バイセクシュアルとパンセクシュアルは混在されやすいセクシュアリティであり、間違った認識のまま広まってしまうこともあります。複数の性別を好きになるバイセクシュアルと、性別に関係なく魅力を感じるパンセクシュアルは、両者に関連する点があるかもしれませんが、全く異なるセクシュアリティです。では、早速それぞれの定義と特徴についてみていきましょう。

バイセクシュアルとは?

バイセクシュアル(Bisexual)とは、日本語で「両性愛」とも表され、一般的に「男女の両方の性に対して恋愛・性的な感情を抱くセクシュアリティ」と定義づけられています。バイセクシュアルを象徴する旗は、ピンク(同性に惹かれる)、ブルー(異性に惹かれる)、パープル(どちらの性にも惹かれる)の3色で構成されています。女性が女性に性愛感情を抱くレズビアンや、男性が男性に性愛感情を抱くゲイの場合、本人の自認する性が明確になっています。一方で、バイセクシュアルは本人の性自認は問いません。

バイセクシュアルにもさまざまなあり方が存在し、当事者のなかで定義は異なります。「バイ(bi)」は「2」という意味をもち、必ずしも「男性」「女性」に限定しない人もいます。例えば、自分の性別と異なる性別を好きになる人、好きになる性は一つのみではない人、全ての性別を好きになる人など。バイセクシュアルと一つにまとめても、かなり広義的な意味合いで使われていることがわかります。近年、男女のみに縛られない性別のあり方が浸透されるようになり、時代の流れと共にセクシュアリティのあり方も多様になってきているのではないでしょうか。

パンセクシュアルとは

パンセクシュアル(Pansexual)とは、日本語で「全性愛」とも表され、一般的に「性別に関係なく恋愛・性的な感情を抱くセクシュアリティ」と定義づけられています。パンセクシュアルを象徴する旗は、ピンク(女性に惹かれる)、ブルー(男性に惹かれる)、イエロー(中世的であったりジェンダーが男女に当てはまらない人に惹かれる)の3色で構成されています。

「パン(pan)」はギリシア語で「全て」を意味し、あらゆる性別の人に惹かれる当事者が多いのが特徴です。ここで注意したいのが、性別によって恋愛・性的な感情を抱くかどうかは決まらないということ。パンセクシュアルもバイセクシュアルと同様、人それぞれの定義が異なる場合があります。例えば、相手の性格や考え方に魅力を感じる人、性別で人を判断したくない人、もともと性別をカテゴライズしない人など。全ての当事者を一つの定義で当てはめることは難しいため、その人がどのように認識しているかが重要となります。

関連記事:https://iris-lgbt.com/blog/2022/01/20/bi_pan/

「バイセクシュアル」と間違いやすいセクシュアリティ

「バイセクシュアル」と間違いやすいセクシュアリティ

先述したように「バイセクシュアル」と「パンセクシュアル」は混在されやすいものの、似て非なるものです。さらに、バイセクシュアルと間違えて認識されやすいセクシュアリティに「ポリセクシュアル」や「ばいロマンティック」が挙げられます。正しい認識をもつことで、相手のアイデンティティを尊重することにつながります。それぞれにどのような違いがあるのかを紹介します。

ポリセクシュアルとの違い

ポリセクシュアル(Polysexual)とは、日本語で「複数性愛」「多性愛」と表されます。「ポリ(Poly)」は「複数」という意味をもち、複数のセクシュアリティを好きになるセクシュアリティのことを指します。「ポリアモリー」という言葉があるように、ポリセクシュアルも複数の人と同時に関係を構築すると考える人もいるかもしれません。ですが、ポリセクシュアルは恋愛スタイルではなくセクシュアリティの一つで、特定の複数の性別に惹かれるというあり方です。例えば、トランスジェンダーやXジェンダーは好きになるが、クエスチョニングは好きにならないなど、その人によって恋愛・性的な感情を抱く相手は異なります。

バイロマンティックとの違い

バイロマンティック(Biromantic)とは、男女両方の性に恋愛感情を抱くセクシュアリティのことをいいます。これだけでは「バイセクシュアルとどう違うの?」と混乱してしまう人もいるでしょう。ここでの大きな違いは、「セクシュアル」と「ロマンティック」の違いになります。

一般的に、「セクシュアル」は「性的、「ロマンティック」は「恋愛的」を意味します。つまり、「バイロマンティック」の人たちは男女両方の性に恋愛感情を抱くことはあるが、そこに性的な感情を含むとは限らないということです。ただし、先述したバイセクシュアルのあり方と同様、バイロマンティックも恋愛感情を抱く対象となる性別は人それぞれ異なる点に注意しましょう。

