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企業が目指すべき「LGBTフレンドリー」とは何か?誤解が生む”なんちゃってフレンドリー”の悪影響

スタッフブログ

こんにちは。LGBTsフレンドリーな不動産仲介会社のIRIS、代表取締役COOの石野です。

最近「LGBTフレンドリー」を掲げるサービスや企業が増えてきました。

たとえば、コスメブランドであるCANMAKE(キャンメイク)がコーポレート・アイデンティティを「女の子って本当に楽しい!」から「かわいい!に出会える」と切り替えたことも話題になりました。こういった、広告の表現からジェンダーバイアスを排除しようとする試みをよく目にします。

一方で、何をもって「LGBTフレンドリー」と言っているのか疑問符が付くケースもあります。
「LGBTフレンドリー」と謳いながら「”普通”と違うことが問題じゃない!」などと表現している広告などが事例の1つ。

LGBT総合研究所の2019年の調査では「LGBT」という単語の認知率が91%に達したという結果も出ているようです。
その広がりの裏で、当事者の抱えている困難さを理解しようとする姿勢がないままに「LGBTフレンドリー」を掲げて、意図しない嫌悪感を抱かれるケースも増えてきています。

今回は「LGBTフレンドリー」とは何なのか?研修事業も展開するLGBTsフレンドリー企業の目線で書いていこうと思います。

※IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBTフレンドリー」について解説するため、表記が混在しております。

そもそも「LGBTフレンドリー」って何なの?その定義

結論から言いますと、組織風土としての意味合いとサービス展開としての意味合いで若干異なります。

  • 組織風土:LGBTs当事者を支援し、働きやすい環境を作っていこうとする姿勢
  • サービス:LGBTs当事者の抱える困難さを理解し、課題解決につながりえるサービスを展開すること

IRISは当事者やアライによって運営される会社です。
そのため、私も含めて比較的「LGBTフレンドリー」という概念は理解しやすいものです。

しかし、客観的な目線では「LGBTフレンドリー」の字面だけ見ても、なかなかその実態を想像しづらい言葉だとも感じます。
また、字面から受ける印象によって、とんでもない斜め上の誤解を生んでいるケースもあり、ここではきちんと内容を整理していきたいと思います。

「LGBTフレンドリー」を構成する3つの要素

その企業が展開しているサービスや顧客によって異なってきますが、「LGBTフレンドリー」には大きく3つの要素があると考えています。

  • 1,差別撤廃に対する取り組み:セクシュアリティやジェンダーによる不当な扱いの差がないか
  • 2,困難さの解消:当事者にとっての困難さを理解し、共有しているか、またその困難さを取り除こうとしているか
  • 3,多様性によるシナジー:個性を単に認め合うだけではなく、それぞれの個性を強みとしたシナジーを生もうとしているか

具体的に1つずつ説明していきましょう。

1,差別撤廃に対する取り組み

これは比較的想像しやすい要素だと思います。
現に差別撤廃がなされているから「LGBTフレンドリーである!」と声高に主張しているケースも見受けられます。
はっきり言いますと、それだけをもって「LGBTフレンドリー」ということはかなり難しいのではないかと思うのです。

例えば「当社は女性差別をしません!セクハラをしません!」と主張する会社があったとします。
その会社は女性にとって働きやすいだと思われるでしょうか?そんなことはないはずです。
それは組織としての全くの最低ライン、できて当たり前のことでしかありません。
同様に、LGBTs差別や公然としたハラスメントがないからと言って「LGBTフレンドリー」の要素が充足されることはないのです。

しかし、裏を返せばこれができていないと残り2つを満たしても全く意味がないとも言えます。
現に今まで制度設計をお手伝いさせていただいた会社でも、ダイバーシティに関する部署に所属する人が「こっちの人ですか?」と手の甲をほほに当てるジェスチャーをしたり、会社としての取り組みを無に帰するような問題となったことがあります。

2,困難さの解消

これは組織風土としての取り組みなのか、サービスとしての取り組みなのかによって多少意味が変わります。
いずれにおいても当事者の抱える困難さを理解し、その解消に向けて組織として取り組むという点では同じです。
差別とまでは言えないけれども、当事者にとって壁を感じるような状況はよくあるのです。

LGBTs当事者にとっての困難さとは何か?

