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【講義レポート】LGBTsフレンドリーな不動産会社を起業するまでの道のり

セミナー・マナビヤ

少しでも多くのLGBTs当事者が自分らしく生きられる社会にするため、株式会社IRISではLGBTsフレンドリーな不動産事業、研究・講演事業を行っています。

今回は、日本大学で弊社のCOO石野が登壇した講義について紹介します。ゲイ当事者としての生きづらさからIRISの立ち上げまで、幅広くお話しました。

登壇者:石野大地(株式会社IRIS / 代表取締役 COO)

登壇者:石野大地(株式会社IRIS / 代表取締役 COO)

1990年、広島県生まれ。大学在学中からグラフィックデザイナーとして、企業向け・アーティスト向けのデザインを手掛ける。通信インフラ会社でWEBマーケティングを担当。

その後、リクルートコミュニケーションズ(現リクルート)に転職し、人材領域・不動産領域の事業推進などに携わる。2015年よりIRISの中心メンバーとして活動し、2016年に法人化。COOとして財務・法務・経営企画・事業推進をはじめとして、IRIS全体のプロモーションを担当している。

LGBTsフレンドリーな不動産会社IRISの紹介

株式会社IRISは「誰もが自分らしく生きられる社会の実現」をミッションに掲げております。そのために、まずは「住まい探しでLGBTsの3人に1人が使う会社」を目指し、LGBTsフレンドリーな不動産仲介を中心に、シェアハウス運営やメディア事業などを行っております。

SUUMOの調査によると、日本の住まいさがしで困った経験をしたLGBTsの割合が約3割という結果が出ました。残りの7割の当事者はそう感じていないのではなく、まだ経験したことがないと予測できます。なので、本来苦労を伴う必要のない場面で圧力を感じてしまっている現状を解決すべく、物件の供給側・物件を探すユーザー・それらをマッチングさせる不動産仲介会社という3つの観点からアプローチしています。

住まい探しで不安を感じている人は、LGBTsだけではなく、外国籍の方、在宅障害者の方、シングルマザーの方など、さまざま存在します。家を買いにくい・借りにくい原因がお金なら、顧客それぞれに見合った物件を提案できるのですが、そうではない部分で問題が見受けられるのが現状です。

実際に「女性同士だから」という理由で大手の不動産仲介会社から断られてしまい、弊社に連絡をいただいたカップルの方がいます。普段生活していると、身の回りでLGBTsの方を差別したいと思う人に出会うことは少ないですが、実際にこういった場面で苦労している人は多く存在するのです。

その理由として、不動産仲介ビジネスとしてマイノリティに十分な対応ができていないことが考えられます。この構造を生むのは貸主サイド、つまり組織の中心となる管理会社にあります。そこにある理解の欠如を解決するため、我々が働きかけているところです。

会社を立ち上げに至るまで

ある男性との出会い

ここからは、私がIRISと出会うまでのストーリーをお話します。1990年に広島で生まれ、小学5年生のときに読んだ本がきっかけとなり、ゲイであることを自覚しました。しかし、その本には「男性が男性を好きになることは異常である」と書かれていて「普通とは違う」ことに悩みました。2週間悩んだ末、考えても仕方がないと開き直り、誰に打ち明けることもなく自己吸収しました。ただ、LGBTs当事者が学校でカミングアウトした割合は1.1%という統計結果が出ているように、私のように2週間しか悩まない人は珍しいのかなと思います。

中学受験をきっかけに地元から離れ、新しい自分に変われるチャンスだと感じていました。クラスメイトに勢いでカミングアウトしたのですが、笑いのネタにされたり、好きな人に告白すると「気持ち悪い」と避けられたり……。徐々に自虐的な行動を起こすようになり、典型的な不登校となります。

不登校時にハマっていたネットで、当時ストレートを自認していた男子高校生と仲良くなり、突然告白されるという出来事が起こりました。彼は実の母親が自死したり、連れられた養父の再婚相手や子どもからひどい虐待を受けたり、以前付き合っていた彼女にも暴行を加えられたりと、複雑な生い立ちを過ごしていました。

カウンセラーの言葉

お互いにやっと信頼できる人と出会い、毎日やりとりを交わすのですが、彼は統合失調症を発症し、私のことを死んだ母親だと思い責め立てたり、自傷行為を繰り返したり……。

私も同時にうつ状態となり、スクールカウンセラーに相談します。私は彼を助けなければならないとの一心で過ごしていたのですが、以下の言葉をカウンセラーの方がかけてくれたことで少し楽になれました。

