どうもこんにちは!LGBTsフレンドリーな不動産IRISのしょうへいです。
最近はパートナーシップ制度の普及もあり、同性同士の家探しにおいてパートナーシップ宣誓証明書を要求されることが増えてきました。
しかしその反面、パートナーシップ制度=婚姻と勘違いされている大家さんや管理会社さんもいるのが現状です。
本記事では『日本の同性婚の現状とパートナーシップ制度との違いについて詳しく解説』していきます。
日本は同性婚が認められていない国
まず最初にお伝えしたいのは『日本は同性婚が認められていない』ということです。
同性同士でも結婚式を挙げることはできますが、法律上の婚姻(夫婦になること)は認められていないのが現状です。
同性婚が認められていない国はG7(主要国首脳会議)で日本だけ
G7(主要国首脳会議)はフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7か国のことを指します。
この中で同性婚が認められていないのは日本のみで、(様々な理由から同性婚を積極的に推進できない理由があるかもしれませんが)日本のLGBTs対応は他の先進国と比べ、遅れを取っていると言わざるを得ません。
パートナーシップ制度は自治体が独自に定めるパートナー同士の関係を公的に認める制度
「日本では同性婚が認められていないなら、パートナーシップ制度って何なの?」と思った方も多いでしょう。
パートナーシップ制度というのは法律的に2人の関係を夫婦として認めるものではなく『各自治体が独自に定めるパートナー同士の関係を公的に認める制度』です。
あくまでパートナーシップ制度は各自治体のみで効力を発揮するもので、民法上の効力を持つものではありません。
同性婚とパートナーシップ制度の違い
婚姻は法的に2人の関係を夫婦と認めるものなので、婚姻すれば法的な義務が発生し、同時に法に守られるようになります。
例えば、パートナーと死別してしまった場合『パートナーシップ制度では遺族年金はもらえませんが、婚姻した夫婦であれば遺族年金がもらえる可能性』があります。
他に遺産の相続においても、パートナーシップ制度ではパートナーは法定相続人になることができません。
また法的に認められている夫婦であれば『配偶者控除制度』で税金が軽くなることもありますが、パートナーシップ制度には適用されません。
同性婚が求められる背景には、同性同士では国からの社会的補償などが受けられないといった理由が大きく挙げられます。
パートナーシップ制度は活用すべき?
法的に認められている婚姻と比べると、優遇される制度が多くないのが現実ですが『パートナーシップ制度を活用するメリットは確実にある』と思います。
例えば不動産の現場では同性カップルが入居申請するとき、パートナーシップに関する証明書の提示が求められる場面が増えています。
この時、パートナーシップ関連の書類の提示ができれば、審査まで持ち込むことはできるケースもありますが、無い場合は審査してくれないこともあります。
自分が住んでいる地域で、もし同性パートナーシップ制度があるなら、受けておいた方が今後のために有利な面もあります。
パートナーシップ制度を活用するその他のメリット
物件探しで有利になるだけではなく、パートナーシップ制度を活用することで下記のようなサービスを受けられる場合があります。
- 区営住宅など自治体が管理している物件に入居申請ができることがある
- パートナーが入院時に面会や医師と治療相談ができることがある
- 携帯電話の家族割引が受けられるようになることがある
- 企業によってはパートナーとの関係を夫婦と認め福利厚生の対象としている
- 保険会社の保険金の受取先にパートナーを指定できるようになることがある
- 自治体の給付金の対象になることがある
特に”パートナーが入院した時の面会や治療相談、保険金の受取などは人生においても重要”と思われます。
万が一、パートナーが事故で重篤な状態になったとしても、同性カップルの場合は顔を見ることすら許されないこともあります。
しかし”パートナーシップ制度を利用していて、自治体が認める病院に搬送されたのであれば、近くで寄り添うことができる”ようになることもあります。
費用も渋谷区以外であれば数千円程度であることが多いので、利用しておいて損は少ないと思います。
取得方法や各自治体での詳しい活用方法は『パートナーシップ制度がある自治体一覧と活用方法』の記事をご覧ください。
パートナーシップ制度を活用するデメリット
パートナーシップ制度にはデメリットも存在します。
- パートナーシップ制度のある自治体で暮らすのが基本となる
- 別の自治体に引っ越しする場合には自治体に返す必要がある
パートナーシップ制度を実施している自治体にもよりますが、多くの自治体が”その自治体内に双方が住所を持っていることが宣誓の条件”となっています。その為、引っ越しする場合には一度返還して、また引越し先の自治体でパートナーシップ宣誓を行う必要があります。
転職や職場の移動などで引っ越しがしたくなっても、引っ越し先にパートナーシップ制度が無いといった可能性やパートナーシップ制度自体が足枷となって引っ越しが難しくなることがあるかもしれません。
なぜ日本は同性婚を認めないの?