バイセクシュアルとバイロマンティックの違いとは

バイセクシュアルとバイロマンティックの違いとは

「バイセクシュアル」の人は「男性ならこんな男性が好き」、「女性ならこんな女性が好き」などある程度好みのタイプがあることも多いです。

それに比べて「パンセクシュアル」の人は性別という概念を重視しておらず、「好きになった人が好き」という考え方です。そういった考え方はあまり浸透しているとも言い難く、「バイセクシュアル」と混同されることがもっとも多いセクシュアリティの1つとなっています。

つまり「バイセクシュアル」は「性別をある程度重視するセクシュアリティ」、「パンセクシュアル」は「性別をそこまで重視しないセクシュアリティ」ということです。

バイセクシュアル、バイロマンティックの自己診断方法

バイセクシュアル、バイロマンティックの自己診断方法

ここまで「バイセクシュアル」と混同されやすいセクシュアリティについて解説してきました。中には違いがわかって、自分は「バイセクシュアル」なのかもしれないと自覚が出てきた人もいるかもしれません。
しかし、その中でも「自分はバイセクシュアル?バイロマンティック?どっちなの?」といった人もいるでしょう。では、どのように診断すれば良いのでしょうか。

あなたの好きな人、もしくは好きだった人を思い浮かべてみてください。
あなたはその人とどんな関係になりたいですか?恋人としてそばにいたい?触れ合いたい?その先に進みたい?いろいろな「ゴール」があるかと思います。

恋人としてそばにいたい、性的な感情はなくてもいい。そんな風に思ったあなたは「バイロマンティック」の可能性があります。触れ合いたい、その先にも進みたいと思ったあなたは「バイセクシュアル」の可能性が高いと言えるでしょう。

自分がバイセクシュアルだと思う理由

では、自分を「バイセクシュアル」だと認識している人たちはどうしてそのように思うのでしょうか。自分を「バイセクシュアル」だと認識している人たちの声をまとめてみました。

  • 「性別が関係ない」のではなく「それぞれの性別である上で好きな人がいる」と気づいた。
  • 中性的な人、Xジェンダーの人には惹かれない。
  • 性別がはっきりしている人に惹かれる。
  • 性別は男女の2 つではないとわかっているが、その2つ以外に惹かれたことがない。

以上のように、「性別」という括りにこだわっている人が多い印象を受けます。つまり「バイセクシュアル」は「性別という意識はありながらも、そのどちらにも惹かれるセクシュアリティ」であることがわかります。

自分がパンセクシュアルだと思う理由

では、自分を「パンセクシュアル」だと認識している人たちはどうでしょうか。こちらも自分を「パンセクシュアル」だと認識している人たちの声をまとめてみました。

  • 今まで好きになった人の性別を意識したことがない。
  • 性別どうこうよりもその人だから好きになる。
  • 男性的な魅力、女性的な魅力というものを特別意識したことがない。
  • 性別は恋愛に関係ないと思っている。

以上のように「バイセクシュアル」とはまた違い、性別を特別視してはいない印象を受けます。つまり「パンセクシュアル」は「性別という括りは気にせず、その人自身を好きになるセクシュアリティ」であることがわかります。

自分がバイロマンティックだと思う理由

「バイロマンティック」だと認識している人たちはどうでしょうか。こちらも同じようにまとめてみました。

  • 精神的なつながりを求めている。
  • デートはしたいけどそのあとホテルで…までは考えたことがない。
  • 体の関係までは考えたことがない。

以上のように「バイセクシュアリティ」とはまた違って、体の関係までは考えたことがない人の多い印象を受けます。つまり、「バイロマンティック」は「重視するのは性愛ではなく恋愛感情、ことさら心のつながりを重視するセクシュアリティ」であることがわかります。

セクシュアリティ診断ツールを使ってみる

それでも、やっぱり自分のセクシュアリティがわからない!という人もいるかと思います。
そんな人はセクシュアリティ診断ツールである「anone,」やJobRainbowのセクシュアリティ(LGBTQ+診断を使用してみることをおすすめします。

どちらのサイトもいくつかの質問に答えていくだけで、自分のセクシュアリティを細かく診断してくれます。そのセクシュアリティの詳細な説明ももちろん載っていますので、自分のセクシュアリティに悩んだときは頼ってみても良いかもしれません。

