街中を歩くと、カップルが楽しそうにしていたりするのを目にすることがあります。その一方で、恋愛したくてもできなくて悩んでいたり、何らかの精神的な問題が原因で恋愛に踏み出せないという人もいます。

でも、恋愛ができない人、恋愛したくないと感じていることは病気ではありません。最近では「恋愛できない病」という言葉を耳にする機会もあり、自分は病気なのではないかと感じている人もいるかもしれませんが、そうではありません。

もちろん、恋愛したいと感じているのにできない場合や、恋愛感情があっても恋愛に踏み出せないといった場合には、心理的な他の要因が絡んでいることもあります。本人が恋愛を望んでいる場合にはなにか対処法が必要になることもありますが、恋愛ができないこと、恋愛をしないことそれ自体は悪いことではないのです。

精神的な理由で恋愛ができないこともありますが、特にそうした理由もなく恋愛感情を持たない人というのもいます。

今回は、「恋愛ができない」「恋愛しない」ということを紐解いてみたいと思います。

LGBTお部屋探し

アセクシュアルや、デミロマンティックなどのセクシュアリティを持っている可能性

まずは、LGBTについて考えてみましょう。LGBT(性的マイノリティ)は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取って作られた言葉ですが、実はその他の多くのセクシュアルマイノリティも含まれています。

この、「その他のセクシュアルマイノリティ」には恋愛感情に関するセクシュアルマイノリティも含まれています。恋愛感情がある、ないの違いや限定的に恋愛感情を持つ場合など細かく分類することができます。

とくにその中でアセクシュアルや、デミロマンティックは恋愛感情に大きく関わるセクシュアリティです。耳にしたことがある人も多いかもしれませんが、今回は、この2つのセクシュアリティについて説明します。

アセクシュアル(Aセクシュアル)

アセクシュアル(またはAセクシュアル、エイセクシュアル)は、他人に対して恋愛感情も性的欲求も抱かないセクシュアルのことをいいます。セクシュアリティについて紐解くことき、恋愛感情と性的欲求はそれぞれ別の基準として考えます。アセクシュアルは、この両方を抱かないということです。

さらに細かく分けると、他人に対して性的欲求がないのがアセクシュアル、恋愛感情を抱かないことをアロマンティックとすることができ、その両方がない人のことを、厳密には「アロマンティック・アセクシュアル」といいます。ただ日本においては、両方を含めてアセクシュアルと示すことも多いです。

ちなみに、個人の事情や宗教の都合など、何らかの理由で意識的に恋愛をしない人もいますが、これはアセクシュアルには含まれません。あくまでセクシュアリティのひとつであるということを認識すると理解が進むでしょう。

とはいえ、他者に対して恋愛感情や性的欲求がないからといって他人に感情がない、愛がないということではありません。また、アセクシュアルの人のなかには、結婚願望がある人もいます。恋愛とは別で、人生を支えてくれるパートナーがほしいと考える人はいるようです。

アセクシュアルだと自覚している人の中には、告白されて付き合うことになり、一緒に過ごすことで相手に対して恋愛感情に似た特別な感情を抱くようになったという人もいます。

デミロマンティック

さらに、他人に対して恋愛感情や性的欲求を抱かないセクシュアリティについてもう1つ知っておきたいのが、デミロマンティックです。デミロマンティックとは、強い絆や信頼関係が築かれている人にのみ稀に恋愛感情を抱くセクシュアリティのことをいいます。

デミロマンティックの人の場合、出会ってから数年以上経って、やっと恋愛感情に気づくようになるという場合があります。恋愛感情にいたるまでに数年をかけて人間関係を築くタイプのセクシュアリティなので、自分には恋愛感情がなく、アセクシュアルではないかと考える人も多いようです。

相手が同様のセクシュアリティでない場合には、付き合いが長くなればなるほど恋愛対象として見られることが少なくなり、恋愛が成立しないといったケースもあります。

また、他人に対して基本的に性的欲求はないものの、強い愛情や友情関係がある人などごく一部の人に対して性的欲求を抱くセクシュアリティのことをデミセクシュアルといいます。

デミロマンティックとデミセクシュアルの両方を持っている人もいれば、一方のみのセクシュアリティを持つ人もいて、さまざまです。

恋愛ができない人はどれくらいいるの?

恋愛ができない人はどれくらいいるの?
上記で説明したように、他者に対して恋愛感情を抱かない、性的欲求を抱かないセクシュアリティの人がいることはわかりました。では、恋愛できないという人はどのくらいいるのでしょうか。

2015年に行われた国立社会保障人口問題研究所による「第15回出生動向基本調査」で、18〜34歳の未婚男女を対象に行われた調査についてみてみたいと思います。

当時、交際相手がいない人の割合は男性69.8%、女性59.1%でした。さらに詳しく見てみると、この中で「交際を望んでいる」のに相手がいない人は男性で31.9%、女性で26.0%でした。つまり、恋愛したいのにできない人というのは、3〜4人にひとり程度ということになります。

裏を返せば、それ以外の人は恋愛しなくても良い、恋愛したくないと感じているということになります。

参考:第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口問題研究所

恋愛感情自体はあり、恋愛がしたいけど恋人が作れない人の特徴

ここまで、他人に対して恋愛感情を抱かないセクシュアリティや、特定の場合にのみ恋愛感情を持つセクシュアリティについてお伝えしてきました。

こうしたセクシュアリティの人とは別に、恋愛感情自体はあって、そのうえ恋愛をしたいと考えているけれども、恋愛ができない、恋人ができないという人もいます。

恋愛がしたいけど、できないという人は、どのような原因や特徴があるのでしょうか。

自分に自信が無いので相手と比較して自分は恋人になる価値がないと思ってしまう

恋愛したい人のなかには、自分に自信がなく、恋愛に踏み出せないという人がいます。自分に自信がないために、「私みたいな人と恋愛しても……」と考えてしまう人は意外と多くいます。