  • 「君ができることは何もないし、相手から見返りを求めることも期待できない。君は二日酔いの彼を介抱しているようなものだ」
  • 「私もカウンセラーだけど命を救えないこともある。ただ、どん底に落ちても生きてさえいれば浮上する」
  • 「君が彼に何かしたいと望むなら、どんなことがあっても動じないくらい強くならなければならない」

当時、彼を助けようと目一杯動いていました。ですが、カウンセラーの方が言ってくれたように、2日酔いの人に背中をさすったとしても、その人は気持ち悪いと思うだけで感謝する余裕はありません。なので彼が生きて元に戻ってくるまで、私は考えすぎる必要はないのだと目を覚ますことができました。ですが、症状が悪化した彼は「もう自分のことは忘れてください」との言葉を残し、離別することになりました。

私は東京に行けば彼と連絡が取れるかもしれないと最後の希望をもち、日本大学に進学します。「自分は彼に何ができただろうか?」という問いを考え続けた結果「彼は自分自身で選択できない要素によって、自分の人生を生きられなくなった」という結論に至りました。このことがきっかけで「自分で選べない要素による不当な機会の差や扱いをなくしたい」という生涯のテーマが決まったのです。

起業への道

起業への道

社会人になり、友人の紹介で現CEOの須藤と出会います。当時、お互いに何かやりたいと思っていたのですが、踏み込めない状態でした。2人で意見交換しぶつかり、最終的にLGBTsの課題を解決したいという意見に合致しました。

具体的な解決方法を探っていくなかで、住まいにおける問題がいまだに解決されていない現状を知ったことが起業の原点です。2016年4月に法人を設立、11月に宅建資格を取得し、2017年から不動産事業を始めました。

ビジネスの投資効果

この講義は起業に関する教室と聞いています。なので、皆さんに今一度何をビジネスとして選択すべきなのか?をお話ししたいと思います。
ビジネスを行う上で1つのゴールをお金と定義したとき、起業は最も効率のよい投資だと考えています。ビジネスを始める際、怪しげな儲け話に興味関心を示す人が多い印象ですが、以下の確率をみると、いかに経営者やサラリーマンとしての働き方の投資効率がよいかがわかります。

  • 年末ジャンボの1等当選確率 0.00000005%※[1]
  • ロト6の1等当選確率 0.000016%※[2]
  • 仮想通貨で1億円以上稼いだ人の割合 0.015%※[3]
  • ネットワークビジネスで年収1000万円を超える割合 0.07%※[4]
  • Youtuberで年収180万円を超える割合 約3%※[5]

年収1000万円を超える経営者やサラリーマンは、約4.6%※[6]となっており、その数は20人に1人とほぼ等しい割合です。これを踏まえると、わずかな確率を狙うより経営者やサラリーマンとして稼ぐ方が投資効率はよいと考えられます。

参考:

  1. 日経woman「3,000円捨てているだけ?宝くじの当選確率ってご存じですか。
  2. Acceliv「ロト6 1000円しか当たらない
  3. MoneyForward「仮想通貨の『億り人』はたったの331人 億万長者たちが幻に消えた理由
  4. サラリーマン副業サポート「ネットワークビジネスで成功するには?日本での成功率や成功者一覧も紹介
  5. Bloomberg「ユーチューバー、成功しても生活苦しい恐れ
  6. 岡野相続税理士法人「年収1億円以上の人は何人に1人?所得階層別割合【令和版】

起業の3つポイント

起業するうえで、重要なポイントを3つ紹介します。

MVVを重視する

MVVを重視する

起業には大きく3つのプロセスが必要だと考えています。

  • ミッション・ビジョン・バリューを明確にする
  • ビジネスモデルを構築する
  • 必要なアセットを調達する

このなかで重要なのは、1つ目のミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVVとする)です。必要なアセットさえあればビジネスは成功すると考えられがちですが、自分が起業するうえで価値を感じる部分がないと継続することは難しいと思います。

MVVを実現するためには、他人が納得するビジネスモデルをつくりこむことがポイントです。上の図の「リーンキャリア」というフレームワークが既存の健在的・潜在的課題を解決して価値を提供するビジネスモデルを端的に示しているものです。

