

日本ではゲイカップルでも結婚式をあげられますが、同性婚ができません。また、男女間の結婚と同様の権利を同性カップルにも認めるような法的な保護もありません。

それでも2015年からはパートナーシップ制度が始まり、この7年で日本各地の自治体に急速に広まってきています。今年行われた参議院選挙においても夫婦別姓と同様に同性婚に対する考えが投票に影響を与えるテーマになり、状況は確実に変化してきています。

 

2019年からは札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の裁判所で性別を問わずに結婚できるよう求める訴訟が始まり、現在も続いています。2021年3月、札幌地裁は現在の同性間が結婚できない状況は違憲である、という画期的判決を下しました。しかし、2022年6月大阪地裁では、違憲ではないという判決が下されてしまいました。今後も裁判は続きますし、東京での判決言い渡しが11月30日に予定されています。

 

結婚の平等は、同性カップルに特権を求めるものではありません。あくまで男女の夫婦と同等の法的な権利を求めているだけです。現在では同性婚が認められている諸外国では、差別を禁止したり、同性カップルを法的に保護することを経て同性婚へと至ってきています。日本でも、性別を問わず結婚する権利がLGBTに与えられるよう切に願うとともに、1人1人が実現に向けてできることをする必要があるかと思います。

 

参考

MARRIAGE FOR ALL JAPAN 公益社団法人MarriageForAllJapan

『同性婚法』に関する世界各国の法整備 プライドハウス東京