LGBTs

空衣

【解説】性同一性障害から性別違和に呼び方が変わることについて

【解説】性同一性障害から性別違和に呼び方が変わることについて
どうも、空衣です。
社会情勢の変化の中、LGBTsの権利が語られていくにつれて、T(トランスジェンダー)の権利についても徐々に変化していきました。
私はまだまだ勉強中の身ではありますが、これまでT(トランスジェンダー)がどう扱われてきたのか?何が問題だったのか?という話や、それらを解決するために今後どう変わっていくのか?という話を2回に分けてしていきます。

性同一性障害がどう変わるのか

性同一性障害とは?

割り当てられた性別と体感している性別が異なる人は「トランスジェンダー」と呼ばれています。

その中でも身体的な治療を必要とする人、とりわけ『男性的な身体から女性的な身体への治療を希望する人(MtF)』や『女性的な身体から男性的な身体への治療を希望する人(FtM)』など、性別を男女二つだけで考えた場合の“反対の性”に適合するため、身体的な治療を希望する人が「性同一性障害」という医学的な名前で診断されてきました。

つまり、性同一性障害とは医師が診断する名称なのです。

また、英語では“gender identity disorder”と表記され、頭文字をとって“GID”と呼ばれることがあります。

性別違和や性別不合へ

ところが最近では「性同一性障害」の概念に変化がありました。

「性同一性障害」という概念は、その意味がより広範囲になる形で、「性別違和(Gender Dysphoria)」や「性別不合(Gender incongruence)」という考え方に移り変わっていくことになったのです。
しかし、この語の日本語訳はまだ広く使われているという状態ではなく、今後、変更される可能性があります(2020年7月時点)。

「性別違和」や「性別不合」とまとめて言ってしまいましたが、この二つは別ものです。

それぞれ詳細に説明が必要なので、今回と次回の記事で2回に分けて解説していきます。
今回は、性同一性障害が「性別違和」となったら何がどう変わるのか?というテーマで記述しています。

性別違和とは何か

誰が性別違和を決めている?

性別違和とは、DSM-5という、アメリカの精神科医の学会(アメリカ精神医学会)が発行している「精神疾患の診断・統計マニュアル」、その第5バージョンによって記述されている内容となります。

この米国精神医学会はあくまで民間団体であり、政府機関や公的機関ではありませんが、大きな影響力をもっています。

DSM(特に診断基準が明記される第3バージョン以降)という基準のしっかりしたマニュアルができるまでは、アメリカ内での精神医学に対する社会的偏見は大きく、権威性は著しく乏しいものでした。

DSMができてからは、精神科医による診断や治療は個々の原因を探るという形ではなく、「該当する症状と、それに伴う苦悩があるか」といったマニュアル診断に移行していき、安定した診断が行われるようになっていったのです。
(実はトランスジェンダーの人だけでなく、同性愛者の歴史もこの米国精神医学会によって大きく左右されてきたのですが、今回は割愛させていただきます。)

関連記事LGBT(LGBTs)って病気じゃないの?昔は病気、今は個性

※DSMとは、英語で“Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders”を意味します。

参考:精神障害の診断と統計マニュアル – wikipedia

性別違和の定義とは?

さて、誰が性別違和という名称を決定しているのかは分かりましたが、その定義はどのように決められているのでしょうか。
米国精神医学会の発行するDSM-5はあくまで英語で書かれた米国の医療従事者向けの文書なので、ここではざっくりした日本語での定義を、分かりやすくご紹介させていただきます。
参考:What Is Gender Dysphoria? | American Psychological Association (APA)

性別違和(Gender Dysphoria)とは

A.その人が体験し、または表出するジェンダー(experienced/expressed gender)と、指定されたジェンダー(assigned gender)との間の不一致が、6ヶ月以上あること。
診断基準としては、

  • 一次性徴や二次性徴から解放されたい
  • 反対のジェンダーの一次性徴や二次性徴を願う
  • 反対のジェンダーで生きていきたい・扱ってほしい
  • 反対のジェンダーに典型的な反応や感情を持っている
などの項目があります。

B.その状態が、激しい苦痛あるいは社会や職業生活において機能の障害と関連していること。(Aの状態があることで辛い、生活しづらい等)

Aについて補足します。
これまでは性同一性障害やトランスジェンダーについて、「心の性と体の性が一致しない」といった、当事者以外にもわかりやすい反面、誤解を生むような説明がメディアでも(当事者の記述でさえも)取り上げられる場面が多かったという経緯があります。
しかし、その説明では性別違和について正確に捉えることができないので、英語記述になるべく近い日本語訳で対応するほうが望ましいのです。

「その人が体験し、または表出するジェンダー(experienced/expressed gender)」は、その人がどう感じたり考えたりするかということで、従来の男女に限らず、Xジェンダーも診断対象に含まれます。
「体の性」と訳されがちだったsexは、「指定されたジェンダー(assigned gender)」に置き換えられました。

性同一性障害から性別違和になるとどう変わるのか

全体的に対象範囲が広くなります。

  • Xジェンダーも場合によっては含まれる(自分でも性別がまだよくわからない人や、特に生活に困っていないという人は診断基準の対象外です)
  • 身体治療を必要としていない人も含まれる(例:社会的に男性扱いされたいが、胸や生理などの女性的な身体も嫌ではないというFtMなど)
  • 身体的性別が典型的な男女に限らず、性分化疾患も含む

さらに従前の診断基準と異なることから、以下の事態も勘案されることになります。

  • 身体移行をして不一致がなくなった場合は「診断を失う」こともあり得る
  • 性別を変えて後悔している人が再度診断を得ることもできる(FtMtFになるというケース)

これらの考え方の変化には『非典型的な性別のありようであっても、医学的疾患と見なす必要はない』という思想が感じられます。
これまでの「性同一性障害」では、与らえた性別とは「反対の性」であること、身体を変えていくこと、が必須という扱いでしたが、必ずしもそうでなくとも「性別違和」に該当するということです。

次回は「性別不合」について解説していきます!
関連記事【解説】性同一性障害から性別不合へ-概念の変化について

参考文献:針間克己、『性別違和・性別不合へ』、緑風出版、2019

———————————-
◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。性別も住処も旅してきました。

Page Top