ただし、ビジネスモデルを構想しても、ヒト・モノ・カネ・ブランド・情報のような経営資源、つまり責任をもってアセットを調達しなければ机上の空論で終わってしまいます。調達できるという保証はなく、かつ自分で見つけなければならないので、この作業が一番時間と労力を消費するといえるでしょう。

アイデアを実行する

アイデアを創出しても、アイデアそのものに価値はありません。小規模でも実証・実験したり、構造をつくったり、何かしら世の中に結果を出すことが重要となります。

さまざまな作業を行うなかで、成功する確率を上げるためにアドバイスできることは「メンター」という存在を得て学習することです。個人的な経験なのですが、私が新卒で入社したとき、自分が努力すれば何か叶えられるかもしれないと自信をもっていました。しかし、いざ就職すると何もできないと思い知らされました。

そんなとき、多くの人が一人で解決しようとします。ですが、正直いうと先輩のアイデアや資料を参考にした方が効率はよいですし、完成度も高いのです。起業も同様、アドバイスしてくれる人、参考になる人が素晴らしいほど、成功する確率も高くなると思います。

私にとって、前職のリクルートという会社が起業におけるメンターのような存在でした。世の中にはたくさんの論文、研究、実例、フレームワークが存在します。そこからどう学んでどう活用していくかが重要で、自分で0から理論をつくる必要はありません。

能力を高める

起業家と聞くと若い人が行っているイメージがありますが、高成長スタートアップの創業時の起業家の年齢は平均45歳であることがわかりました。ビジネスコンテストで優勝している人をみると20代が多いですが、実際に事業を行ううえで一番成功しているのは45歳なのです。

最近、学生起業という言葉が流行したり、あの有名なスティーブ・ジョブスも21歳で起業していたり、たしかに起業家は若い方がいいという誤解が広まりやすいことも考えられます。しかし、スティーブ・ジョブスがiPhoneを開発したのは52歳のときですし、年齢はあまり関係ないといえるでしょう。

なるべく早めに起業しようと焦るかもしれませんが、成功確率を高める一番の要素は自分のもつケイパビリティをどれだけ高められるかです。なので、新卒で会社に入って経験してから起業することも一つの方法だと思います。

質疑応答

ここからは、学生からいただいた質問に対して回答したものを紹介したいと思います。

起業にリスクはつきものか?

必要最低限の生活ができるような環境を整えてから起業する方が、リスクは少ないように思います。自分がどこまでリスクを許容できるかは個人差がありますが、私の場合、生活の基盤なしでいきなり飛び込むことはできませんでした。逆にCEOの須藤はパッションを大事にするタイプなので、IRISを起業して1年目で不可抗力もあり会社を辞めていました。なので、自分のリスクの許容範囲と相談するのはいいかもしれません。

もう一ついえることは、専門知識をもつことです。弊社は異なるのですが、現在様々なファンドから出資を受けているビジネスモデルのほとんどがテクノロジー系です。もし今十分な専門知識がないのであれば、会社で学ぶこともできます。何をやりたいかにもよりますが、会社でエッセンスを吸収し、独立に活かすやり方も安全な方法だと思います。

お客さんの信用を得るためには?

一ついえることは「この人に相談して大丈夫だろう」という心理的安全性があることです。弊社で働いている社員の9割がLGBTs当事者なので、それをお客様に伝えるようにしています。そして、顔出し可能な社員は表に出していただいています。最近、LGBTsフレンドリーを謳った会社は増えている印象ですが、発信している側の実が伴っていないとお客様に不安感を与えてしまうと感じています。なので、まず会社が自己開示することで、心理的な安全性を確保し、そのうえでお客さんに解決策を提案することを重視しています。

さいごに

過去の私のように、起業したくても具体的な方法を見いだせなくて悩んでいたり、師匠や一緒にビジネスを行うメンバー、ビジネスを形にするスキルがないと感じたりする人はいるかもしれません。また、家庭環境・ジェンダー・セクシュアリティ・国籍などで生きづらさを抱えている人もいるでしょう。ですが、一人で悩む必要はありません。救うことはできなくても、一緒に悩むことはできます。なので、少しでも話を聞いてほしいという方がいれば、私に連絡してください。

講義、講演に関するお問い合わせはこちら

この記事を書いたのは

株式会社IRIS

IRISはLGBTs当事者によるLGBTsフレンドリーな不動産会社です。1人暮らしや同棲でのお部屋探しにお困りの際はぜひIRISにご相談ください。お部屋探しのお手伝いをさせて頂きます。

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