どうも、空衣です。トランスジェンダー男性(FtM)で、パンセクシュアルです。

本記事では、トランスジェンダーと結婚についてまとめました。

出生時の性別と自分の生きていく性別が異なるトランスの人が結婚するには、一体どんなハードルがあるのか。どのような結婚のパターンがあり得るのか。トランスジェンダーの戸籍変更要件とあわせて解説します。

トランスジェンダー当事者は結婚できる?

トランスジェンダー当事者は結婚できる?
トランスジェンダーの人も、そうではないシスジェンダーの人と同じように、結婚できる場合があります。要するに「婚約する相手とは、戸籍上の性別がちがう」状態であれば、法的な結婚が可能だからです。現に、結婚して生活を送っているトランスの人は珍しくありません。

結婚の条件には、以下のような条件があります。

  • お互いの合意があること
  • 18歳以上であること
  • 現状で他の人と結婚していないこと
  • 近親婚ではないこと

これらに加えて、トランスの場合は、「一人の戸籍が女性で、もう一人の戸籍が男性であること」を意識する必要があります。実際の生活形態や、ジェンダー・アイデンティティがどうであるかは、反映されません。

そもそも性別の取り扱いのなかにトランスの存在が不可視化されてきたため、シスジェンダーの人とは異なる状況もあり得ます。トランスの結婚には、ある意味で多様性があるといえるのです。何がどうちがうのか、見ていきましょう。

トランスジェンダーとシスジェンダーカップルの結婚

トランスジェンダーとシスジェンダーカップルの結婚

異性カップルの場合は、戸籍変更すれば結婚できる

トランスジェンダーとシスジェンダーの異性カップルの場合は、トランスジェンダー側が手術をして戸籍変更すれば結婚は可能です。たとえばトランスジェンダー男性(FtM)とシスジェンダー女性の、男女カップル。トランスジェンダー女性(MtF)とシスジェンダー男性の、男女カップルといったケースです。

参考:トランスジェンダー男性と女性の夫婦 「うちのダンナがかわいすぎるっ!

参考:トランスジェンダー女性と男性の夫婦 「俺の嫁ちゃん、元男子。

詳しく説明します。トランスジェンダー男性は、出生時の戸籍が「女性」です。そのため、同じく戸籍が「女性」であるシスジェンダー女性とそのまま結婚することができません。トランスジェンダー男性側が戸籍を「女性」から「男性」へ変更すれば、男女のカップルとして結婚できるようになります。

つまり相手がシスジェンダーでなおかつ異性愛者(社会的なマジョリティとされています)の場合、トランスジェンダー側が戸籍変更をすれば、変更した後に、他の男女カップルと同じように結婚することができます。

戸籍上の性別を変更するには、日本では性別適合手術が必須です(2022年6月現在)。世界的にもかなり遅れている制度なのですが、自身の望む性別表記を取り戻すためには、トランスジェンダーの人は手術して生殖機能を失わなければなりません。

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

  1. 年齢要件:18歳以上であること
  2. 非婚要件:現に婚姻をしていないこと
  3. 子なし要件:現に未成年の子がいないこと
  4. 手術要件:生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
  5. 外観要件:その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

トランスジェンダー男性の場合は、性別適合手術によって卵巣をとり除き(レアケースとして中高年のトランスジェンダー男性が閉経後に「もう生殖能力がない」とみなされて、性別適合手術なしで戸籍変更した例はあります)、トランスジェンダー女性の場合は精巣をとり除き、性器の外見も移行先の性別らしく見えるように身体を変えることが求められます。そうやって身体を変え、戸籍を変えることによって、ようやく異性カップルとして法的な結婚が可能になります。

もし同性婚が認可されれば、戸籍を変えなくても結婚すること自体は可能になるでしょう。ただし、男女のカップルであるにもかかわらず「同性」扱いになるので、結婚はできるけれども戸籍上の性別はズレたままになる、という問題は残ります。

参考:映画『フタリノセカイ

異性カップルだが結婚できないトランスジェンダー男性とシスジェンダー女性の困難を知るには、映画『フタリノセカイ』があります。

同性カップルの場合は、戸籍を変えずに結婚する人もいる

一方でトランスジェンダーとシスジェンダーの同性カップルの場合は、戸籍変更しなくても戸籍上は「異性」として結婚できることがあります。

たとえばトランスジェンダー男性(戸籍が「女性」)とシス男性(戸籍が「男性」)のゲイカップルであれば、戸籍上は「異性」として、まるで男女のカップルであるかのように結婚制度が利用できます。しかしこの場合は、トランスジェンダー側が今後も自分の望む性別へ戸籍変更できない、という問題が残ります。

また、すでに戸籍変更済みのトランスジェンダーと、シスジェンダーの同性カップルは戸籍上も「同性」扱いですので、結婚はできません。同性婚の認可を待つか、結婚できない代わりに、同性パートナーシップ制度を利用しておくという人もいます。

参考:漫画『夫は実は女性でした

漫画『夫は実は女性でした』では、もともと男女のカップルとして結婚したが、実は夫がトランスジェンダーの女性だったと判明したふたりの生活を描いています。パンセクシュアルの妻は、結婚相手が男性ではなく女性だったと分かったあと、一旦夫の戸籍が「男性」から「女性」に変更できるように離婚して(結婚していると戸籍変更要件に引っかかるため)、そのあと「女性」同士の同性カップル扱いで同性パートナーシップ制度を利用したそうです。

トランスジェンダー同士の結婚のリアル

トランスジェンダー同士の結婚のリアル

トランス女性とトランス男性のカップル

なかには、トランスジェンダー同士の男女カップルもいます。その場合は、2人とも戸籍変更しないまま結婚するか、二人とも戸籍変更してから結婚する、というパターンあります。

お互いに戸籍変更しないままというのは、トランスジェンダー女性が戸籍上は「男性」として、トランスジェンダー男性が戸籍上は「女性」として結婚するということです。役所や病院にいくときは異なる性別表記を提示しなければならないため、困惑されることもありますが、日常生活では「よくいる男女カップル」に見えるため、生活するうえでの支障は少ないかと思います。

トランスジェンダー女性とトランスジェンダー男性で結婚して子育て中の有名人には、イギリスのハンナ・ウィンターボーンさんとジェイク・グラフさんがいます。Instagramが日々更新されているので、勇気をもらえます。

 

 
 
 
 
 
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英語圏でのトランスジェンダーカップルの実情を知るには、「T4T」(加えて、"trans", "couples", "love"などのキーワード)で検索すると良いです。トランスジェンダーの人同士で親和的な関係を築く際の魅力についてわかります。

トランスジェンダー男性同士、トランスジェンダー女性同士のカップル

そもそも人数が少ないですが、同じ境遇の者同士で結婚を希望することもあります。

もしトランスジェンダー女性同士で結婚を希望するとなると、同性パートナーという扱いですので、同性婚認可を待つか、同性パートナーシップを代用することになります。あるいは、1人だけ戸籍変更している場合、同じトランスジェンダー女性であっても、ひとりは「女性」、もう一人は「男性」と、戸籍上は「異性」扱いですので結婚することはできます。

以上、さまざまなトランスジェンダーと結婚のリアルを見てみました。参考になれば幸いです。

日本の戸籍変更要件は問題が多いです。法改正できる機会があればぜひ応援してください。