【マッチョな方がゲイにモテるから?】ゲイ男性が体を鍛える理由

こんにちは!ライターのミオカです。
最近では各種のメディア・映画や小説といった娯楽作品で、LGBTs(セクシャル・マイノリティ)の人物が頻繁に登場するようになりました。中でも、「LGBTs」の「G」であるゲイ男性を目にする機会が多いように感じますが、みなさんはゲイの男性に対してどのようなイメージを持っていますか?
ちなみに「ゲイ(Gay)」とは、男性の同性愛者のことを指します。もう少し詳しく説明すると、ゲイ男性とは、「自分は男である」という認識(性自認)のもと、自分と同じ男性に対して恋愛感情や性的な感情を持つ人のことを言います。「男として、男に惹かれる」ということです。
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さて、ゲイ男性の間では筋肉質な体つきや、いわゆる「ガチムチ」な体格をしている人のほうがモテる傾向があるのだとか。さらに自分でも体を鍛えようとする人が多いそうですが、これは一体なぜなのでしょうか。
本記事では、ゲイ男性が体を鍛えてマッチョな体を目指す理由について、考察してみたいと思います。
【ゲイ男性がマッチョを目指す理由①:筋肉質な体に「男らしさ」を感じるから】
ゲイ男性が体を鍛える1つ目の理由として、「筋肉質な体に男らしさを感じるから」という理由が考えられます。もちろん、一括りに「ゲイ男性」といっても、何に魅力を感じて、どんな相手を理想とするかは、人によって様々です。
恋愛対象やパートナーに「男らしさ」を求めるゲイ男性の場合、力強くたくましい肉体に魅力を感じる可能性が高いでしょう。このようなゲイ男性は、一方的に相手の魅力を感じるだけでなく、自分自身も体を鍛えて男らしさをアピールしようとする傾向があります。
好きになった相手と自分を比較したり、容姿を近づけようとしたりする心理現象は、男性の同性愛関係においてよく見られるそうです。たとえば、「胸の大きな女性が好きな、ストレート(異性愛者)の男性」は、普通、自分も巨乳になりたい!とは考えません。
体の性別が違うため、相手は相手、自分は自分、という線引きが明確だからです。
一方、「胸板のガッシリした男性が好きな、ゲイ男性」が、自分も同じように胸板を厚くしたい!と考えるのは、珍しいことではありません。同性であるがゆえに、憧れの気持ちと、ライバル意識の両方が働くのだと思います。
文豪・三島由紀夫の『仮面の告白』という小説では、こうした同性愛者の男性の心理が詳細に描かれています。この小説の主人公(若き日の三島由紀夫自身とされています)は、病弱で華奢な自分の体にコンプレックスを抱いており、自分が筋肉質な男性の彫刻や絵画に強いフェチシズムを感じることを自覚しています。
彼はある時、体格が良く、ぶっきらぼうで言動も荒々しい(=「男っぽさ」を感じさせる)同級生に恋をするのですが、憧れの気持ちが強くなりすぎてしまい、恋心が嫉妬に変化してしまいます。
相手と自分の容姿を完全に一致させたいほど好きなのに、自分の病弱な体ではそれを実現できない…。主人公は、悔しさと絶望から、同級生への恋を諦めることを決心します。
もちろん、これは小説なので、誇張されて描かれている部分があるかもしれません。ですが、「男らしいマッチョな男性が好きだから、自分も同じようなマッチョになりたい」という思考回路は、ゲイ男性にとっては特に不自然なものではない、ということが理解いただけるでしょう。
ちなみに、お互いを意識し合って、ファッションの趣味や外見がとてもよく似てきたゲイ・カップルのことを、英語では「ボーイフレンド・ツイン(Boyfriend Twins)」と表現するそうです。
【ゲイ男性がマッチョを目指す理由②:ジムに通うと、出会いのチャンスが広がるから】
ゲイ男性が体を鍛える2つ目の理由として、「スポーツジムに通うと、出会いの可能性が広がるから」という理由が考えられます。
ジムに通った経験がある人は、そこが単なる運動のための場所ではなく、「人と人の交流の場」でもあることを知っているでしょう。職場などでの出会いのチャンスが限られているゲイ男性にとって、スポーツジムは同じような趣味・価値観を持っている男性と出会える可能性の高い場所と言えます。
ジムでの立ち居振る舞いには、マナーや周囲への気配りなどその人の人柄がよく現れますし、トレーニングをしている様子を遠くから何となく見ているだけでも、自己管理能力や集中力など「きっとこの人は、こういう感じの人なんだろうな」とイメージすることができます。
「筋トレ」という共通項があれば、気になる相手とのコミュニケーションのきっかけも作りやすく、効果的なトレーニングの仕方や食事のメニュー、好きなウェアなど会話の話題にも事欠かないでしょう。
「自分の体を鍛えつつ、魅力的な男性に出会える可能性もある」ということは、ゲイ男性がジムに通って筋トレに励む、大きなモチベーションになり得るのです。
【ゲイ男性がマッチョを目指す理由③:SNSや出会い系アプリでの受けが良くなるから】
ゲイ男性が体を鍛える3つ目の理由として、「筋肉質な体のほうが、SNSや出会い系アプリでの受けが良くなるから」という理由が考えられます。
