世界のみんなに聞いてみた!世界のLGBTs事情
こんにちは。

6月は国際プライド月間でしたね。今年のプライド・パレードはコロナウイルス感染拡大の影響により世界各地で中止が相次ぎました。そんな中、6月24日に、OECDが加盟国35ヵ国のLGBTsに関する包括的な法整備の実態についてのレポートを発表しました。日本の総合評価は、100点中24点と、他のOECD加盟国と比べ、遅れをとっていることが顕著に分かる結果でした。では、世界の他の国々のLGBTs事情はどうなっているのでしょうか。「LGBTsに関する法整備って世界ではどのくらい進んでいるの?」「法整備については分かったけど、実際にその国の社会ではLGBTsをどのくらい受け入れられているの?」など、疑問に思ったことはありませんか?

本記事では、そんな2つの疑問にお答えすべく、世界5カ国のLGBTsに関する法整備の現状と、世界16カ国の大学生に聞いた各国のLGBTs事情を紹介していきます!

どのくらい進んでるの? 世界5カ国のLGBTs法整備事情

日本

そもそも日本では、LGBTsに関する法制度の整備はどれくらい進んでいるのでしょうか?世界の国々を見ていく前に、まずは日本の状況を見てみましょう。

  •  LGBTsに対する差別を禁止する法律・・・No
  •  同性婚・・・No
    *同性パートナーシップが認められている自治体もあるが、権利が限られている。
  •  同性カップルの養子縁組・・・No
    *個人が複数人の養親を持つことは認められているが、同性婚が認められていないため同性カップルの養親2人の戸籍に入ることができない。
  •  トランスジェンダーの人の戸籍上の性別変更・・・Yes
    *医師の診断書と性別適合手術が必要。

1. カナダ

OECDのレポートでは、総合評価87点、35ヶ国中1位とLGBTsを包括した法制度の整備では世界をリードしているカナダ。パスポートには、男性、女性、Xの3つの性の選択肢が導入されていることでも話題になりました。普段カナダで大学生活をしているわたしも、LGBTsにフレンドリーなカナダ社会の恩恵を受けているLGBTs当事者のひとりです。

参考:Choose or Update the Gender Identifier on Your Passport or Travel Document|Government of Canada

  • LGBTsに対する差別を禁止する法律・・・Yes
  • 同性婚・・・Yes
  • 同性カップルの養子縁組・・・Yes
  • トランスジェンダーの人の戸籍上の性別変更・・・Yes
    *性別適合手術不要。

2. オーストラリア

日本人の留学先として第2位のオーストラリア。OECDのレポートでは、総合得点67点と比較的LGBTsに対する包括的な法整備を進めている国のひとつです。

  • LGBTsに対する差別を禁止する法律・・・Yes
  • 同性婚・・・Yes
  • 同性カップルの養子縁組・・・Yes
  • トランスジェンダーの人の戸籍上の性別変更・・・Yes
    *医師による診断書が必要。性別適合手術の要否は地域で異なる。

3. タイ

タイでは、LGBTsを題材としたドラマや映画が多く製作され、LGBTsに寛容な社会と言われることもありますが、法制度の面ではどうでしょうか。

  • LGBTsに対する差別を禁止する法律・・・No
  • 同性婚・・・No
    *2020年7月8日、同性カップルに対して結婚に相当する権利を認める「市民パートナーシップ法案」が承認された。
  • 同性カップルの養子縁組・・・No
  • トランスジェンダーの人の戸籍上の性別変更・・・No

参考:「タイで同性婚 事実上合法化へ」TBS NEWS

4. トルコ

東洋と西洋の文化が融合したトルコ。OECDのレポートでは、総合得点23点、35ヶ国中最下位という結果になっています。

トルコでは、LGBTsであることは犯罪ではありませんが、多くのLGBTsが暴力、ハラスメントなどの危険にさらされている現実があります。同性愛は「病気」と思われることもあるようです。首都アンカラでは、LGBTsに関するイベントや、LGBTs団体が主催するイベントの開催が禁止されています。

参考:LGBT Rights in Turkey: Time for Action|Amnesty International

  • LGBTsに対する差別を禁止する法律・・・No
  • 同性婚・・・No
  • 同性カップルの養子縁組・・・No
    *ひとり親の養子縁組は認められている。
  • トランスジェンダーの人の戸籍上の性別変更・・・Yes
    *医師の診断書と性別適合手術が必要。

5. エジプト

ピラミッド、神殿、大バザール…、歴史的世界遺産を楽しめる国、エジプト。エジプトのLGBTs事情はどうなっているでしょうか?