自分への自信のなさから、恋愛対象になる人を遠ざけてしまったり、積極的に話しかけたり、行動したりすることができず、恋愛に発展しないということがあります。

自分のスペックに対して恋人になって欲しい人の理想が高すぎる

自分に自信があるかどうかではなく、相手に対しての理想が高く、相手へ求めることが多すぎて恋愛が成り立たないという人もいます。年収や見た目への希望など、理想を言えばキリがないですが、こうでなければだめ! と条件を設けすぎているとなかなか恋愛に発展するのは難しいといえます。

ふたりが似た価値観を持っていて、同じ目線に立てる人だからこそ恋愛が成立するということもあります。そう考えると、相手に対してだけ理想が高すぎては相手は見つかりませんね。

他にも、恋愛に対してのハードルが高すぎるとなかなか恋愛に踏み出せないというのもあります。付き合う人は結婚する人、と決めてお付き合いをしようとすると、なかなか相手が見つからないということもあるようです。

自分のことが嫌いだから、自分のことを好きにはなってくれない人にばかり恋心を奪われてしまう

自分に自信がないことに少し類似する部分もありますが、自分のことが嫌いで、自分を好きになってくれる人がいたとしても、素直に喜ぶことができず、恋愛に発展しないというパターンもあります。

そのため、自分のことを恋愛感情で見てくれないだろう、という人ばかりに心を奪われて、恋心を抱いてしまうことがあるようです。もちろん、恋愛が成立しない関係性の相手に恋愛感情を持つこと自体がダメなわけではないのですが、「恋愛したい!」と考えている人にとっては、避けたい状況だと言えそうです。

LGBT お部屋探し

恋愛感情自体はあるけれど恋愛ができない原因や心理的要因

さらに、恋愛ができないということについて別の観点から考えてみたいと思います。恋愛ができないことは病気ではないですが、恋愛感情に対して精神的な病気などが影響を与えている可能性はあります。

以下の症状や状態に心当たりがある場合には、カウンセラーなどに相談してみるのも手かもしれません。

回避性パーソナリティ障害

まず考えられる病気のひとつに、回避性パーソナリティ(人格)障害というのがあります。これは、他人や周りから批判や拒絶されたり、恥をかくことを恐れて人との関わりそれ自体を避けようとするもので、パーソナリティ障害のひとつです。

自分に自信がなく、周りから批判されたり、拒否されたりすることを恐れているので、もし自分のことを好きになってくれた人がいたとしても、「自分のことを好きになるはずがない」と考えてしまうようです。恥をかいたり、失敗したりすることが恐怖に感じられるので、自分から好きな人に対して行動を起こすことができず、恋愛に発展しないということです。

男性恐怖症・女性恐怖症

過去の経験から、男性や女性が怖く感じられる、男性恐怖症や女性恐怖症というのがあります。これによって恋愛を回避していたり、無意識に好きにならないようにしていることがあります。

この場合、男性全体、女性全体に恐怖心や拒否反応が出てしまうので、素敵な人だと頭では考えていても、実際に話す場面ではうまく話せなかったり、恐怖心を持ってしまったりすることがあります。

同性愛者でも男性恐怖症や女性恐怖症になることも考えられます。男性として男性が好きなのに、男性に対して恐怖心があり恋愛ができないこともあるということです。

愛着障害

愛着障害は、アタッチメント障害とも言われ、養育者に対しての愛着が形成されず、その子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態のことです。

この原因になるのが、虐待や、養育者との離別が考えられ、母親や父親、その他の養育者と子どもとの間に問題が生じることで、その後の人生で過度に人に恐怖心を抱いたり、逆に誰に対しても馴れ馴れしいといった症状が現れます。

愛着障害によって他人との距離をうまく取ることができないと、恋愛に発展するのは難しいことが多いです。恋人と深い関係を築きたいと考えながら、その一方で親密になることを避けようとするなど、不安定さが特徴として現れます。

【まとめ】恋愛ができないのは病気?原因や特徴、アセクシュアルの可能性

【まとめ】恋愛ができないのは病気?原因や特徴、アセクシュアルの可能性
今回は、「恋愛ができない」人や、その状態について紐解いてみました。セクシュアリティから恋愛感情を抱かない人がいたり、過去のトラウマやその時の精神状態が原因で恋愛に踏み出せない人もいるということがわかりました。

最初にもお伝えしているとおり、恋愛をしないことが悪いというわけではありません。恋愛したくないと感じていることや、恋愛ができないことそれ自体が病気だというわけではないのです。

その一方で、恋愛をしたい気持ちがあって、恋人が欲しいと考えているのにできないという人がいるのもわかりました。理想と現状との相違などが原因になっていることもありますが、人によっては、過去のトラウマなど精神的な問題や、心理的な病気が絡んでいることもあるかもしれません。恋愛したいけれどできないと悩んでいる人の中で、自分に当てはまる状態や症状があった場合には、病院や専門機関に1度相談してみるのも1つの方法です。

いずれにしても、自分のセクシュアリティや自身の状態と向き合い、パートナーを見つける場合も、そうでない場合も、自分がより居心地が良くて無理をしない状態を見つけるのが一番といえるでしょう。