自分がバイセクシュアルだと思ったら、それはバイセクシュアル

セクシュアリティには多くの種類があります。今回は一例であり、診断結果もまた参考に過ぎません。最終的に自分のセクシュアリティを決めるのは自分自身であり、そう名乗ることを誰にも強制されてはいけません。

自分がバイセクシュアルだと思えばあなたはバイセクシュアルであり、そうでないと思ったらそうではないのです。無理にカテゴリーに分ける必要性は全くなく、納得できるセクシュアリティを名乗ることが何より大事なことです。

また、セクシュアリティはグラデーションともいうように、流動性のあるものです。性的指向が変わることは生きていれば当たり前に起こりうることですので、まずはあなたらしく生きることを忘れないでください。

バイセクシュアル、バイロマンティックを公言している有名人

バイセクシュアルを公言している有名人は多くいます。有名人が同じセクシュアリティであると安心感も増しますよね。ここでは一部ではありますが、そういった方を紹介します。

カズレーザーさん(メイプル超合金)

 

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金髪に真っ赤な服がトレードマークのインテリ芸人、メイプル超合金のカズレーザーさん。
鋭い切り口からのコメントでテレビ番組のほかYouTubeなどでも精力的に活動されていますよね。

そんなカズレーザーさんは2015年にテレビ番組にてバイセクシュアルであることを公表しました。
男性・女性ともに交際経験があるようで、美しい容姿の人に惹かれやすいことを話しています。バイセクシュアルであることを自覚したのは20歳のころ。ゲイの友人に誘われたことがきっかけだというエピソードもあります。

壇蜜さん

妖艶で美しいその姿は男女問わず一度は見惚れてしまったことがあるであろう壇蜜さん。
グラビアアイドルやホステスという経歴のほか、教員免許を所有する才女であることも有名ですよね。

そんな壇蜜さんは雑誌のインタビューで自身がバイセクシュアルであることをカミングアウトしました。男性よりも女性が好きなときや、反対に女性よりも男性が好きなときなど様々なシーンがあることを語っています。

最上もがさん

 

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女性アイドルグループ・でんぱ組.incの元メンバーである最上もがさん。
ゲームで女性であることを理由にパーティから外されるなどの経験から、一人称が「ぼく」であったことや、その後漫画「HUNTER×HUNTER」の影響で「私」になったことなど、サブカルチャーに強く精通している印象の強い方です。

そんな最上もがさんは以前よりTwitterやブログなどで自身がバイセクシュアルであることを話していましたが、2017年に改めてテレビ番組でそのことを公言し、話題になりました。
10代の頃は女性を好きになることが多く、現在は恋愛対象に区切りはなく、男女どちらも好きになるとのことです。

江頭2:50さん

上半身裸に黒スパッツという奇抜な出で立ちで、シュールで型破りなお笑いセンスで笑いを巻き起こす江頭2:50さん。「エガちゃん」の愛称で親しまれています。実は舞台役者としても活動しており、その演技力も非常に高いことで有名です。

そんな江頭2:50さんも過去に「男性でも愛せる」といった旨の発言をし、バイセクシュアルであることを公言しました。

アンジェリーナ・ジョリーさん

 

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「Mr.&Mrs.スミス」などで有名なハリウッドを代表する女優の一人である、アンジェリーナ・ジョリーさん。「アンジー」というあだ名で呼ばれることも多いですよね。

そんなアンジェリーナ・ジョリーさんは「Mr.&Mrs.スミス」で共演したブラット・ピットさんと結婚したことで一躍話題に。それ以前にも結婚していた俳優が二人いるなど恋多き女優として有名でしたが、実は過去に女優のジェニー・シミズさんと交際していたことも明らかになりました。

本人曰く「セクシュアリティ(バイセクシュアルであること)は隠していないとのことでした。

レディー・ガガさん

 

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世界的人気を誇る歌姫・レディー・ガガさん。奇抜なファッションであることや、熱心な親日家としても有名で、よく来日しては日本の人たちを楽しませてくれますよね。

そんなレディー・ガガさんも過去に雑誌のインタビューでバイセクシュアルであることを公表している有名人の一人です。その背景からかLGBTのファンの多い彼女は、彼らを支援する旨の運動をしていることでも知られています。
大人気歌姫は、LGBTの人々の強い味方でもあるんですね。

まとめ

まとめ

「バイセクシュアル」というセクシュアリティは男女どちらも愛せるお得なセクシュアリティと考えている人も多くいます。しかしその実、いろいろなセクシュアリティと混同されがちな複雑なセクシュアリティでもあります。

この記事をきっかけに、そんな「バイセクシュアル」への理解が少しでも深まったのであれば幸いです。