日本で同性婚が認められないことは、一つの大きな問題として存在します。そして今年、LGBTs含むセクシュアルマイノリティへの理解増進を図る「LGBT理解増進法」が見送られました。差別をなくす「差別禁止法」どころか、理念法としてのLGBT理解増進に関する取り決めも存在しないことは、根強い二元論を感じさせられます。では、海外のLGBTs情勢はどうでしょうか?同性婚やトランスジェンダー関連法など、さまざまなLGBTs含むセクシュアルマイノリティの人権保障にアプローチする国がある一方で、同性愛が犯罪とされる国もあります。日本のLGBTs事情と比較しながら、海外の現状についてご紹介します!

日本のLGBTs事情

日本のLGBTs事情

日本では、LGBTQsに関する議論が幾度もなされてきましたが、いまだに同性婚実現には至っていません。今年東京でオリンピックが開催されましたが、そこでも多くの議論がなされました。国際オリンピック委員会(IOC)によって提唱されたオリンピズムの根本原則・規制「オリンピック憲章」では、明確にセクシュアルマイノリティ含む「いかなる種類の差別を禁止」しています。そして、オリンピック開催前に日本でもLGBT理解増進法を制定するために動き始めましたが、残念ながら自民党の反対意見により見送られました。

2015年には、日本で初めて同性カップルを婚姻同様の関係とみなす「パートナーシップ制度」が渋谷区と世田谷区でスタートし、今では110以上の自治体で制度が取り入れられています。しかし、パートナーシップ制度結婚とは全くの別もの。あくまで結婚したカップルと同様の権利やサービスが受けられる制度であり、法律上カップルと認められないことでたくさんの難点があるのです。たとえば、同性間に子どもがいたとしてもどちらかにしか親権が与えられないことや、遺言がない限りは財産を相続できないことなど、生きるうえでのデメリットがたくさんあることから、同性婚を望む同性カップルはたくさんいます。

また、主要7カ国のG7のなかで同性婚、もしくはそれに準じた法律がない国は日本のみ。LGBTsに関する法整備状況は、OECD(経済開発協力機構)35カ国のうち日本は34位と極めて遅れていることがわかります。ワールドワイドな視点がスタンダードとなりつつある先進国ではLGBTsに関する認識をアップデートしている一方で、日本はLGBTsに関する法律がありません。これから日本は海外との差が開いていくのか、それとも誰もが生きやすい社会への第一歩を踏み出すのか、日本社会への注目が高まります。

海外のLGBTs事情

日本のLGBTs事情

一方で海外のLGBTsに関する現状はどうでしょうか。日本と比較してみましょう。

同性婚が全州で認められたアメリカ
世論調査を行うギャラップが行った2021年の調査によると、アメリカの成人5.6%がLGBTsを自認。LGBTsのなかで54.6%がバイセクシュアルを自認していることがわかりました。さらに回答者の70%が同性婚に賛成し、調査からは年々支持する割合が高くなってきている傾向がみてわかります。アメリカは州ごとに法律が異なり、2003年にマサチューセッツ州でアメリカ初の同性婚が認められ、2015年には全州で実現しました。

2021年からバイデン大統領が就任したことにより、LGBTsに関する情勢は法律だけでなく、認識もアップデートされることとなりました。バイデン大統領は6月にLGBTsの差別に立ち向かうことを表明し、ホワイトハウスのSNSアカウントでもLGBTsのプライド月間を祝いました。今では6月はプライド月間として多くの人が認識していますが、始まりは1969年のストーンウォールの反乱。ニューヨークのマンハッタンにあったゲイバー「ストーンウォール・イン」を警察が取り締まろうとしたことに対し、初めてLGBTs 当事者らが立ち向かった歴史的瞬間でした。その反乱に敬意を表してできたのがプライド月間なのです。

国がLGBTsに関する敬意を示すことで、より生きやすい社会を実現することにつながることでしょう。とはいえ、そんなアメリカにもまだまだ課題はあります。LGBTs当事者がホームレスを経験する割合が極めて高いことや、コロナ禍により多くのLGBTs当事者が不調を起こす傾向にあること、LGBTsであることが理由でいじめや暴力を経験したことなど、そういった問題を解決するためには、今後個人の認識のアップデートがさらに求められるでしょう。

アジア初の同性婚を実現した台湾
台湾は2019年に同性婚が認められ、アジア初となる歴史期的快挙を成し遂げました。すでにたくさんの同性カップルが結婚していますが、この法律には台湾人が同性の外国人と結婚する場合に、相手国も同性婚が制定されていることが規定として設けられていることが一つの問題としてあげられています。実際に、台湾と日本人の同性カップルが婚姻届を提出したものの受理されなかった出来事が起こり、さらなる法改正が求められています。

同性愛を処罰する国も・・・

同性愛を処罰する国も・・・

宗教上の理由や法律により、同性婚だけでなく同性間の性交渉や、同性愛者であることを公にすることを認めない国もあります。過去に起きたニュースを紹介します。

同性間の性交渉により鞭打ちの刑が施行

2021年1月、インドネシアのアチェ州で、男性の同性カップルがシャリア(イスラム法)に反したとされ、公開むち打ち刑が施行されました。男性には80回ものむち打ちが行われ、その場にいた母親は残酷な様子を目の前にして失神しました。男性は部屋のなかで半裸でいたのを所有者に目撃され、逮捕されたといいます。シャリアはイスラム教の法制度のことをいい、同性間の性交渉や不倫に対して処罰を行うといった内容が示されています。インドネシアのアチェ州は国内で唯一シャリアを支持する州で、2001年から施行。同性間の性交渉だけでなく、飲酒やギャンブルも処罰に含まれています。

同性愛のコンテンツを削除

男性間の性交渉を禁止する国シンガポールでは、2年以下の禁固刑に課されます。メディアでは同性愛についてのコンテンツを検閲し、たとえ主唱していなくても促進するような内容は削除されてしまうのです。過去には、女性二人がキスするシーンが盛り込まれたテレビCMを流したことで、10,000シンガポール・ドルの罰金が課されました。また、メディアでのLGBTsの差別を反対するような発言も削除されてしまいます。

法律では同性婚は認められていませんが、シンガポール現首相リー・シェンロンの甥は同性愛者であることをカムアウト。同性婚が認められている南アフリカで、パートナーと結婚を果たしました。そのことを受け、国全体がLGBTsへの理解を示す方向へ向くことを願うLGBTs当事者の声がたくさんあがっています。

【まとめ】海外のLGBTs事情をご紹介!同性愛が罰せられる国も・・・

【まとめ】海外のLGBTs事情をご紹介!同性愛が罰せられる国も・・・

海外をみると、日本と比べて進んでいる国もあれば、LGBTsに関する法律が認められなかったり、処罰されてしまう悲しい現実もあります。宗教や今までの強い風潮などさまざまな理由があるなかで、誰もが生きやすい社会を願っているのは事実です。一人一人が考えるきっかけをもち、明るい未来にけての第一歩を踏めることを願っています。

チェック → LGBTとは簡単にいってなに?日本のLGBT事情が分かる記事のまとめ

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◎この記事を書いた人・・・Honoka Yan
モデル/ダンサー/ライター/記者/LGBTs当事者。ジェンダーやセクシュアリティ、フェミニズムについて執筆。タブーについて発信する日本のクィアマガジン「purple millennium」編集長。Instagram :@honokayan

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