エジプト政府は性的指向や性自認という文言を認めていないため、LGBTsの存在も認めていません。LGBTsに対する暴力、拷問があったり、公的サービス・教育・雇用へのアクセスが制限されたりしています。ジェンダー表現から個人をLGBTsと判断して不当に逮捕するということも起きています。

参考:Egypt’s Denial of Sexual Orientation and Gender Identity|Human Rights Watch

  • LGBTsに対する差別を禁止する法律・・・No
  • 同性婚・・・No *
  • 同性カップルの養子縁組・・・No
  • トランスジェンダーの人の戸籍上の性別変更・・・No
    *性別適合手術は可能だが、そのためには特別委員会の全会一致が必要だが、そもそも委員会による審査が行われないこともある。

世界16ヶ国の大学生に聞いてみた!あなたの国のLGBTs事情

世界の国の中には法制度と社会全体のLGBTs受容度にギャップがあることも多々あります。ということで、世界16ヶ国32人の大学生から、それぞれの国のLGBTs事情について生の声を集めてみました!

注:個人の主観に基づいています。また、旅行者、留学生、外国人居住者、国民では権利、対偶に違いがあります。

LGBTs差別と存在の可視化

国名    LGBTsへの差別はある?       LGBTsの存在は可視化されている?
カナダ       少しある              はい
アメリカ        ある              いいえ
メキシコ        ある              いいえ
トリニダードトバゴ        ある              いいえ
スイス       少しある              いいえ
ウクライナ        ある              いいえ
カザフスタン        ある              いいえ
アラブ首長国連邦        ある              いいえ
パキスタン        ある              一部
インド        ある              一部
中国        ある              一部
韓国        ある              一部
日本        ある              一部
インドネシア        ある              いいえ
ケニア        ある              いいえ

 

みんなの声

カナダ

  • 「LGBTsの当事者として、カナダに住んでいるのは安心!」
  • 「すごくLGBTsにフレンドリーな国。」

メキシコ

  • 「排他的な社会だけど、少しずつLGBTsに寛容になってきている。」

トリニダードトバゴ

  • 「宗教の影響を受けた古い法律があるからLGBTsに寛容な社会になっていないんだよね。でも若者の間では理解が進んでいると思う!」

スイス

  • 「今年、性的指向に関する差別を刑罰対象とする法案が可決されたよ!」

ウクライナ

  • 「若い世代はわりとLGBTsに理解があると思うな。社会はゆっくりだけど少しずつ良い方向に変化していっている。2019年に初めてプライド・パレードが行われたよ!」

カザフスタン

  • 「LGBTsの存在が認められてない。」
  • 「古い慣習や宗教の影響が強いかな。LGBTsの権利はほとんどない。」

アラブ首長国連邦

  • 「同性愛は違法で、厳しい法律がある。」

パキスタン

  • 「同性愛行為は違法だし、公共の場で同性愛について話すのもタブー。」
  • 「トランスジェンダーの人を保護する法律はあるし、メディアで取り上げられることも。でもリスペクトされてないことがほとんど。」

インド

  • 「自分みたいなLGBTs当事者にとって全然安全な国じゃない。カミングアウトをするのも難しい。」
  • 「メディアで同性愛を軽蔑する描写が未だにある。トランスジェンダーの人を保護する地域もあるけど、同性愛嫌悪が強いと思う。」

韓国

  • 「YouTubeやメディアのおかげで若い世代の間ではLGBTsへの理解が進んでいってると思う。カミングアウトしている芸能人もいるし。」

日本

  • 「レインボー・プライドの開催やメディアでの取り上げもあるが、LGBTsの人を”自分とは違う人達”と思っている人が多い。政府もLGBTsをサポートしていない。」
  • 「本人の性自認に関係なく、性別が女性なら女らしさ、男性なら男らしさが求められて、その規範から外れると差別される。」
  • 「LGBTsに関する教育が不十分だから、多くの人が差別的言動に気づいていない。日本はLGBTsの人がカミングアウトしづらい社会だと思う。」

インドネシア

  • 「私の高校でアライのクラブを創ろうとしたけど、学校が政府によって閉鎖されてしまうのが怖くて実現できなかった。」
  • 「文化や宗教的理由で、同性愛は違法で、LGBTsの人は暴力にさらされる危険がある。」

ケニア

  • 「LGBTsの存在が周知されていなくて、教育も行われていない。」

世界では、国によって社会のLGBTs受容度がさまざまですよね。法整備がされていても、実際にはLGBTsに寛容ではないとか、逆にその反対の国もあります。コロナウイルス収束後に海外旅行や留学を考えている方は、ぜひ渡航先・留学先のLGBTs事情を調べてみてください!

参考文献:
New Protection|Australian Human Rights Commission
Human Rights Landmark as Australia legalises marriage equality|Australian Human Rights  Commission
Australia Now Has Adoption Equality|Human Rights Law Centre
FAQ’s|Human Rights Law Centre
Legal Gender Recognition in Thailand|United Nations Development Programme Thailand
Constitution of the Kingdom of Thailand|Constitution.Net
TIMEP Brief: LGBTQ Human Rights in Egypt|The Tahrir Institute for Middle East Policy
Human Rights Violation of LGBT Individuals in Turkey
The Constitutional Court of the Republic of Turkey

チェック → LGBTとは簡単にいってなに?日本のLGBT事情が分かる記事のまとめ

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◎この記事を書いた人・・・鱸。
1999年、東京都生まれ。現在はカナダの大学で勉強中。

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