異例となった1年延期のうえで開催された「東京オリンピック2020」。日本人選手をはじめ、各国の選手のすばらしい闘いを観ることができました。

オリンピックを通して、トランスジェンダーの女性選手や、ゲイだとカミングアウトしている選手が出場するなど、LGBTsという観点からも話題になることがありました。なんと、今大会ではLGBTsアスリートの出場が史上最多ともいわれています。

男女に分かれて実施される競技が多いなかで、オリンピックとLGBTsの問題は密に関係していると言えるでしょう。

今回は、オリンピックに出場したLGBTsの選手を紹介するとともに、オリンピックがどのようにLGBTsとの問題や課題と歩んできたか、またどのような課題を残しているのかをお伝えします。

「東京オリンピック2020」はLGBTsアスリート最多

今年開催された東京オリンピックでは、LGBTsのセクシュアリティを持つアスリートの参加が過去最多だったとされています。もちろん、自身のセクシュアリティを公表していない選手もいますので、正確には不明な部分もありますが、少なくともLGBTsであることを公言し参加する選手の数は史上最多だったようです。

世界の動きや流れとして、公表しやすく、1つのアイデンティティとして認識されつつあるということかもしれません。

具体的には、2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪のときに比べ、2.5倍のLGBTsが参加したと言われています。東京オリンピックは1年延期を経て、前回大会から考えると5年を経て開催されたわけですが、この5年がLGBTsの認識の広まりやムーブメントやにおいても、大きな5年間だったということではないでしょうか。

さらに、今回はトランスジェンダーの選手が初めて出場したことでも話題となりました。

五輪初、トランスジェンダー選手が出場

開催期間、ニュースでも取り上げられ話題になったので、ご存知のかたもいらっしゃるかもしれません。ニュージーランド代表として出場したローレル・ハバード選手はトランスジェンダー女性選手として今回のオリンピックに参加しました。種目はウエイトリフティングです。

生まれたときの身体的性は男性で、男子選手としてもウエイトリフティングの選手をしていた経験を持っています。ハバード選手が30代のときに性同一性障害だと診断され、その後女性として競技に戻ることになりました。

今回、ニュージーランド代表としてオリンピックに出場することが決まり、性別適合手術で性転換したことを公表しているトランスジェンダー選手として初めての五輪出場となりました。

これまでにトランスジェンダーの選手がオリンピックに参加した例はないということですが、IOC(国際オリンピック委員会)は、2004年にトランスジェンダー選手の出場を認めています。これは、約20年もの間トランスジェンダーの選手が出場することがなかったという事実でもあります。

ハバード選手のように、男性から女性に変わった選手について、いくつかの制限を設けています。過去何年かにわたって女性であったかなどの基準のほか、男性ホルモンの一種であるテストステロンの数値を検査し、基準に沿っていることが認められれば、出場できるというものです。このとき、性別適合手術の有無は関係ないといいます。

トランスジェンダー以外にもLGBTsを公言している選手たち

今回のオリンピックでは、わかっているだけでも142名のLGBTsの選手が出場したと言われています。アメリカやカナダなどのほか、オランダ、フランスなどの欧州勢のほかにも、オーストラリアやニュージーランド、ブラジル、チリなどの代表として出場した選手たちがいるようです。

ちなみに、今回出場した日本人選手のなかにはLGBTsを公表している選手はいませんでした。もちろん、自身のセクシュアリティやアイデンティティーを公表するかしないかは個人の自由であり、個人の判断に委ねられるところではあります。しかし、世界での動きと比べると、まだまだ日本には公表のしづらさ、公表した場合の周囲の環境への懸念などが払拭されていないのかもしれません。

2014年には、オリンピック憲章のなかで性的指向による差別の禁止を明示するようになり、少しずつでも多様性への理解が進んでいるようにも考えられます。

LGBTsに関連したオリンピックのこれからの課題とは

ここまでお伝えしたように、オリンピックが開催されるごとにLGBTsへの理解が進んでいたり、選手1人ひとりが参加しやすい環境が整えられたりしている面もたくさんあります。

しかし一方で、世界的に注目を集める4年に1度のスポーツの祭典の中で、改善しなければならない部分もまだあるというのが現状です。

男女別の種目がほとんど

オリンピックに限ったことではありませんが、スポーツにおいては、男女別での競技が多数あります。男女の限りなく同等に挑めるスポーツや、近年、陸上などで新しい男女混同の種目ができたりと変化もありますが、男女の別にもとづいて実施されている面を完全に否定はできません。

LGBTsのなかでも特にトランスジェンダーの選手はホルモン値の問題などもあり、本人の意思に関わらず、いくつかの基準を達した場合にしか出場できない場面があります。ほかにも、団体競技においては、LGBTsのアイデンティティーを持つことが理由で周囲に馴染めなかったり、理解を得るのに苦労するという場面もあるようです。

旗手は男女それぞれ1名ずつ

さらに、オリンピックの開会式では毎回恒例で選手が旗手を務めることになっています。今回の東京オリンピックでは各国男性ひとり、女性ひとりの組み合わせで起用されていました。しかしこれは、性自認が曖昧な選手や、男女のどちらかに定めたくない、定めないなどの考えを持つ選手などの多様なセクシュアリティに対応したものではありません。

今大会では、わかっている範囲で6人のLGBTsの選手が旗手を務めました。それぞれ、アルゼンチン、キプロス、フィンランド、アイルランド、アメリカ、ベネズエラの選手です。

今後のオリンピックは

近年、オリンピックが開催されるごとに、LGBTsを公表したアスリートの参加数が増えていることを踏まえると、次回2024年に開催されるパリオリンピックのほか、その後に続くオリンピックでもLGBTsを公表したアスリートの参加は増えていく可能性が高いと言えるでしょう。

その反面、LGBTsを含め、さまざまなアイデンティティーやセクシュアリティを持つ選手が差別などの危険にさらされないためには、これからさらに新しい取り組みや基準が必要な場面もたくさんあります。

オリンピックは、スポーツ自体を楽しみ応援するだけではなく、こうしたLGBTsの問題にも目を向けるきっかけになれば良いのではと思います。

チェック → LGBTとは簡単にいってなに?日本のLGBT事情が分かる記事のまとめ

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◎この記事を書いた人・・・藤枝あおい
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