なぜ”日本での同性婚が認められない理由は、今のところはっきりした立場が公的な場所で表明されていない”のが現状です。
もちろん、今存在しない制度を新しく作るという話ですから、国会に法案が提出され、可決される必要はあります。
ただし、法律は憲法に違反することはできませんから、その前提となる『憲法解釈』によって、国内の意見が割れているというのが現状と言えそうです。
現行憲法上に同性婚が想定されていないからという説
日本国憲法24条の第1項には次のように書かれています。
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
問題となるのが『両性』という表現です。
この両性というのが、男性と女性の両方の性を示すとして、婚姻は異性同士でないと成立しないと言われることがあります。
両性は男性と女性のことではないという考えもある
第二次世界大戦前、日本は戸主(父親や長男)の許しが無い限り、婚姻を望む者同士であっても、両当事者の意思だけでは結婚することが許されませんでした。
しかし戦後、日本国憲法起草時においては、両当事者の合意のみで婚姻ができると定めたのです。
この『両当事者の合意』が憲法24条第1項の『両性の合意』であり、性別のことではないとも言われているのです。
同性婚について考えられていない時代の憲法
また日本国憲法制定時には、同性間の恋愛について公式の場で議論されることはほとんどない時代でした。
その為、わざわざ同性同士の結婚を禁止するために両性という言葉が採用されたとは考えにくいのです。
つまり『日本国憲法では同性婚は想定されていないため、認めるわけにもいかず逆に明確に禁止にもできないのが現状』と言えそうです。
憲法81条に
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
と定められているように、憲法解釈に対する一番強い力(憲法の有権解釈権と言います)を有しているのは間違いなく最高裁判所です。
ですから、同性婚を認めないことが違憲として、現在(2020年7月)法定で争われており、解釈は固まっていません。
同性婚に関する様々な意見がある
一方で、法律上の問題だけではない側面もあります。
TwitterなどのSNSで同性婚について調べると分かるのですが、とても様々な意見があります。
- 少子化が加速してしまう(結婚の目的は子供を作り育てることにある)
- 同性婚は伝統的な家族のシステムを破壊する
- 法律を利用した犯罪に使われてしまうのではないか
中でもよく見かけるのが「少子化が加速してしまうのではないか?」という意見です。
そもそも異性愛者の多くが、同性婚が可能になったからといって同性婚をするとは考えにくいですし、同性愛者の多くが現在は同性婚が認められていないからといって異性と結婚して子供を設けているとも思えません。
つまり同性婚ができるようになっても、少子化に大きな影響を与えることは、ほとんどないと考えられます。
そもそも同性婚を認めて欲しいという声が足りていない
今までなかった法律を作る過程においては、一般的に社会情勢が加味されることが多いです。
同性婚に賛成する立場の人と反対する立場の人(それも結構な数の)がいて、それらの意見をとりまとめ、同性婚を成立させる過程には”少なくとも衆議院の過半数が同性婚が必要だ”という意識を持つ必要があるからです。
日本はどちらかというと保守的な国で、人権意識がとても高いとも言い切れず、少なくとも国会では積極的に変化を受け入れる議員があまり多いとは言えない状態ですので、同性婚などの先進的な取り組みが早い段階で成立する環境ではないと言えそうです。
近頃はTokyo Rainbow PrideなどLGBTsの理解を深める運動が行われていますが、同性婚を認めて欲しいという意見は、当事者間でも賛否両論あるのが現状でしょう。
ましてや、当事者の目線から見ても、実際に声を上げて同性婚実現に向けて行動している方は極わずかのような気がします。
なるべく早く同性婚を日本で実現するには『賛成と考えている当事者やアライが、もう少し国に対して同性婚の必要性を訴えることが重要である』という意見もあります。
【まとめ】日本の同性婚の現状とパートナーシップ制度との違いについて解説
本記事をまとめると下記のとおりです。
- 現在の日本では同性婚は認められていない
- 結婚は法的な権利と義務が伴うもので、パートナーシップ制度は対応する自治体のみで効力を発揮するもの
- 結婚であれば法定相続や遺族年金などの対象となるがパートナーシップ制度では対象とならない
- パートナーシップ制度は法的効力はないが、適応範囲は広がっているので様々なメリットがある
- 同性婚は憲法解釈上必ずしも禁止されているわけではなく、想定がされていないと考えることもできる
以上で本記事を終わりとさせていただきます。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。