トランスジェンダーとは

トランスジェンダーとは、「出生時に割り当てられた性別と、ジェンダーアイデンティティー(自分自身が性別をどう実感しているか)が異なる人」を指します。

逆に、割り当てられた性別に違和感をもたず生きていく人を「シスジェンダー」といいます。

たとえば私の場合は、トランスジェンダーの男性(FtM)です。生まれたときは「女性」でしたが、それは違うと感じ、現在は「男性」として生きています。正確にいえば、「男性として生きている」というよりは、性別移行をしたことで性別の違和感が減り、「何も考えずに生きていける」状態に近づきました。

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LGBTの割合は人口の10%前後

PRIDE JAPANによると、性的マイノリティは全人口の10%という調査結果が発表されました。

この調査はLGBT総合研究所が2019年に実施したインターネット調査です。全国の20〜69歳の男女、約34万8千人が回答しました。

ここでの「性的マイノリティ」とは、シスジェンダーではない人、ヘテロセクシュアルではない人たちのことです。つまり性的指向や性自認においてマイノリティの人たちです。「LGBT」の頭文字に代表されるレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーをはじめ、ほかにもアセクシュアルやパンセクシュアル、Xジェンダーなどの人たちを指します。「誰にもカミングアウトしていない」当事者が78.8%と大半を占めました。

LGBT認識行動調査2019

ここからは「性的マイノリティ」のなかでも、「トランスジェンダー」に絞って割合を見ていきましょう。

トランスジェンダーの割合は人口の1%以下

トランスジェンダーの割合は人口の1%以下

大阪市の市民調査ではトランスジェンダーは0.7%

大阪市が2019年に実施した「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」ではトランスジェンダーの割合は全体の0.7%でした。この調査は大阪市の住民基本台帳から無作為抽出した18歳から59歳までの15,000人の市民を対象に郵送配布・郵送回収(ウェブ回答選択可)としたものです。

戸籍変更したトランスジェンダーの割合は0.000081%

2004年に施行された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の戸籍変更要件をクリアして、無事に戸籍変更をしたトランスジェンダーの人はようやく1万人を超えたところです。

日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会」によると、2020年時点で、戸籍を変えた総数は10301人でした。

総務省統計局によれば、2020年の日本の人口が1億2622 万7千人ですから、戸籍を変更したのは日本の人口全体のうち0.000081%だけとなります。つまり10万人のうち、戸籍変更済みの人は8.1人という計算になります。これは戸籍変更済みの人が全員生きている場合の数字ですので、実際はさらに少ないかもしれません。

しかも戸籍変更して自身の生活実態に合致するようになったら、転職や物件探しで「性別欄の記述がちがう」と逐一怪しまれることもなくなりますから、もし戸籍変更済みのトランスジェンダーの人に会っても、まず気づかないでしょう。

戸籍上の性別を「男」から「女」、あるいは「女」から「男」に変更するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

  1. 十八歳以上であること。
  2. 現に婚姻をしていないこと。
  3. 現に未成年の子がいないこと。
  4. 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
  5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

日本の要件は世界的に「人権侵害である」と非難されるほど厳しい内容ですから、戸籍変更まで経たトランスジェンダー当事者が少ないのも頷けます。

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英国のトランスジェンダーの割合

ライターのショーン・フェイは『トランスジェンダー問題』イントロダクションのなかで、UKには20〜50万人のトランスジェンダーの人がいて、多く見積もっても全人口の1%にも満たない、と述べています。英国の政府資料とも合致します。

米国のトランスジェンダーの割合

ウィリアムズ研究所によると、米国では140万人の成人がトランスジェンダーと認定されています。18~24歳の成人の約0.5%がトランスジェンダーであり、65歳以上の成人の0.3%がトランスジェンダーであるとしています。

参考記事:人口の何パーセントがトランスジェンダーであるか 2022

しかし同時にわかるのは、「トランスジェンダーが共生しやすい地域かどうか」が、トランスジェンダーかもしれない人の認知に関わってきているということです。トランスジェンダーに差別的な情報が溢れている場合、自分自身がその「差別される側のトランスジェンダーである」と信じることができなくなり、結果としてトランスの割合が減るようです。

トランスジェンダーの割合をどう測る?

トランスジェンダーの割合をどう測る?

第92回日本社会学会大会(東京女子大学)の報告によると、トランスジェンダーの人口や割合を把握するのは困難だといいます。医療機関にかからない当事者もいて、暗数が多く、「トランスジェンダーですか?」と聞かれてもピンとこない当事者もいるからです。

この調査では18〜59歳の有識者3万人に聞いたところ、トランスジェンダーを「出生時の戸籍性別」と「自認する性別」の回答が一致しなかった人とした場合、全体の2%がトランスジェンダーだったといいます。性別違和といっても、どう定義するかによって大きな差があり、「トランスジェンダーか?」と聞かれるとそうではないが、「性別に違和があるか?」と聞かれると確かにそうかもしれない、という人たちも含む結果だといえそうです。

「逆の性別になりたい」わけではないノンバイナリー的な人は、性別に違和感をもっている点では広義で「トランスジェンダー」なのですが、自身を「トランスジェンダー」とアイデンティファイしているかは個人差があります。