当たり前ですが、LGBTs当事者はいついかなるときでも生きづらさを感じているわけではありません。
自分のジェンダーやセクシュアリティを思い起こされる場面等で居心地の悪さを感じることがあるわけです。

ですから、ジェンダーやセクシュアリティと関係が極めて薄い場面、例えばラーメンを食べる、というような状況で当事者が困難さを感じるわけではありません。
そのため、「LGBTフレンドリーなラーメン屋」と言われると当事者としてもなんだかムズムズするような気持ち悪さを覚えます。

しかし、トランスジェンダーの当事者がそこでトイレを使おうとしたとき、性別ごとにトイレを分けていると違和感を持つことがあります。
その文脈で「オールジェンダートイレを設置しているラーメン屋」と主張するならばすんなり受け入れることができます。

不動産においても同じです。ゲイやレズビアンの当事者が一人暮らしの部屋探しをするとき、強い困難さを感じることはそれほど多いとは言えません。
担当者との会話の中でマイクロアグレッションを受けることや、パートナーの性別に対する決めつけなど、コミュニケーション上の違和感を生むことはありうるかもしれませんが、それはサービス展開上の課題とは言えず、単に個人の意識レベルでの問題と解釈できます。

実態として、同性パートナーが入居しようとしたとき、管理会社の審査方針や前例の有無で入居が拒まれるケースや、婚姻制度上の問題で住宅ローンが組めないなどの問題があるわけで、ただ単に「当事者同士だと気軽に相談できる」というような表面的なインサイトだけで弊社もサービス展開しているわけではないのです。(もちろん、そのような心理的安全性に対する取り組みも重要な要素の1つです。)

まとめますと、「LGBTフレンドリー」とは個別具体的な当事者の困難さへの取り組みとも言えます。

組織としての「LGBTフレンドリー」はあらゆる企業で成り立つ

組織風土という文脈であれば、それこそ「LGBTフレンドリーなラーメン屋」も違和感なく存在します。
それは企業としてLGBTs当事者を支援して受け入れていこうという姿勢の表明や制度作りをしているということなので、むしろ歓迎されることのほうが多いのではないでしょうか。

例えば、服装などは自分がのぞむ性表現を自由に選択できるようにしたり、誰でもトイレを積極的に設置したり、ハラスメントに関する相談窓口を設置したりという方法論があります。
これもLGBTs当事者の個別具体的な困難さに向き合うという意味では同じですが、サービス展開とは異なり、どのような企業でも横断的に導入しやすいという差があります。

3,多様性によるシナジー

LGBTs当事者だから気付きやすい組織運営上の課題や、サービスの不備というものは確実にあります。
例えば、夫婦を対象としたサービス展開をしている保険やローンなどの金融商品で、法律婚上の夫婦でないといけない理由は実はあまりなかったりします。
事実婚の世帯や同性パートナーであっても、きちんと本来の商品性に反しない証明が得られるのであれば、同等に扱っても不利益はないことの方が多いのです。
しかし、これらの事象は当事者以外の人が発見し、真剣に議論し、制度化することは決して簡単なことではありません。それを不利益と思う機会が多くないからです。

商品開発に当事者がいたら(それはLGBTsに限りません)、その人にとって使いやすいサービスが作れる可能性は高いはずです。現場オペレーションに当事者が関与していれば、違和感のある決まりについてエスカレーションが行われるかもしれませんし、運用で回避することを考えてくれるかもしれません。
企業にとってのシナジーとはそれらを期待することであり、個性をただ存在させるだけでなく、活かすという目線が「LGBTフレンドリー」にも必要であると言えます。