一般的に、ソーシャルメディアや出会い系アプリでは視覚情報(容姿)が重視されやすく、それはゲイ男性にとっても例外ではありません。一部のゲイ男性向けの出会い系アプリには、マッチングしやすいように、「自分の体型のタイプ」や「好みの相手の体型」を選ぶ機能もあるそうです。
こうした環境下では、それまで筋トレに興味がなかったゲイ男性が、「少しでも写真の見栄えを良くして、出会いの可能性を増やしたい」と思って筋トレを始めたとしても、不思議ではありません。すでに体を鍛えているゲイ男性も、他のユーザーと比べて見劣りしないよう、さらに筋トレに励むでしょう。
ゲイカルチャーに関する動画を制作しているカナダ出身のYoutuber、Andrew Powerさんは、ゲイの男性同士による「体型の評価」について、次のように語っています。
- ゲイ男性が相手の容姿をチェックする目(male gaze)は、とても厳しい。鏡を向かい合わせて、レイザービームを反射させたくらいに強烈である。
- ゲイ男性が考える『鍛えられたいい体(fit)』の基準は、ストレートの男性と比べると、はるかに高い。
動画「Hot Gays, Body Image, & Comparison: Advice for baby gays」
もともとゲイ男性のあいだに存在していた、「男らしさをアピールするために体を鍛える」という1つの風潮が、SNSや出会い系アプリといったツールの登場によってさらに強まっている、と言えそうです。
【ゲイ男性がマッチョを目指す理由④:「ゲイらしさ」を表現したいから】
ゲイ男性が体を鍛える4つ目の理由として、「『ゲイらしさ』を表現したいから」という理由が考えられます。
これは一体どういうことでしょうか。みなさんの中には、「ゲイ男性」というと、ムキムキした男性がピチピチの水着を履いて、楽しげに踊っている姿を想い浮べる人がいるかもしれません。いわゆる「ゴーゴーボーイ」のイメージです。
あるいは反対に、化粧をした女性的な「オネエ系」のゲイ男性を思い浮かべる人がいるかもしれません。
いずれにしても、マッチョなゲイ男性や「オネエ系」のゲイ男性は、その「見た目の分かりやすさ」から、マスメディアやソーシャルメディア上で注目を集めやすく(=可視化されやすく)、情報を受け取る側の印象にも残りやすい存在です。
こうした「特定のタイプのゲイ男性のイメージ」は、それ以外のゲイ男性の自己表現の仕方にも影響を与えます。「自分もゲイだから、同じようにした方がいいのかな」と。
LGBTsの様々な体験談を紹介しているYoutubeチャンネル『ImFromDriftwood』の動画では、アメリカ出身のゲイ男性(Kevinさん)が、次のように自身の過去を振り返っています。
- ゲイであることをカミングアウトしたばかりの頃、SNSを始めた。筋肉質で、ルックスのいいゲイ男性ばかりが注目を浴びているのを見て、「自分もこうならなくてはいけない」と感じた。それから本格的に筋トレをするようになった。
- 当時は、SNSで人気のあるゲイ男性と同じように自分が評価されれば、心が満たされるだろうと思っていた。
動画「Social Media And Obsession With Body Image Led Gay Teen To Seek Unhealthy Validation.」
私たちはつい、「ゲイ男性は、体を鍛えるのが好きなのだ」というふうに、一般化して考えてしまいがちです。しかし実際には、ゲイ男性のあいだにも多様性があり、中にはKevinさんのように、「そうするのがゲイらしいから」という理由(「らしさ」の追求)で体を鍛えようとする人もいるのです。
その結果、筋トレに楽しさを見出す人もいるでしょうし、筋トレは自分に合わない、体を鍛えることは自分にとって重要ではない、という結論に辿りつく人もいるでしょう。それもやはり、「ゲイ男性だからこうだ」というものではなく、「人による」としか言えないのだと思います。
【まとめ:ゲイ男性が体を鍛える理由は、色々ある】
「ゲイ男性には、体を鍛えているマッチョな人が多い」というのは、私たちが(世の中で可視化されている部分だけを見て)抱いている「印象」にすぎません。実際には、自分がゲイであることを周囲にオープンにしていない人や、自分が本当にゲイであるかどうか確信を持てていない人もいるでしょうから、「本当のところ」を知るのは、おそらく不可能です。
さらに、ゲイ男性が体を鍛える理由も、人によって異なります。単純に運動が好きだから、という理由で体を鍛えている人もいれば、仲間を作って交流するため、あるいはロマンチックな出会いが目的でスポーツジムに通っている人もいるでしょう。
自分が思い描く「理想のゲイ男性像」を目指して、肉体改造に励んでいる人もいるでしょう。体を鍛えることに全く興味のないゲイ男性だっているはずです。
これはゲイ男性に限ったことではありませんが、「セクシュアル・マイノリティ」として一括りにされている人たちのあいだにも、個性や多様性があるということを忘れずにいたいものです。
参考文献
1 三島由紀夫『仮面の告白』 (1950) 新潮文庫
2 テストステロン『筋トレが最強のソリューションである』 (2016) U-CAN
ミオカ
30歳の時に、初めて同性(女性)を好きになりました。 自身の経験を踏まえつつ、「LGBTsなんて自分に関係ない」と思っている人にも読んでもらえる記事を書きたいです。