この数年、あらゆる人の行動や発信によって「LGBT」という言葉をよく耳にするようになりました。この記事を読んでいるあなたは、この「LGBT」についてどのくらい知っているでしょうか。

読み方や、それぞれのアルファベットが示す意味は知っていますか。また、「LGBT」には、「LGBTs」や「LGBTQ」、「LGBTQ+」、「LGBTQIA」など、セクシュアリティの多様性が広まるにつれて、さまざまな言い方がされるようになってきました。

本記事では、これらの言葉の読み方や、アルファベットが示すそれぞれのセクシュアリティについてもご紹介していきます。

初めに
この記事ではわかりやすさを重視し、便宜的に「男性」「女性」という表現を使っている部分があります。IRISでは男女二元論にとらわれず多様な性の形を受け入れ、様々な社会的マイノリティを記すためにLGBTsという表現を用いていますが、用語の説明のために意図的にLGBTと表記しています。

「LGBT」ってなんだろう?

「LGBT」や「LGBTs」ってなんだろう?

今では、何気ない日常のなかでも「LGBT」などの言葉を耳にするようになりました。

もともとは欧米で使われていた言葉で、とくにアメリカで、差別撤廃や法的な権利の獲得などを求めるために活動していたセクシュアルマイノリティの人たちが、自身のことを「LGBT」と呼ぶようになり、世界中に広まったとされています。

日本語での読み方を表すなら、アルファベットの通りで”エル・ジー・ビー・ティ”です。また、この頭文字はそれぞれレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのことを表しています。

「LGBT」はレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのこと

すでにお伝えしたとおり、「LGBT」の4つのセクシュアリティについては広く知られるようになりました。

女性が女性を恋愛や性愛の対象とする「Lesbian(レズビアン)」、男性が男性を恋愛や性愛の対象とする「Gay(ゲイ)」、男性・女性ともに対象となる「Bisexual(バイセクシュアル)」、生まれ持った身体的な性と自分自身が自認する性が異なる「Transgender(トランスジェンダー)」のそれぞれの頭文字を取って「LGBT」と表記されており、セクシュアルマイノリティの総称としての意味合いも持っています。

しかしその一方で、この4つのセクシュアリティでは、すべてのセクシュアルマイノリティを表しきれないとする考え方もあり、最近では「LGBTs」や「LGBTQ」、「LGBTQ+」、「LGBTQIA」などの表記を用いることも増えてきました。

LGBTQIAのQIAの意味とは?

LGBTQIAのQIAの意味とは?

「Questioning(クエスチョニング)」や「Queer(クイア)」

”Q”は「Questioning(クエスチョニング)」や「Queer(クイア)」を表します。クエスチョニングとは、性的指向や性自認について示すセクシュアリティのことで、自分の性的指向や性自認が定まっていない、あえて定めようとしない状態のことです。また、変化の途中で流動的な状態にいる人もクエスチョニングと呼ぶことがあります。

また、クイアとは、性的少数者全体を包括した言葉で、すべてのセクシュアルマイノリティを含んだ意味合いを持ちます。明確に当てはまる性的指向や性自認がない場合や、明確にすることを望まない場合にもクイアと表現したりします。

「Intersex(インターセックス)」

インターセックスとは、生まれ持った身体的性が一般的にいわれる男性や女性のどちらにも一致しなかったり、あるいは中間的であったりする性のことです。

日本語では性分化疾患といわれ、インターセックスも最近ではDSD(体の性のさまざまな発達:disorders of sex development)といわれることが多くなりました。

人間の身体が体内でつくられるとき、男性あるいは女性となるための性分化が行われますが、何らかの過程でこの性分化が非典型になることによって生じるものです。

さらに、このDSDはここまでに紹介した「LGBT」や”Q”などのセクシュアルマイノリティとはまた別だとする考え方も多くなっています。現在、セクシュアルマイノリティとして「LGBTQI…」と並べて表記するかどうかは、考え方やメディアなどによっても異なっているということです。

「Asexual(アセクシュアル / エイセクシュアル)」や、そのほかにも

「LGBTQIA」で表されるAは、アセクシュアルのことです。これは、他者に対して恋愛感情や性的欲求を持たないセクシュアリティのことを表します。

アセクシュアルのなかにも、恋愛感情は抱く一方で性的欲求がないという人(ロマンティック・アセクシュアル)や、恋愛感情、性的欲求ともに抱かないという人(アロマンティック・アセクシュアル)もいます。

さらに、「LGBTQIA」に加えて「LGBTQIAPK」とする表記もあります。”P”は「Pansexual(パンセクシュアル)」のことで、男性女性といった性別に限らず、すべての性を愛するセクシュアリティです。

また、”K”は「Kinky(キンキー)」のことで、特殊な性的嗜好を持っていることを表すセクシュアリティです。

「LGBT」と同じくらい重要な「SOGI」「SOGIESC」

「LGBT」と同じくらい重要な「SOGI」「SOGIESC」

「LGBT」を知るうえで、もちろんそれぞれのアルファベットが示すセクシュアリティを理解することも重要なのですが、それと同じくらい重要なのが「SOGI」や「SOGIESC」というワードです。

「SOGI」は性的指向、性自認を表す

セクシュアリティを構成する重要な要素があります。それがこの「SOGI」や「SOGIESC」です。これは、セクシュアルマイノリティだけではなく、すべての人に関わりのある概念です。

“SO”を意味する「Sexual Orientation(性的指向)」は、どのような性の相手を恋愛や性愛の対象とするかを示すものです。レズビアンやゲイ、バイセクシュアルなどはこの性的指向に関するセクシュアリティであることがわかります。

また”GI”の「Gender Identity(性自認)」は、生まれ持った身体的性に限らず、自分自身の性をどのように認識しているかを表します。たとえば、身体的性が女性で、自分自身のことを男性だと認識している場合には、性自認は男性ということになります。もちろん、身体適正と性自認が一致することもあります。

「SOGIESC」は性表現と身体的性を加えた言葉

さらに「SOGIESC」は、「SOGI」に「Gender Espression(性表現 / 表現したい性)」と「Sex Characteristics(身体的性)」の概念を加えた言葉になります。

性表現は、身体的性や性自認に関わらず、自分自身がどのような性でいたいか、どのような性を表現したいかを表します。この表現というのは、おもに身だしなみや服装、言葉遣い、行動に現れるものです。人によって、男性女性といったふたつの性以外の性を表現する場合もあります。

身体的性は、生まれ持った身体の性のことです。客観的に判断されるもので、自分の認識や意思とは別の部分で判断されます。先程説明したインターセックスもこの身体的性の考え方と大きく関わっています。

「LGBT」だけじゃない多様なセクシュアリティ

「LGBTs」だけじゃない多様なセクシュアリティ

「LGBT」というセクシュアルマイノリティは、このアルファベット4つで示される以上に、さまざまなセクシュアリティがあることを、少しでも知っていただけたでしょうか。

また、これらのセクシュアリティを理解するうえで欠かせない「SOGI」や「SOGIESC」の考え方も頭に置いていただけるとさらに知識が深まると思います。

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