逆に「LGBTフレンドリー」と標榜しながらもそれらの観点がすっぽり抜けていると、顧客などから指摘されてしまう可能性があります。

ある保険会社が生んだハレーション

先日開催された「東京レインボープライド2022」というイベントでちょっとした事件が起こりました。
損害保険会社であるA社が当事者から公然と批判され、一時、警察が出動する事態となったのです。
この当事者の方はA社の顧客でもあったのですが、自動車保険を更新する際、同性パートナーを配偶者として認められなかったとして抗議活動をされていました。
その後、この批判を受けてA社は2022年中に同性パートナーも配偶者として認める方針に即日転じました。

つまり、会社として拒否することに特別な理由はなかったものの、オペレーション上の不備に誰も気づかなかった事例と言えます。
多岐にわたる自社サービスのすべての構造的問題を理解することは容易ではないでしょう。当事者でない人にとっては尚更です。
だからこそ、多様性を強みとした組織運営、サービス展開が重要なのです。

”なんちゃってフレンドリー”が生む悪影響

上記のような前提を無視して看板だけ「LGBTフレンドリー」を掲げる会社は、言うなれば「なんちゃってLGBTフレンドリー」企業です。
「LGBTフレンドリー」の本質を無視して「LGBTフレンドリー」を掲げると何が起きるのか紹介できればと思います。

馴れ馴れしいとフレンドリーの混合

フレンドリーという言葉だけに引っ張られるととんでもない解釈が生まれます。
IRISのお客様で、別の「LGBTフレンドリー」な不動産会社に訪問した際に、担当者から「私、ゲイの友達が欲しかったんです!」と嬉しそうに言われたとこぼされた方がいらっしゃいました。

まさかこの担当者はイギリス人のお客様が来たら「私、イギリス人の友達が欲しかったんです!」というのでしょうか?どう考えてもおかしな対応だということが分かるはずです。
LGBTs当事者も、当然様々なバックグラウンドと人格を持つ一人の人間であって「ゲイ」というカテゴリで画一化されたアイコンではないのです。
この担当者の本心であったとしても、初対面の(増してやビジネスで関わろうとする)人に対してこのような馴れ馴れしい対応をすることが「LGBTフレンドリー」でないことは言うまでもないでしょう。

マーケティングの材料としてしか考えない

マーケティングの一手段としてLGBTs当事者をターゲットとすること自体は今後増えてくると思われます。
一方で、本当に当事者に寄り添うつもりがあるのか疑問を抱くようなマーケティング手法を取ると、大きなハレーションを生む可能性があります。

例えば、LGBTs当事者だけ割引を実施します!と言ってみたり、セクシュアリティやジェンダーと全く関係のない部分で「LGBTフレンドリー」と標榜することがそれに当たります。
前者はそもそもカミングアウトしづらいという日本の状況を完全に無視していますし、特別扱いする合理的な理由がない場面では逆に不愉快に感じる人もいるでしょう。
後者は「LGBTフレンドリーなラーメン屋」のように、前後がまったく結びつかない要素となっているせいで、ただの儲けのタネとしか考えていないことが伝わってしまいます。

企業が目指すべきは「本当のLGBTフレンドリー」

「LGBTフレンドリー」の要素を説明する上で取り上げてきたように、LGBTs当事者の課題感は非常に個別具体的なものです。
ですから、あるときはジェンダーバイアスの問題であり、あるときは制度設計上の問題であったり、建物構造の問題であったりします。
そのため「本当のLGBTフレンドリー」を突き詰めていった先には、同じようなモヤモヤ感を抱える人がいて、それらを解消していけば”誰もが生きやすい社会”に繋がっていくと言えます。

もし、これを読んでいる皆様が「LGBTフレンドリー」を目指すのであればその観点を忘れないでいただけると幸いです。
また、IRISではダイバーシティ&インクルージョンを実現するための組織づくりや研修も承っています。
是非ご相談ください。

※お問い合わせはこちらから

この記事を書いたのは

だいち

1990年、広島県生まれ。大学在学中からグラフィックデザイナーとして、企業向け・アーティスト向けのデザインを手掛ける。通信インフラ会社でWEBマーケティングを担当、その後、大手広告会社にて人材領域・不動産領域の事業推進などを経て、2015年よりIRISの中心メンバーとして活動。

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